複雑・ファジー小説

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ボディーオペレーション 短編
日時: 2021/08/11 00:18
名前: 梶原明生 (ID: iTqIkZmq)

あらすじ               新宿署管内で起こっている奇怪な連続自殺案件は、ただの偶然で片付けたい本庁側と、殺人事件ではと疑惑に思う所轄とで軋轢が生じていた。そんな中、ネットの書き込みに「まじ警察ムカつく。ボディーオペレーション様、どうか殺して。」「暴走運転の爺いマジ殺して。」と書いていたために、ボディーオペレーションと名乗る男が犯行予告を打ち出した。新宿署の寺川刑事は何としても阻止しようとするが、警察官は50人以上が拳銃自殺をはかり、犯罪者もまた、寺川の目の前で次々飛び降り、自傷自殺を図って果てる。一体なにが起こっているのか。寺川にある女性からこんな話を聞かされる。「ボディーオペレーションとは私が開発した人体操作装置のこと。その装置を奪われた。」かくして寺川は彼女と事件の真相に迫っていく。近未来に起こりうるマッドサイエンスアクション。

Re: ボディーオペレーション 短編 ( No.3 )
日時: 2021/09/02 14:18
名前: 梶原明生 (ID: k5z4h8lv)

「神と悪魔」・・・「やめろーっ。」寺川は必死で止めようと咄嗟に腕を抑えるが、抵抗虚しく目の前で頭を撃ち抜く警察官。血飛沫が寺川の顔を舐めた。「うわっ。」それでも自殺は止まらない。「袈裟さんっ拳銃を奪って。」「わ、わかった。」一人を救えても、また一人、また一人と罪なき警察官が頭を撃ち抜いてしまう。「何故だっどうして止まらない加持さん。バンドもしてないのに。」叫ぶ寺川に加持は口を手で押さえながら驚愕する。「まさかそんな。私が不可能と思っていたた端末を使ったアプリ操作・・・ハッ。」そうしている間に木田は裁判所の階段近くの手摺りに手をかけていた。「危ないっ」警察官の方に気を取られたせいか、木田が全くのノーマークだった。寺川が手を差し伸べるも、時遅し。二階から下階に真っ逆さまに飛び降りた。「そんな・・・」もはやどうすることもできなかった。そんな時、加持のスマホに着信が。「はい。境内・・・」「ああ、久しぶりだな。相変わらず綺麗な声だ。君が来ると思ってたよ。どうだい、君より私が優れている事がこれで分かったろ。科学の進化のためには犠牲は付き物だ。君は反対したが、そのせいで私より遅れを取ったね。」救急車がサイレンを鳴らしながらやって来たが、それは袈裟に任せて加持走り寄った。「祈祷からですね。」「は、はい」むしり取るようにスマホを取る寺川。「テメーどういうつもりだ。」「おやおや,誰かと思えば刑事さんかい。私の実力はわかったろ。蔑ろにした連中に私の価値がどれほどのものか理解させなきゃいけないからね。」「勝手に人の命奪っておいて価値もへっぱくれもないだろ。」言いつつも寺川は辺りを見回した。それらしい会話してる奴が、この窓から見えるはずだと。「いたっ。」思わず呟いた。清掃員の姿をした祈祷が。「祈祷っ。」怒りに任せて走り去る寺川。外の清掃員姿の男は速攻で逃げるのだが。「何、あいつただの元研究員か。」大体の逃走ルートは頭に入っている。しかし祈祷はその予想を遥かに上回っていた。「バカな、この身のこなしといい,走る速度といい、まるで・・・」と思った瞬間、タクティカルナイフが鼻先数センチのなところを擦り抜けた。戦士の構えになる寺川。「ほう、刑事さん、逮捕術だけじゃないらしいね。俺と同じSの臭いがする。」「何のことだっ」言ってる間にも鋭い格闘戦は枚挙にいとまないくらい行われている。拳銃を出そうものの祈祷の手のひらで弾き飛ばされた。「惚けなくてもいいんだよ刑事さん。噂に聞いたことはある、各企業や各機関にスパイをSは送り込んでいるとね。所轄にも忍込ませておけばいざと言うとき役に立つからね。」「「うるせぇーっ。」タックルを食らわすが、肘打ちを食い倒れこむ寺川。次の瞬間消えていた。「クソ、どこ行った祈祷。」・・・続く。

Re: ボディーオペレーション 短編 ( No.4 )
日時: 2021/09/16 01:25
名前: 梶原明生 (ID: UcGUlfNK)

「咆哮」・・・検証は終わり、負傷しながらも救急隊員の応急処置以外拒む寺川。解放された加持が出てくる。「寺川さん、大丈夫ですか。」「ええ、しかしながら貴女に聞きたいことがある。」その様子から、怒り混じりの質問なのは目に見えてわかる。「あの時奴が初めて貴女に電話して来た時。境内って呼んでましたよね。何故ですか。」「そ、それは・・・大学の同期で研究仲間でしたし。」「違うな。あなた、あの男の恋人だった。違いますか。」目を逸らす加持。「やっぱりね。まだ話していないことあるんじゃないですか。」加持は渋々話しはじめた。それによると、盗まれたのではなく彼女自身が研究資料を提供していたこと。半分は社会実験と称して手を貸していたことなど。「でも、まさか殺人まで犯すとは知らなかったんです。本当です。てっきりイタズラ程度の実験と思ってたんです。」無言になる寺川。その後護衛付きで自宅マンションに帰された加持。その後も祈祷に対して緊急配備が敷かれ、捜査員は延300人を超える人員を出して、各所轄からも応援を動員して犯人の捜索に当たったものの以前行方は掴めなかった。喫煙所で痛々しくマルボロを吸う寺川がいた。袈裟が入ってくる。「大丈夫か。」「ええ、これくらいで壊れやしませんよ。」「無理すんな。今お前の後輩の六道が追ってる。少しは後輩に任せて、病院にでも行った方が・・・」「袈裟さん、俺の性格知ってるでしょ。」「そうだったなすまん。しかし妙だな。何で俺とお前と六道だけかからなかったんだ。」「わかりませんよ。朝には加持さん含めて調べないことには。」「だな。・・・ところで話しは変わるが、昔から気になってた事があるんだ。お前、22歳まで自衛官だったんだよな。しかも習志野の空挺団。その後は4年間ニートで引きこもり。一念発起して今度は警察官に。交番勤務を二年経験した後千葉県警刑事課配属。30歳まで新人刑事を経験して後、ここ新宿署に転属してきた。その頃からずっと引っかかってたんだ。空挺団にいたお前が何でいきなりニートなんかに。その間確かに空白だが、俺の長年の刑事の勘がお前がニートじゃなかったって臭いをぷんプンプン嗅ぎつけてんだよ。ニート期間の間どこで何してた。」「またその話ですか。」「惚けるなよ。お前、Sだろ。」「え、・・・」「陸自特殊作戦群、通称S。対ゲリラ戦対テロ戦に特化した陸自の秘密部隊。現役幹部自衛官ですらその全貌を知る者はいないと言われている。俺も半信半疑だったがな。見たんだぞお前が祈祷とやり合っていた姿を。ありゃ逮捕術なんてもんじゃない。プロ中のプロの格闘術だった。お前も去る事ながら、あの祈祷もかなりのものだった。あいつもSなのか。」「断じて違いますっ、あんな奴とは・・・」心から叫ぶ
咆哮が、かつて特殊作戦群にいた頃の咆哮を思い出させる。断じて人殺しではないと吠えた若き日。「袈裟さん、寺川さん、ここにいたんすか。」・・・続く。

Re: ボディーオペレーション 短編 ( No.5 )
日時: 2021/09/26 21:49
名前: 梶原明生 (ID: 51us8LMs)

「対決」・・・翌朝、加持を連れて寺川達は車で移動していた。「本当ですか加持さん。」「はい。私の仮説が正しければ、寺川さん達と他の人との違いはただ一つ。」「予防接種ですか。」「はい。マーズウイルスが蔓延してから、予防接種が増えた。それでもしやと思い、六道さんに調べてもらったら・・・」「操られた人々は皆、マーズワクチン接種者だったわけですか。」「そうです。ですから今すぐにワクチンの成分を調べる必要があります。」裏を取るため、ワクチン接種会場を目指していた。「新宿署の者です。ワクチンを一本調べさせてください。」「ダメです。いくら刑事さんとはいえ、人の命がかかってるんです。話は電話で聞きましたが、納得いきません。アストン社やファーザー社が製造したワクチンですよ。異物混入なんてありえません。信じたくもないです。」「それはこっちも同じだ。ねえ先生、お願いします。一本だけでもいいんです。調べさせてもらえませんか。」苦渋の決断に迫られる。「わかりました。ただし、本当に一本だけですよ。」医師はサンプル用に一本のワクチンを持ってきた。「蓮さん、よろしくお願いします。」「わかった、任せろ。」警察病院から医師を呼んでいた。「こりゃなんだ。」中から肉眼では分かりにくい金属片が出てきたのだ。「これは・・・人体内部から筋肉を制御できる傍受機器。」顕微鏡で覗いて驚愕する加持。「何ですって。しかし、前回新宿区で接種した人数は500人を超える。それだけの数を全部入れたとなると、一人で目撃者もなく入れ込むのは無理だ。誰か組織的に手引きしない限りは・・・はっ。」寺川は袈裟や、蓮と目を合わせて沈黙した。加持が不思議がる。「どういう意味です。」「いや、一番考えたくないことが・・・」その時甲高くスマホが鳴る寺川。「何だ六道。・・・何、追い詰めた。場所は。わかった直ぐに行く。祈祷の居場所が分かりました。SATが突入したものの、間一髪逃げられたそうです。ここからすぐ近くの倉庫街。挟み撃ちにできます。」「拳銃は持って来てるな。よし、今すぐ向かおう。」寺川、袈裟、加持は車に乗り込んで倉庫街に向かった。「六道です。防犯カメラによると祈祷らしき人影が西側道路を徒歩で走って逃走中。」「わかった。・・・あれだ。祈祷っ。」急ブレーキをかけて止める。寺川は拳銃をドア越しに構えた。「祈祷、両手を挙げろっ両手を挙げろもう逃げ場はない。。」「ふふふ。迂闊だったよ。警察もやるもんだな。レシートだけで居住地を割り出したとはな。恐れいった。」「動くなよ。袈裟さん、俺が逮捕します。少しでもおかしなことしたら迷わず撃って下さい。」「わかった。任せろ。」寺川はある程度接近するとホルスターに拳銃を収めて祈祷の両手を後ろ手に捕まえて手錠を片方掛けた瞬間、祈祷は寺川の手首をリストロックして掌底を顔面に打とうとしたが、これを寺川がかわし、腕の関節を極めるはずが腕下を潜られて逆関節に極められてしまう。やがて二人はゼロインチの関節技と打撃の応酬となり、袈裟も照準が定まらずにいた。「いいから俺ごと撃って。」「いやしかしだな。」「く、刑事さん、俺の負けだ。」珍しく祈祷が抵抗をやめて大人しく従った。数百メートル先から赤いランプを回してくる警察車両が数台こちらに走ってくるのが見えた。袈裟が安堵の表情になる。「ようやく肩の荷が降りるな。」「いや、こいつさっき笑いました。一瞬。おい、祈祷何を企んでる。言え
。」「何って。さぁ、何のことやら。」「惚けるな、その気になれば抵抗できたはず。なのに途中でやめた。まるで時間稼ぎできたみたいな態度しやがって。」・・・次回最終話「浄化」に続く。             

Re: ボディーオペレーション 短編 ( No.6 )
日時: 2021/10/11 20:10
名前: 梶原明生 (ID: Cnpfq3rr)

「浄化」・・・自面党の保守派議員が多く出席する会合が開かれていた。「えー、改憲ではなく護憲に舵をきるべきかと。そして外国政権介入制度も導入すべきかと。」議員の一人がとんでもない方針を打ち出した。「バカな。何を根拠にそんな滅茶苦茶な話が・・・」議員の一人がつっかかった時、異変が起こった。「何、何なんだ! 」持っていたペンを胸に突き刺し始めた。何度も何度も自分の心臓目掛けて。その他の護憲派議員は自分で自分の首を両手で掴み、捻り回して首の骨を折り始める。「嫌だ、そんな死にたくない嫌だワバっ。」断末魔の叫びと共に絶命していく護憲派議員。「やめろーっ。」警備部警備課の管理官と共に入ってきた寺川と加持達。一部間に合わなかったものの、多くの議員を救った。加持が息を切らして呟く。「即席の電波妨害装置用意しておいてよかった。」怪訝そうに加持を見る寺川。議員を助け起こしながら袈裟が叫ぶ。「おまえが何であれ、お前を信じるぞ寺川。」深々と頭を下げる寺川。祈祷は六道に肩を掴まれて項垂れる。「残念だったな」パトカーは新宿署目指してドライブを始めた。

Re: ボディーオペレーション 短編 ( No.7 )
日時: 2021/10/10 21:44
名前: 梶原明生 (ID: Cnpfq3rr)

「エピローグ」・・・数日後。小綺麗な河川敷公園のベンチにて加持と座る寺川の姿があった。「それで、境内は何か語りましたか。」「ええ、ぼちぼちこちらの質問にも答えてくれてます。。」「結局、彼の目的は、なんだったのでしょうか。」「護憲派が許せなかったそうです。彼自身、マッドサイエンストだったのは事実ですが、調べたところ、奴の親は改憲派として政治活動していた奥寺政喜だったんです。今から13年前、改憲派として国家に尽くそうと尽力していた矢先、何者かに銃撃された。最後に残した言葉は、君達護憲派は平和を讃えてえおきながら人殺しをするのかと。犯人に向かうかのように抱き抱える祈祷の胸の中で生き絶えたそうです。」「それで彼は復讐を・・・」「そうですね。ただ一つ謎なのは、あれだけのワクチンにどうやって端末チップを混入できたかと言うことです。それについては奴も黙秘していて。」「待ってください。さっき父親は奥寺といいましたよね。どうして苗字が・・・」「そこなんですが、奴は奥寺の本妻の子じゃありません。愛人の子で、認知はしなかったんですが、会いに行ってたみたいです。だから奥寺とまさか結びつくとは分からなかった。しかも奥寺を殺した犯人は護憲派議員達だと判明し、今別件で捜査中です。」「そうだったんですか。これで胸のつかえが取れました。あの、寺川さん。もしよろしければこの後私の部屋でランチでもいかがです。できればお付き合いしたいなと。」徐に立ち上がって笑顔になる寺川。「ええ、お付き合いしますよ。ただし取り調べ室か、拘置所で。」「は・・・」何が何やらと言った顔になる加持。「殺人教唆、並びに殺人幇助の疑いで逮捕する。」袈裟や六道に逮捕される彼女。「最後に抜かったな。あの機器と祈祷の部屋にあった機器とが同じと判明。更に君の指紋が出た。同じく祈祷の部屋からだ。」連れ去られる加持を見つめる寺川と珠田。「珠田。俺と同じ、これから非番だったな。」「は、はい。」「俺と付き合わないか。部屋に来てくれ。」「あ、その、あの、は、はい。喜んで。」「決まりだ。」二人は私服のまま肩を寄せ合って河川敷公園を歩き去るのだった。「本当のマッドサイエンストは、祈祷を利用してたあんただ。」振り返り呟く寺川であった。青空だけがどこまでも、どんな場所にも繋がっていた。 了


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