複雑・ファジー小説

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生卵男 完結!
日時: 2020/04/29 12:41
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

待望?の新連載です!今回は子供向けの推理ものです!

Re: 鮮血の男爵 ( No.6 )
日時: 2020/04/24 18:33
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

「おはよう。目覚めはどうかね」
「最悪に決まっているわよ」
「だろうな。だが、君はこれから彼女と共に最悪な日々を何度も迎えることになるんだ。今のうちに慣れていた方がいいと思うがね」
「あんた、本気でそう思っているわけ?」
「むろんだよ。君たちはずっと私と一緒に暮らすんだ」
「吐き気がするわよ」
「では、朝の挨拶といこうか」

花ちゃんの両頬を掴み、口を接近させていきます。
彼女は恐ろしさのあまりぎゅっと目を瞑りました。

「待って。やるなら、私にしなさいよ」
「生意気な子だ。だが、それもまた良い」

善子ちゃんのことが気に入ったのか、男爵は彼女の唇にキスをしました。
息が止まりそうなほど濃厚なもので、たいへん気持ちが悪いのですが、それでも彼女は花ちゃんがキスをされるよりかは平気だと思いました。自分は一度されているのだから大丈夫、けれど、友人に手を出させるわけにはいかないと考えたのです。永遠に続くかと思われるほど長い接吻の最中、部屋の外から数人の靴音が聞こえてきました。慌てて善子ちゃんの唇から顔を放して振り返ると、勢いよくドアが開いて数名の特殊部隊がなだれのように飛び込んできました。
銃や盾や警棒を構えています。

「血脇赤一郎、お前を逮捕する!」
「まさか、蝙蝠たちをかいぐくってくるとはな」

予想外の登場に男爵は両手をあげて降参のポーズをします。
花ちゃんと善子ちゃんは特殊部隊に救出され、彼らが守りを固めます。

「何故、この屋敷に侵入できた」
「あんた、隙だらけなのよ」

善子がズボンの後ろポケットから取り出し見せたのはスマホでした。

「昨日の晩、あたしがスマホで警察に屋敷の情報を送っていたの。
蝙蝠? あんなのは催涙弾を使えば余裕よ。今頃、ぐっすり夢の中じゃないかしら」
「手錠をかけられた状態でどうやってスマホを操作したのだ」
「手錠くらい簡単に外せるわよ。スマホ操作のために少し外して、また自分でかけたのよ。あんたの目を誤魔化す為にね」
「信じられん中学生だ」
「あたしのキスを奪った代償は思いってことよ!」

宿敵を指さした善子さんは溜飲が下がっていく思いでした。
友人は助かり、男爵には手錠がかけられました。ですが、彼女にはまだ仕事が残っていたのです。

「警官さんたち、あなた達に男爵の秘密を教えておく必要があるわ。よく見ていなさい」

少女が男爵に近づくと、顎のひげをむしり取り、顔の側面に手を当てますと、一気に表皮をはぎとってしまいました。
すると表皮だと思われたのは精巧に作られたマスクで、本当の顔は切れ長の瞳が特徴の美しい女性でした。

「男爵って女の人だったの!?」

花ちゃんが驚きますと、善子さんは鼻を鳴らしました。

「そうよ。こいつに触れた瞬間、匂いとか肌の柔らかさに違和感を覚えたの。
胸はサラシでも巻いて薄く装っているんでしょ」
「お嬢ちゃん、よくも私の最大の秘密を明かしてくれたね」
「正体を隠すためとはいえ、よく男に変装できるわね」
「かわいい女の子をコレクションできるなら、どんな手でも」
「その瞳もカラーコンタクトね。吸血鬼じみた格好で人を惑わすなんて、どうかしているわ」

少女が軽蔑の目を向けますと男爵だった女は喉の奥から妙な笑い声を上げました。

「まさかただの女子中学生にここまで追いつめられるとは思わなかったわ。
でも、ここで参るような私じゃないわよ」

見ると、いつの間にか手錠が外れていました。警官たちが取り押さえようと行動を開始するよりも早く、服の懐に手を伸ばし、二本の火のついたダイナマイトを見せつけます。

「私と一緒に吹き飛んじゃいましょう。そして人生を幕引きするのよ」
「まずい、逃げるぞ」

急いで少女たちを連れて屋敷を飛び出す特殊部隊。直後に火柱が上がり、屋敷は爆音と共に跡形もなく崩壊してしまいました。
瓦礫の山と化した屋敷跡から蝙蝠の死骸がいくつも沸いてでてきましたが、男爵の身体だけはどれほど探しても見つかることはありませんでした。
爆発の影響で骨の欠片さえ残さず消し飛んだとも推測できます。
けれど、もしかすると男爵はどこかで生き延び、また再起を誓っているのかもしれません。
鮮血の男爵と少女たちの戦いは、こうして幕を閉じることとなりました。
少なくとも、この街にお呼びでない訪問者が現れることは二度とないでしょう。


おわり。

Re: 鮮血の男爵 完結! ( No.7 )
日時: 2020/04/24 21:35
名前: ウィオ (ID: iuL7JTm0)

こちらでは初めましてです。ウィオです!


鮮血の男爵が渋くてカッコよかったです!
紳士的な口調や、天井に立ったりしたところなどが素敵です!

アニメ好きの小泉ちゃんが可愛くて、
男爵に立ち向かった友達思いで勇敢な善子ちゃんも可愛くてカッコよかったです!

男爵と相手できた善子ちゃん、強かったです。


面白かったです!

では!

Re: 鮮血の男爵 完結! ( No.8 )
日時: 2020/04/25 05:40
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

ウィオさんへ
こちらでははじめましてですね。感想ありがとうございます!
善子ちゃんは強かったです!男爵を気に入ってくださり嬉しいです!

Re: 生卵男 ( No.9 )
日時: 2020/04/28 07:41
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

高校二年生の凛さんは、息を切らせて勢いよく教室の扉を開けました。

「谷原凛。もう一時間目がはじまっているぞ。また遅刻か」
「先生、不審者! 不審者が出たんです。助けてくださいっ」
「遅刻したことの言い訳ならあとで聞いてやるから、まずは席につけ」
「本当なんです。信じてください!」
「わかった、わかった」

教壇に身を乗り出して訴える凛さんでしたが、先生は生返事です。
これ以上言っても無駄だと感じた少女は、自分の席につきました。
ですがその表情は暗く、時折、身体を震わせています。
その様子を見て、隣に座っていた真紀子さんはただごとではないと思いました。

「凛、大丈夫?」
「……怖い、怖い……」
「先生、谷原さんを保健室に連れていきます!」
「おう、わかった」
「凛、一緒行こ?」
「……ありがとう」

蚊の鳴くような小さな声でお礼を言って、真紀子さんに連れられて保健室へ向かいました。

保健室のベッドで寝かせ、真紀子さんは凛さんの手をとっていいました。

「授業が終わったら、また来るから」
「うん」

静かに頷く凛さんに申し訳ないと思いながら、少女は教室に戻っていきました。ひとり残された凛さんは枕に頭を乗せ、天井を見上げます。
保健室の白い天井を見続けていると、先ほどの不審者の顔が蘇ってきます。
瞼の裏に焼き付くような、一度見たら忘れられない男の姿。
とっさに凛さんは頭まで布団をかぶります。
これ以上見続けては、気がおかしくなってしまいそうだったのです。
布団の中は蒸し暑く息苦しいのですが、それでも不審者を思い出すよりはマシでした。

Re: 生卵男 ( No.10 )
日時: 2020/04/28 16:51
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

それから、どれぐらい時が過ぎたでしょう。
彼女の耳元で声が聞こえます。

「凛、凛!」
「ん……」
「よく寝ていたわね」
「真紀子。今、何時?」
「もう放課後よ。おなかすいたでしょ。ハイ、これ」

友達が渡したのは購買部で買ってきたであろう、パンと牛乳でした。

「ありがとう」

真紀子さんの顔を見た凛さんは、安心もあったのか急にお腹がすいてきました。それらをむさぼるように食べ終わりますと、真紀子さんが言いました。

「凛、良かったら何があったか教えてくれない?」
「すっごいへんな話だよ。きっと、嘘だと思うよ」
「私、凛の言うことなら何だって信じるよ」
「真紀子」

真紀子さんの笑顔に安心し、ゆっくりと登校時の出来事を話しはじめました。

「今日、目覚まし時計が故障していて、いつもより三十分遅くに目が覚めたんだ。
それで急がなきゃって、通学路をダッシュしていたんだよ。そしたら男に声をかけられたの。道を教えてほしいって言ったから、知っている場所だったから教えてあげたのよ。そしたら帽子をとって、お礼を——ウッ」

その時の光景を鮮明に思い出した凛さんは猛烈な吐き気に襲われました。
胃から食べ物がせりあがってくるのがわかります。
衝動に任せて吐き出そうとするのを、真紀子さんが急いでもってきたバケツに食べたものをすべて戻してしまったのです。
背中をさすり、友達を落ち着かせようとする真紀子さんですが、話を聞いているうちに自分も怖くなってきました。
食べ物を戻すほどの恐怖を抱かせる存在が、街のどこかにいるかもしれないのです。もしかすると、その怪しい男は学校に忍びこんでいるかもしれません。
想像を働かせると恐怖は倍増していきます。真紀子さんはいてもたってもいられず、すぐに凛さんを家に連れて帰ることにしました。
これ以上、親友のつらい姿を見たくなかったのです。


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