複雑・ファジー小説
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- 今日の宿題:明日までに人間を殺してください
- 日時: 2019/06/26 18:25
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1173.png
拙作ですが優しい目で見守っていただけると幸いです。(*- -)(*_ _)ペコリ
表紙のURLを貼っています。よければ見てください。
☆粗筋
ーー「キミは、死神になる才能があるよ」
孤独な少年の前に差しのべられた救いの手は、死神のものだった。
死神の学校へと通うことになった少年は、死神になるべく日々勉学に励むがーー。
ある日、恐れていた課題が出される。
「明日までに人間を殺してください」
少年の決断はーー。
☆
中学生です。
すみませんが、テスト期間などの場合は更新が遅れがちになります。
スローペース更新ですが感想などをいただければ泣いて喜びます。
☆目次
プロローグ >>01
第1章 シニガミガッコウ
第1話 グランドピアノ >>02
第2話 黒いローブ >>03
第3話 死神の鎌 >>04
第4話 またひとつ >>05
第5話 さ迷う幽霊 >>06
第6話 デート? >>07
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.3 )
- 日時: 2019/06/08 10:48
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560
☆第1章 シニガミガッコウ 第2話
目深に黒いローブを被った俺とファミは、幽霊らに見送られながら屋敷をあとにした。
屋敷の外は森の中である。といっても、そこまでうっそうとしたところではない。十分ほど歩けば森の外に出られる。
涼しい森の中を抜けると、ぽかぽかとした春の陽気にさらされた。この黒いローブでは少し暑い。俺はファミをちらりと見る。俺はまだ下が半袖だからいいものの、ファミはしっかりと着込んでいたはずだと思いだし、心配したのだった。
鼻歌混じりに軽やかな歩みで進むファミは、白い髪をローブの中に隠し、赤い瞳を目深にかぶることでカバーしているものの、彼女が美少女だということは僅かに見える彼女の要素からわかる。
だがどうやら、暑いと感じてはいないようだ。
潔く諦めて歩を進めた。
森があるだけあってそこそこの田舎だったが、電車に揺られればたちまち景色は都会のそれになった。因みに、電車賃はファミが出してくれた。
人々がごったがえす大通りを堂々と黒いローブで歩く度胸はたいしたものである。聞けば、人間はたいして周囲に興味がないし、この黒いローブは影を薄くする効果があるそうで、今は透明人間に限りなく近い程度の存在感らしい。
俺はそれを聞いて、少し胸をなでおろす。
黒いローブ姿がダサいとかそういうことではなくーー。
『××くんが行方不明になって八日目です。警察は……』
時折雑音にまじって聞こえるニュースの中の自分の名前。
ぐ、とフードをかぶり直して口をかたく結んだ。
「はい」
ファミは唐突に俺に手を伸ばした。
「は」
俺が何か反応するより先に俺の片手をすくいあげ、軽く握った。
「都会では迷子になりやすいからねー弟子の安全を守るのも師匠の役目なんだよねー」
少しだけひんやりとした手に、その小さな後ろ姿に。
癒される。
ここにいていいんだよと、優しく言いきかされたように感じた。
いつもは師匠面なんてしないのに。
こんなときだけ。
師匠面するんだからなぁ。
「ほら、ついた」
大通りをカクンと曲がる。こんな道あったっけーなんて、思いながら。
すると、そこには。
おどろおどろしい文字で『死神の鎌専門店』という看板があがっている店の前についた。ガラリと変わった風景に内心ビクビクしながらも店を観察する。
外装はふるめかしく、紫色のペンキをぶちまけたような屋根はところどころはげていた。それなりに頑丈なつくりなのだろう店の前には蜘蛛の巣、ショーウィンドウには最新モデルらしいハイセンスな鎌。
「楽器を買うんじゃ……」
「楽器も買うんだよ」
しれっと言ってファミは店に入る。俺は躊躇いがちにあとに続いた。
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.4 )
- 日時: 2019/06/15 01:46
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560
☆第1章 シニガミガッコウ 第3話
古めかしい外装とは違い、中は新しいものばかりだった。店内の音楽は流行りの曲、ピカピカに磨かれた最新モデルらしい死神の鎌。店内の中央には3Dに浮かび上がるデジタルなマネキン。そっと触れてみたが感覚がないということは、電子データなのだろう。
店内に売られる鎌を持ち、流行ものの服と合わせたコーディネートを着用したマネキンが次々と浮かび上がっては消えていく。
「はーいいらっしゃぁい」
接客だろうがなんだろうが、スマホは手放さないらしい店長の声は柔らかいというよりは、ゆったりとのばす声。バサバサのつけまつげと、これでもかと巻かれた見事な金髪。萌え袖になっている袖の方に目をやれば、しっかりと塗られたネイルが目にはいる。下は目が痛くなる蛍光色のミニスカート。
「相変わらず派手な格好をしてるわね」
「誰かと思ったらファミりんじゃないのぉ。連絡してくれないからどこかで餓死したのかと心配してたのよぉ」
「そもそもあたしはスマホ持ってないからね。連絡しようにもできないわよ」
呆れたように、というよりは楽しんでいるようにみえる。これが二人の挨拶がわりのようなものなのかもしれない。店長さんもスマホの所持を勧めたりはせず、むしろこちらに興味を向けた。
「それよかファミりん。そこの坊やはなんなのぉ?」
ファミは軽く肩をすくめた。
「あたしの弟子。今日はこの子に死神の鎌を見立ててやってほしいの。金に糸目はつけない。知ってるでしょ?あたしの金遣いの荒さぐらい」
そういえば、弾けもしないのにグランドピアノがあるというのはおかしい。
かなり新しいものだったし、三日前にいきなり現れて「買った」と言われただけだった。ファミの金遣いが荒いのはなんとなく伝わってくる。
それにしては、ファッションに興味がないのか毎日オーバーオールである。
折角の美少女なのだから、この店長までとは言わなくとももう少し着飾ってもいいのではないだろうか。
「ふーん。オーケーよぉ。ファミりんが見込んだ子の鎌を見立てられるなんて光栄だわぁ」
冗談か本気かわからないような声色でそう言われ、どうしたらいいのかわからずに固まっていた俺を指差す。
「任せて。死神学校でも人気者間違いなしのイケた男の子にしてあげるぅ」
俺に拒否権なんてものは用意されておらず、二十歳かそこらの女性にあれこれ鎌を持たせられ、ぺちゃくちゃとお喋りにつきあわされることになった。その間、ファミは店から消えていて、また違う店に出かけているようだった。
……本当に、買い物が好きらしい。
「これねぇ」
満足げに店長は鎌を持った俺を眺めて呟いた。
俺が握っている鎌の名前はブレック。
緑みがかかった柄の比較的シンプルだが使いにくいモデルらしい。初心者にそれを勧めるのはどうかと思ったが帰ってきたファミに「似合っている」と笑顔で言われ、俺は迷いなくそれに決めた。
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.5 )
- 日時: 2019/06/15 01:45
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
☆第1章 シニガミガッコウ 第4話
たくさんの買い物袋を抱えて、俺とファミは死神の鎌の店を後にした。
この紙袋のほとんどが俺のために買ったものなのだと聞かせられ、驚きと申し訳なさが押し寄せてくる。年上ならまだしも、見た目は同じくらいの少女に買ってもらってばかりで、しかも居候しているような状態だ。
図太い方だと思っていたが、流石にこれは流せない。
「こんなに……いつか、お金返すから」
ファミは軽く笑って首を振った。
「返す必要なんてないよ。これを買うのは師匠の義務みたいなものだから。弟子はみーんなしてもらうの。遠慮しすぎ」
そうなのだろうか。
どちらにしろ、しばらくはその言葉に甘える他ないのだが。
「でも、こんな大量の荷物必要なのか?」
衣類はわかる。死神の鎌もわかる。
楽器もわかる。そもそもそれが目的だったからな。今思えば楽器って高いしやっぱり買ってもらうべきじゃなかったと後悔しているが。
「これは何なんだ?」
よくわからない言語で書かれた本のようなものが十冊程度、筆記用具とカバン、おまけに見たことのない制服。さっき確認したが、サイズは合いそうである。つまり、俺が着るものなんだろうけど……。
「死神学校に行くために必要なものだ」
……死神学校。
そういえば、さっきの店長もそんなことを言ってたが。
「死神学校っていうのが必要なのか?師匠と弟子でやっていくんじゃないのか?」
「だいたい一年間で卒業できる。そっからは本格的に師匠と弟子の二人三脚だが、命を扱うからな。とりあえず最低限のルールや知識を詰めこまないと悪い師匠にひっかかったとき大変なことになるからな」
一年間。
学校に行くことが特に嫌だというわけではないが、どうしてもそういった『以前の生活』に近いものは、『あの日』を連想してしまう。
壊れかけていた家族が決定的に、致命的に、壊れてしまった日。
そして俺がーー人間を、やめた日。
それがほんの一週間前のことだというのはなんだか不思議な気分だ。
「そうなのか……」
「全寮制というわけでもない。こっちに帰宅するといいよ。勿論、寮がいいなら寮でいいが……コネをつくるチャンスでもあるし、死神学校に通うことは決定事項だ」
俺が乗り気でないことは察しているらしい。
「こっちに帰りたいかな」
その理由に少し、ファミに会いたいからっていう理由が含まれることは口が裂けても言えないが。
「あぁ。いつでもおかえりと言ってやるさ」
帰り道、人々が自分達を無視することに慣れ、俺はまたひとつ人間らしさを失った気がした。けれど、それは寂しいだけのものではなく、誇らしくもあった。
まだ俺の名前をニュースキャスターが連呼していたが、よほどニュースがないのか、平和だな、と。
ただ、的外れなことを考えながら帰路についた。
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.6 )
- 日時: 2019/06/18 21:25
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560
☆第1章 シニガミガッコウ 第5話
その時だった。
雑音と騒音が入り乱れる大通り、黒いローブをかぶり、透明人間と化した俺たちは、あるものを見た。
幽霊。
現世をふよふよとさ迷う幽霊は、目が虚ろで、屋敷にいる幽霊たちとはどこかが違っていた。女子高校生なのだろう、膝丈より少し短くした制服スカートに、紺色のジャケット、薄い茶髪の髪はポニーテールにしていた。
足はーーない。
彼女がスニーカーを履いているのか、はたまたローファーなのかもわからない。
「行ってくる」
ファミは反論する余地すら与えず、俺に荷物を押し付けるだけ押し付けると、ひゅんっと高い指笛を鳴らした。待ってましたとばかりに、ファミの鎌が猛スピードで飛んでくる。
とりあえず端のほうへ行って地面に荷物を置いた。
幽霊とファミは空中に浮いている。二人とも他の人達には見えていない。
別に、そこで戦いが始まるわけでもない。
何か話していたが、困ったようにファミが振り向いて、女子高生の幽霊を連れてやってきた。近くで見たからわかったのだが、幽霊は、目鼻立ちがしっかりしていて、ファミほどはないけれど可愛かった。
相変わらず目は虚ろなままだったが、喋ることはできるようで、意志疎通が可能だった。
「キミ、この幽霊が見える?」
「うん」
俺が頷くと、ファミはやっぱり、という顔をしながら事情をかいつまんで話してくれた。
曰く。
彼女ーー須田原友里亜は、好きな男子に告白する直前に事故にあい、亡くなってしまったという。そのせいで、心残りがあって、現世にとどまってしまったという。
友里亜は、俺を品定めするようにじっくりと見るとファミに向かって口を開いた。
「年下だけどまぁいいわ。背も高いほうだし、顔も悪くない。このくらいで妥協しといたげる」
唐突な言葉に俺の脳内が?マークでいっぱいになる前にファミが説明をいれてくれた。
「心残りっていうのが、男子とデートしたことがないってことらしいの。それでキミ、悪いんだけど明日一日この子とデートしてくれない?」
……は?
断りたい。
ファミの頼みでも、こっちだって初デートである。
本当に好きな人とデートしたいと思うのは勝手だろうか。
しかも。
「デートしたとして、幽霊じゃ、俺が一人で出掛けてるみたいになるじゃないか」
俺がどうして幽霊が見えるのかはわからないが、周囲には見えてないようである。
二人でデートした場合、一人でデートスポットを回るように見えないだろうか。それは普通に嫌だ。俺が黒いローブを被ればいいのかもしれないが、それではおそらく死神の店はともかく普通の店での買い物は難しい。なにしろ透明人間なのだから。
「そこのところは手をうっておくから大丈夫」
ファミがそう言うなら大丈夫なのだろう。
- Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.7 )
- 日時: 2019/06/26 18:23
- 名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1190.png
挿し絵つき。
URLにのせているのでよかったら見てください(*- -)(*_ _)ペコリ
☆第1章 シニガミガッコウ 第6話
翌朝。
ファミの屋敷で自分の部屋としてもらった部屋から出ると、そこにはファミが立っていた。
……いや、ここはファミの家なので、ファミがいることに疑問を持ったわけではない。
ただーー。
服装が、全く違う。
いつもはオーバーオールに長い髪をたらしているのだが、今朝は。
レースのついた白いシャツに、瞳の色に合わせたのか赤いチェックの吊りスカート。純白の髪を赤いチェックのシュシュでまとめている。
「秘技、なんだってさ」
俺が驚きのあまり動けないでいると、ファミが口を開いた。確かにファミの声だがーー何かが違う。
「よくわかんないけど、この体を貸すって言われて、今あの死神の意識はない。この姿で、デートできるな」
愉快そうにそう言われ、俺は戸惑いながらも納得した。
秘技ーーというからには、何かあるのだろう。俺に見えないところでわざわざするようなものが。
「じゃあ、行こっか」
使用人の幽霊さんたちに見送られながらも、俺は屋敷を後にした。
友里亜の外見は普通とだいぶ違うため、この田舎を抜けて町に来たときなんかは、振り返らない人がいないくらいだった。
「どこに行くんだよ」
初デートは、好きな人と。
そう思っていたが、思ったよりもすんなりと受け入れられた。
それは、俺が仕事だと割りきったからなのか、友里亜がファミの外見をしているからナノかはわからないが。昨日の抵抗感はすでになかった。
自然につなぐことになった手も違和感がない。
「デートといったら、遊園地よ!」
ぴょんっと、楽しげに飛びはねると、再び俺を引っ張ってこの町の遊園地へと向かった。
ーー遊園地、ね。
「どれで遊ぶ?ジェットコースター?観覧車?お化け屋敷?」
入場券の列に並びながらも一向に変わらないテンションで話しかけてくる友里亜に、俺は実は……と、打ち明ける。
「遊園地って、初めてなんだ」
家族でも行ったことがない。そもそも、まともに家族で出掛けたことなんてないのだけど。
「へぇっ!そうなんだ!じゃあじゃあ、全部のらなきゃねっ!」
入場券やらなんやらをファミのお金で買うと、友里亜はまず、観覧車へと俺を引っ張っていった。彼女の性格的に、ジェットコースターに延々と乗り続けるタイプかと思ったが、そうではないらしい。
「まずは、この観覧車から、遊園地のどこに何があるのかキッチリ把握するよ!」
地図を見ればいいんじゃ……っていう言葉は、彼女のキラキラした笑顔を前に何も言えなくなった。
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