二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 東方自然癒—一枚の葉と幻想郷—【第一節終了】
- 日時: 2014/11/28 20:29
- 名前: 幻灯夜城 (ID: 3mZ8rXZz)
- 参照: http://tohosizenyu.iza-yoi.net/
〜お知らせ〜
参照3000突破感謝です。
※あてんしょんっ!※
・この作品は、現在フリーゲームにて配信中の東方project二次創作作品「東方自然癒」の二次創作、すなわち三次創作品となっております。苦手な方はご注意下さい。
・この作品には現在フリーゲームにて配信中の「東方自然癒」のネタバレががっつり含まれております。未プレイの方は十分注意してお読み下さい。
・原作「東方project」には存在しないオリジナルキャラクターが登場したり、一部の人物の設定の解釈が違っている場合がございます。
——
皆様、世界のどこかからこんにちは。
本日も、皆様のどこかに何かを齎すべく世界のどこかからこの地へ作品を届けに参りました。
シリアス・ダーク板で連載している「Lost memory」と同時並行で「東方project」の二次創作品「東方自然癒」の三次創作、これを真ENDまで書き上げていきたいと思います。
√は今の所魔理沙、霊夢√の予定です。
上記の※あてんしょんっ!※に同意していただける方のみ、お進みください。
※参照URLにありますは、東方自然癒のサイトとなっております。是非プレイしてみてはいかがでしょうか。
-目次-
第零章「生まれたての葉と幻想郷」>>1
第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」>>2-4 >>7-20
幕間「もう戻れない」>>21
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」9 ( No.12 )
- 日時: 2014/02/03 17:49
- 名前: 幻灯夜城 (ID: 0WV2matm)
現在一行は魔理沙の家までもう直ぐといった所まで来ていた。
周囲の草土はいつの間にか怪しげな枯れ草色へと変貌しており、それが魔法の森であるという印象を訪れた者達に強く刻み付ける。
「ってて……霊夢の奴どうしたんだよ……」
「う、う〜ん……」
お調子者の魔理沙が何時ものように霊夢に呆れられ突っ込まれる。それは然程珍しい光景でもなんでもなく、魔理沙も何時もの恒例行事であるかの如くそれを受け入れていた。だが、今日の霊夢は少し違った。いや、厳密にはうなされた後の事だろうか。
何時もより蹴りの切れが凄まじいというか、本人の不機嫌度合いが何時にも増して高まっているというか。とにかく、そんな感じがするのだ。
「……揃って何腐った食べ物見るような目してるのよ」
「何でも無いぜ! さ、さぁ行くか!!」
そして当人である不信に思われたため、これ以上の詮索は止めようと確信する魔理沙。その空気に気圧されるような形で口篭りとりあえず場の空気を和ませようと(逃げようとしたの間違いだが)明後日の方向を向きながら困り顔で「今日のご飯はなんだろなー!」等と大声で歌う葉。
霊夢当人からしてみればこれほどまでに胡散臭く見えたのは彼女等の方ではないか。
「……ん?」
それは、魔理沙の家が後少し、大体五分位で到着するといった所のことである。霊夢の瞳がそこに何かを捉えた。
それは水色の鳥——もっと正確に言うならば鳥型の妖怪が道の真ん中を陣取っている光景。まるで「此処は通さん!」と中ボスのように陣取るその姿は一見すれば可愛らしささえ感じられるものの、その瞳はまさに狩猟者のそれであった。
霊夢達が近づいても、ソイツは我が物顔でそこに居座り通行人のためにそこを避けるような素振りは見せない。
「お、なんだなんだ? やる気か?」
その勇猛たる態度を魔理沙が買ったのだろう。ずずいっと霊夢と並ぶように前に歩み出れば強い語調で喧嘩を売る。
一方の葉は先程ので少々恐怖(というより一般的な警戒心)が芽生えたのだろうか、「はふ〜……お、襲わないで〜……」だなどと小さな声で言いながら魔理沙の後ろに引っ付く形で隠れている。
「襲うなよ
絶対にだぞ
襲うなよ」
by霊夢心の俳句
「何一句詠んでんだ」
歩いている内に何時の間に調子を取り戻したのか、霊夢が葉の言葉に合わせて謎の一句を読み始めるのに対し魔理沙がビシりと緊張感零の態度に苦笑いで突っ込みを入れる。
だがあの時の霊夢でないということが少々嬉しくもあったのだが。
「というわけでほら! 構えて! 葉!」
「は、はいっ!」
(何が"というわけで"なんだ……?)
味方、主に葉を鼓舞すべく一喝を入れる霊夢。それに後押しされる形で鉄扇を構える葉。それを見た魔理沙もまた箒を構え臨戦態勢に入る。
「せいっ!!」
まずは葉が先陣を切った。相手を捕らえるべく大地より植物の根を急速成長させて何本も生やし、それを鳥妖怪の羽や嘴に絡めて動きを封じんと複雑な動きを以って襲い掛からせる。
——だが、それよりも速く鳥妖怪が動いた。
「う、きゃっ!?」
「葉!?」
その翼より旋風を起こし、自らに絡み付いてくるそれらを弾き飛ばすと同時に鎌鼬現象を起こし刃となったそれが葉に襲い掛かり、彼女の緑の服に傷を付けてゆく。
「よくも……!!」
飛び上がった霊夢、地上で箒を構える魔理沙。
「魔理沙! タイミング合わせなかったら承知しないんだからね!!」
「言われなくても合点承知だぜ!」
「「はぁっ!!」」
上空に舞い上がった霊夢はそれよりも低い場所にいる鳥妖怪へと向けて弾幕を降り注がせ、そして地上にいる魔理沙もまた光色のレーザーを鳥妖怪へと向けて真っ直ぐに放つ。
天地を生かした挟み撃ちであった。これであれば先ほどのように、翼を羽ばたかせた風によるガードも喰らう心配が無い。
反撃を許さぬ二方向からの砲撃。
だが、鳥妖怪の目が一瞬"笑った"ように見えた。
次の瞬間、叩きつけられるようにして降り注いだ弾幕も、一直線に放たれたレーザーも交差衝突して消滅し——"斜め上に舞い上がった鳥妖怪がこちらに風の刃を飛ばしてくる"。
「んなっ……!?」
「マジかっ……!」
愕然としながらも地上へ降りた霊夢、そして魔理沙は葉を守れるような位置につきそれぞれの弾幕を用いて相殺する。
衝突地点で合い争う風の刃と、レーザーとお札の混合弾幕。
そこを爆心地とし互いに放った攻撃が消滅しあたりに爆風と砂煙を撒き散らす。揺らされた木の葉が戦闘から成る衝撃に耐え切れずに飛ばされ、大地が抉れて行く。
「……キリが無いわね」
「ああ、全くだ」
溜め息を付く霊夢と魔理沙。このままでは互いに互いが消耗しあうというジリ貧状態になるのが目に見えて明らかだ。
「ど、どうするんですか?」
先ほどのダメージはほとんど障らなかったのか、少し息を切らしながらも困り顔で二人に問いかける葉。
その問いかけに対し二人は顔を見合わせ、うんと全く同じタイミングで頷く。
「決まってるさ。分が悪いなら逃走だぜ!」
「そうね、一旦対策を立て直すべきね」
「え、えぇっ!?」
何も答えに驚いたわけではない。すんなりとそういう答えが出てきて、そして勢いに任せてぐるりと後ろを振り向いた二人に気圧されたのだ。
そして、二人の逃げ足と来たらそれはそれは速かった。
「それ、逃げるぜ!!」
霊夢と魔理沙が駆け出す。周囲には彼女等が走ったことによる大気のブレが衝撃として放たれ取り残された葉の髪を揺らした。
「は、はやっ!!!」
脱兎の如く大地を駆け出し、一瞬にして戦場から離脱する二人を呆然と見送る形になる葉。
そして背後から聞こえてくる「さっさと帰れ」という威嚇の意味を込めた唸り声。
「……」
背後を振り向き、獣と瞳を合わせる。ご丁寧にも獣の方は攻撃を仕掛けないで逃げるのならば待ってやろうという慢心染みたものをかもし出していたのだがそんなものは今現在の葉には関係の無いことである。
しばらくして、ようやく葉も危機を感じたのか走り始めた。
「ま、待ってください〜〜っ!!」
既に遥か彼方へと逃走していったであろう二人の後を追って、二人よりもよっぽど遅いスピードで大地を駆けて逃げる葉。
幸い、後ろから追ってこられるなんていうことは無く無事に逃げ切れたようだ。
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」10 ( No.13 )
- 日時: 2014/02/05 17:34
- 名前: 幻灯夜城 (ID: Ib5HX0ru)
逃げて。
逃げて逃げて。
逃げて逃げて逃げて。
「はぁっ……はぁっ……!!」
「いい逃げっぷりだ」
ようやく合流したときにかけられた言葉といえば、魔理沙のそんな言葉であった。
霊夢達の下へとたどり着いた時にはもうあの鳥妖怪の姿は見えなくなっていた。代わりにあるのは延々と続く木々の群れであり、一体自分はどれ程の距離を走ってきたのだろうと感じる。
「しっかし、めんどくさい奴がいるわね……」
「何時もならスペルカードで蹴散らしてるからな……」
人様の家の前の通路を我が物顔で陣取るなど小妖怪にあるまじき傲慢不遜な態度であるが、スペルカードを持っていない彼女等にとってはタダのザコが十分な中ボスに成り得る。
「めんどくさいし、魔理沙の家は寄るのやめよっか?」
「えー、せっかくここまで来たのに?」
確かにあの鳥は面倒くさいっちゃ面倒くさい。こちらの放つ弾幕を悠々不適に回避してみせてこちらに反撃を返してこられては決め手がないと何時までも続く消耗戦にしか成り得ない。
「そ、それにっ……ほ、本を……かえっ……さないとっ……!」
息も絶え絶えな様子で葉も反論する。だが、その表情は未だ青ざめており走ってきた時に失った酸素を取り戻しきれてない様子。
「ほんと体力ないんだな。それでも妖怪か?」
「はいはい、そういう言い方しない。あんたのことをここまで気にかけてくれてるってことでしょ」
「しっかしなー……今の所打つ手ゼロだぜ?」
「「……」」
魔理沙の言うことには頷かざるを得なかった。何度も言うが、結局は"それ"なのだ。
幾ら何が欲しいだの何をしたいだの何をしなくてはならないだの言った所で、その過程にある壁……例えば罠、例えば強敵等を乗り越えられなければ結局現実味の無い話になってしまう。
「……しょーがない」
若干重い空気が漂い始めたところで、霊夢が重い腰を上げる。
「神社に戻って、適当に倒せそうなの持ってくるわ」
「ここでパパッとやるってのは?」
「めんどくさい。だるい。そこまでして倒すとか嫌。カード出して宣言する方がいい」
「お前……」
お前はオモチャ売り場でダダを捏ねる子供か——と言われんばかりの否定を述べまくる霊夢。確かにここで作るのは少し時間と手間がかかるが、少なくとも往復移動するよりは時間の短縮にはなるはずだが。
言い方が悪いが、天性の才能が故に努力を怠る巫女らしい発言であった。呆れ返るも、昔からこの巫女はそういう気質だったということにしておこう。
「あんたらはどうする? ついてくる?」
「それもなんだがだぜー」
「わ、私は……ひぃはぁ……ど、どう……」
先ほどから思っていたが、本当に葉は大丈夫なのだろうか。一応200m位は走っているとはいえそろそろ息を整えてもおかしくないはず。
——と、ここで魔理沙の頭に電流が走る。
「そうだ! そういえばこの前アリスの家に泊まったんだよ! スペルカードとか色々忘れてきた気がするんだ」
「そう。なら魔理沙はそれを取りに行く?」
「ん、葉もついてこい。また神社まで往復するの大変だろ?」
「は、はいぃ……」
神社往復どころかアリスの家に向かう前に倒れたりしないだろうか。
「じゃ、そっちはよろしく」
「ああ」
「は、はい……。ふぅ」
言うなり、霊夢は分かれ道より南、即ち博麗神社の方へと駆け出していった。きっと彼女なりに運動不足を感じ取っていたのだろう。その足取りにはしっかりと大地を踏みしめるような感覚があり、こちらにもその様子が伝わってくる。
「それじゃ、葉。行くか。アリスの家はここから北だ」
それを見届け、葉と魔理沙はアリスの家がある北の方角へと向けて分かれ道から歩みを進めていった。
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」11 ( No.14 )
- 日時: 2014/05/23 13:02
- 名前: 幻灯夜城 (ID: .DDflOWn)
魔法の森を歩む彼女等二人——主に葉の足は弾んでいた。
「ふんふ〜ん♪」
「元気そうだな……」
上機嫌に鼻歌を歌いながらスキップで歩みを進める葉と、それに呆れたように苦笑いを浮かべながらも優しく見守る魔理沙。
葉は博麗神社まで一人で来た風なことを言っていたから、恐らくは何日被りに人と共に行動しているのだろう。それが嬉しいのかもしれない。それが少女にとっての幸せかもしれない。
誰だって、人の温もりを求めるものだから。
当然、こんなに楽しくあるいていればアリスの家までたどり着くまでの時間も短く感じることが出来る。
「……お、案外早く着いたな」
やや遠くの方に見えた建物を見て魔理沙が言う。
それは、紅い屋根の家であった。扉はやや大きめの木製の扉であり、ここが大きな家であるというのは全貌を見なくとも分かる。
「お邪魔するぜー」
「お、お邪魔します〜……」
魔理沙が先導する形で扉を押し開けると共に、やや控えめな態度で葉も入っていく。
「あら……」
家へと入った彼らを出迎えた——というよりかは偶然出会ってしまったような表情をしているが——金髪の少女、またの名をアリス・マーガドロイドその人は身支度をしており、その手には魔理沙のものと思しきスペルカードやマジックアイテムが握られていた。
「おいすー、元気してたか?」
「つい先日泊まってったばっかりでしょ」
「挨拶だよ挨拶。ところでなんだ、どこかどこかに出かけるのか?」
アリスの外出用に服装等を整えている様子を見て魔理沙は問いかける。
問いかけられたアリスはやや困り顔で魔理沙の方を見ながら答えた。
「今、魔理沙の家に行こうとしてたところよ。この前、いろいろ忘れていったでしょ」
どうやら、たまたま過程こそ違えど同じ目的であったらしい。家主であるアリスが忘れ物を届けに行くタイミングで、葉達が訪れたということになる。
言われて初めて魔理沙はアリスが持っているものが自分の忘れ物であることに気づいたのか、笑顔で礼を言った。
「おっ、そいつはありがたいぜ! サンキューな!」
「もう……。ところで、そっちこそどうしたの? 何か用?」
「ああ。その忘れ物を取りに来たところだったんだ」
何だ、それなら話は早いとアリスは魔理沙の道具に抜け漏れが無いことを確認する。
「対した忘れ物は無かったと思うけど……はい、これ」
「おぉ、これだこれだ。サンキュー!」
そして、確認を終えると魔理沙に全て渡した。
渡された魔理沙はひーふーみー、だなんて言いながら道具に抜け漏れが無いかを確認している。葉もまた、その様子が気になってしょうがないのかしきりに魔理沙の肩越しにマジックアイテムをしげしげと見つめている。だが、その表情には先程意気揚々と歩いた代償が降りかかってきたかのように疲労の表情を見せていた。
そんな二人の様子を見て、アリスが提案する。
「せっかく来たんだから、一服していく?」
「いいのか?」
「そっちの子が相当疲れているみたいだしね」
言って、アリスは葉の方へ視線をやる。
「はぇ!? あ、え……」
「おっと、全然気づかなかったぜ」
思わぬ所を突かれて狼狽する葉と、こりゃ参ったと言わんばかりに笑みを浮かべる魔理沙。
二人の様子を見かねたのか、答えが出ていないのにも関わらずくい、と客間の方を首の動きで指した。
「はぁ。まぁ、いいわ。さ、上がって。今紅茶持ってくるから」
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」12 ( No.15 )
- 日時: 2014/02/09 18:07
- 名前: 幻灯夜城 (ID: YnzV67hS)
「えっと、初めまして。アリス・マーガドロイドよ」
「は、初めましてっ! 瀬笈 葉っていいます!」
全員が席に着くなり、紅茶を入れて彼女等の前に置いたアリスは葉に対して名乗る。そして魔理沙の方を見れば、やや訝しげな表情で言った。
「見かけないタイプの妖怪だけど……?」
「植物の妖怪みたいだぜ。ちょっと、変わってるよな」
「あ……じゃあ、紅茶はまずかった?」
植物の妖怪だと聞いて若干気まずそうな表情で葉に問いかけるアリス。
しかし葉は何ら気にすること無く答える。
「いえ、とってもおいしいですよ」
「……そ、そう。それならいいけど……」
「植物だけに天然って感じか?」
「はい?」
そんな他愛の無い言葉のやり取りが繰り返されていく。が、そんな中でアリスの様子が若干おかしいことに魔理沙は気づく。
紅茶の件以降、ずっと葉を注視している。まるで、何かを観察しているかのように。
「どうしたアリス。そんなに見つめて」
「……」
「葉に惚れたのか? 応援するぜ?」
そしてやはり魔理沙の減らず口が止まる事は無い。
「寝言は寝てから。そうじゃなくて」
「……ど、どうしたんですか? 米粒でもついてましたか?」
「何もついてないわよ? 気にしないでちょうだいな」
葉もアリスがじっと見つめていることに今更気づいたのだろう。米粒でもついていたのだろうかと頬を弄るが、アリスから何でもないと返され米粒を探っていた自分が恥ずかしくなりちょっと俯く。
そんな様子を微笑ましくみながらも、アリスは問いかける。
「ところで、どうして魔理沙と一緒にいるの?」
「え、えっと……私の住んでいたあたりの植物が、みんな元気なくなっちゃって……博麗神社に行ったら、優しい巫女さんと魔理沙さんが様子を見てくれるって……」
その発言に目を丸くしたのはアリスと魔理沙だ。正確には「優しい巫女さん」というただ一つの単語に対してだけだが。
「……。優しい巫女さんて誰?」
「優しい巫女さんなんかいたか?」
「何を言ってるんですか。霊夢さんのことに決まっているじゃないですか」
二人して揃って葉の方を見る魔理沙とアリス。
そして、視線を逸らして言うのだ。
「……やさしい」
「優しい、ねぇ……?」
とてもじゃないが、今までの霊夢の発言やら容赦なく妖怪を叩きのめしてきたドライな様を見続けているとどう足掻いても優しいとは思えない。というより、賽銭の時点から一般論としての優しいからはかなりかけ離れている。
二人してどもったために疑問符を浮かべる葉。そんな彼女の様子などお構いなしにアリスは魔理沙へと問いかけた。
「……。魔理沙、この子大丈夫なの?」
「植物の妖怪なだけに、頭にお花が咲いているのかもな」
「え、えぇ……?」
二人からの辛らつなコメントに落胆する葉。
「だから、一緒にいるってわけ?」
「ま、それもある」
「魔理沙も大変ね……」
「ま、霊夢っぽく言うなら「大変だけどたいしたこと無い」ぜ」
「……?」
その言葉にどういう意味が含まれているのか、葉は知らない。彼女等との付き合いは短いとはいえ、そのことが少々寂しくもあった。
しばらくの間彼女たちは茶を飲みながら談笑していた。
と、そろそろ頃合いなのか魔理沙が準備をした後に立ち上がった。
「っと、霊夢がもどってくることだろうし、あんまり長居はしていられないか」
「あ、そうですね」
それに続いて、葉も席を立ち上がる。
「いい休憩になった。ありがとなー!」
「どういたしまして。葉……だったわよね。またね」
「はいっ! 紅茶とっても美味しかったです!」
そのまま二人は扉の方へと向かう。が、何かを思い出したかのようにアリスも立ち上がり彼らを引き止めた。
「あ、魔理沙。ちょっと待って」
「ん、なんだ、お金か?」
「お金なんて要求しないわよ。ましてや魔理沙にはね」
どうやら、二人で話したいらしい。そんな雰囲気を汲み取ったのか、葉は「私は先に出ていますね」とだけ言い残して去っていく。
残された魔理沙とアリス。葉が出て行ったことを確認したアリスは早速と言わんばかりに話を切り出した。
「……あの子、植物の妖怪だって自分で言ったの?」
「いや? 霊夢がそうじゃないかって」
「……そう。専門家の霊夢がそういうなら……」
話を聞いてもどこか腑に落ちないといった風な表情であったが、アリスは再び笑顔を取り繕う。
「……ごめん魔理沙。変なとこで引き止めちゃって……」
「いつもながら変なヤツだなー。用はそれだけか?」
「ええ、ごめんね。それと、いつもながら、は余計よ」
「ん。じゃあ行ってくる」
それだけを言って魔理沙も葉の後を追うようにして出て行った。
取り残されたアリスはただ一人、呟く。
「……。形あるものには、必ず何かが宿っているはず。それが、生きているならそれこそ魂のようなものが……。考えすぎならいいけど」
——まぁ、そうとしても。
「油断しないようにね、魔理沙……」
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」13 ( No.16 )
- 日時: 2014/05/22 20:34
- 名前: 幻灯夜城 (ID: 17jRVk42)
「それじゃ、行くか。多分霊夢ももう着いてる頃だろ」
「そうですね。行きましょう!」
そんな会話を交わしながらアリスの家を出て二人は共に元来た道を歩いてゆく。流れる景色は来た時と比べて反転しつつも元へと戻っていくような感覚は、魔理沙は兎も角この辺りを初めて歩く葉にとっては新鮮味溢れるものであろう。
遊楽気分でうきうきとした調子で歩く葉を尻目に見ながら「こういうのもいいもんだよな」とボソりと呟き置いていかれぬように魔理沙も歩調を合わせてゆく。
やがて、その向こうに見えたのは紅白の巫女服——霊夢。
"やや力のない草達"を見回し、難しい顔を浮かべながら考え込んでいる彼女の元へと二人は走ってゆく。
「おっ、霊夢ー」
「忘れ物は見つかった?」
「ああ。そっちの準備は?」
そう問われると、霊夢はスペルカードを1枚出し、ひらひらとしながら余裕の笑みで答える。
「まぁ、あの程度の雑魚になら楽勝でしょう」
その言葉に魔理沙もまたニヤりと笑みを返し。
「ああ、それじゃあ行くか」
——二人の息の合った楽勝という発言。
その言葉に二人の歩んできた修羅のような道の険しさ。そしてそれがどれほど心強いものであるかを葉は再確認する。
この人たちなら、きっと。
頭に浮かんだ言葉。
しかし何故そのようなことを考えたのか分からない。ふっと思考にふけっているうちに霊夢と魔理沙は意気揚々と駆け出してしまっていた。
「……あっ」
気付けば、二人の影が遠い。
このままでは置いていかれる。
「待ってくださーい!!! おーいーてかーなーいでぇえー!!!」
——体力の浪費をいとわず、葉は全力で彼女等の後を追った。
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