複雑・ファジー小説

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ウルトラカミキリムシ
日時: 2023/12/17 23:30
名前: 緑川蓮 ◆vcRbhehpKE (ID: flo5Q4NM)

試し書きの殴り書き。

緑川蓮と申します。新作の下書きとして、また小説カキコ様にお世話になります。
紫電の更新が滞っている中で新作に逃げるのもどうかと我ながら思いますが、書きてえなと思った以上はしょうがないという事で、ここはひとつ大目に、ご容赦を。

あと思い付いたままに書き殴る叩き台が故に、作中の時系列はメチャクチャです。
こちらも平にご容赦を。正式な一般公開版は、カクヨム様かノベルアップ+様など……いずれどこかの他サイト様で、細かい部分の修正を加えた上でアップするつもりです。
マジでごめんなさい。各方面に心から陳謝を申し上げます。

Re: 退廃カミキリムシとクソ喰らえの生存 ( No.4 )
日時: 2023/12/18 20:01
名前: 緑川蓮 ◆vcRbhehpKE (ID: 0W9rRz2p)

 本当にこの世は、さっさと死んでしまえた方がラッキーである。
 より長くしぶとく生きられたとして、見られる景色とは何だ。それは見知った友人の死であり、悉く厭な方向へ転がる世情の有様であり、誰かの嘆きであり、憂いであり、終わりゆく世界だ。少なくとも世界樹ユグドラシオンが聳え立ち、そこから発生するマンドラゴラが人間の死肉を喰らう限り、この世は、見るも無惨な光景しか残らない。
 言わば斃れる寸前の、見渡す限り広がる廃墟の山々と、見知った知人だったモノ。既に物言わぬ死骸と、白、灰色、あるいは突き抜ける様な青い空。もしくは黒い夜空である。赤い血が流れていようが、そんなモノは広大に敷かれた光景の前には、点々と広がるまだら模様でしかない。
 今日も今日とて、そんな最悪を叩き付けられた。
 慰める様に肌色と肌色を重ねる。

「ねえ、蛇丸……」

 銀髪の少女に、灯に覆い被さる蛇丸は、自身の名を呼ばれて我を現実へと取り戻した。

「なんか……怖い目つき、してるよ。どうしたの……?」
「……別に……何でもない……」

 違う。何でもないなんて事は無い。
 彼岸崎のオッサンとは、何度、一緒に飲みに行ったっけ。クソみたいな仕事を終わらせる度に、誰か期待のルーキーが死ぬ度に、あえてウザったく「一杯、やりに行きましょうよ」って誘ったっけ。
 彼岸崎さんは、誘う度に「ええ……どうしようかなあ……」と苦笑を浮かべていたなあ。でも心根が付き合いの良い人だから、優しい人だから、最終的には流されるまま居酒屋へと入り込む。男2人でしょぼくれたボロい店の暖簾を潜るんだ。
 小牧君は真面目な子だった。未成年だからと言って、酒もタバコも一切やろうとしない。けれど、人情が無いワケじゃあない。デカいマンドラゴラを仕留めた後の昼休みに、並んで瓦礫の山に座り、それぞれ弁当を食っていた。

「実は……彼女が居るんですよね。だから……それだけが、まだ死ねないなって思わせてくれます」

 そんな言葉を、瞬間を、想起しながら、蛇丸は灯に覆い被さったままで、目元にシワを寄せる。顰めた眼の縁から、ついに雫が落ちる。ほんの小さく震えながら、言葉よりも雄弁に涙が溢れ出す。
 何でもないなんて事は無い。
 ただ分からない。何度となく繰り返して、慣れたハズの別れ。慣れたから平気なハズだ。もう既に枯れ果てたつもりになっている。なのに、どうして、胸元が締め付けられるのか。
 蛇丸は分からない。
 この心根を明確な言葉に落とし込む方法すら、掴めない。
 灯は腕を伸ばした。その背を掴みきれずとも、せめて寄り添う様に、絶望へ落ちていく蛇丸の肩に触れる。そうして夜は更けていく。癒される事など無い。傷は傷のまま残り続ける。痛みは思い出す度に想起される。数多の別れと同様に、この喪失もまた刻まれていくのだろう。飄々とした昼間の彼からは想像も出来ないほど、夜の蛇丸は背負っていくのだろう。ひとつひとつの終わりを、少しずつ削られていく感覚を。

「ボクは、せめて……」

 生まれたままの姿で、灯と蛇丸のふたりは寄り添う。

「……キミが絶望の海を泳ぐなら……その指先に触れていたいな。ひとりじゃないよって伝えたい」
「あっはっは、マジかあ……」

 蛇丸は嗤う。生まれてきた時代を、この世界を呪いながら。
 それでも、ひとりじゃないという言葉に、どこまでも沈んで行く様な安息感を覚えた。

「……お前だって一緒だろ、絶望の海に、置いてけぼりなのはさ……」
「や、それは本当にそう。誰だって死んでいくし、生きているだけツラい事ばっか。生きれば生きるだけしんどい目に遭うし、お酒とタバコとエッチな事だけが、今を溶かしてくれるよ」

 だから、と灯は一呼吸だけ置いた。

「蛇丸は……ボクより先に死なないでね。キミが死んだら、ボクは生きている理由なんて無いし」

 仰向けの灯は、覆い被さる蛇丸へと呆気なく言い放つ。
 呆気ない、けれど、どこか懇願する様な切実さを、微笑みの内側に湛えたままで。

「……悪いけど、それは無理な相談だなあ」

 蛇丸がゆっくりと腕から力を抜く。傷だらけの引き締まった体躯が、一糸まとわぬ灯へと折り重なる。涙を流した後の茫漠とした視線を、灯から逸したまま、つぶやく。

「俺だって……灯が死んだ後の世界なんて、想像したくないし」
「それはそれとして……蛇丸ぅ……重いんだけど……」







 カミキリムシが相対するマンドラゴラの軍勢には、大雑把な等級がある。
 3級は『ツツジ』だの『カイヅカ』だの、まあいわゆる雑魚だ。雑魚だとは言ってもベテラン何名かとルーキーがいっぱいの部隊で、ようやく死人ゼロで伐採できる感じです。
 2級はつい先日、蛇丸と灯がコンビで瞬殺した『ハナミズキ』だとか、あるいは『カシ』だとかと言う、ちょっと大型の化け物だ。ベテランの彼岸崎さんや、大型ルーキーである小牧くんがあっさりと屠られた様に、僅かでも油断や何かの手違いがあれば、もれなく死ぬ。
 1級は『クロマツ』を代表とした、正真正銘の化け物である。この日本支部でも片手……とか両手……じゃあ流石に数え切れないけれど、これまで十数件しか伐採例が無い。
 ちなみに、そのうち4件が蛇丸と灯によるものである。

「祟羅蛇丸、織田プロレスリング灯……両名に特級『ベニシダレ』の伐採を命じる」

 世界樹がニョキッと生え出して以降、かつて日本という国家だった、その政府は機能を失った。
 それから元は日本だった島国を支配しているのは、資金力を持った幾つかの企業であり、そこから仕事を賜る数多の下請け会社だ。蛇丸と灯も、そんな下請け会社の従業員に過ぎない。
 自らがカミキリムシとして所属する会社の社長に告げられ、蛇丸と灯のふたりは、互いに顔を見合わせた。それから数瞬ほど沈黙した後で、示し合わせた様に間抜けな応答を放る。

「マジでェ?」



Re: 退廃カミキリムシとクソ喰らえの生存 ( No.5 )
日時: 2022/12/01 19:18
名前: 緑川蓮 ◆vcRbhehpKE (ID: hi4BpH9d)




 世界樹の果実、通称『クソ林檎』。
 それは実に直径50メートル程もある巨大なバッドアップルだ。
 百年も前に世界樹ユグドラシオンから回収されて以来、腐りもせず、未だ『対マンドラゴラ国際連盟』の最奥に保管されているらしい。
 クソ林檎は何度その果肉を削られようが、中心部に埋もれた「種」が脈動する限り、時間とともに再生する。
 その果実の欠片を口にした者は、もれなく2つの末路の内、いずれかを辿る。
 発狂し自我を失い、即座に辺り直径3メートル程を埋め尽くす花畑と化すか。
 生殖能力と引き換えに、常人離れした身体能力と樹皮化した身体の一部を得て、クソッタレなマンドラゴラ共を斬り倒す為の人間兵器に成り下がるか。
 カミキリムシは勃起もする。股間が濡れる事もあるし、性欲それ自体は何ら失われる事が無い。
 ただ新たな生命を紡ぐ事だけは出来ない。どれだけ愛し合う男女が深く繋がろうと、カミキリムシは自身の遺伝子を次世代に託せない。精子も卵子も、その機能を果たさない。
 カミキリムシは未来に希望を持てない。
 もしもカミキリムシにそれが出来るとしたら──それは、人類を脅かす宿敵こと、世界樹ユグドラシオン……そしてその眷属であるマンドラゴラを駆逐する事によってのみ果たされる。
 いずれ絶滅する自らの命脈を、誰かが繋ぐ生命連鎖の糧とする。それだけが、カミキリムシ共がこの世に生きていた、たったひとつの存在証明である。

「でもさあ、正直それってクソじゃない?」

 灯は既に黄ばんだ天井へと紫煙を吐き捨てる。

「所詮どれだけ死ぬ気で皮膚や肉を削られたって、一日どんだけの死線を潜ったって、とどのつまりは『自分以外の誰かの為』だし。しかも、その誰かはボクらみたいに、クソッタレなマンドラゴラ共と血風白骨を散らす事もなく、のうのうと居住区の内側らへんで平穏安穏な日々を過ごしてんの。やれ、三丁目の偏屈バーサンは意地が悪いとか、やれ建て売りの新居に入ってきた新婚夫婦が気に食わないとか……そんな愚痴の捌け口を探す事に躍起でさ」
「いやマジでそれよ。マジで人類いっぺん滅んだ方が良いんじゃないの?」

 煙とアルコール臭が充満する、オンボロワンルームで男女はぐったりデロデロ浮世の果て、まるで輝かしい若さも生気も投げ捨てダベり沈んでいる。背丈が低いチャチな折り畳み式テーブルに体重を預けたまま、世情を嘆く。
 何よりも雄弁なのは、ただひたすら回る換気扇の駆動音だった。

「マジでソッコー終わっちまいてえよ。出来んなら、さっさと首ぃ括ってサヨナラベイベーしてえ」
「本ッ当、それよね。まあ、ボクら首を絞めた程度じゃあ簡単に死ねないけれどさ」

 蛇丸の樹皮化した茶色い右手と、灯の樹皮化した黒い左手が、指先を縋る様に絡ませる。
 草木も眠る丑三つ時、されど酩酊に溺れるカミキリムシふたりは、永遠に意識を、暗闇の底の底、いわゆる死へと落とす事すら簡単には叶わない。
 いっそ呆気なくポーンと、この首元を弾き飛ばして欲しい。
 どうせなら、この脳ミソをバッシャーンと、他の何かを考える間も無くブチ撒けて欲しい。
 そう心の奥から叫び出す様に願っていても、やがて真夜中の闇は明ける。こうして惰性と共に意味もなく零し合う本音すら素知らぬ顔で、新たな明るい絶望は巡る。
 昨日は、ちゃんと歯を磨いたっけ。布団を被る前に、ピアスを外したっけ。そんな事さえ溶かして忘れ去りたかったのに、やはり朝日はカーテン越しに差す。

「……アラーム……うるっせえ、死ねよ……」

 未だ睡魔から覚めやらぬまま、蛇丸は恨み言を吐き捨てる。
 新たな朝よ死ね。来るな訪れるな、眠りよ永劫無限に、覚めなければ良かったのにと、呪詛を込めブリキの目覚まし時計を叩いたまま手の平に力を込める。いっそ砕き割ってやろうか、この時計を、と無意味な怒りを発露する。

「いやあ……また今日も起きちゃったねえ」

 不機嫌この上まさしく極まりない蛇丸に、横合いの女は溜め息まじりで呟く。
 裸の女は、膝を抱えたままの姿勢で、毛布を羽織っている。
 銀色の長い髪が白いシーツへと落ちた。灯は蛇丸に微笑みかける。とうに希望も熱量も忘れ去り、それでも微かな残り香へと縋る様な、切実かつ儚い笑みで……蛇丸の新たな朝を迎え入れた。

「おはよう、蛇丸。気分はどう?」
「おはよう、灯。今日も今日とて最悪だよ」


Re: 退廃カミキリムシとクソ喰らえの生存 ( No.6 )
日時: 2023/12/18 10:52
名前: 緑川蓮 ◆vcRbhehpKE (ID: 0W9rRz2p)




「そういえば君らって付き合っているんだよね?」
「え、ボクと蛇丸がですか?」
「いや……別に付き合ってないよな」

 カミキリムシの根城は、通称『巣』と呼ばれる高い建造物……正式名称『世界樹対策局日本支部』だ。日本という国家とその政府が機能を失い、この太平洋の際に浮かぶ島国が単に『極東』と呼ばれる地域になった今でも、一応ここは日本支部と名乗っている。
 聳え立つ高層タワーの麓には、安っぽい居酒屋や雑貨屋(※雑貨屋と称されるが、実際は対マンドラゴラ兵装を揃える、実質的な武器防具、及び戦闘の際に用いられるワイヤー類をはじめとした各種の補助装備や、保存食料等の取扱店だ)などが軒を並べている。
 時計の針は夜9時も半刻ほど過ぎた頃を指していた。
 トマトの肉巻き、モツ煮込み(原材料不明)、マンドラゴラの串焼き……など雑多なメニューが木札に筆字で刻まれ、壁の天井近くで吊り下げられ整列するチープな飲み屋だ。そこで灯と蛇丸にあっけらかんと応答された彼岸崎というオッサンは、分かりやすく呆気に取られた表情を浮かべる。困惑と共に口を半開きにしたまま硬直する彼岸崎は、そのままで指先から吸いかけのタバコを、カウンター席の木造テーブルに取り落とした。

「ええ……マジですか? 付き合ってもいないのに、その距離感は……だいぶバグってない?」

 ようやく口を開いた彼岸崎は、ちょっと慌てた様子で未だ煙をなびかせる吸いかけのタバコを、指先で拾い上げ、ガラス製の灰皿に投げ捨てた。

「だって……なあ、事実ですし」
「そうそう。付き合うとかって面倒ですもん。なんか、こう……色々と」
「え……じゃあ、君らの関係って……その、難しい質問だろうけど……何?」

 蛇丸の右手と左手には、それぞれタバコとお猪口が摘まれている。
 灯の右手と左手には、それぞれジョッキのビールとマンドラゴラの串焼きが握られていた。
 2人はいったん顔を見合わせてから、示し合わせた様に彼岸崎へと言い捨てる。

「セフレってトコですかね、ボクらは」
「セフレですかねえ、まあ、有り体に言うと、俺らは」
「え、やっば、オッサンちょっと若者の価値観に、若干その付いて行けてない感じある……ええ……マジかぁ~……。あと幾ら酒の席だからって言っても、そういう生々しいカミングアウトはちょっと……想定外かなあ……」

 だって事実だし。ねー☆
 そりゃ事実だもん、ねー☆
 言葉に出さずとも、そんな遣り取りをにこやかな表情だけで蛇丸と灯は交わす。

「それより、さっきの彼岸崎さんの言いかけた続き……仮に俺と灯が付き合っていたら、何です?」
「いや……その……今の聞いちゃった後だと随分、的外れなんだけれど……キミらは、いつ結婚するとか……考えているのかなあって……」
「ボクと蛇丸が結婚? いや、無い、無いですって、マジで」

 ですよね、と言いたげに、彼岸崎は顔を左手で覆う。
 だって本音だし。ねー☆
 だって本音だもん、ねー☆
 再び爽やかな笑顔を交わし、テレパシーめいた何かで意思疎通する2人の横で、彼岸崎は戸惑いの果てに落とされたまま頭を抱える。
 コイツらの距離感と関係性がマジでワケ分からん。簡潔に言ってしまえば、それが今この場末の、居酒屋で彼岸崎の胸中を席巻する全てだった。

「やー、だって恋人とか夫婦になったら、ボクか蛇丸が死んだ時に、取り返し付かないですよね?」

 マンドラゴラの串焼きに刺さっている、最後の肉片をひとつ、前歯で引き抜く。
 それから歯ごたえのある肉片をよく噛み締めて、もう片手で握っていたジョッキからビールを喉元に流し込む。まさしくこれぞ極上の瞬間、そう言いたげに「ぷはーっ」と大袈裟な息を吐き出す灯はサラッと言い放つ。

「カミキリムシは、どれだけ良い奴でも、ヤな奴でも、ある日スポーンって、唐突に、あっけらかんと死んじゃいます。きっとボクらよりも更に、彼岸崎さんの方がそれを、よくよく嫌になるくらい、染み付く位に知ってますよね」

 彼岸崎は途端に眉根を寄せる。脳裏に刹那だけ、思い出すも厭な想い出が去来する。ほんの一瞬、舌の根元に、小さな瓦礫の様な苦味が居座る。

「なんか『不死身の蛇丸』とか偉そうに呼ばれている、この大馬鹿メンタル雑魚雑魚、戦闘力だけが取り柄の強がりマンだって、例外じゃあないんですよ。ボクからしてみれば、むしろ蛇丸は……いつ死んじゃうか分からない様な、危なっかしい切り込み方も、平然とやっちゃうし。日常的に」
「おいおいおーい、ちょい待って、何か……スゴい罵倒されてない? マジで? これでも、世界樹対策局、序列4位サマなんですけど? オーイ、何かこう、扱いが滅茶苦茶ぞんざいじゃない?」
「ボクらは、いつだって、いつ死ぬか分からない。明日の午前9時か10時ごろには、スッポーンと仲間の首が青空を舞うかも。もしくは白い曇り空に、ボク自身の赤い心臓が貫かれ、抜き出されて、高々と空に突き上げられるかも。この肋骨を、背骨を貫いて、枝の先に掲げられるかも」

 蛇丸の問い掛けを完全ガンスルーしつつ、灯は視線を木製のカウンターテーブルに落としたままで紡ぐ。諦めを孕んだ、されど縋る様な声色で、ただ零す。

「ボクより先に死なれたら、ウルトラしんどいし。ボクが先に死んだら、蛇丸の方が、死ぬまで深い傷を抱えるだろうし。それなら、もっと軽い関係の方が良いですよね?」

 灯は語る。
 軽薄な笑顔だ。いたずらっぽい口元だ。困った様な目元だ。可愛らしくあどけない、若い年齢より更に幼気な顔立ちは、ただ青く深い絶望を湛えていた。
 ああ、マジですか。こんなに可愛い後輩たちですら、未来を諦める世の中ですか、そうですか。
 まあンな事とっくに知っていたけれど。
 そんな憂いを、どうしようもなく重々しく、肋骨より更に奥の、心臓が在る所より更に真ん中の、胸元の奥深くで彼岸崎は受け止める。
 ──きっと、もう手遅れじゃないかなあ。今に口先がうっかり滑ってしまえば溢れそうな、そんな一言を呑み込んだまま。


Re: 退廃カミキリムシとクソ喰らえの生存 ( No.7 )
日時: 2022/12/01 20:20
名前: 緑川蓮 ◆vcRbhehpKE (ID: hi4BpH9d)




「お昼どこにするよ?」

 時刻は午前11時半ごろ。秋晴れの空に薄青が澄み渡っている。
 今しがたぶつ切りに斬り倒したサルスベリ(※2級のマンドラゴラ。樹皮表面がツルッツルで、よく滑る。樹皮を駆け上がる事は難しいので、多くは躯体のどこかにワイヤーを引っ掛けるか、大型の道具で足下からダルマ落としの様に削る戦略が推奨される。もちろん後者が出来るカミキリムシは限られる)の、残骸である横倒しの丸太に腰掛けている女が居た。
 銀色の髪を左右それぞれお団子状にまとめ、その裾から長いツインテールを揺らす少女である。耳に幾つかカラフルなピアスが刺さっている。黒いオーバーサイズのダウンジャケットを着込む彼女は、織田プロレスリング灯という名前だ。

「いつも通り、サイモン軒で良いんじゃね。安いし。どうせいったん『巣』まで戻らないとだし」
「オッケー、ボクは何にしようかなあ。蛇丸は何を食べるか決まってる?」

 左腕に着けた黒いアタッチメントへと、刀状のノコギリを納刀する男がそこに居た。灯が呼びかけた先に立つ、白いファーがフードについたジャケットを羽織る、黒髪の男は名を祟羅蛇丸という。
 彼は虚空に視線を彷徨わせ、数秒ほど逡巡した後に応える。

「レバニラの気分」
「あ、じゃあボクにもちょっとだけ分けてよ」
「良いぜ。あそこのメシは、何か知らんけど……山盛りなんだよなあ……」
「まあボクらみたいなカミキリムシは燃費が悪いし、丁度いいんじゃない? それにしても中華料理屋って、何で基本的にどこでも量が多いんだろうね」
「それな」

 取り留めもない事を言い合いつつ、ふたりは軽トラに乗り込む。
 蛇丸がイグニッションを回すと、車体が微振動して、威勢よくエンジンの唸り声を上げた。

「道具ちゃんと乗せた?」
「乗せたよー。棺とかもバッチリ」

 蛇丸は、足元のクラッチを奥まで踏み込む。右足でアクセルを押し込む。掴んだシフトノブを引く。ハンドブレーキを開放し、踏み込んだクラッチを徐々に緩めていく。

「おっしゃ、んじゃ戻るか」
「安全運転でおねがーい」

 灯は小さなバッグから取り出したスマホの画面上に指を走らせながら、気の抜けた返事をする。既に視線はSNSへと注がれていた。
 荒れ果てた悪路を、軽トラが走り出す。

「……そういや、灯、トレンド見た?」
「あー、見た見た。多分アレでしょ、アメリカの方で特級『ジャイアントセコイア』が暴れだしたって話。今回は何百人カミキリムシが死ぬだろうねえ……」
「まあ……今だったら向こうには『トウエモン』が出向しているし、大丈夫じゃないの。多分きっと恐らくメイビー、知らんけど。まあ伐採は今回も無理だろうから、いつも通り剪定だけして、動きを止めてハイ終わり、だろうけどさ」
「あ、出た、序列1位のヒトだ。蛇丸よりスゴい人」
「なァんか……喉に小骨が突っかかる言い方だなァ……」
「ってェ、そのッ……安全運転って言ったよね、なんか……ガタガタするんですけどッ、いやまあ、いつも通りと言えばいつも通りか!」







「ちわーっす」
「こんちわー」

 蛇丸が引き戸を開いたのは、世界樹対策局日本支部、通称『巣』と呼ばれる塔の麓にあるオンボロ中華料理屋だ。その軒口には、赤地に黄色い文字で「祭文軒」と描かれた看板がある。屋号の左下には、市外局番を省略した電話番号が小さく載っている。

「オーウ……ヘイラッシャイゴザイマセ、蛇丸サン、プロレスサン。今日も今日とてシケたツラしてんなァ、ヘイチェケラッチョ」
「あのさあ、お前さあ、こないだも言ったけど……その挨拶は間違ってるからね、絶対に」
「オーウ、ソーリーソーリー。コーボーも筆をミステイク、カッパのバタフライ」

 蛇丸は顔を顰めながら咎める。祭文軒の年季が入った簡素な木椅子に腰掛け、新聞を上下逆さまに広げていた黒人の男は、まるで申し訳なさを感じさせない様子で、自らスキンヘッドの後頭部をペチペチと叩く。叩く度に、やけにロングなシェフ帽が景気よく揺れた。
 いや中華料理屋でいかにもフランス風かイタリア風のコック帽も何なんだって話ではあるが、それ以上に視界を犯す異常光景に、何度この祭文軒を訪れても……蛇丸と灯のふたりは、胸中で形容しがたい疑問を抱いていた。

(何で裸エプロンなんだ……?)
(どうしてムキムキマッチョの黒人が、フリッフリのフリルまで誂えたメイド服っぽいエプロンを、全裸で巻いているんだ……)

 表側はともかくとして、問題は彼が背姿に振り向いた時だ。

「ヘイヘイ、オフタリサン。今日も今日とてオーダーをチョイス。ご注文、お預かりシマース。ささ今日はナニを貪りたいんだい、この卑しいカミキリムシめ、ヘイベイベー、ヨウファッキン」
「いや……まあ、レバニラ定食」
「あ、じゃあボクはギョーザ定食……」
「ヘイ、レヴァニルァランチとギョーザランチをイッチョー! おヒルのエサ・タイムだイェー!」

 エサ・タイムという人権無視も甚だしい単語にツッコむ余裕も無く、蛇丸と灯は、うっかりソレを見ちまってから無言で瞑目する。
 右手を突き上げながら、意気揚々と厨房へ立ち上がり歩きつつ、トンチキ黒人の股下には、確かにソレが余計すぎる自己主張をブチ撒けていた。

(ぶら下がってる……いつも通り、左右にブーラブラしてる……)
(股間からガネーシャ様が、東風と西風を行ったり来たりしてる……)

 黒人でフランス・イタリア風のコック帽で股間はガネーシャ、エプロンはメイド服的な、真っ白いフリッフリ。その上ここは中華料理屋と来たもんだ。

「これが文明開化ってヤツなのかなあ……なあ灯……」
「え……唐突にボクに振らないでよ。それに、それは……明治時代のご先祖様に、些か失礼リミットブレイクなんじゃ……というか何も考えないで適当こいてるでしょ、蛇丸」

 小声でやり取りするふたり。
 やがて無言かつ真顔で見合っていた蛇丸と灯は、まさしく「まあ、どうでも良いか」とでも言わんばかりの様子で視線を反らした。灯は再び取り出したスマホに視線を注ぎ、蛇丸は無造作に立ち上がる。爪先が向かう先は、雑多に散らかった店内の本棚だ。そこには「入門編、今から始める新興宗教の立ち上げ方」だの「週刊カミキリムシ自身」だの「ネクロノミコン」だの「紫電スパイダー」だの、雑多なタイトルの書籍が並べられている。
 蛇丸は背表紙に「週刊少年イマジン」と描かれた雑誌を引っ張り出す。

「ちょっと、なあ、サイモン……今週のザンプって、まだ置いてないの?」
「ハッハー、ワタシも未だに未読でゴゼーマス。ネタバレしたら、骨をスープのダシにするぞ、このスットコドッコイ」
「おっと……そこだけ日本語が綺麗……」

 祭文軒の店内は、お世辞にも小綺麗とは言い難い。
 指先で窓のフチを掬えば、もれなく大盛り圧縮サービスと言わんばかりに纏わり付くホコリ。
 天井を見上げればパイプが迷路を描いている。中途半端な位置で、ひとつ翼の欠けたファンが低速で回り続ける。薄暗い店内を照らすのは、蛍光灯ですらない。時代遅れな電球である。
 本棚に並ぶ雑誌は、いちばん古いヤツが、聞いて驚け50年前のザンプ32号だ。まさしく黄金期じゃねえか。いや、これはこれで値打ちモンかもしれない……と蛇丸は顎元を指先でなぞる。
 ちなみに蛇丸が考えている事を何となく察しつつ、灯は心底から「どうでも良いかな……」とでも言いたげな虚無この上ない表情を浮かべていた。

「ヘイヨーお待ちどうサマンサッ、チャーハンとラーメン……オウ、ミステイク、違う、ノンノン、チャウチャウ……、ミステイク……レヴァニルァと、ギョーザランチの参勤交代でゴゼーヤス!」

 なんで参勤交代とかいう単語はシームレスに飛び出すんですかね、この国境治外法権は。
 ちょっと分かんないですね。
 そんな遣り取りを視線だけで交わしつつ、直後に安っぽい陶器の皿へと盛り付けられた中華料理に2人は視線と嗅覚を引きずり込まれた。
 空腹は最高のスパイスだ。身体を動かしまくった後の、チープな中華料理屋がデデンとお出しするレバニラ炒めと餃子、それから盛り付けられた白米と、透明なスープの際に浮かぶワカメ。
 祭文軒は店主の裸エプロンが最悪だ。
 それでも五臓六腑に染み渡る味と、ボリュームだけは最高である。

「おあがりよベイベー。ザッツワン、オンリーワン、このサイモンがテッセーチャイナ鍋で拵える、フルコースは……クレイジータクシーだぜ、ベイベー」

 白米を掻き込む。
 スープを啜る。
 レバニラを箸の先で欲張りに挟む。いざ箸先を口蓋に含む。
 餃子を醤油と酢とラー油のブレンドミックス、オリジナル最高の泉に浸してから、口元へ運ぶ。
 カミキリムシは肉体労働である。午前中を全力の死闘で駆け抜けた空きっ腹に、染み渡る。

「んッ……む、ハフ、んあ……最高、狂う!」
「ん……うンむ……はっふ……うんまっ、やっぱり中華が最強ッ、狂う!」

 蛇丸と灯は、しょぼくれた中華料理屋で叫ぶ。
 これこそが、この光景こそが最高の愉悦なのだ。同じ日本語こそでは無いが、祭文軒の店主であるサイモンは、眼前の光景を満足気に腕組した。ウンウンと何度も無言で頷きながら。
 彼が頷く度に色黒いヤマタノオロチ様が彼の股下で左右ブラブラと踊るが、そんなモンはフリル付の白いエプロンが上手く覆い隠していた。


Re: 退廃カミキリムシとクソ喰らえの生存 ( No.8 )
日時: 2023/12/18 10:57
名前: 緑川蓮 ◆vcRbhehpKE (ID: 0W9rRz2p)




 2級マンドラゴラ『シュロ』。
 竜の様な体躯をのたうち回らせ、その長い胴から伸びて自在に扇状に広がる、鋭く尖った刃の群れを振り回す怪物だ。今回、蛇丸と灯を含めたカミキリムシの部隊が立ち向かうのは、そういう暴威だ。
 蛇丸は右手に持ったノコギリ刀を振るう。襲い掛かる葉の刃を掻い潜る。根本からひとつひとつすり抜けざまに切り落とす。
 右手のノコギリが追い付かない角度から刃が迫る。ならばと腰元から新たな得物を引き抜く。
 それは剪定鋏だった。左手に握られた鋏を、口角を吊り上げつつ振りかざす。
 蛇丸は頬に一条の掠り傷を於いながら、斬撃を腰元から伏せて回避する。頭上を高速で通り抜ける葉の枝元を、振り上げた鋏で断ち切る。
 しかし葉っぱの暴威は止まない。更なる斬撃の津波が、蛇丸めがけて襲い掛かる。

「埒が明かないよなあ、これ」

 ノコギリ刀と剪定鋏を鞘に納める。
 人間よ命脈を絶たれよと言わんばかりに迫る鮮やかな緑の嵐を前に、蛇丸は背に背負っていたそれを引き抜く。全長は蛇丸の身長ほどもある、長大な大鋏だった。
 半分は持ち手、もう半分ほどは黒い刃だ。

「刈り込むか」

 まるで十字架の様に、長大な大鋏を掲げる。
 広げた腕を腋から締める。シュロの長く大きな背を駆け抜けながら、何度も何度も自由自在にそれを繰り返す。ふたつの交差した刃が重なる度、接近する枝葉はシュロ本体から切り離されていく。
 蛇丸は無限無尽にも思える攻勢を捌き続ける。そうして生まれた刹那の間隙を、見逃さず彼は鬱蒼と生える明るい茶褐色の……シュロの樹皮を覆う細やかな繊維を、毛の鎧を大鋏で切り払う。

「今だッ、灯ィ!」
「待ってましたッ!」

 繊維の鎧を、樹皮を剥がされたそこに、彼女が上空から飛びかかる。
 掴んでいるのは「棺」と呼ばれる巨大チェーンソー。まるで死に神が振りかざす大鎌の様に、高速回転する刃は振り下ろされた。

「裂くよ落とすよ、ファッキンマンドラゴラめ!」

 鎧でもある繊維を斬り剝がされたシュロの首元に、棺が訪れる。

「暴れ回るキミの魂、クソ喰らえだっ、終われよ果てろよ、今日の仕事も、これにてお仕舞いッ!」







 ぶつ切りにされたシュロの体躯が、転がり夕焼けに亡骸を晒している。
 オレンジ色の夕陽が幾つも転がる丸太(※マンドラゴラの死体を指す隠語)を照らし、2倍か4倍ほど長い影で、辺りを黒で埋め尽くす。
 影に呑み込まれる、丸太の合間には、12人のカミキリムシが物言わぬ屍となって、バラバラかつ無造作に転がっていた。
 ただ広がる荒廃した瓦礫の山に、仇敵たるマンドラゴラと、昨日まで仲間だったモノ達が敷き詰められている。黙りこくったままでじっとしている斜陽は、彼らを焦がして灰にして、言い知れぬ寂寥ごと吹いて飛ばす荼毘にもならない。
 ここには未だ望まない鼓動を刻む心臓ふたつと、それを苛む奈落めいた無力感しか残っていない。

「ねえ蛇丸、ボクとキミが初めて話した日の事って、覚えてる?」

 瓦礫の山に腰掛けながら、灯が問いかける。

「あー、覚えてる。確か、お前『水が飲みたい』って言ったんだよな」

 蛇丸が想起するのは、もう3年ほど前の出来事だ。
 あの日、灯はカミキリムシとして初陣を飾った。

「あン時って確か『期待のルーキーが何人も現れた!』つって、あちこち盛り上がってたんだよな」
「そうそう。クソ林檎の適合率が、やたらめったら高い新人が出てきた、て感じで」

 そして5人の新人と10人の一般カミキリムシと、5人のベテランで構成された部隊は呆気なく、灰燼の山に成り果てた。ひとり灯だけを遺したまま。
 1級『カエデ』。そう呼ばれるマンドラゴラは炎を操る。
 焦げ茶色に広がる樹影から、振り撒かれ舞い散る真紅の葉は、ひらりひらりと踊り落ちつつ火炎を四方八方へ放射する。その火力に、圧倒的な制圧力を誇る攻撃力に、1人また1人とカミキリムシは焼き払われた。ルーキーもベテランも見境なく、ただ迫り来る勇士の軍勢を炭クズに変えた。







「え……マジで? 今からアレを伐採すんの?」

 午前中に、2級『キンモクセイ』を伐採してきたばかりの蛇丸は、げんなりとした表情で言う。
 急遽、緊急事態の応援として呼ばれた。心底から溜息を吐きつつ、手にはバリカンと、通称『棺』と呼ばれる巨大チェーンソーがそれぞれ提げられていた。

「マジか……ちょっと、しんどい極まりないけれど……マジかぁ……」

 肩を落としつつ、世界樹対策局、序列4位の男は呟く。

「マジだよなぁ……まあ……仕事なら……」

 眼前には、黒い樹皮を纏う巨人である。
 両手の指先から先には、鬱蒼と生い茂り何段にも重なる、地に落ちれば火炎へと变化する紅葉だ。

「……仕事なら……まあ……やるしか無いんでしょ、どうせ」

 相対するは、たったひとり、人間の男である。
 違う。厳密には、人間と呼ぶには語弊がある。
 彼はカミキリムシであった。世界樹対策局が誇る、序列4位の、溜息ばかり吐く生存欲求がまるで感じられない青年だ。
 その名を祟羅蛇丸という。例え百人のカミキリムシが屠られようが、血塗れで生還しマンドラゴラの丸太を置き去りにする、その有様から……またの名を「不死身の蛇丸」と呼ばれる男だ。
 特級『センネンスギ』の、クソ太い胴の根本を「棺」と呼ばれる専用兵装で両断し、世界中に二万人ほど居るカミキリムシの上位に躍り出た青年だ。

「じゃあ……まあ、やりますか」

 腹の底からダルい。
 そんな心根を隠そうともしないまま表情に浮かべる。それとは裏腹に、棺のスターターに繋がれた紐を思い切り引き上げる。威勢よくエンジン音が唸り声を上げる。
 ドゥルルルゥン、ドッドッドと……殺意の声が、舌なめずりする様に、眼前の獲物を品定めする。

「精々、殺し合おうや。お互い死んだ後に、余計なモンを持ってかない様に吐き出し切ろうぜ」

 振り被られるはクソデカチェーンソー。
 舞うは黒い躯体から振り乱される紅葉。

「あの世に持って逝くのは、六文銭だけで充分だろうが!」

 口角を吊り上げる。さっさと俺かお前か、どっちか死のうぜと言葉より表情で雄弁に語りながら、彼は嗤う。世界樹対策局序列第4位の男は、通称『不死身の蛇丸』と呼ばれていた。
 世界中で実に十四件目となる、1級マンドラゴラ『カエデ』の伐採戦。
 その花舞台が、ここに幕開いた。



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