二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 「 僕が、守らなきゃ 」 - カガリビト
- 日時: 2012/08/24 17:31
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=UmeAKdiiYTc
( 願わくば暫くの永遠を、 )
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■ ご挨拶、
ど、どうも…またつくっちゃったよ…くっそう。
二次板(紙ほか)の方で2年前からちまちま書いている蟻と申します。
カガリビトが好きすぎてスレ建てしてしまった次第であります。挫折する可能性の方が多いのですが、自分らしく頑張ろうかと思います。
■ 作品紹介、
原作はボーカロイド楽曲の「カガリビト」という作品でございます。
作者様の考えた設定と楽曲を元にして、小説をつくらせていただきます。非常に稚拙な文ですが、何卒よろしくお願いいたします。
作者:millstones 歌:初音ミクappend
※ 上記URLから「カガリビト」を視聴することができます(youtube)
■ 目次、
( 序章 ) >>1
( 一話 ) >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8
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スレッド生成 2012-08/03
- Re: 「 僕が、守らなきゃ 」 - カガリビト ( No.1 )
- 日時: 2012/08/03 14:33
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: 大体あらすじを引用。
( 序章 )
——彼女は、ふと感じた。
彼女が創り出した世界。それと共に生きていく人々、活性化していく街。進化し続ける平凡で平穏な世界を、時に制御しながら、彼女は自らが創り出した世界を見守り続けた。
ときに涙し、ときに笑い、ときに争うその世界の姿を。海が血になろうとも、道が光輝いても、彼女はその世界の人々にほとんどを委ね、世界を回した。
そんな彼女が、或る時感じ取った異変。
数世紀経った世界の技術は急成長し、人は急速に変化した。その進化に比例して、世界の輪郭はあやふやに、曖昧になり始めた。危険な思想を持つ者が増え、純粋であってもその穢れに取り込まれて、黒くなってしまう。そんな世界の姿を見た彼女は、深刻に考えた。
「このままでは、遠からず世界は霧散してしまう……」
彼女は、創造した世界の中では絶対の神だが、彼女の世界ではそれは大した事のない、平凡な存在であった。彼女自身も、自らが永遠でない事はとうに気付いている。
そこで、彼女はひらめく。彼女が居なくなった世界でも、世界がそこに存在できるように——自らの意思を持ち、解れかけた世界の境界を修繕する存在を創り出せば。と。
早速彼女は、世界を直す者を創りあげ、それを「カガリビト」と名付けた。布の端が解れないように縫い合わせる、かがり縫いになぞらえて。
生まれたカガリビトは十二人。彼女の試算では十人のカガリビト居れば世界は十分に維持できたが、念のためと彼女は言い、二人のバックアップを付けた。
生まれたばかりのカガリビトに、彼女は金色に輝く両手を差し出し、凛として言い放つ。
「あなた方には、光の糸と折れぬ心を与えましょう。それを使って、この素晴らしい世界を修繕するのです」
一人ひとり、光の糸を手に取った。
世界の中に降りようと、一番目のカガリビトが足を踏み入れた時。彼女は、こう投げかける。
「どんな時も『希望』が我らの道を照らしてくれるでしょう。たとえ私という存在が消えたとしても」
こうして十二人のカガリビトは世界の中に降り、溶け込み、そして世界を修繕して、世界を存在させたのだ。
————ほんの暫くの、永遠だけだとしても。
- Re: 「 僕が、守らなきゃ 」 - カガリビト ( No.2 )
- 日時: 2012/08/04 17:43
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: ※ 名前は 適 当 です
( 一話 )
——世界に降りて、どのくらい月日は経ったのだろう。
朝だ。ベッドから上半身を起こし、すぐ横にある窓をぼんやりと見る。
僕たちは、この世界を修繕しながら、身近に人を見てきた。僕たちは変わらないままなのに、人は皆変わり果て、死を迎えた者も数え切れないぐらいになった。
老いていく命、生まれ来る命。こうして世代は移り変わり、人は進化をし続ける。それに伴って、世界は崩れ、解れゆく。
この世界の人々が『神』と崇め、称えられる彼女から創り出された僕たち、十二人のカガリビトは人に紛れて、今にも壊れそうな世界を直していた。
「なあトゥール、人はどうして、今の状態に気付かないと思う?」
背中まである白い髪を靡かせて歩く彼女は、僕の名前を呼んだ。
彼女は言い終わると僕の隣に座り、ふっと微笑んだ。
今の状態、とはおそらく、あやふやになり始めている世界の現状のことだろう。
「それは彼女にしか分からないよ」
「欠点だらけだよ、人は。どうして彼女は人を創ったのか。私には、到底理解できない」
それは僕にも、理解しがたい。どうして彼女はこんなにも脆く、弱い人を作ったのだろうか。ずる賢く、薄汚く、強欲な、人を。共に争い合うような、人を。
「……まあ、彼女は素敵なものを創り出したと思うよ。ほら、今日はいい天気だ」
「トゥールは話の変え方が上手いな。そんなに彼女を悪く言うのが嫌なのか?」
「まさか、イレン。君が思ってることは僕も思ってるよ。彼女の悪口は言うつもりないけどね」
「マザコンだな」
「違うよ!」
少し微笑んで、イレンはそう言った。僕が否定の言葉をあげても、聞く耳持たずで、扉の方へと進んでいく。なぜか少し嬉しそうだ。そんなに僕をからかうのは面白いのだろうか。
「まあ、トゥールは末っ子だからそれでいいよ」
扉の前で振り向いて、そう言い放った。そして部屋を出るイレン。
「だから違うって言ってるのに……」
- Re: 「 僕が、守らなきゃ 」 - カガリビト ( No.3 )
- 日時: 2012/10/13 13:17
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: yWjGmkI2)
- 参照: 1〜10号のカガリビトは容姿も何もかも創作。
開かれたままの扉。イレンはよく物事を忘れる。と言うか、細かいことを気にしないのだ。たまに大変なことも忘れるんだけど。非常に大雑把というか、とにかくさばさばとした性格だと思う。
イレンが閉めなかった扉の向こうから、朝ごはんのいい匂いが漂ってきて、食欲をかきたてられる。
ベッドの上から飛び出して、駆け足で下へと向かう。朝の食卓によく出てくる、甘ったるいフレンチトーストの匂い。ああ、美味しそうだ。
僕らには空腹という感覚も満腹という感覚もないのだけれど、美味しい物は美味しいわけで。こうして普通の人のように朝昼晩、何か問題がない限りは欠かせず皆で食事を摂る。
……今日はどうやら、僕とイレンとあと一人で、三人だけのようだけど。
「今日も美味しそうな朝ごはんだね! スリミー!」
「あら。ありがとう、トゥール」
僕は、イレンの横で一緒にご飯を食べている、黒髪を一つのみつあみにした女性、スリミーの、エメラルドのような、綺麗な瞳を見つめて言った。スリミーは僕の言葉に、淑やかな笑みを返してくれた。
彼女は、いつも僕たちのお姉さんみたいな存在だ。この家で食べる料理はいつもスリミーが作ってくれる。スリミーの料理は、それはもうコック顔負けの彼女らしい、優しい味のする料理だ。
「いただきまーすっ」
席に座って、手を合わせると僕はすぐに料理に手をつけた。
ふわり、と見るだけでも柔らかそうなフレンチトーストに手を伸ばし、噛み千切る。案の定、とても柔らかくて、心地よい感触だ。他にもサカナのバター焼きや、トマトを煮込んだ野菜たっぷりのスープ。どれも見て、匂いを嗅ぐだけでも美味しいことが分かる。口に入れたら尚更だ。
「ふー、ごちそうさまでしたあ」
そんな美味しいな朝ごはんを、僕はあっと言う間にたいらげた。スリミーがマグカップに注いでくれた、暖かいコーヒーを片手に、僕はイレンを見た。
「む、何だよ、トゥール。私に何かついてるのか?」
「……イレンはさ、どうして彼女が人を創ったと思う?」
「さっきも言っただろう。私には、彼女の考えてる事は分からない」
溜息を吐いて、僕の質問に答えたイレンは、僕と同様にスリミーがマグカップに注いだコーヒーを飲んだ。
ちょっとくらい、あるだろうに。
「スリミーは?」
「そうねえ……そんな事、考えた事なかったけど。人間が彼女の心に必要だったんじゃないかしら」
「彼女は、人にとっては神様だぞ?」
イレンが、怪訝そうな顔をしてスリミーに訊いた。
「予想よ、予想」
スリミーがいつもとは違う、少し悪戯っ子のような微笑を見せた。
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