複雑・ファジー小説
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- 月の国ものがたり
- 日時： 2019/01/04 17:08
- 名前： 小雨 （ID: nEqByxTs）
はじめまして。小雨と申します。
自らが書いた文章をこういった場で他人様にお見せするのは初めてですが、楽しんでもらえるように精一杯書こうと思います！
これから書く『月の国物語』は、アジアっぽいところを舞台にしたファンタジーです！多分！
お願い
・読みづらかったりつまんなかったりあるかもしれないですが、できれば悪口とか書かないでほしいです。
・でも、文法・知識等で間違っていることがあればすぐに言ってください。訂正します。普通に感想とかも嬉しいです。てか感想質問等コメントじゃんじゃかください！
……というわけで、よろしくお願いいたします。
目次
はじめに
第一部 やわらかい太陽
一話 シンとスーリヤ
二話 白の塔にて
三話 スーリヤの話
四話 彼ら
五話 夢
第二部 砕けた星々（仮）
第一部の主な登場人物（ネタバレ注意？）
シン（16）月の国より東の国コチャン出身。弓使い。男。
黒の短髪に瞳は青みがかった色。
妹・ユエを探して月の国に来た。
スーリヤ（16）十年前に滅びた小国シェヘラの元王女。
髪の毛は茶色に近い黒を一本のおさげに結っている。瞳は飴色。赤い布を頭にまいて いるほか、服も赤色。
逃げてきた先が月の国だった。
ユエ（12）シンの妹。
髪色は黒、瞳は青（右）と紺（左）のオッドアイ。唇の下にほくろがある。
ダル（19）なんでも屋の一人。男。
長い前髪、肩まである金髪と同じ色の瞳。
ユレイトス（25）なんでも屋の一人。女。
長い赤毛を高いところでまとめている。瞳は緑。
プルートゥ（25）なんでも屋の一人。男。
髪と瞳は黒。日焼けしていて体が大きい。
ヴィナ（20）なんでも屋の一人。女。
銀髪。両目には刀傷がついており常に閉じている。
メルクリウス（23）なんでも屋の一人。男。
飴色の長髪を耳の下で結っている。瞳はこげ茶。
マーズ（22）なんでも屋の一人。男。
栗色の短髪と瞳。右腕に入れ墨があり、耳飾りをつけている。
サターン（19）なんでも屋の一人。男。
黒髪で前髪は長め。瞳は燃えるような赤色。
- Re: 月の国ものがたり ( No.1 )
- 日時： 2018/12/05 16:30
- 名前： 小雨 （ID: Rn9Xbmu5）
はじめに
あるところに月の国がありました。
月の国は、代々月巫女様と呼ばれる一人の女の人が治めていました。普段、月巫女様は滅多に国民に姿を見せず、国の真ん中にある真っ白い塔でまつりごとを行っています。年に一度月鈴祭というお祭りのときにのみ、皆の前に現れるのです。
今は十六代目の月巫女様が国を治めています。彼女はもう五十年近く月巫女様として生きてきました。左目は病気で見えなくなり、心身ともに衰えてきていますが未だその意識ははっきりとしていて、多くの役人たちを取り仕切っています。
月の国は周辺国とも友好的で、多くの国と貿易を行っています。それゆえ、国内には様々な国から来た商人たちが歩いています。
さて——たった今、この月の国へ入ってきた少年。彼も違う国から来ました。真っ黒な髪の毛に、青みがかった瞳。年は今年で十六です。
彼の名前は、シンといいました。
- Re: 月の国ものがたり ( No.2 )
- 日時： 2018/12/21 18:37
- 名前： 小雨 （ID: R6.ghtp2）
第一部 やわらかい太陽
一話 シンとスーリヤ
「また、盗賊が出たってよ」
「マジかよぉ。早く捕まえてくんないかな」
月の国、昼前の市場で、商人たちが新聞を見ながら話している。目の前にいるスーリヤに声をかけられても気付かず話し続けていた。
「ねえ、ねえちょっとあんたら、きいてる？」
いらついたスーリヤが声を荒げると、商人たちは慌てて新聞をしまった。
「すいませんね、お嬢ちゃん。で、ご用件は」
「さっきから何回も言ってるじゃない。これぜんぶで、いくら？」
スーリヤは両手に持ったパンと果物を差し出した。商人はそれを受け取って数を数えると、指を六本出して、六ペルですと言った。スーリヤは六ペルきっかり出すと、品物を受け取った。
去っていくスーリヤの背中に向けて、商人たちは思い出したように叫んだ。
「お嬢ちゃん！盗賊には気を付けるんだよ。あんたみたいな子が一番狙われやすいんだから」
スーリヤはぴたりと足を止めると、振り向いて叫び返した。
「平気よ！それよりそんなものに夢中になって商売がおろそかになるあんたらの方が危ないんじゃないの？」
そんなもの、と言いながら彼女が指差したのは新聞だった。商人たちは顔を見合わせると、確かにそうだとうなずき合った。
「あれなら大丈夫だな」
「ああ。むしろ盗賊の方が心配だ」
すっかり日が落ち、人っ子一人いない路地をスーリヤは歩いていた。市場で買ったパンの残りをもそもそと食べていると、何かにぶつかった。
「あ、すいません」
スーリヤの倍ほどはありそうな男が三人、にやにやしながら立っていた。
（何この人たち。感じ悪いな）
男たちの横を通ろうとしたスーリヤの肩を、三人のうちの鼻に傷のある男がつかんだ。
「……なに？」
「へへ、お前この国の人間じゃねえなあ。その頭にまいてる布、見覚えがある。たしかどっかでは貴族と王族だけが持ってるやつだ。金持ってんだろ？」
いつの間にか囲まれていた。三人の男はそれぞれ懐からナイフや棍棒を取り出すと、スーリヤに向かって振り上げた。
「へっへへへ、残念だったなガキ。じゃあな！」
ごん、と鈍い音がして、鼻に傷の男が倒れた。
「……えっ、アニキ？」
二人の男が困惑した声を出す。その瞬間、彼らも後ろから蹴りを食らい、その場に倒れこんだ。
「なんだ、こんなものなの？もう少し強いかと思ってたわ」
近くに置いてあった荒縄で気を失った三人をまとめて縛りながら、スーリヤはため息をついた。土に落としたパンから汚れたところをもぎ取り、口に放り込む。
（これ、さっき言ってた盗賊だよね。誰か呼んだ方がいいのかな。一応犯罪者だし）
町の方へ歩き出そうとしたスーリヤの服を、誰かが強く引いた。
「えっ？」
体勢を崩したスーリヤの首に、ひやりとした感触が伝わる。先ほどの三人とは別の男が、ナイフを当てていた。
（しまった、四人目がいた！）
男がにやりと笑う。
「ずいぶんあっさりと俺の兄弟をやってくれたみたいじゃねえか。なあ」
（うかつだった。まずい、早く逃げないと。逃げ……）
「じゃあな、小娘」
- Re: 月の国ものがたり ( No.3 )
- 日時： 2018/12/21 17:51
- 名前： 小雨 （ID: kct9F1dw）
ぎゅっと目をつぶったスーリヤの横を、何かがひゅっ、と音を出して通った。
（えっ、あれ？）
いつの間にか、首のナイフの感触が消えている。
（助かった……）
そっと目を開けて路地の向こう側を見ると、誰かが立っていた。暗くて顔はよく見えないが、弓矢を持った若い男のようだった。スーリヤは男に歩み寄った。近くで見ると、男はスーリヤとそう歳の変わらない少年だった。真っ黒な紙に青みがかった瞳。月の国よりもっと東にある国の民の特徴だ。
「けがは？」
少年が口を開く。落ち着いた声だった。
「大丈夫。ねえ、今助けてくれたの？」
少年は答えなかったが、恐らくそういうことだろうとスーリヤは思った。
「ありがとう。私スーリヤ。お礼させて」
「いいよ。そういうのが欲しくてやったんじゃないから」
「私がしたいの。ほら、なんかおごるから」
「いいって。強引だな」
頑なに断る少年に、スーリヤは無理矢理指輪を握らせた。返そうとする少年から逃げるように走り出す。
「それ、売ったら結構お金になるわよ！じゃあね！」
スーリヤの走り去った方向を、少年はぽかんとした顔で見つめていた。
「なんだ、あいつ」
翌日。少年の渡した指輪を見ていた商人が、ほう、と感嘆のため息をついた。
「素晴らしい。私とて、こんなにいいシェヘラ文様の指輪を見たことはありませんよ。お客さん、ずいぶんいいものを持ってらっしゃる。どこで手に入れたんですか？」
「まあ……人にもらったんだよ。そんなにすごいの？それ」
「ええ。シェヘラって知ってますか？十年くらい前に無くなっちまった小国なんですが、そこで作られたこういう飾りには、独自の技術で彫られた美しい文様がついてるんです。もともとの数も少ないですから、高く買いますよこれは」
ふうん、とうなずきながら少年は指輪をしげしげと眺めた。太陽で金色に光る指輪の表面には、見たこともない植物の絵が立体的に彫られている。
「ありがとう。一つ、訊いていいかな」少年は懐に指輪をしまうと、商人たちに尋ねた「スーリヤって人を探してるんだけど。頭に赤い布を巻いてて、前髪も上げて全部一本のおさげに結ってて——そう、年は俺と同じくらいかな。身長はこんくらい。知ってる？そういう女」
商人たちはしばらく話し合っていたが、やがてそのうちの一人がぽんと手を打った。
「ああ、昨日会いましたよ。気の強い娘」
「どこにいるかわかる？」
「さあ……でも、あまり遠くに入ってないでしょうし、この辺りなら——」
商人の言っていた通り、スーリヤは町の図書館にいた。熱心に書物を読んでいるスーリヤにそっと声をかける。スーリヤはびっくりして振り向いたが、すぐに昨晩の少年だとわかると、嬉しそうな声を上げた。
「あんた、昨日の！どうしたの？」
ちょっとこっちへ、と少年はスーリヤを外へ連れ出した。
「お礼はいらないって言ったけど、やっぱり頼みたいことがある。きいてくれるか？」
「頼み？」
「ああ。この指輪」少年はスーリヤに指輪を見せた「高い物なんだろう？これをあの塔に行って月巫女に献上してほしい」あの塔、と言いながら少年は真っ白な塔を指さした。「話をつづけるぞ。あの塔は特例以外女しか入れない。俺には無理だ。だからお前が献上を口実に塔に入り、俺の言った人間を探してきて欲しい。……やってくれるか？」
スーリヤはしばらく考えていたが、いいけどその代わり、と指を一本たてた。
「名前は？」
「……名前？」
「当然でしょ、だってあんたが持ち出してるのは取引よ。取引なら、お互いが平等な立場にあるべき。私だけ名乗ってるのは不公平」
そっちから名乗ってきたくせに、と少年は少し思ったが、スーリヤの目をまっすぐに見ると、言った。
「シン。俺はシンだ」
「わかったわ、シン。私に任せて」
- Re: 月の国ものがたり ( No.4 )
- 日時： 2018/12/21 18:38
- 名前： 小雨 （ID: R6.ghtp2）
二話 白の塔にて
その建物は、『白の塔』もしくは『月の塔』と月の国の民に呼ばれています。
正式な名前はありません。名前など付けなければならないものではないからです。
ここで待っているように、と言われた場所でスーリヤはじっと立っていた。ここは塔の中。壁から床までほとんどの者が白くまぶしい。スーリヤの赤い服が本来の色より派手で毒々しく見える。物音はしない。窓もない。息の詰まりそうな空間だった。
「お待たせいたしました」
ふと声がして、八から十九歳くらいの二十人ほどの少女がスーリヤの前にいた。みな同じ白い服を着て、頭に銀色のかんざしを付けている。少女たちに表情は無く、陶器の人形が並んでいるようだった。
「いえ。……では、贈り物を献上致したます」
こうべを垂れてひざまずきながら、スーリヤはそっと少女たちの顔を観察した。
（この中に、いるのかしら？『ユエ』が……）
半刻ほど前。
「で、どういう子を探してほしいの？」
スーリヤが訊くと、シンは古ぼけた木の板を見せた。筆で幼い少女の顔が描かれていた。少し長めに切った前髪をゆるくおさげにしていて、唇の下に小さなほくろがある。
「わ、かわいい。この子？」
「ああ。名前はユエ。あと、この絵じゃわかんないけど、左右の目の色が微妙に違う。右目は俺と同じ色、左目はもう少し漆黒に近い紺色をしてるんだ」
少女たちの顔を眺めながら、スーリヤは先ほど見せられた絵を思い出していた。金髪、茶髪、黒髪……髪の毛だけでなく、肌や瞳も様々な色の子どもがいたが、ユエはいないように思われた。
「ありがとうございます。これは私たちが責任を持って、月巫女様にお渡しします」
指輪を受け取り奥に戻ろうとする少女たちに、スーリヤは慌てて声をかけた。
「あの、この塔で生活する女性というのは、あなたたちで全てですか？」
もっとも年長であろう銀髪の少女がゆっくりと振り向いた。
「なぜ、そんなことをきかれるのですか」
少女の冷たい瞳に正面から見据えられてスーリヤはどきりとした。だが、自分も同様にきっと瞳を見つめ返すと、はっきりとした口調で言った。
「私は他国から来た政府の者です。我らの王にこちらでのことを詳しくお伝えする必要があるので、できる限り細かい数字などもおききしておきたいのです」
しばらくの沈黙があった後、銀髪の少女はゆっくりと口を開いた。
「そうですか。それはお疲れ様です。ですがあなたは先ほど所属を訊いた際、そのようには答えませんでした。もし、これが真実ではなくあなたの作り話で私たちをだまそうとしているのなら、しかるべき処置はとらせてもらいますよ」
どくどくという心臓の音が聞かれないかとスーリヤは少し不安になった。
「ええ。大丈夫です」
「わかりました。ではこちらもあなたの質問に答えます。ここにいるだけで全てではありません。まだほかに五人ほどこの上にいますよ」
「なら、なぜここにはこないのですか？」
「特別なのです」
少女は強く言った。周りの十九人も静かにうなずく「そう。特別。あの人たちは——あの人たちは——特別なのです。あなたが想像もできないほど」これ以上はお答えできません、と言うと少女たちは奥へ帰って行った。スーリヤは再度礼をしてそれを見送った。
塔の前をそわそわした様子で何度も往復するシンを、兵士が不審そうな顔で見ている。
（まだかな……）
塔から出てくる人間は何人かいたが、どれもスーリヤではなかった。
（結構月巫女って貢物貰ってんだな。ああ〜早く出てこい）
「君、誰か待ってるの？」
突然声をかけられて、シンは驚いた。いつのまにか見知らぬ青年が立っていた。背丈はシンと同じくらいで、白くて袖の長い衣に少し長めの前髪。シンは少し身構えた。
（こいつ……なんか変だ。なんだろう？違和感が……）
「どうしたんだい？」
青年がシンの顔を覗き込む。
「いや、別に……」
「そう。君、暇なら僕と話さない？」
青年は柔らかい微笑みを浮かべた。