二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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デジタルモンスター D:Evo
日時: 2014/02/23 21:56
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

”読者の皆様へ”

はい、どうも読者の皆様、自分はタクと申します。どこかで、見かけた事があるかもしれませんね。二次で、ポケモンとか、デュエマの小説を書いていました。
まだポケモンの小説が終わっていないにも拘らず、新スレを立てるという暴挙に至ったのは、自分がデジモンフォーチュンに嵌ってしまったこと、ということです。これでまた更新が遅れてしまうかもしれませんが、ポケモンの方のストーリーは、もう頭の中ではまとまってしまっているため、後は描いてしまうだけ、というわけです。丁度ストーリー的に一段落したところだったので。

さて今作、クロスウォーズに登場したデジモンも敵方としてリメイクし、登場させる予定です。進化レベルを勝手に追加しているかもしれませんが、デジモンでは設定がころころ変わるのは最早お約束なので・・・・・・。
ちなみに、タイトルのD:Evoはディー・エヴォと読んでいただければ幸いです。まぁ、何かの略語ということだけ認識しておいてください。
というわけで、応援よろしくお願いします!!

電脳世界と現実世界、次元を超えた究極の冒険が今此処に!!飛び込め、仮想電脳空間(デジタルワールド)へ!!

登場人物 >>8
用語解説 >>10

目次

序章(プロローグ)
>>1

ファイル1:デジタルワールド
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6

ファイル2:デジクロス
>>7 >>12 >>13 >>14 >>15

ファイル3:見えてきた強敵

Page:1 2 3



序章(プロローグ) ( No.1 )
日時: 2014/01/27 06:17
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

 体が、痛くない。さっきまで、あんなに痛かったのに。この、仮想電脳空間(デジタルワールド)を吹く風すらも感じない。
 当然だ。あんなに、斬り合ったのだから。この鋼の体を砕くほど。
 なのに、なのに、今目の当たりにしている相手がまだ余裕綽々浮かべて尚も聖騎士としての威厳を漂わせているのが、解せなかった。

 散るならばとっくの昔に散っている。
 散らせているのだ。この命を。桜吹雪の如く。

 命ならば当の昔に置いてきた。


 この一閃の、いや、一戦の前に。

 
「ッらあああ!!!!」

 
 全身全霊を、今の一撃に賭けたつもりだった。

 ‐‐‐‐‐‐この世界のために散るならば、惜しくは無い!!

 一振りした聖剣が、目の前の夷敵を切り裂く音がした。確かに手ごたえは感じる。
 幾度とも振ってきた剣の感覚は、体にこびり付いて、もう取れない。だからこそ、感じた。
 今の一撃で、勝ったはずだ、と。
 確かに真っ二つになっていた。今の敵、そして昔の盟友は。
 見事に奴の体は割れている。断面は黒く疼いていた。そして思ったとおり、そこに詰まっていたのは、データの塊などという綺麗なものではなく、幾多にも蓄積した不正プログラムや、違法ウイルスの塊だった。
 盟友の今の体を構成していたものは、いつの間にか変わってしまったのだ。
 かつての純白はそこには無い。
 そこにあるのは、果てしも無く広がる漆黒の闇。

 だが、そんなことは良かった。今の一撃で、友を救うことが出来たのならば尚更だ。

(こんなになるまで……お前はッ、お前はッ……!)

 体はもう動かない。
 手に宿る力がどんどん抜けていく。
 この、真っ黒な空間の中で、この世界は自分に唯朽ち果てろと言っているのか。
 こうなることはとっくに分かりきっていた。友を救えば、自分もまた消滅の一途を辿る‐‐‐‐‐‐と。
 だが、それらも含めて全て、自分が望んだことである。

 戦いで死ねるならば本望。
 友人を助けるためならば尚更。
 ましてや、この世界の命運をかけた戦いならば。

 救わねばならない。救わねばならない。
 
 二度頭の中で繰り返し、剣を握る。もう、自分の能力を使うことは出来ない。ここまでに、力を使いすぎている。
 もう、自分の命さえも燃やして戦っている状況なのに。
 だからこそだった。最後の一撃は、唯純粋に、聖騎士として付けたかった。小細工なしで。
 狙うは、今の一閃でむき出しになった、彼の核(コア)だ。


 ここで絶つ。



 全て縛る悪夢を。



 もう、誰も居なくなってほしくない。



 だから告げよう、我が友よ。



 生まれ変わって、また会おうと。




「うおらあああ……ッ!?」



 咆哮を上げ、気持ちを奮い立たせた。剣を振り下ろさんとしたその時だ。
 違和感を感じる。特に喉辺りに。冷たい銃口が向けられている。
 考えられる可能性としては、真っ二つになった盟友の右半身、それも右腕がこちらに伸びていることだった。


「愚か者め……! 戦いのときは、最後まで気を抜くなと。そういったはずだぞ……」

 迫る。キィィィィという、音が。まさか、真っ二つになっていても生きているとは、誰も思うまい。
 いや、正確に言えば核を破壊せねば倒したことにはならない。
 だが、それでもだ。
 正常に機能できるとは、普通考えられない。


「絶対零度の凍て付く焔に身を焼かれるが良いわ……!」


 べぎゃべぎゃと嫌な音を立てて半身と半身がくっついた。そして、赤い瞳をぎらつかせて、猟奇的な笑みを浮かべると、最後に渾身の力を込めて、なのか瞳が一回り大きくなる。


 ‐‐‐‐‐‐ガルルキャノン!


 絶対零度の、何もかもを凍て付かせる砲撃が己の心をも凍りつかせる。
 もうだめだ。
 友を救うことの出来なかった無念さに、打ちのめされた。


 落ちる、落ちる、落ちる。


 ただ、無限の闇へ‐‐‐‐‐‐。



 ***


「……おとうさんは、もういないの?」

 自分を抱きしめて泣きじゃくる母の姿がそこにあった。
 あらゆるコンピューターは発達してきた、今からそう遠くない未来。ただ変わらない日常が、そして掛替えの無い日常が続いていくはずだった。

 ”はずだった”。

 ある日、全ての時間が止まった。正確に言えば、世界中全てのコンピューターが。あちこちで、弊害が起こる。
 管理機器の停止、データの消失、そして何より世界が注目していた、新型オートパイロットシャトルの墜落だった。
 宇宙での飛行運用も可能だった、このシャトルも、この大災害に会った。

 居て当たり前だったものが、一瞬で無くなった。

 その試験飛行に立会った父は、遺体も残さないまま、突然この世を去った。
 飛行中に停止した飛行機は、そのまま何も出来ずに墜落。炎を上げながら太平洋のど真ん中に空中分解したという。
 が、幼いこの少年に、父が突然居なくなったという実感など、沸いてくるはずがなかった。
 時に優しく、時に厳しかった、あの父が?
 目の前で棺おけに入っているわけでも無いのに、死んだという実感など、無い。
 
 嗚呼、これは嘘だ。そうだろ? 悪い冗談はやめて、実はエイプリルフールのネタでしたエンド。そしたら皆が、怒って、そして笑って父さんに押しかけるんだ。
 だけど、笑えなかった。
 今日は八月一日。

 とっくに四月一日など過ぎ去っていた。

「え……」

 ただ、少年は見ているしかなかった。傍で泣きじゃくる母を。
 母が、自分を抱きしめる力を強くする。

「強く生きるのよ! 父さんの分まで!」
「うん……」

 呆然と突っ立っているだけの少年。だけど、科学者だった父を奪ったコンピューターウイルス。
 この、後に【電脳大感染(パンデジック)】は、人々の心に強く刻まれ続けることとなる。
 少年は幼くも強かった。

「僕、作ってみせる」
「……?」
「どんなウイルスにも負けない、強いソフトを作るよ!」

 母親は、その言葉で明日に希望が持てたのだった。
 嗚呼、息子はどうしてこんなに強いのだろう。きっと、あの人も向こうで喜んでいるだろう。
 そうだ、終わったわけではない。
 何故なら、まして始まったわけでもないのだから。

 ***


 
 電脳空間(デジタルワールド)、そして現実世界(リアルワールド)。この二つの世界で起こった事件は、間違いなく同時に起こったことである。

 一つのタマゴが電脳空間をさまよい続ける。

 だが、それが誰かの元に渡るのは、十年後の話‐‐‐‐‐‐。

(1) ( No.2 )
日時: 2014/01/29 18:35
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「クリックすべきか。このまま大人しく引下るべきか」

 御堂新志がマウスを片手にデスクトップと睨めっこしているのは、明らかに地雷のサイトに入るかどうかの決断を強いられているから……ではない。いや確かに年齢制限はあった。
 だが所詮”六禁”だった。サイトのタイトルには、こう書いてある。

『六禁ホラーゲーム、六歳未満は立ち入り禁止』と。

 にも拘らず、この少年は入ることをためらっている。
 つまりを言うとこの少年、御堂新志は大胆不敵で好奇心旺盛、成績ははそこそこ、運動は帰宅部一(つまり運動部に勝てない)の一見すればまあまあな少年だったのだが、それに追い討ちをかけるかのように、ホラー系が大の苦手という弱点を抱えていた。
 本人曰く、苦手なものはお化けではなく、ゴーストとファントムであると。
 ならば、見なければいいのだが、ここで彼のもう一つの性格が足を引っ張った。

 ずばり、好奇心旺盛であることだ。

 怖いもの見たさで、この間は十八禁ホラーゲームの実況を見て、失禁したばかりであった。(無論パンツは自分で洗った)
 じゃあたまたま検索してヒットしたこのサイトを見て、新志は訝しげに画面を睨んだ。

(六禁て何だ六禁って……レーティング微妙すぎるだろ)

 とクリックしたのが運の尽き。自分の好奇心を恨む。
 だが、男がここで引下れるか、という変なプライドの所為で選択肢は二つに絞られる。
 「入る」ボタンをクリックするか、ブラウザのバックボタンをクリックして、とっととゲームの実況を見に行くか(無論ホラーではない)のどちらかだった。
 だが、もしもヤバい奴だったら?
 だが、もしも六禁ではなく十六禁だったら?
 だが、もしもしょうもない幼稚な奴だったら?
 だが、もしも意外と面白かったら?
 
 と、不安をいろいろな意味で煽る想像をしてみるが、だめだ。やはりどうしてもジレンマに陥ってしまう。
 そもそも、今日という日が悪いのだ。何故ならば、外は激しく雨がアスファルトを打ち付けており、裏山の木々は撓って、まるで外に出るなと言わんばかりだ。
 それに、御堂新志はクラスではそこそこもてる方といったら、そうである。が、それと彼女が居るというのは別問題ではないか。数ヶ月前も、一人の女子が自分に告白してきたが、あろうことかその次の日に別の男に乗り換えてしまったのである。それ以来、彼は女子の乙女心というものに対し、かなりの警戒を抱くようになっていた。
 だから、新志が彼女と一緒に仲良く雨降りデート、等ということは有り得なかったのである。
 今の服装だって、ヒートテックの黒い長袖Tシャツ。さらにその上に紅いパーカーを羽織っている辺り、完全に私服と分かる。
 そして、亡くした父の形見である紫色のペンダントを首からぶら下げていた。紫色の宝石が埋め込まれており、細かい龍の文様が彫ってあった。
 さて、好い加減考えるのにも飽きたのか、新志は頭を抱えた。

「……だぁ〜! 悩んでいても仕方がねえじゃんか! 虎穴に入らずんば、虎子は得られず! 入るぞ、俺はやるぞ! ポチッとな」

 そういって御堂は、やや後悔気味に目を閉じた。これからくる恐怖の波に備えるため。(何度も言うが、六歳禁)
 目を、恐る恐る開けてみた。が、再度閉じる。何故ならば、「キャァ〜」という少女の悲鳴が聞こえるからである。
 それも、自分と同い年くらいの声色だろうか。一番自分が嫌いな。
 やはり失敗だったか。このサイトは六禁ではなく十六禁だったのだ、と脳が哀しい演算結果を出している間に、とっととブラウザを閉じてしまおうという発想に至った。が、次の瞬間だった。


「そこをどいてくださ〜い!!」


 という少女の悲鳴が聞こえたところで、新志は顔面に強烈な衝撃を感じた。まるで、というかキックを食らったようだった。硬いブーツの底で。
 一瞬、何がなんだか分からなくなった。何が起こっているのか。というか、目をつぶっていた自分が悪いのだが。
 鼻がへしゃげたような感覚を覚えた。そして、後方に吹っ飛ばされる。椅子ごと。
 やはり女というものは声だけでも自分に不幸を齎すのだな、と再三感じながら、彼は現実世界からログアウトしたのであった。


 ***




 声が聞こえる。少なくとも、天国の何たらかんたらではないようである。そもそも、非オカルト主義(と言い張る)の新志には天使だの神様だのは信じる類に値しなかった。
 信じるのは、科学的な数値で立証された事実のみ。と言ってる割には、ホラーサイトに興味本位ではいる辺り、その辺のキャラ付けが甘いのだろうが。

「あのぉ〜、生きてますか?」

 語調が強くなる。怒らせているらしい。このまま目を開けても大丈夫だろうか。しかも、聞こえるのは少女の声。

「仕方が無いなぁ……えいッ!」

 グサッ。

 額に何かが突き刺さるのを感じた。
 新志は再三ログインした。現実世界に。ついでに、激痛のログイボーナスを受け取りながら。

「いってぇなぁおいいい!!」

 慌てて起き上がった。額を、何か尖ったもので刺されたような感じがした。だから痛かったし、自分は悲鳴を上げたのだろうが。

「何なんだ一体! てかアレですか!? 俺今日大凶!? うっそマジで、最悪じゃねえか!」
「何言っているのは貴方のほうですよ、人間さん」

 見れば、そこには純白の少女。清楚という言葉が正しかったのだろうが、唯ひとつ奇妙なのは、妙な被り物をしていることだった。そして、シスターさんと呼ぶには奇妙だったのは、その少女が三又の槍を小脇に抱えていたからであった。
 皮の鞄をぶら下げた少女は、首をかしげて言った。

「何でもいいけど、貴方誰ですか」
「俺が聞きてぇわ、武装シスター! どこぞのラノベと丸かぶりなんだよ、自重しろ!」
「ちょっと! それは無いんじゃないですか。私はわざわざ助けてあげたんですよ? 倒れていた貴方を」

 憤慨したように彼女は言った。

「たぶん、原因はお前以外の何者でもなく、その後槍で突き刺したのもお前だろうが!」

「あ、ばれました?」とペロリと舌を出して見せて答える辺り、性質は無邪気なのだろうが、女子が嫌いな御堂にとってはその辺りいい気はしなかった。
 しかも、やり方が強引過ぎる。自分にとって苦手なタイプだ。口調こそ丁寧だが、メッキが剥がれてきている。

「お前いきなり何!? 人ん家勝手に上がりこんで、よく分からないもので頭ブッ刺しやがってこるァ!」
「起きない貴方が悪いんです」
「俺を眠りに誘ったのお前!」
「起きない貴方が悪いんです」
「二度も言うな!」

 目くじら立ててまくし立てるも、全く動じない少女。なんというか、図太いというか……。
 が、しかしこの少女はどこから入り込んできた? という疑問が付きまとった。
 目立ちすぎる。この格好は。
 玄関から入ってきた? いや、それなら母と接触していてもおかしくはない。
 では窓から? 否、新手の泥棒? 

 この世のどこに、コスプレして民家に入る少女泥棒がいると。

 だから一応たずねた。

「お前、どこから来た?」
「電脳世界(デジタルワールド)ですよ」

 新志は顔を背けた。ダメだ、頭のねじの向きが完全に俺ら一般人とは違う、と。
 少女は膨れっ面をした。昭和の古い少女マンガの主人公かと思った。いまさらだが、感情豊かで表情もそれに比例している。

「それも、貴方に会うために、です!」
「どんな電影少女!? ふざけんな聞いたことがねぇぞ!」
「貴方は適格者なんですよ? ようやく見つけることが出来たんです」
「何が基準だ?」

「それ」と少女が指差したのは、真っ直ぐと形見のペンダントだった。
 思わず悪態をつく。いや、つかなければ気が済まない。

「寝言は寝て言え電波シスター」
「なら、信じられないようですから案内しましょう」

 にっこり微笑む少女。そのときの顔が、一番シスターさんらしかった。
 が、そんな新志の余裕は一瞬で消えうせる。
 PCのデスクトップがおかしい。
 まるで、渦を巻いているようだ。
 混沌とした世界へと誘うように。


「仮想電脳世界(デジタルワールド)を!」


 その瞬間、渦が一気に大きく開いた。新志と少女を飲み込むように……。

(2) ( No.3 )
日時: 2014/01/29 18:35
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「何だ、これは」

 少年はふと呟いた。パソコンのデスクトップや、ホログラム状に浮き上がったモニターをタッチしながら、訝しげに画面を睨む。
 ピッ、ピッと映し出された画像の解析を始めた。そこには、広大な大地が広がっていた。
 だが、問題はそこではない。そんなものは、もう見慣れている。眼鏡を直して再三画面を睨んだ。

「侵入者?」

 後ろから声が響いた。茜色の髪にピンを止めて、ややショート気味にした少女だ。
 この、やや開けた部屋の中でサーバーの管理を行っている少年が耳に止めるくらいだから、少し大きかっただろうか。

「嗚呼、そうだ。まさか、こんなときに限って……な。まだワープ中だから、幾らでも対策は取れる。恐らく、素人だろうな。一人は少女型のデジモンに”アバター”を”変換”してやがる」
「へーえ。私達以外で現実世界(リアル)から仮想電脳世界(デジタル)に”直接”アクセスできる人間なんて、居ないと思っていたんだけどね」
「ふん、僕から言わせれば……」
「”格好のヒジキ”でしょ?」

 得意げに少女は言った。間違ってる。言葉の使い方というか、言葉自体が。
 ため息をつく少年。その、裂けたような鋭い目でダメ出しする。

「馬鹿”格好の餌食”だ。アレか? 夕食の食卓に並ぶアレじゃないんだぞ?」
「ごめん、ごめん、日本語って簡単なようで難しいからさぁ」
「君が馬鹿なだけだ馬鹿」
「ふぇ? ストレートすぎるよぉ〜」

 涙目で訴える少女。あざとさを強調しているつもりだろうが、この少年にはまるっきり使えないのであった。

「相手が敵性のハッカーならば、容赦なく捕縛するのみだ」
「私達と同じ子供っぽいけど?」
「カモフラージュだ。恐らくな。こっちも”変換”を使ってこちらの油断を誘ったのだろうが、やはり素人だな。逆に目立っていることに気付いていまい」

 そういうと、少年は一枚のモニターを展開する。そして、余裕綽々と言った笑みでタッチした。

「【対抗】。ガオスモン六匹と、ワープ中の奴らをミス誘導しろ」
「りょ〜かい! って、アレを六匹!? 捕縛する気無いよね?」

 少女は、緊迫した表情で続けた。


「捕縛どころか”殺すつもり”!?」


 と。
 少年は、笑み一つ零さずに答える。まるで、何も感じていないかのように。感情の無いマシーンのように。

「ふん、俺も丁度こいつらの力を試しておきたかったところだ。それに、敵にかける情けなど、最初から無い」
「ちょっと、ちょっとー! 幾らなんでも、あいつらはヤバいっていうか……」
「最悪進化させればなんら問題はない」
「いやいやいや、根本的な問題の解決に至っていないんだけど!?」

 慌てて答える少女の顔も見ず、少年は「送信」ボタンを押してしまうのだった。

「……どーなっても知らないよ? てか、あんたは行かないわけ?」
「ふん、遠隔指揮で十分だ」

 画面を見据えると、いつに無く厳しい表情でため息をついた少年であった。


 ***


「……どこだぁ、ここはぁ」

 御堂新志は酔っていた。急に、引きずり込まれるような感覚を覚えた後、ジェットコースターと同等の衝撃を感じ、さらにそれを生身で受けたため、今にもリバースしてしまいそうである。

「ようこそ、ここがデジタルワールド・プロトコル大陸中央都市、半永久機関(エターナルシティ)です……あれ?」

 少女は、辺りを見回した。
 彼女は確かに町といった。だが、実際に自分達がいるのは森だ。うっそうと木々が茂る森である。

「夢だ、夢なんだぁ……」

 新志が呟くと、少女は彼の頬を抓った。
 痛い。夢ではないようだった。

「分かった、分かった! 夢じゃねえのは分かった! だけどよ、ここって都市かぁ? どっからどうみてもジャングルみてえな森林……」
「まずいですね」

 少女は言った。まるで、何かの危機にさらされているような顔で。いや、実際問題さらされているのは新志なのだろうが。

「どうやら、何らかの以上が原因でこの森に飛ばされたらしいです」

 思わず、辺りを見回す。
 パッと見は普通の森となんら違いは無かった。上空に龍らしき影が飛んでいるのと、近くにナメクジと呼ぶには大きすぎる生命体が這っていること意外は。

「うわぁー!! 化けモンだァー!!」
「バケモンじゃありません。地面を這っているのはヌメモンと、上空を飛んでいるのはバードラモンですね」
「何それ!? 何モンなんだよ!?」
「電脳生命体、デジタルモンスター、通称”デジモン”。この世界を生き続ける宿命を負った、現実世界の生物を超越する力を持つ生命体、と理解していただけたら幸いです」

 少女は、淡々と続けた。……タブレット端末を見ながら。
 はっきり言うが、順応してきている自分が怖い。こんな生命体がうろつく場所で、自分は何をさせられるためにここへ?
 というか、少女においては思いっきりその端末を読みながら解説していたのだが。

「棒読みじゃねえか、丸っきりそれを読んでんだろうが!!」
「う、うるさいですね! 何も読んじゃいませんよ! かく言う私もデジモンですし」

 思わず、腰が抜けた。「大丈夫です」と続ける彼女。はっきり言って、もう帰りたかったが、好奇心が邪魔をする。
 まぁ行こうかなと思って逃げなかった自分が馬鹿だった、と感じる新志。見回せば、確かに他にも奇妙な生命体はいた。
 特に、体中が機械で出来たクワガタムシのようなデジモンや、空中をふわふわ浮いているつぼみのようなデジモンなど、色々居た。
 順応してしまっている自分が怖い。

「とにかく、この森からはすぐです。速やかに森の出口へ向かいましょう」
「あ、ああ」

 と、持ち前の好奇心で不覚にも足を踏み出したそのときだった。
 草むらからガサガサと幾つも音がする。見回せば、辺り全体からだ。周囲のデジモンは恐れをなすように逃げ出してしまった。
 刹那、恐竜の首に足が付いたデジモンが何匹も飛び出してきて、自分達を囲ってしまった。
 みんな、牙をむき出しにして低くうなっている。まるで、犬のように。

「そ、そんな……! こんなときに限って、こんな厄介なデジモンに目を付けられるなんて!」


 ”デジモンデータNo1 ガオスモン ウイルス種 成長期
 非常に強暴で気性は荒い爬虫類型のデジモン。しかし、水が苦手でよく水溜りでおぼれて気絶しているシーンを確認できる。必殺技は、口から適度に熱い炎を吐き出す「キロフレイム」”

 その外見は、青い皮膚に覆われた一見すれば唯の爬虫類だったのだが、前足は無く、首から後ろ足だけが生えているような形だ。
 
 それらは皆威嚇するように吼え始めた。恐怖心を駆り立てる。

 十四年という、やや長い人生の中でも死に直結するような危機に瀕したことのない新志は腰を抜かして、ただただ成り行きに任せるしかないのであった。 

(3) ( No.4 )
日時: 2014/01/29 19:11
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

 突如現れた群れは、低くうなりを上げて飛び掛ってきた。
 刹那、金色のラインが宙を飛ぶ。少女が振り上げた三叉の槍がガオスモンのうちの一匹を切り裂いたのだ。ガオスモンは真っ二つになって倒れる。
 逃げ道が出来上がった。咄嗟に少女は新志の手を引いて駆け出した。

「逃げましょう! 成長期の私と奴ら一匹分は同レベル、だから何匹も掛かってこられたら捌き切れません!」

(死ぬ、死ぬ! 死ぬぅ〜!!)

 涙目で引きずられながらも、何とかその場を脱出することで危機を逃れた……訳は無かった。
 無論、動く敵を見れば追いたくなるのがガオスモンの習性である。よく言えば根性があり、悪く言えばしつこい。

「うっ、うっ、何でこんな目に……」

 体勢を即座に立て直し、起き上がる新志。何とか、並走できるまでには復帰した。
 地面は土だ。現実世界と全く同じ質感で、違和感を全く感じない。もともと、運動には自身のあるほうだ。走って逃げ切るのは容易い。
 と、思っていた時代が彼にもあった。

「くっそぉ!!」

 五匹。まだ五匹いる。上に述べた補正があったとして、所詮ただの一般中学生に過ぎない新志は、陸上選手でもスポーツ選手でも、そのどっちでもないため、振り切るにはかなりまずい状況といえよう。



 ***

「ねぇねぇ、調べてみたんだけど、あの二人カモフラージュも何もやっていないみたいだよ? 子供と、人型のデジモン。それで間違いないね」
「関係ないな。デジタルワールドへの外部からの干渉は俺ら以外認められていない。取り締まるのが俺の役目だ。それに、少年ハッカーがデジモンを使って進入した可能性もある。どちらにせよ、捕らえねばなるまい」
「かったいなぁ〜、相変わらず。でも好きだよ、あんたのそーいうところは」

 ニコニコ笑う少女。振り向いてそれを見た少年は、鬱陶しげに言った。普通の男子ならば、今の笑顔でノックダウンするところだろうが、少年は違った。
 もう、魂胆は読めてしまっている。

「……また何かスイーツおごってほしいのか」
「あ、バレた? じゃあさ、じゃあさ、今度プリンアラモードとメrンフロートとチーズバーガーをお願い!」
「やだ」
「ちぇ〜、ケチぃ〜」

 

 ***



 助かった、とでも言っておこうか。ひとまず、奴らの視界から外れて木の上に上った。あの体躯ならば、まず登って来れまい。
 意外と太い幹だったので、上に乗っても折れそうにはなかった。

「んじゃあ、そろそろ教えてもらおうかな」

 と、新志は切り出した。
 当然、何故自分が此処に連れてこられたのか。父の形見のペンダントと関連性は何処か。そして、帰るアテは? 
 と疑問は山積みにある。だが、何より教えてほしかったのは、デジタルモンスター、通称デジモンと呼ばれる生命体のことが第一だった。
 これでも新志は常識人だ。まずは、この世界の生命体のことを知って危険を回避する方法を知っておかなくてはなるまい、と判断したのであろう。

「デジモンのことについては、まぁ置いておきましょうか」

 スルーされた。

「んじゃあ、こっちを聞くか。何で俺を此処に連れてきた?」

「貴方に、この世界の英雄を復活させてほしいからです」
「英雄?」

 いよいよ雲行きがおかしくなってきた。

「この世界の名は、【仮想電脳空間(デジタルワールド)】。【現実世界(リアルワールド)】とは、似て非なり、そして相反す世界」
「? 、?」
「つまり、ネットワーク上に突如作られた現実世界の模型(ジオラマ)のようなものです。誰がいつ作ったのかは知らないんですけど、そのことは今のところ公にはされていません」
「はぁ、そしてこの世界に生息する生命体が電脳獣(デジタルモンスター)、通称デジモンってわけか」
「はい、彼らに課された試練はネットワークを守護すること。それは、この世界での状況がネットワークに大きく影響するからです」

 彼女の話に半信半疑の新志だったが、大人しく聞いていることにした。

「当初、この世界には【データ】という属性のデジモンが生息していました。ですが、ある日を境にネットワークに悪影響を与えるデジモン、【ウイルス】が出現したんです」
「ん? てことは俺を呼んだのは、まさか人間の俺にそいつらを退治してほしいからとかいう、桃太郎的ノリな理由じゃねえだろうな?」
「違います! 最後まで人の話を聞いてくださいよ、馬鹿!」
「馬鹿!?」
「それで、【ウイルス】に対抗するため、【聖騎士(ロイヤルナイツ)】を神々は創造しました。彼らの制圧力と抑止力は大きいものでしたが、それでも尚止まらないウイルスデジモンに対抗するため、【ワクチン】というデジモンが登場したんです」
「じゃあ、何なんだ!? もったいぶらずに教えてくれよ!」
「異変です」

 深刻そうに頭を抱えて彼女は続けた。

「【聖騎士(ロイヤルナイツ)】の一人、オメガモンに異変が起こったからなんです」
「オメガモン?」
「はい。彼は非常に強い戦士だったのですが、来る日も来る日も明け暮れるウイルスデジモンとの戦いで、体が汚染されてしまって、数年前。突如、暴走を起こしました」

「それが‐‐‐‐‐‐」少女は、うつむきながら言った。悲しそうな顔を押し殺して。
 その時だった。吼える声が近づいてきた。

「まさか奴らが‐‐‐‐‐‐」

 見下ろせば、さっきのガオスモン達が群がっている。少女は飛び降りて、槍を構えた。止めようとした新志だったが、彼女は叫ぶ。

「来ないで! ここは私が食い止めます!」
「クソッ……何でバレたんだ!?」



 ***

「うろたえてるわね、あいつら」
「全く、俺達はこっち(現実世界)から向こうを見ることが出来るんだ。簡単には逃げ切らせないよ、コソ泥が……」
「そうね、捕まえてからどうしようかな?」

 画面の向こうから、悪意のある顔を浮かべて微笑む茜色の少女。

「さぁ、仕上げにかかるぞ」

 少年は、キーボードのエンターキーを押す。画面には、「実行」と浮き出ている。

 ***

「はぁぁぁ!!」

 槍を振り下ろし、肉を切り裂く嫌な音が聞こえる。一匹は真っ二つ。そのまま、ドットのように砕けてなくなる。
 新志は、何も出来ない自分に憤りを感じた。思わず、身を乗り出す。守られてばかりじゃダメなんだと。

「おい、電波シスター、今すぐ助けてやる!」
「ちょっと、待ってください!」

 少女は慌てて答える。後、二匹……あれ、もう一匹は!?


 そのとき、ガオスモンの一匹が死角から飛び出してきた。

 ‐‐‐‐‐‐このままでは噛まれる!!

 咄嗟に身構えようとする少女、しかし間に合わない。


 刹那。一本の腕が飛び出た。新志が飛び込んできたのだ。間一髪、少女は難を逃れる。しかし、血しぶきが上がる。
 次の瞬間飛び込んできたのは、真っ赤な水溜り。すぐに、槍でガオスモンの頭を貫き、破壊(デリート)した。

「無茶しないでください!!」
「馬鹿言え、電波。ここで女の子一人放ってみておけるほど、俺は頭良くねぇんだよ!!」

 傷がずきずき痛む。それでも尚立ち上がろうとするのを、少女は手で制した。

「言いそびれましたが、私の名はシスタモン・ブラン。その役割はテイマーである貴方を護る事! その貴方が死ぬ目に遭ってどうするんですか!」

 あと一匹。もう少し。もう少しのはずなのに起こったアクシデント。
 迫るガオスモン。低いうなり声を上げて。


 ***

「さぁ、これでフィナーレだ」

 そう呟くと、少年はデバイスのような装置を手に取った。そして、紅い宝石のようなものを埋め込む。
 機会の音声が発せられた。

『エヴォリューションエナジーVer1起動』
「行くぞ。ガオスモン、進化!」

 ***

 これさえなぎ払えば、最後だ。
 と、思ったその時だった。ガオスモンの体が分解し始める。まるで、パズルのピースが一つ一つ崩れ落ちるように。
 ブランの顔が青ざめた。

「う、嘘でしょう……」

 無慈悲な体の構築とともに、恐竜型デジモンはその場に君臨し、咆哮を上げたのだった。

(4) ( No.5 )
日時: 2014/02/01 20:26
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

 青い身体にオレンジの筋が入った体色のティラノサウルス型のデジモン。頭部には灰色の頭殻と三本のツノを持ち、その上からヘッドホンのようなパーツを付けている。
 咆哮を上げた。その姿からは威圧さえ感じる。
 恐怖、恐怖、恐怖。
 希望さえも喰らい尽くさんとの勢いで、その大顎を開いて迫ってくる。

 ”デジモンデータNo2 グレイモン ウイルス種 成熟期
 ガオスモンの進化系。気性は非常に荒い上に、同属にも容赦の無い冷徹さを持つ、まさに戦う為だけに生まれれてきたデジモンである。必殺技は、口から灼熱の炎を吐き出す「メガフレイム」と、尻尾を振り上げて相手を一気に薙ぎ払う「ブラスターテイル」。”

「シンニュウシャ……ハイジョ……」

 即、逃亡。無慈悲で機械的な音声は闘争本能ではなく、逃走本能を駆り立てた。
 しかし、腕がズキズキ痛み、振ることが出来ない。
 それに、戦いの中で敵の前で逃げることなど許されるわけが無い。

「おい、電波……じゃなかったブラン! 何か手立てはねーもんかよ?」
「あるといえば、あるんですが……」

 ブランは、革のバッグを垣間見たが、諦めたように新志の方を向く。

「ダメです。”時が来るまで”は」
「はぁ!? あるんじゃねえのかよ!」
「ダメなんです! もう後は、祈るしかないんですよ!」
「祈るんじゃねえ、こうなったら……」

 血滴る腕を押さえ、新志は足を踏み出す。グレイモンの前へ。
 怖くない。怖くなんか無い。
 
 ここまでくれば、後はもうデッド・オア・デッド。たとえ、死ぬ覚悟でも逃げたくなんかはない。
 
「ダメです! 人間がデジモンに勝てるわけが無いじゃないですか!」
「うっせぇ、やってみねぇと分かんねぇだろうがぁー!!」

 足は動く! その距離、10m。それを一瞬で縮めると、無事な右腕を振り上げた。
 同時に、グレイモンの口から灼熱の炎が溜まっているのが見える。

「ダ、ダメー!」

 ‐‐‐‐避けきれない! だけど、避けきるつもりなんか、さらさらない!!


 新志と炎が運命的な出会いを果たす、直前だった。眩いほどの光が辺りを包み込む。グレイモンは不覚にも炎を出すのを留まったようだった。
 光がだんだん弱まる。ブランの鞄から、一陣の紫電が新志の足元に到達した。

 目を開ければ、自分の足元に居たのは小さな獣だった。紫色の体毛に包まれており、赤い瞳を持つ。さらに、コウモリのような翼を持っている。

「や、やった……! これで戦えます!」

 新志は頷いて答えて見せた。暗闇に僅かながら光がともった!

 ”デジモンデータNo3 ドルモン データ種 成長期
 額に旧式の「インターフェース」を持つデジモン。この部分を開発することで新たなる力を得ることが出来るらしいが、失敗すれば最悪デジコアが崩壊する。元々が戦闘種族であるデジモンの性格が強く表れており、闘争本能が高く、何にでもよく噛み付きよく吼えるが、一度噛み付いたものには馴れるらしい。必殺技は鉄球を口から放つ「メタルキャノン」。”

「よっしゃぁ、お前! 一緒にアイツをぶっ潰してやろうぜ!!」

「やだ」


 即答。紫色のデジモンは悪びれた様子も無く答えた。
 ブランは、たしなめるように叫ぶ。

「ド、ドルモン! 今はあの人間と協力して戦わなきゃ!」
「ヤダね!おいらだけで十分だい!」

 そう叫ぶと、ドルモンはグレイモンへ一直線に飛んでいく。新志は、こんなの聞いていないぞと言わんばかりにブランを睨む。まるで、悪質通販に引っかかったみたいに。

「どーゆーことだ!?」
「私に言われても困るんです! あのデジモン、ドルモンはちょっと自信過剰で、1人で突っ走ってしまうところがあって……」
「ああ、何だそりゃ!?」

 新志はため息をついた。そして、もう一度続けた。


「まるで、俺自身が俺を見ているみたいじゃねえか!!」


 ドルモンの猛攻が始まった。鉄がドルモンの口に収束して、固まりとなり、やがて鉄のボールへと変わった。

 ‐‐‐‐必殺プログラム「メタルキャノン」!

 鉄のボールは、空を切って一気に飛んでいった。
 大気が切り裂かれる音とともに、グレイモンの腹へ。しかし、直撃した鉄のボールは砕け散る。

「ぜっ、全然効いてねえ!?」

 驚いて叫ぶドルモン。全力の攻撃だったのか、うろたえる。
 グレイモンの瞳が鋭く光る。頂点捕食者としての本能をむき出しにして、咆哮した。そして、口に灼熱の炎を溜めて、一気に放った。

 ‐‐‐‐必殺プログラム「メガフレイム」!

 灼熱の炎は一気に野を焼き払う。じりじりと熱さが肌を焼いた。ドルモンはのけぞって体を翻し、かわす。
 しかし、その回避で新志達は丸腰に。完全に、ドルモンと距離を離されてしまった。
 邪魔をするものが居ないからか、グレイモンは新志の方へ。


 次の瞬間だった。青いラインがブランをめがけて飛んでいく。

 ‐‐‐‐攻撃プログラム「ブラスターテイル」!

 尻尾が空を切ってブランへ襲い掛かった。避けきれずに跳ね飛ばされるブラン。だが、それでも容赦なくグレイモンは歩み寄る。
 新志は助けようとしたが、足が動かない。そして、熱い。どうやら、さっきの炎で右足に火傷を負ったか。

「ブランに手を出すなあああ!!」

 ドルモンは、素早く駆け出してグレイモンの尻尾に噛み付いた。痛みこそ感じないが、邪魔だと思ったのか、グレイモンは尻尾を振り回す。
 目が回る。同時に世界が回る。

「なひゃねひゃはへられろれららひひゃられぇ〜!」

 意味不明な言葉を叫ぶ。そして、遠心力には逆らえない。
 ドルモンはそのまま吹っ飛ばされる。グシャッと嫌な音とともにドルモンはそのまま倒れた。
 さらに、ブラスターテイルがブランの足元に炸裂して地面が割れる。突然の衝撃でブランは吹き飛ばされて、そのまま地面に落ちた。
 動かない。気絶しているようだった。

 ‐‐‐‐どうするんだ!? ブランもドルモンも助けてえ! だけど……

 二人の距離が離れすぎている。

「助けてェ……!」

 呟いた。

「助けてェんだ……!」

 今度は力強く。

「ここでジッとしてられねえんだァー!!」

 そう叫ぶと、足を踏み出してブランを抱える。火傷が痛んだが、この程度はどうってことはない。
 尻尾が振ってきたが、寸前で飛んで避け、さらに滑り込んでドルモンも小脇に抱えた。
 そして、ドルモンを揺すって呼びかけた。

「おい馬鹿、ドルモン! ここで寝てる場合か! 護りてえんだろ!?
 さっきお前、必死でグレイモンに喰らいついていったよな! あれは、ブランを助けてえ一心からだろ!? だから起きろよ!」

 ドルモンは、呻き声を上げると恐る恐る目を開けた。


「まだ始まってすらいねえよ! だから好い加減、始めようぜ相棒!」

「分かってらァ……」

 ドルモンは小さくも確かにそう呟いたのが聞こえた。

「オイラを舐めてんじゃ、ねえぞォー!!」

 起き上がって、ドルモンは新志の小脇から離れて飛んでいく。

「おい、お前。アラシって言ったな! お前が持ってるデジヴァイス……そう、その機械だ! そいつに、お前の持ってるエヴォリューションエナジーをはめ込むんだ!」
「え!? どれだよ、そのエヴォリューションなんとかって!!」
「反応するんだよ! お前のペンダントから! さぁ、始めようぜアラシ!」

「マジか!?」とペンダントの宝石を見る。まさかこれを、はめ込むのか?と半信半疑で見つめた。見れば、デジヴァイスとか言う機械には、丁度それが入るくらいの大きさの穴があった。
 時間が無い。急いではめ込む。


『エヴォリューションエナジーVer1起動』
「ドルモン、進化ッ!!」

 
 次の瞬間、眩いほどの光が辺りを包み込んだ。


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