複雑・ファジー小説
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- 夕べには骸に
- 日時: 2018/12/22 13:08
- 名前: ミルメック (ID: QFE58D55)
「大丈夫、大丈夫」
- Re: 夕べには骸に ( No.6 )
- 日時: 2018/12/23 11:20
- 名前: ミルメック (ID: dSEiYiZU)
朝、起きてベッドを降りると、シーツに赤い染みが出来ているのに気づいた。今まで見た中で一番真っ赤な、それこそ血みたいな、赤だった。微かに血特有の鉄っぽい匂いが鼻孔を掠めて、もしかしたら血かもしれないという考えが頭によぎった。急に背筋がひんやりして血の気が下がっていくのがわかる。きっと俺の顔は青ざめているだろう。怖くなった。
出血、血、貧血、怪我、傷、何で、いつ、寝てるとき?すると、いきなり背後からぽんぽんと肩を叩かれた。後ろを振り向くと肩を叩いたのはダマリンだったようで、
「何?」
と聞くとダマリンのはスケッチブックを掲げた。スケッチブックには、血、と急いだような字で書かれていた。ダマリンはページを捲って次のページを見せた。今度は、お尻、と書かれていた。
「え」
服越しにお尻を触ると冷たく濡れたような感触がして、掌を見ればべっとりと血がついていた。
「な、なんで」
痛くもないのに、ただ寝てただけで怪我なんてしてないのに、なんで。
だんだん、周囲の大人も起き始めて、俺の異変に気がついた。こんなの見られたら大騒ぎになるぞ、と覚悟はしていたが、いつも表情を変えない大人たちが目を見開いて慌てる様子には驚いた。
俺はどうしたらいいかわからなくて、そもそも状況をあまりよく理解していなかったから、ただ呆然と立ちすくんでいたのだけれど、どうやら大人たちは緊急ミサを始めるらしい。俺とダマリンは大人たちに続いてミサをやる部屋に向かった。
そしたら何故か、俺だけステージの上に立たされた。緊急ミサだからか、神様はいなかったが、俺の中でステージの上は神様だけの舞台という認識だったので俺がそこに立つなんて、ちょっと億劫で罪悪感がした。
「ヌゲ」
ステージの下から俺を見上げながらひとりの大人が言った。脱げ?
「ヌゲヌゲ」
「え?」
「「「ヌゲヌゲヌゲヌゲヌゲ」」」
全員の大人の視線が俺に集まって、告げる。脱げと。脱げって……今ここで?皆の前で、ステージの上で、服を脱げと?こいつら、なに言ってるんだよ。人前で裸になるとか、風呂じゃないんだから恥ずかしいし、おかしいだろ。しかし、俺が渋ってもたもたしていると、大人の手が俺に向かって伸びてきて、ズボンと下着を一斉に下ろそうとしてきた。
「え、は、ちょ!」
「ヌゲヌゲヌゲ」
ズボンと下着はずりずりと、引っ掻くような力強さで下ろされる。大人の力に対抗できるはずもなく、もうお尻の半分程が露になっていた。
ひっ、と恐怖に包まれながら、俺は顔を真っ赤にさせてじたばた抵抗するものの、大人の手はがっしりと、離れる気がない。
「ヌゲ、ヌゲ!」
「やだやだやだやだやだやだ、やめて、やだよ、やだあ!」
じわりと視界が涙で歪む。ついには下半身をおおう布がなくなり、俺は自分の性器を大勢に晒す醜態を犯した。
ぽた、ぽた、ぽた、と俺から血が流れる。大人たちはじいっ、と観察するようにそれを見ていた。
ダマリンだけは目を瞑っていた。
- Re: 夕べには骸に ( No.7 )
- 日時: 2018/12/23 11:39
- 名前: ミルメック (ID: dSEiYiZU)
それは次の日も、明後日も、行われた。ステージの上で、皆の前で、性器を晒し血を流す。
「ヌゲヌゲ」
「や、やだよ、なんで」
毎度俺は精一杯の抵抗をするのたが、むなしくそれは無駄に終わる。
「ヌゲヌゲヌゲ!」
「もう、やめてよ……」
俺の誰にも届くことのない魂の喘ぎは穏やかに霞んでいった。
しかし今日は違った。水が満杯に入った桶を用意され、ステージの上でその中に顔をいきなり突っ込まれた。
「!?」
鼻から水が入る。反射的に顔をあげようとするが、押さえつける大人の力には敵わない。ゴボゴボゴボという音がする。息が出来ない。なんで、なんで、嫌だ。酸素酸素さんそさんそ。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
するといきなり髪を引っ張られて水から頭を引き上げられた。
「はあっはあっはあっ」
酸素を貪り荒い呼吸を繰り返しながら、大人たちを見る。なんとなく、だんだん確信に変わりながら、大人たちが謝罪を要求しているのだとわかった。
「ごめんなざい」
きっとこれは罰だ。なぜするのか、なんのためなのか、わからないけれど。
しかし、罰が来るとわかっていても、抵抗することはやめられない。泣きながら、性器を晒しながら、喚くことを、やめられない。
「やだやだやだやだやだ、ごめんなざい、ゆるじで、ごめんなざい」
なぜ血は流れるのか。なぜ大人はそれを見るのか。なぜ罰を受けなくてはならないのか。なぜ誰も助けてくれないのか。俺は何もわからない。
- Re: 夕べには骸に ( No.8 )
- 日時: 2018/12/23 12:01
- 名前: ミルメック (ID: dSEiYiZU)
自分から、ズボンを脱ぎ、下着を脱ぎ、皆の前で性器を晒す。ぽた、ぽた、ぽた、と血が流れる。ステージが血で赤く染まる。皆はそれを見ている。そんな、時だった。
バサアッ、という音ともに神様は降臨した。真っ黒なローブ、深く被ったフード。いつもの神様が、俺の目の前に現れて俺を包容した。
だんだん意志が戻ってくる。小さな灯火が、大きくなって、燃え盛る炎になるように。そうだ、おかしいだろ。皆の前で性器を晒すなんておかしいだろ。罰を受けるからって、抵抗しても無駄だからって、それを仕方がないで受け入れちゃだめだ。抵抗しなきゃ。抗えるのは俺だけなんだから。
神様は真っ黒なローブを俺にもわけてくれて、おかげで俺の性器は隠れた。神様は庇うように俺の前に立ってくれているから、皆から俺は見えない。今のうちに、と俺は下着とズボンを履く。
神様はぎゅううっ、と俺を抱き締める。神様はあったかかった。こんなに神様と急接近すると、嫌でもフードの奥が見える。
とても、とても、綺麗な顔をしていた。真っ白な肌に、黒く艶やかな睫毛。薄く瑞々しいピンクの唇。炎のような紅色の瞳。
「逃げて」
低くも高くもない心地好い美声。
「ここから逃げるんだ」
「で、でもっ」
「いいから。この部屋を抜けたら外さ」
そんなことしていいのだろうか。怒られるんじゃないだろうか。何より、外に出てどうしたらいいんだ。
「俺、何もわかんないから、外、なんて怖いよ……」
俺がそう言うと、神様はとても穏やかな表情で、俺を抱き締めながら言った。
「大丈夫、大丈夫」
- Re: 夕べには骸に ( No.9 )
- 日時: 2018/12/23 12:25
- 名前: ミルメック (ID: dSEiYiZU)
「さあ、お行き」
神様は俺の背中を押した。俺は急いでステージを降りて、真っ先に扉ではなくダマリンの所へ向かった。
「ダマリン!」
ダマリンは蒼白な顔で俺を見ておろおろと、ステージ付近を見ていた。何事かと俺もステージの方を見ると、そこにはおかしな光景が広がっていた。
ステージの真下で、俺の服を脱がそうとした大人が倒れている。そして倒れた大人を他の大人たちが、食べている。むしゃむしゃ、くちゃくちゃ、べちゃべちゃ。貪欲に人間が人間にかぶりついている。
神様はそれをステージの上から見下ろしていた。
「な、なんなんだよ、どうなってんだよ……いったい……」
そこではっとする。こんなことしている場合じゃない。早くここから出ないと。出ないと……どうなる?……わからない。でも、それでも、出なきゃならないってことはわかるから。
「ダマリン!ここから、出よう!一緒に……ごぽっ」
腹から激痛が走る。口から血が吐き出る。下を向くと自分の腹に包丁の刃が刺さっていた。包丁の柄を握っているのはダマリンだった。
「だま、りん……?」
血が吐き出る。なんで、俺を刺すの。一緒に出ようよ。ダマリンだって、こんなとこ嫌でしょ。一人じゃ寂しいでしょ。ねえ、だからダマリン。
「呆れた感傷だ」
低く冷徹で、鋭利な刺のある声だった。それは初めて聞くダマリンの声だった。
「っ……!この、野郎」
どうして誰も俺を助けてくれないの。こんなに痛いのに。いいよ、一人で行くから。ダマリンは、俺とは違うってわかったから。
俺は血を吐きながらダマリンから逃げた。大人から逃げて、この建物から逃げたくて。ぐんぐん走っていく。もう扉は目と鼻の先だ。
扉を開けようとドアノブに手をかける寸前、最後に神様を見ておきたくて、後ろを振り向くと、赤く紅く燃え盛る炎が、俺の脳裏に焼き付いた。
それが、本当の神様の姿なんだと、俺は思った。
体に炎を纏わせる神獣が、大人たちを、建物を、焼き尽くす。神獣の瞳は穏やかで、炎はあたかかった。
俺は今度こそドアノブに手をかけ、扉を開く。
重く固い扉を開くと、目の前には初めて見る外の世界が広がっていた。
- Re: 夕べには骸に ( No.10 )
- 日時: 2018/12/23 12:38
- 名前: ミルメック (ID: dSEiYiZU)
藤野 涼 フジノ リョウ
一人称:俺 性別:女 誕生日:3月9日
「あの神様は一体誰なんだろう?」
佐伯 智也 サエキ トモヤ
一人称:僕 性別:男 誕生日:10月27日 あだ名:ダマリン
「……」
藤野 類 フジノ ルイ
一人称:僕 性別:男 誕生日:不明 立場:神様
「訳あって神様やってます」
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