複雑・ファジー小説

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生卵男 完結!
日時: 2020/04/29 12:41
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

待望?の新連載です!今回は子供向けの推理ものです!

Re: 鮮血の男爵 ( No.1 )
日時: 2020/04/24 08:42
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

中学校の帰り道、小泉さんは通路を駆けていました。急いで帰らなければ、好きなアニメの放送時間に間に合わないのです。住宅街を駆け抜け、曲がり角を曲がると小泉さんの家です。彼女は肩で息をしながらも、止まることなく走ります。
そして曲がり角を曲がったところで、勢いよく誰かにぶつかってしまいました。
尻餅をついていますと、白い手袋をはめた手がにゅっと差し出されました。
顔を上げて見ますと、そこにはひとりの紳士がいました。

「大丈夫かね」
「は、はい」

小泉さんは少し引きつった笑みを浮かべて、紳士の手を取ります。というのも、彼が風変わりな格好をしていたのです。真っ赤なシルクハットに赤色の燕尾服という魔術師のような服装をして、髪までも燃えるような赤に統一しています。
昼間の風景には紳士の外見はあまりにも浮いていました。ですが、立ち上がった少女はぺこりと軽く頭を下げて、そそくさと立ち去ってしまいました。
紳士は確かに奇抜ですが、彼女にとってはアニメのほうが大事なのです。
小泉さんの後ろ姿をしばらく見ていた男は、やがて口元に怪しげな笑みを浮かべました。どこからどう見ても不審者のような怪人物はいったいどこからやってきたのでしょうか。
このお呼びでない訪問者は何が目的でこの街へ来たのでしょう。

Re: 鮮血の男爵 ( No.2 )
日時: 2020/04/24 17:20
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

「鮮血の男爵?」
「うん。なんでもへんなオッサンが引っ越してきたんだって」

数日後、小泉さんのクラスでは街の噂でもちきりになっていました。なんでも、街の外れに昔の西洋風の屋敷を立てて住み着いたものがいるというのです。
三角屋根も壁も全てを赤一色で塗り固められた色と主の服装から、少年少女たちは「鮮血の男爵の城」と呼んでいました。彼の赤色がまるで血のように見えるので、自然とそのように名づけられました。
最初は噂話に興味が無かった小泉さんですが、小耳に挟むうちに噂の張本人が以前に出会った怪しげな男だと気づきました。
あの時は尻餅をついた自分を助けてくれたけど、怖い外見だし、あの家には近づかない方が賢明だ。小泉さんはそのように考え、できる限り噂を聞かないように過ごしていました。

近年はスマートフォンが開発されて、歩きスマホが社会問題になっていますが中学生でも持つようになった人が増えたとはいえ、まだまだ人数は少ないのです。そういうわけで中学生は歩きスマホよりも歩き読書をしている子供が多いのでした。小泉さんも例外ではなく、今日借りてきた小説を、家につくまで我慢できないと歩きながら読み始めます。そんなことをすれば、当然視野が狭くなるのですが、物語を読むのに夢中でそのような発想は小泉さんの頭にはありませんでした。突然、大きなブレーキの音が耳の中に飛び込んできて、彼女は本の世界から現実へ引き戻されました。見ると、自分は横断歩道の真ん中にいて、横隣りには真っ赤なスポーツカーが急停止しています。ここにきて、小泉さんはようやく自分は車に跳ね飛ばされる寸前だったと悟り、顔から血の気が引いていきます。車のドアが真上に開くと、中からあの紳士が出てきました。
紳士は靴音を鳴らし、こちらに向かっていきます。そして、彼女の目の前で足を止めました。紳士がずっと背の高い男なこともあり、小泉さんは完全に萎縮してしまいました。怒鳴られるのを覚悟しましたが、それでも恐怖で足が震えてしまいます。

「あ、あの……ご、ごめんなさいっ!」

シンプルに謝罪してちらりと上目遣いをしますと、紳士の赤眼が冷たい輝きで小泉さんを見下ろしています。プルプルと全身を震わせ、本を抱きしめながら立ち尽くしていますと、紳士は軽く少女の頭を撫でました。

「次からは気を付けるんだよ。でも謝れたのは偉いね。ご褒美をあげよう」

鮮血の紳士は胸のポケットから一本のバラの花を取り出しました。例外なく、この花の色も赤です。そして小泉さんの鼻先に近づけます。
その美しさにうっとりとしていた少女は、花の匂いを嗅ぐなり意識が遠くなり、ふらりと倒れこんでしまいました。
まるで見越していたかのように紳士は少女の身体を支え、お姫様抱っこで車の中へと連れ込みます。

「いい子だね。わたしが家まで送り届けてあげるよ」

一見すると親切な台詞でしたが、その目は笑っていません。
そして小泉さんの家とはまるきり逆方向に車を走らせてしまったのです。
そうです。この怪しげな紳士はどこへともなく、小泉さんを連れ去ってしまったのです。
ああ、ごく普通の女子中学生は鮮血の男爵の手により終わりを迎えてしまうのでしょうか。
それとも、誰かが助けに現れるのでしょうか。

Re: 鮮血の男爵 ( No.3 )
日時: 2020/04/24 17:19
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)



事件から三日が経過しましたが、小泉家では大変な騒ぎとなっていました。可愛いひとり娘が誘拐されたのですから当然の結果といえましょう。小泉さんのお母さんは警察に連絡し、彼女の行方を捜索してほしいとお願いしました。警察も尽力することを約束し、まずは監視カメラの映像をチェックすることからはじまりました。学校から家までにいくつか設置されている監視カメラに犯人の手がかりが映っているかもしれないからです。
慎重に映像を確認していく警官たちですが、そのうちのひとりが声を上げました。

「この映像を見てください!」
「こいつは!?」

警官が見つけたのは鮮血の男爵が、今まさに小泉さんを車の中に運び入れようとしている姿でした。それを確認し終えた警官たちは腕組みをしてうなります。

「顔を隠そうともしないとはなんという大胆な奴だ。許せん」
「車のナンバープレートから住所を特定します!」

すぐに捜査網が張られ、鮮血の男爵の西洋屋敷にはパトカーで包囲されてしまいました。隊長がスピーカーで呼びかけます。

「君は包囲されている。おとなしく少女をこちらに引き渡したまえ」

すると開けられている窓から、こんな返事がしました。

「警官諸君、私は逃げも隠れもしない。だから、私の屋敷に入ってきたまえ、歓迎したいのだよ」
「うぬ。どこまで思い上がった奴だ。その鼻っ柱をヘシ折ってやる」

鼻息荒く、隊長と一緒に屋敷の中に突入します。もちろん下手に犯人に刺激を与えては小泉さんに危害が及ぶ可能性もありましたが、ここまで犯人に堂々と挑戦されて易々と引き下がったのでは警察の沽券にかかわると彼らは判断しました。懐中電灯で暗い屋敷を照らします。入り口から入りますと、いきなり長テーブルが目につきます。昔の王様や貴族などが愛用した、あのやたら長いものです。
ですが、肝心の男爵の気配がありません。二階にいるのかと、らせん階段をのぼろうとした時、どこからともなく低音の笑い声が轟きました。

「どこだ、おとなしく姿を現せッ!」

隊長が怒鳴りますと、紳士は穏やかな口調で告げました。

「何を言っているのかね。私はずっと君たちに姿を見せているではないか」
「嘘を吐くな」
「やれやれ、そこまで言われると心外だ。よかろう、間抜けな警官諸君。
上を見たまえ」

言われた通りに上を見ますと、天井にまるで蝙蝠のように男爵がぴたりと逆立ちしているではありませんか。しかも、普通の地面であるかのようにスタスタと自由自在に歩いています。天井から壁を歩き、地面に降りると、頭を下げて恭しく挨拶をします。

「ようこそ、我が屋敷へ」
「冗談はやめろ。お前を少女誘拐の罪で逮捕する」
「フフフフフフ、それができたらの話ですがな」

警官が取り押さえるよりも早く、男爵は指を鳴らしました。
すると、天井から無数の蝙蝠が飛んできて警官たちに襲い掛かります。

「君たちでは私を止めることはできんよ」

阿鼻叫喚の地獄絵図を目の当たりにしても、男爵は顔色ひとつ変えません。
この男には良心というものが存在するのでしょうか。警官たちがひとり残らず倒れ伏すと、男爵は踵を返します。

「薄汚れたゴミは捨てるに限る。警察のみなさん、お引き取り願いましょう」


男爵は警官たちを一瞥したのち、つぶやきました。

「私のコレクション収集の邪魔はしないでいただきたいものだ……」

Re: 鮮血の男爵 ( No.4 )
日時: 2020/04/24 17:22
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

それからどれぐらいの時間が経過したでしょう。警官たちが目を覚ましますと、男爵家はすっかり扉を閉めていました。

「どうなっているんだこの家は。まさか蝙蝠が出てくるとは」
「催涙弾を使おうにもあれほど大量では命中しませんね」
「まずいぞ。あの変態野郎を放っておけば、犠牲者が増える」
「隊長、小泉さんはどうでしたか」
「残念ながらわからなかった。家族にどう弁解すればいいか……」

元はといえば犯人ときちんと交渉せず実力行使で突入したのが失敗なのです。
隊長は自分の軽率な行為を恥じました。
ですが同時に冷や汗を流し。

「まさかこの二十一世紀に劇場型の犯罪を行う大バカ者がいたとはな」
「どうやって攻略したら良いものでしょうか」
「うるさい。わしも考えているんだ!」

部下に痛いところを突かれ、思わず怒鳴ってしまいます。
結局その日は成果を出せぬまま一日が終了してしまいました。

普通の犯人ならば警察に見つかった時点で逃走するのが常のはずです。けれど、この鮮血の男爵は逃げるどころか屋敷で警察を待ち受け、挑んできた彼らを返り討ちにしてしまいます。彼らはもっと人数を増やし、装備も強固にしようとも考えましたが、それはできない相談なのです。というのもこの事件が全国ニュースに流され大規模なものになれば、それだけ犯人を喜ばせるだけだからです。
なのでこの事件はできる限り小さい規模で解決しなければならないと、街の警察は考えていました。しかし、相手は人間なのか化け物なのか得体のしれない鮮血の男爵なのです。男爵が送信する動画で小泉ちゃんの無事は確認できますが、それさえもいつまで保証されるかわかりません。事態は一刻の猶予もないのに、有効な策を見いだせないまま、一日、また一日と過ぎていくばかりです。

土曜日の朝のこと。暗い気持ちの小泉家のインターホンが鳴らされました。
誰かと思ってお母さんが応対に出ますと、扉の向こうに立っていたのは小泉さんの友達の小林善子さんでした。

「はなっちがへんな男爵に誘拐されたっていうから飛んできたよ。叔母さん、あたしがはなっちを助けに行ってくるよ」

はなっちとは小泉さんのあだ名で本名が小泉花なのではなっちというわけです。
小林さんは十代の少女にしては迷彩色の服に帽子、ポシェットの中にはスタンガンを忍ばせた、何やら危ない格好をした少女です。小林さんは中学生にしては珍しく、何よりも格闘を愛していました。武器も大好きで日頃から危険な武器をコレクションしていると、同級生の間では噂され敬遠されていました。
けれどおとなしく優しい花ちゃんは彼女を毛嫌いせずに優しくしてくれたので、「はなっち」とあだ名で呼ぶほど、仲の良い関係でした。

「友達が困っているんなら、助けに行くのがあたしの流儀さ。じゃあ、ちょっと行ってくるよ」

一方的に話して、猛ダッシュで男爵の家へ駆けだす小林さん。
その様子に花ちゃんの母は心配で仕方がありませんでした。

「お願い善子さん、無理だけはしないで……」

Re: 鮮血の男爵 ( No.5 )
日時: 2020/04/24 17:24
名前: モンブラン博士 (ID: daUscfqD)

善子さんが男爵家に到着したときには警官たちは引き払っていました。

「きっと警察は本部かどこかで対策を立てているに違いないわね」

彼女は安易に突入することはせず、屋敷から少し離れ、外から様子をうかがってみることにしました。周辺は林になっており、屋敷の他に建物はありません。

「仲間はどうなのかしら」

彼女は高性能の双眼鏡を駆使して車庫などを確認しますが、車は男爵の一台しかありません。つまり、この犯行は単独によるものであると分かります。
外から見た様子だと侵入できる箇所はいくつかありそうです。
善子さんは意地悪そうな笑みを浮かべ、ぽつりと言いました。

「男爵さん。あたしの大事な友達を返してもらうから待っていなさい」

一旦家に帰った善子さんは自室で計画を立てます。
まず、犯人の行動を把握しなくてはなりません。

「男爵ははなっちを誘拐したわけだけど、別に身代金が目的ではなさそうね。
だとすると、少女好きの変態って線が高いわね。そうなると、そのうち他にも犠牲者が出るかもしれない。今は警官が家にいないから、隙を見て屋敷を開ける確率が高い……」

歩き回りながら男爵の先の行動を予測し、先手を打つべく頭を巡らせます。

「噂によると、あの家には蝙蝠が無数にいるらしいわね。それも対策立てなきゃ……」

全ての準備が終わったのは午後五時でした。時計を見て、彼女は焦りました。

「夜になれば蝙蝠の活動が活発になる。仕掛けるなら今しかない!」

少女は屋敷の裏から周りますと、二階のバルコニーに鍵爪付きのワイヤーを投げ、それを頼りにしてどんどんと上に登っていきます。とても一介の女子中学生とは思えぬ行動力です。監視カメラもないので難なく屋敷に上がることができた善子さんですが、ここからが勝負の分かれ目になるのです。

「警官の話によると、蝙蝠たちは食堂から襲ってきたっていったわね。
ここは裏だから奴らは手薄のはずよ」

それでも足音を立てないように、慎重に屋敷を見て回ります。それらをスマホに収め、万が一のことがあれば送信ボタンを押して情報を多くの人に共有しようと彼女は考えました。行動を起こす際にはもしものことを頭に入れておくことが大事なのです。

バルコニーから屋敷に入りますと、最初の部屋には誰もいません。
幸いなことに外から鍵はかけられていないので、簡単に部屋を出ることができました。すると左右に部屋が二部屋ずつ、合計四部屋あるのがわかりました。
そのどれかに花ちゃんがいるのです。しかし間違えた部屋を選べば、男爵と遭遇してしまうかもしれません。自然と額に冷たい汗が流れます。
そっと右手前の部屋のドアに触れますと音もなく扉が中開きとなりました。
部屋には椅子に座り、純白の花嫁衣裳に身を包んだ花の姿がありました。

「善子ちゃん!」

友人の歓喜の声に善子さんは慌てて自分の唇に指をあてるジェスチャーをします。その意図を読み取り、口を押えた花ちゃんに近づき、小林さんは彼女の手を取りました。親友は見つかりました。あとはここから逃げるだけです。安心させるように花ちゃんに微笑み、扉の方を向いた善子さんの顔はこおりつきました。
なんと、いつの間に気づかれたのでしょうか、男爵が扉の前に立ちはだかっています。

「飛んで火にいる夏の虫とはまさに君のことだな。まさか本気でここから逃げ仰せられるとでも思っているのかね。中学生が、大人をからかっちゃいかんよ」
「あんたの挑発には乗らないよ。あたしははなっちを連れて帰る!」
「最近の子供は威勢がいいなあ」

さらりと告げたかと思うと、善子さんのすぐそばの壁にナイフが突き刺さりました。なんでもないかのように男爵が投げたのです。驚くべき速度と正確性です。
もしも今のが自分に当たっていたら。想像するだけで背筋が冷たくなります。
けれど彼女は友人を背に庇い、男爵と真っ向から対峙します。

「男爵、なんであんたはこの子を連れ去ったんだよ」
「決まっているじゃないか。可愛いからだよ。私は可愛い女の子が三度の飯よりも大好きでねえ」
「この変態。だからあんたは独身なのよ」
「独身で結構。孤高と呼んでくれたまえ」
「ふざけるな。あんたは負けるんだ。警察とあたしにな」
「無能な警察と生意気な小娘のタッグが何をできるというのかね」
「できるさ」
「ほほう。それでは私と戦ってみるかね」

男爵は腰の鞘から長剣を取り出します。負けじと善子さんもスタンガンを構えます。

「二十一世紀の決闘ということか。面白い戦いになりそうだ」
「あんたをバチバチ言わせて消し炭にしてやるわよ」
「では、私は君をハチの巣のように穴だらけにして標本にしてやろう」

ふたりの戦いがはじまりました。スタンガンを命中させようとする善子さんに、剣で貫こうとする男爵。リーチがある分、男爵が有利な立ち回りを見せ、少女は最終的にはスタンガンを弾き飛ばさせ、喉元に剣を突き付けられてしまいました。

「では、約束通り貫かせてもらうぞ」
「やめてぇ!」

かん高い叫び声をあげたのは花ちゃんです。
すると男爵は彼女を一瞥し、小林さんに視線を戻します。

「良かったな。友人のおかげで命拾いをしたようだ」

地面に落ちたスタンガンを拾おうとする少女の手を靴底で踏みつけ、服を掴んでむりやりに立ち上がらせます。そして顔を接近させ、唇を奪います。
口により息ができなくなる悔しさと屈辱で涙目になりながら、男爵の背を殴りつける善子さん。彼女の手が男爵の頬に触れました。そのとき、善子さんは本能的な違和感を覚えました。
この男は何かおかしい。気づいた時には唇を放され、地面に押し倒され、手錠をはめられ寝転がらされていました。

「屈辱的だっただろう? 君は朝までこうしているんだ。私に逆らったことを後悔しながら朝を迎えるがいいさ」

高らかに笑い、部屋を去っていく男爵。残されたのはふたりの少女です。
花ちゃんはすぐに善子さんに駆け寄り、彼女の手錠を外そうとします。

「善子ちゃん、私のことはもういいから逃げて。このままだと危ないよ」
「何を言っているのよ。友達を置いて逃げることなんてできるわけないでしょ」
「でも、男爵は強いし」
「ノンノン。これも作戦よ。アンタは気づいてなかったかもしれないけど、あの剣は偽物よ」
「えっ……!?」
「一見鉄に見えるけど、ゴム製なのよ。だから私を貫けやしないわ」
「じゃあ、キスされたのも作戦?」
「いや、アレはちょっとミスったけど、でも大きな収穫を得たわ。
男爵の最大の秘密を掴んだ」
「え!?」
「アンタにだけ教えてあげる。っていうか他に教えられる人いないんだけどね。
いい? 男爵は——」

ゴニョゴニョと小声でささやかれた衝撃の事実に、花ちゃんは目をまん丸に見開きました。一体、男爵にどんな秘密があるというのでしょうか。そして捕らわれの身となった善子さんは逆転に策はあるのでしょうか。


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