複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

明日の夕焼け
日時: 2018/10/20 20:55
名前: LUCA (ID: iNxht3Nk)

 LUCAはるかと読みます。小説カキコに来てだいぶ日が浅いのでわからないことやおかしな所が多いと思いますが、よろしくお願いします。頑張ります。


       




 ♯あまね
  ロボット。「どんな願いでもひとつだけ叶える」という能力を持っている。

 ♯メル♀
  笑いかたが変。

 ♯るか♂
  頭がいい。

Re: 明日の夕焼け ( No.5 )
日時: 2018/12/07 20:00
名前: LUCA (ID: cSGMzERh)

 
 はじめまして、凛太さん
 感想を書いてくださってありがとうございます。好きと言ってもらえて嬉しいです。初めてのことなのでどうしたらいいか少し戸惑っていますが、ありがとうございました。これからも更新頑張ります。
 反応は鈍いと思いますが、一応Twitterのアカウントはあるので、もっとお近づきになれたらなと思います。
 →@LUCA09154946

Re: 明日の夕焼け ( No.6 )
日時: 2018/12/07 18:49
名前: LUCA (ID: cSGMzERh)


 「おやすみー」
 
 言いながらるかはもぞもぞとベッドの中に潜り込み、意識を睡眠という深くまどろんだ海に泳がせる。

 「おやすみなさい」

 そう返したのは周だった。周は部屋の隅で自分の背中にあるプラグにコンセントを差し込んでこじんまりと正座している。ロボットに眠気や疲労というものは存在しないが、機能している以上、動力であるバッテリーは消費されるので充電をするという意味で休息を取っているのだ。
 しかし、メルからの返事がない。るかは毛布から顔を出してメルの様子を見た。メルは何やら文庫本に夢中になっているらしく、るかの声に気づかなかったようだ。

 「メル、もう寝なよ」
 「う、ううん、わかってるよ」

 メルの瞳は既に眠たげで、瞼は重く閉じようとしていたが文庫本はなかなか手離さない。

 「明日起きられなくなっても知らないよ」

 我ながら困った姉だ、とるかは小さく溜め息をつきながらその姉に背を向ける。知らないとはいったものの、周がメルの世話をとことん尽くすのでメルは周に甘えてしまうのだ。今さら直すべきだとも思わないのでるかもるかで軽い忠告で済ませている。

 「大丈夫だよ……って、あ」
 
 メルが驚いたように目を真ん丸にして、窓の向こうを見つめる。

 「今度はなに?」

 どうしてこうも落ち着きがないのか。消灯時間はとっくのとうに過ぎているのだから起きているのがバレてしまったら怒られるだろう。るかは少しイラついたように言ったが、メルはそんなのもお構いなしにただただ窓の向こうを見つめる。一体何があるのか、どうせくだらないことだろう、そんな風に思いながらも、るかはダメ元でメルの視線を辿って窓の向こうを見る。

 「……?なに、あれ」

 紺色の宙を点滅するその発光物体は、さほど大きくはなくて、音もたてずに機械じみた動きで白くチカチカと点滅していた。
 
 「UFOだよ!」
 「はあ?」

 そんなわけ、ないだろう。火星に移住して何十年とたった今だが、未確認生物を目撃した例は聞いたことがない。ましてやUFOなんてあるはずがないのだ。
 だがしかし、それなら今しがた己の目で捉えたそれは、一体なんなのだろう?

 「ねえ、もっと近くで見てみようよ」

 重大な秘密を囁くように言うメルのその顔は悪戯っ子のそれだった。瞳の奥が輝き自然と口角があがる。そんなメルの表情を見たのはいつぶりだったか。つられてるかも頬を緩ませそうになるがそこはなんとかブレーキをかけて押し留まる。

 「何言ってるの、そんなのダメに──」

 カツ、カツ、カツ、と見回りの大人の冷徹な足音が鼓膜を微弱に刺激する。ピクリとメルは反応して、かと思えば物凄い速さでベッドに潜り込む。それはまるで先程までいい子に消灯時間を守って眠っているかのようだった。
 しばらくたって足音が遠退き、無事説教ルートを免れると、メルは今度こそ、と起き上がってるかに向き合った。

 「るかも行こうよ」
 
 そう言われてるかに反論の言葉はすぐに出なかった。ふと、鏡に映る自分の顔が視界に入り込む。
 知識以前の概念として脳みそに住まうルールは、いつの間にか目に見えぬ鎖として自分をルール以上に規正し、押し潰している。それを認めず正しいはずだとたかをくくっていた自分の瞳は、決して間違ってはいなくとも、機械のようであった。しかもメルのような耀く瞳に憧れて、時には嫉妬していながら、自分はそこまでルールに縛り付けられるのを苦に思っていないのだ。
 そんな自分を変えたい。それに何より、自分が変わらなくても、メルは変わっていくのだから、まだそれに振り回される方がましに思えた。

 「うん」

Re: 明日の夕焼け ( No.7 )
日時: 2018/12/07 19:55
名前: LUCA (ID: cSGMzERh)


 ひんやりと肌を撫でる風、スリッパで地面を踏みしめる心地、禁忌を犯す背徳感。それら全てがるかにとっては初めてのことであり、共に悲しいことでもあった。自分はいけないことをしているという罪悪感や、もし見つかったらという恐怖に、胸が警報のように高鳴っている。
 対照的にメルは、上を向いてじいっと、そのUFOとやらに見入っている。
 よく点滅するそれは発光してはいるが作り物めいた無機質さで、星というにはあまりにも夢がなかった。るかもUFOを観察して、朧気だが形を捉える。

 「あれって……」
 
 るかがUFOから目線を離さないまま、世迷い言のようにつぶやく。しかしその後に紡ぐべき言葉は全然ロマンチックでもファンタジックでもなくて、るかは不可解な異物を拒絶するような眼差しになった。

 「ドローン、だよね?」

 言われてはっとしたようにメルも宙を見上げる。一応持ってきた望遠鏡を覗き込むと、ドローンの細部まで見えた。
 光源である電球のような「腹」から蜘蛛の「足」のように細長いパーツが四方八方に伸び、「頭」は小型カメラになっている。

 「小型カメラ……」

 そのカメラは一体何を写し何のためにあるのだろうか。
 メルの小型カメラという言葉を聞いて、るかは焦ったように汗ばんだ手のひらでメルの手を取って走り出す。

 「は、早く、帰ろ」

 それに周も着いていく。夜を背に、監視しているかのようなカメラのレンズから遠退いていくその様子は、さながら逃亡者のようであった。
 

Re: 明日の夕焼け ( No.8 )
日時: 2018/12/08 18:55
名前: LUCA (ID: cSGMzERh)


 「ふぅ……」

 (体の奥底から熱が巡って指の先まで火照るこの感触、嫌いじゃない。ううん、寧ろ好き。大好き。)
 身体の疲労を癒す数少ない方法のひとつである、風呂。訓練で鞭を打った体をお湯につかせれば、若返るように生気が戻り、ほんのり肌理が紅くなる。しかもお湯には美容の効果がついているらしい。露天風呂もあるので今なら満天の星、とまではいかないかも知れないが美しい月が見れることだろう。

 (……るか、おっきい……むぅ……)

 そういう年頃のせいもあるかもしれない。あとは姉妹という競争本能だろうか。るかと何でも比べてしまうメルは胸の大きさまで張り合っていた。自分より後に生まれたはずの妹にあるのは豊かな膨らみ。自分のそれはささやかな膨らみ。同じものを食べて同じ生活をしているのに、なぜこうも格差が生まれるのか。

 「なに?」

 メルの視線に気づいたるかは訪ねる。るかは普段は分厚い眼鏡をかけているが、今は流石にかけていない。よって切れ長の目がよく見え、蒸気して朱に染まった頬と、お風呂の気持ちよさからくる今にも溶けてしまいそうな雰囲気も相まって、
 (なんか……ちょっとえっちだ……色気?)

 「なによ」
 「な、なんでもない」

 急に恥ずかしくなったメルはざばっと音をたてて立ち上がり、シャワーを浴びる。髪を洗おうとシャンプーを手に取ると、ふと、なんとなく気になってシャンプーの裏側を見る。
 
    販売商品名:リネット
    製造販売元:梟谷カンパニー      
          梟谷県大崎市雁宿311

 (ふくろや県……おおさき……かりやど?……何か、何だっけ、あれ)

 梟谷県と言えば、船艦の不時着によって潰されて破滅した町がある県だ。

Re: 明日の夕焼け ( No.9 )
日時: 2018/12/08 20:23
名前: LUCA (ID: cSGMzERh)


 ーーーboat(それは黒かった)ーーー

 ーーーHumanrace(初めてのこと)(祝おう)ーーー

 ーーーdig!!(破滅、破壊)ーーー

 ーーー「……なんだこれ……」ーーー




 ーーー生きてーーー




 ◇

 「俺、タカトーっていいます、よろしく!」

 簡潔な自己紹介を溌剌とした声で述べてみせたその転校生、否、外部者は、皆の視線を集めながらるかの隣の席についた。緑茶色の髪に黒い瞳、人懐っこい笑顔が特徴的な中肉中背の男子だった。そしてるかはこの手の男子を最も苦手とし、嫌悪していた。いかにも責任感の無さそうな軽薄な髪、アホっぽくて無計画に動き回る好奇心旺盛な瞳、迷惑でしかない不吉な笑み。どうしても好きにはなれないパーツが勢揃いした彼には、るかのタイプである「理知的」のりの字もないように思えた。

 「目、綺麗ですね」

 (いきなり、なによ)
 眼鏡を隔てて彼の瞳と目が合う。るかはこれでもかとジトリとした眼差しを向ける。彼の瞳は……よく見ればなかなか悪くない。

 「僕の好感度、上がりました?」
 「……は???」

 タカトーは急に心理的距離を近づけるように馴れ馴れしく話はじめる。表情もずっと柔らかく、砕けた口調だ。

 「いやあ、初対面なのに物凄いメンチ切ってたから」

 睨んでいた、ということだろうか。
 (別にそんなつもりはなかったのだけれど……)
 


Page:1 2



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。