複雑・ファジー小説

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セイテンノカゲボウシEX
日時: 2019/10/15 17:14
名前: マッシュりゅーむ (ID: cZfgr/oz)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19806

こんにちは。

こちらのスレッドでは、本編から少し離れたストーリーを掲載します。

日常編やほのぼのは勿論、ifストーリーやキャラクターの過去にも触れますので皆様何卒お付き合いをば!
なお、こちらのスレッドも本編と同じく各話ごとリレー形式で進めていきます。メンバーは、本編と同じ3人です。



本編は上のリンクからどうぞ。


***

もくじ

・観光編:>>1-2

英国紳士は、モザイクの下に ( No.2 )
日時: 2019/10/15 17:12
名前: おまさ (ID: cZfgr/oz)

さて、異世界に来てしまった私だが、現在隣のロリババアと共に絶賛観光中である。
「———。」
正直、日本にいた時もあまり街歩きなどしたことが無かったから、こうして人通りの多い石畳の上を並んで歩いていることは、かなり新鮮な経験をしていることになるのか。
いずれにせよ、あまり異世界に来たという感覚にはどうもなれない。何故なのか、しばし考えた後違和感の正体にたどり着いた。

思 っ て た ん と 違 う 

そう、違うのだ。異世界とは言っても、建造物やあたりを走る乗り物は、ファンタジーというよりかはどちらかというと大正ロマンな雰囲気に近い。無理くり表現しようとするならば、スチームパンク・・・より若干新しい、みたいな?
先の違和感も、たぶん私の中での異世界像と現実とのイメージの乖離なのだろう。だからあまり、視界に入る景色も新鮮ではなかった。
「・・・街の雰囲気的に、レ●トン教授が出てきそう」
「誰じゃ、その“れいとん”とは」
「私の渾身のモザイクどこいった」
 某英国紳士の名をぼそりと呟くと、ヘイズに首を傾げられた。思った以上に感覚が鋭いらしい。
「これじゃモザイクがクソエイムだろうと何だろうと関係ないな・・・最も恐ろしい物の片鱗を味わったぜ」
「戯言の最中じゃが、到着じゃ」
 ふざけるのもこれくらいに、目線を上にあげる。

  首が痛くなる程の高層建築、というか人知を超えた大きさの建築物だ。壮大なその建築物は細部にまで意匠のこだわりが見え隠れしており、それを誇張するようにペルセウス像———のようなものが翼を広げていた。組み込まれている塔はもはや雲に手が届きそうなほどに高い。
 緻密に計算された設計は、その高すぎる塔による調和の瓦解を殺し、全方位から美しいと思わせる構造を実現するのに一役買っている。
 イメージだと、スペインのサグラダファミリアとかフランスのストラトブール大聖堂なんかに近い。

「ここは・・・」
「約千年前、始祖の〈ミコ〉たる『刻眼』———ヘデス・メーメル様が、建造を命じられた大聖堂、ブール=ドール大聖堂じゃ」
「せっ、千年!?」
「うむ。・・・とはいえ巨大な聖堂を仕上げるのに、210年を要したんじゃ。ヘデス様がお亡くなりになった後も、建造は続いた。建造の間、そして出来上がった暁よりこの国から内乱が無くなった。大聖堂の最大の功績は、戦を鎮めたことやもしれんな」

・・・すみません、スペインの皆さん。サグラダファミリアの比じゃなかった。
ていうかそもそも、サグラダファミリアは工事が途中で中止したから、作るのに百何年くらいかかっている訳で。
フル体制で工事して、それでも二百年以上かかる建物って、いったいどういう。
ただ、この聖堂は〈ミコ〉の影響力の大きさを物語っているものだとも感じた。己の死後も尚国民をまとめ、内乱を鎮めることなど容易いことではない。多分、邪馬台国の卑弥呼ですら無理なんじゃないか。
そう考えると、多少なり目の前の幼女(中身は別)に畏怖の念を感じてもいいんじゃないだろうか。思わず、胡乱げな視線を向けた。
「・・・何じゃ?」
「ううん、別に」
と—————、



「———わっ、ごめんなさいっ!」
 小さな、ローブを着た人影がぶつかってきた。咄嗟に、
「あ、いえ」
 しかし、人影はこちらに会釈することなく走り去ってしまった。
人とぶつかってしまうのは、なるほど、ここまで混みあった大通りであれば多少は仕方ない。
 しかし、人影はかなりの速度でこちらに突っ込んできたのだ。
 それに。
「あの子は・・・」
「ふむ、どうやら焦燥に駆られているようでもあった様じゃが・・」
 ヘイズは、人影が走り去った方向を見て言う。一瞬だけ、ローブの下から覗いた表情を零す。
 直後。



「———そこをどけ!道を空けろ!!」
 非常に大柄な——190センチ以上あるだろうか——男が民衆を押しのけ、血眼で迫ってきた。
「レナ!」
「ぷろっと!?」
 後ろ襟をヘイズに掴まれ、刹那私は空中遊泳を楽しむ——余裕もない。
 そうして、男の軌道から逃れると、今の状況を整理。
「今の男とさっきのぶつかった人。ここから考えるに・・・」
「追われているようじゃな」
 ヘイズは上目遣いに、真剣な眼差しで見つめる。静謐さと、責任感を孕んだ紅い瞳。
 言外に、こう、問うている。

 ————追うか、否か。

 私は、その問いに答えた。

Re: セイテンノカゲボウシEX ( No.3 )
日時: 2019/10/31 21:49
名前: marukun (ID: W3Oyo6TQ)

場所は変わり、同日深夜—町はずれにあるとある酒場に珍妙な男が現れた。
酒場のマスターは店じまいをしようと皿やグラスを洗っていた時のことだった。特に何もおかしくはなく、ただ一つ言うならばかなり酔っていた。
店に入った時点で足取りはおかしく、ふらついていた。そこからかなり飲んだ。
そこから幾何すると男はカウンター席で誰かと会話を始めた。先程まではこの男しかいなかったが、新しく入ったのだろうか。そちらを見ると先程の男ただ一人だけだった。
きっと酒の飲みすぎで半分寝ているのだろう。
こういう客は急に暴れたりするので片付けが面倒なのでやめて欲しい。
そこからまた数分、男の会話はまだ続いていた。
さすがに気味が悪くなってきた。先程から会話の内容がやけにリアルすぎる。
「どうしたんだよ、兄弟。俺たちの仲だろ?何でも言ってくれ、力になるから。」
すると、男はあたかも隣にいるであろう誰かの肩に手を回す。
「マスター!こいつも何かくれてやってくれ」
気味が悪いが、少なくとも客の願いなので断るわけにもいかず、それなりのカクテルを作り、男の隣にいるであろう誰かの目の前に置く。
すると突然グラスが浮き上がり…なんてことは置きなかった。
「んだよ〜、もう飲まねえってか?連れねえ奴になったなぁ、おまえもよ」
男は不満げにグラスを傾ける。
「お前の頼みは聞いてやる。俺たちの間には貸し借りは無しだからな」
そういった男の口調はべろべろに酔った者のとは思えないほど明瞭で、はっきりとしていた。
顔を上げると、男はいつの間にか消えており、酒の分の代金が置いてあっただけであった。不気味に思った店主は直ぐに店を閉めて、足早に家に帰った。

迫られた選択 ( No.4 )
日時: 2019/11/05 20:06
名前: マッシュりゅーむ (ID: KkB6tonB)

————追うか、否か。

 二つに一つの選択。人生の中で何度も迫られるだろう選択というのは、その人の人生を大きく左右してしまうほど影響力がある。
 
 しかし、私はこの選択には迷いはなかった。
 そして、真剣なまなざしをしているヘイズのほうに向き直り、一言。


「うん、追わないでおこう。」
「………ううん?」


 こちらも真剣な声をさせながら自分の意思を告げる。だって面倒ごとは避けたいし。あれ絶対、なんか重大なイベント発生するでしょ。
 確かにこういったイベントは、最後何かしらのプラスなことがある。例えば、実は相手が国が追っている超極悪人で、戦って倒したことによって国から多額のお金がもらえるとか、助けた人が超美少女で、好かれてしまって、あ〜、困った困った、ニヤニヤみたいな感じになったり。

 しかし私は、今のところお金が欲しいわけでもないし、自分は女だ。同性愛には興味はない。

 そう思っていると、少し困っているような顔をしているヘイズが再度尋ねてきた。
「あ〜、レナ?儂的には困った者は助けたいと思うとる。……まさかと思うが、面倒くさいなどという理由で追わないなどとは言ってはおらんな?ちゃんとした理由があってだな?」
「え?いや、めんどいからだよ?」
 即答すると、ヘイズは一瞬固まって、また再度尋ねてきた。

「あ〜、レナ?儂的には困った者は助けたいと思うとる。……まさかと思うが、面倒くさいなどという理由で追わないなどとは言ってはおらんな?ちゃんとした理由があってだな?」
「……ん?だからそうだって———」
「あ〜、レナ?儂的には困った者は助けたいと思うとる。……まさかと思うが、面倒くさいなどという理由で追わないなどとは言ってはおらんな?ちゃんとした理由があってだな?」
「あ、だから、その———」
「あ〜、レナ?儂的には困った者は助けたいと——」
「——あ〜〜!!分かった、分かったからその無表情で同じこと繰り返すのやめて!?シンプルに怖いッ!」

 まるでロボットのように、しかも生気のないような顔で何の抑揚もなく話しかけられ続け、私の心は折れた。
 そして私はたまらず声を張り上げると、ヘイズは満足そうにうなずいた。

「うむ。やはりそうじゃったか。儂も困っている者はほっとけん。さ、早速行くぞ!」
「は、はい!」
 思わず敬語にまた戻ってしまう。そして、私は駆け出したヘイズを追った。
 そして、同時にこう思っていた。


———あぁ、これが本当の〈カゲノミコ〉か。

Re: セイテンノカゲボウシEX ( No.5 )
日時: 2019/12/09 14:27
名前: おまさ (ID: XgYduqEk)

 さて、あの少年を追いかけ始めて早二分が経過した訳だが、私と隣のロリは人波を掻き分け掻き分け進んでいた。
 あの大男のように、人を突き飛ばしては行けないから、勿論速度は遅くなる。ただ、大男が少年を追いかけているから、人混みのなかでも追っ手の背中を追いかけることが出来るのは、なるほど皮肉と言えよう。
 しかしーーー、
「あんまり人波を掻き分け過ぎると、騒ぎが民衆に伝播して向こうにも気付かれちゃうんだよなー、これが」

 まぁ、国内最強の曰く付きの〈カゲノミコ〉にとっては、追っている相手が十メートル先か一キロ先かは正直なところ関係無い気もしてくる。
 ヘイズとしては騒ぎを大きくしたくなさそうだから、無駄に騒ぎを起こしてあの少年を捕まえたーーなんてことにはならないと思うが。

 そんなことを思っていると。
「ーーーレナ」
「ぅおっと!」
 その身長からは想像できない力で、ヘイズが私の手を引いて人混みの中を猛進する。街行く人にぶつかるたび「すみません」と軽く頭を下げ、ヘイズについていくこと数秒。急に視界が開ける。

 人混みの中から抜けたその様子を見、私は路地に抜けたことを自覚した。

 石畳の、狭く湿った路地を小走りに駆け抜けながら、ヘイズに問う。
「路地裏を通るのは良いけど、それじゃあの子を見失わない?」
「案ずるな、レナ。儂かて無策でおぬしの手を引いた訳じゃないのじゃぞ」
「?じゃあ、」
 そこで言葉を切り、気付く。ーーーーいつの間にか私が、ヘイズに抱えられていることに。



「舌を噛まないようにの」
「舌って、まさ・・・!?」
 前置きした瞬間、ヘイズは跳躍。軽々と私を抱き抱えて身長の五倍近くの高さまで上昇。数秒の空中浮遊を体感する。
 放物線の頂点を通過すると、重力加速度が私とヘイズを下に引きずり下ろす。そして、それでいい。
 ヘイズはオレンジの瓦屋根の上に着地すると、地を蹴って今度は横向きの加速度を発生させる。その間私は必死にヘイズにしがみつくことしか出来なかった。
「だめらこれ、おちたらひぬ、おちたらひぬ・・・!」
 尚、舌を噛んでいるため『落ちたら死ぬ』の六文字すらまともに言えていない私を見て、ヘイズはクスリと僅かに笑みを漏らすと、さらに加速。レッド●ルの受け売りだが、まさしくこのときのヘイズは「翼をさずけ」られていた。
 そんなヘイズに抱えられていた私は、口の中に舌を噛んだ時に出た血の味を感じ、顔をしかめながらふと視線を街の大通りへと向ける。
「っ!ヘイズ、あれ!」
「うむ」

 私が目立つ大男の姿を路上に視認した瞬間、ヘイズの速度が更に上がる。ちらと伺うと、彼女の赤い目は路上に向いていて。
 その目線の先を辿るとーーー例の少年の姿が。
「レナ。ーーーしっかり捕まっとれ」
「え、・・・うぅぅぃいいっいええええぇぇぇぇっぇぇぇぇあえあああいああああっ!!?」

 言い置いた瞬間、ヘイズの体は重力と脚力によって二乗に加速。下向きに、カタパルトじみた速度で降下した。
 たぶんこれ、富士急ハ●ランドのドド●パよりも体感速度速いんじゃないか。

 半ば目を回した状態の私を担ぎ、ヘイズは路地裏に着地すると、
「レナ、放しちゃる」
「ぅわ・・・おっ、とっと」
 なんとかバランスを保ち、お世辞にもスマートとは言えない着地をする。その様子を見届け、ヘイズは路地裏の入口に小走りで向かい、立ち止まった。
 そしてーーー、


「!?」
「捕まえたのじゃ」
 路地裏に駆け込んできた少年の額に手を翳し(何らかの術式だろうか)、気絶させた。
 ヘイズはそのまま、ぐったりと力が抜けたか細い身体を抱き上げ私に預ける。軽い。

 「少し、事情を聞こうかと思っての」
 
 私とヘイズは、少年を抱えたまま、近くにあった寂れて人気の無い小さな教会に足を運んだ。















ーーーその背後で。

「ーーーちっ、もうちょいだったってのによぉ」

例の大男が唾を吐き捨て、「まあ、でも」と言葉を継ぐと、






「ーーーーあの教会だったら、誰にも見られずに終わらせられそうだな」

 その呟きを、聞くものは誰もいない。




Re: セイテンノカゲボウシEX ( No.6 )
日時: 2019/12/29 09:22
名前: マルくん (ID: W3Oyo6TQ)

教会のドアは鎖で締められており、中には入れそうにもなかった。
「ヘイズ、ここは無理そうだし一回戻る?」
私は少年を抱えたまま、教会を背にして辺りを見渡し他に入れそうで、人のいなさそうな建物が無いか探していると後ろから「ガチャン」と重い鉄製の物が落ちる音がした。まさかとは思うが振り返る。
そして、案の定鎖が真っ二つになり地面に落ちていた。
「ほれ、開いたぞレナ。」
ヘイズはそれだけ言うとドアを開けて、中に入る。確実にこれは不法侵入だろう。でもここは日本でもない。どんな法律があるのかもわからない。
(考えるの疲れてきた。発覚して初めて犯罪になるって言うし、もういいや)
レナは考えるのを諦めて、ヘイズの後を追う。
教会の中は薄暗く、窓から刺す太陽の光の筋にホコリが反射してキラキラと宙を舞うのがよくわかる。
ヘイズは礼拝堂の長いすのホコリを払い、少年を寝かせるように言う。
「ほれ、はようせい。いつまで抱えとるつもりじゃ。」
私は急いで抱えたままの少年A(?)を椅子にそっと寝かせる。起こさないよう、慎重に。
そっと少年を横に倒し、ヘイズの斜め後ろに移動する。
ヘイズは訝し気に私の顔を覗き込むがまあいいといわんばかりに、フンと息をつく。
「目を覚ますぞ。」
それだけ言うとヘイズは少年の額に手を当てる。
「ねえヘイズ、それやんなきゃ目覚めないの?」
ヘイズは少年の額に手を当てながら、当然とばかりに言う。
「まあな。わしが力尽きん限り、自然解除はされん。」
コワッ…。それイコールずっと寝たままってことだよね?
ぶるっと身震いをさせられる。そんな目にはあいたくない、と。
「さて、目覚めるぞ。」
術の解除を終えたヘイズは、少年の額から手を放す。
さて、何があったのか聞きだしますか…。     メンドクサイナ……。


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