二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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フレッシュプリキュア!〜僕は敵に恋をした〜
日時: 2016/07/17 00:09
名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)

えっと、はじめましてか何度目まして。春太郎といいます
今日からは、プリキュアとの恋愛小説を書きたいなと思っております
それでですね、前回に「フレッシュプリキュア!〜新たなる刺客〜」という作品を書いていたのですが、途中でなんだか書けなくなって、断念しました
しかし、とある別のカキコ作家さんとプリキュアの合作をさせていただき、その中で物語のヒントを得た私春太郎は今宵、舞い戻ってきました!拍手!
今回こそは、完結できるように、精一杯頑張りたいと思います
それでは、よろしくお願いします

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Re: フレッシュプリキュア!〜僕は敵に恋をした〜 ( No.5 )
日時: 2016/07/19 17:25
名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)

「僕は四季修弥。よろしくね。えっと・・・・・・山吹さん?」

 僕が言うと、山吹祈里はコクッと頷いた。
 だんだんと、彼女の顔が資料で見た写真と一致する。
 コイツがプリキュア・・・・・・キュアパインか。

「うんっ。よろしくね、えっと、四季君?」
「あぁ。修弥でいいよ。ところで、その犬は・・・・・・」

 僕は話題探しとして無難な犬に目を向けてやる。

「あ、この子はラッキー。私の家動物病院で、そこの患者さんでね。元気になったかどうかっていうのを、こうやって散歩して確認してあげるのよ」
「へぇ・・・・・・。動物とか好きなの?」
「大好き!動物さんって、たまに酷いこと言う子もいるけど、みんな可愛くて、優しい良い子なのよ」
「酷いこと言うって・・・・・・動物は話さないよ?」
「あ、それは、えっと・・・・・・」

 僕の言葉に祈里は目を逸らす。
 ・・・・・・資料に書いてあったけど、こいつら確実に半年以上は親にプリキュアのこと隠してたんだよな?
 よく隠せていたな。その演技力で。
 その時、祈里の腰に付いているピンクと白のポーチが目に入る。
 それを見た瞬間、僕の視線はその一点に固まる。あれが変身道具か・・・・・・。

「ところで、その腰に付いているものは、何?携帯?」
「え?あぁ、うん。そうよ」

 祈里はそう言うと片手で器用にポーチを開け、中から黄色の妙にキラキラした携帯を出した。
 間違いない。プリキュアの変身道具である、リンクルンだ。

「これはリンクルンって言って、世界に一つしかない。私だけのものなの」
「へぇ・・・・・・それはすごい。良かったらそれ、僕に見せてくれないかな?」

 僕の言葉に、祈里の瞳はわずかに揺らぐ。
 笑みを引きつらせ、「えっ・・・・・・」と言う。

「ちょっとよく見てみたいだけだよ。あぁ、もしかして、女子っぽいものが好きとか思っちゃったかな?違う違う。僕はただ、世界に一つしかないっていう携帯を、よく見てみたいだけだから」

 僕は安心させるように、できるだけ優しい声色で言ってやる。
 祈里は両手で携帯を持ち、「傷つけたりしないでね」と言って僕に渡してくる。
 僕はそれに手を伸ばす。少しずつ、少しずつ・・・・・・そして・・・・・・———。

「あ、ブッキー!やっほー!」

 どこからか聴こえた声に、僕の手は止まる。
 眼球だけ動かして見ると、明るい茶髪を頭の高めの位置でツインテールにした少女が手を振っている。
 その隣には、紺色の髪を肩で揃えた赤い目の少女が立っていた。
 祈里と知り合いということは、同じプリキュアの・・・・・・桃園ラブに・・・・・・東せつな・・・・・・ッ!
 彼女等は僕たちの元まで駆け寄ってくると、僕を見て首を傾げた。

「あれぇ?この子誰?見たことないけど、ブッキーの彼氏?」
「あぁ、彼は・・・・・・って、ラブちゃん!?」

 ラブの言葉を聞いた祈里は、顔を真っ赤にして声を張り上げた。
 その時、妙に視線を感じたので見ると、せつなが僕の顔をジッと見つめていた。

「ん?何、僕の顔に何か付いてる?」
「・・・・・・いえ。ただ、どこかで見たことある顔だなぁって」

 なるほどな。1年半会ってなかった上に、基本ラビリンスの衣装の状態で会っていたから、こちらの姿の方は覚えていないだろうが、顔は一緒なわけだから記憶のどこかにでも引っ掛かったのだろう。
 とはいえ、その程度なら誤魔化しは簡単だ。

「あぁ。よく言われるんだよ。参っちゃうなぁ・・・・・・」
「あ、確かにアイドルとかにいそうだもんね!イケメンだもんねー。えっと・・・・・・何君?」

 僕の誤魔化しに同調したラブは、すぐに祈里に聞く。
 祈里は苦笑いしつつ、「四季修弥だよ」と答える。

「へぇ。修弥君かぁー。あ、私は桃園ラブ!で、こっちの子が東せつな!」
「東せつなです。よろしく」

 せつなはそう言って礼をする。
 しかし、顔を上げたその目には、未だに僕への疑心が籠っている気がした。

「修弥君・・・・・・シーザーって、ご存知かしら?」

Re: フレッシュプリキュア!〜僕は敵に恋をした〜 ( No.6 )
日時: 2016/07/20 15:39
名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)

「修弥君・・・・・・シーザーって、ご存知かしら?」

 突然の一言に、僕は一瞬固まってしまった。
 やはり、疑っているのか・・・・・・どうしたものか。
 まぁ、誤魔化すしかないんだけど、さ。

「ちょっとせつな。急にどうし・・・・・・」
「ラブとブッキーは、少し黙ってて。それで、どうなの?」

 なるほど。聞き出そうってわけか。
 とはいえ、仮に本人だとしても、正直に言うわけないだろうに。

「シーザーって・・・・・・何?シーザーサラダ?」

 僕が首を傾げて見せると、せつなは「いえ、知らないならいいの」と目を逸らした。
 しかし、その目は未だに僕を疑っている。
 当たり前か。だって本人だもの。

「でもさぁ、修弥君って、すっごくイケメンだよね〜。同じ町に住んでたんだったら、噂くらいは聞いてもおかしくないのに〜」
「あぁ・・・・・・実は、つい最近引っ越してきたばかりなんだ。今日も、町を知るために散歩してただけ」
「引っ越してきたばかりってことは・・・・・・もしや、カオルちゃんのドーナツも知らないんじゃ!?」

 ラブはそう言うとすぐに近くにあったでかい車まで走っていく。

「・・・・・・慌ただしい子だね。彼女は」
「ラブちゃんはいつも元気で、天真爛漫というか・・・・・・」

 祈里は困った様子でそう言うと、頬を掻いた。
 それにしても、と考える。流石にこれだけ人がいて、全員のリンクルンを奪うのは難しいだろう。
 こいつらもそれを知っていて来たのか?いや、少なくともラブはそんなに頭がよくは見えない。
 とにかく、どちらにせよ、まずは祈里と二人きりになるようにしなければ。
 ん?僕はなんで、『祈里と』二人きりになろうとしているんだ?・・・・・・まぁ、いいか。

「あれ?ブッキーにせつなに・・・・・・見覚えのない人ね。彼は?」

 ・・・・・・増えた。
 おかしいだろ。なんで増える?減って欲しいのにむしろ増えるっておかしくない?

「あぁ、僕は四季修弥です。えっと・・・・・・」
「青乃美希よ。ブッキー。彼は一体どうしたの?」
「あ、えっとね。さっき色々あって・・・・・・」

 祈里が美希に説明しようとした時、突然美希にラブが体当たりをかました。
 かなり助走してからの突進だったからか、美希の細い体はぐらりと揺らぎ、倒れそうになる。
 しかし、それを素早くせつなが支え、なんとか立て直す。

「いたたた・・・・・・ラブ!あんたねぇ〜」
「良いじゃん許してよ〜。あ、ホラ、これがカオルちゃんのドーナツだよ!」

 ラブはそう言って僕にドーナツとやらを渡してくる。
 名前だけは知っている。プリキュアがほぼ毎日食しているというスイーツの名前だ。
 しかし、実際に食べたことなどあるわけがなかった。それどころか、この真ん中にハートの形の奇妙な穴が空いたパンのようなものを見るのは、初めてだ。
 これは食べ物なのか?甘い匂いはするが・・・・・・。

「どうしたの?食べないの?」

 その時、ドーナツを見て固まっていた僕を不思議に思ったのか、祈里が僕の顔を覗き込んでくる。
 突然の接近に焦り、心臓が妙に高鳴ったがなんとか堪え、パクリと一口ドーナツを食べてみた。
 その瞬間、僕の体に何やら電流のようなものが走った感覚があった。
 それと同時に、言いしれない幸福感が体中に広がる。

「な・・・・・・ッ!?」
「どうどう?美味しいでしょ?」

 オイシイ?オイシイって、なんだ?
 もしかして、この謎の幸福感が、それに当たるのか?
 これが・・・・・・美味しいという、感情なのか?

「おい・・・・・・しい・・・・・・」
「でしょ〜!何と言っても、カオルちゃんのドーナツは世界一だからね!」

 そうか・・・・・・これが、美味しいという感情なのか・・・・・・。
 生まれて初めてだ。こんな感覚になるなんて。
 ドーナツを完食した僕を見て、祈里はクスッと笑った。

「喜んでもらえたみたいでよかった!ラブちゃんって、ちょっと強引なところもあるけど、すごく良い子なの。だから、勘違いしないでね」
「あ、あぁ・・・・・・」

 僕の返答を聞いた祈里は安心した様子で笑う。
 鼓動の音が、やけに大きく感じる。
 さっきの感情が美味しいという感情なら、この感情は一体・・・・・・何なんだ?

Re: フレッシュプリキュア!〜僕は敵に恋をした〜 ( No.7 )
日時: 2016/07/21 10:49
名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)

「じゃあ、バイバイ。修弥君。一人で大丈夫?」
「あぁ。流石に自分の家の場所くらいは覚えてるよ」

 顔に笑顔を貼り付けながら、僕は祈里の言葉に対応する。
 そして踵を返し、しばらく歩く。
 今日話してみただけでは、プリキュアという存在がそこまで強いとは思えなかった。
 やはり自分の目で確かめるしかない、か・・・・・・。

「スイッチ、オーバー」

 胸の前で拳を擦り合わせ、広げる。
 僕は周りを見渡し、ナケサケーベにするものを探した。
 少し周りを見渡すと、ゴミ箱を発見した。僕はすぐに黄色に黒の線が入ったダイヤを出す。

「ナケサケーベ。我に仕えよ!」

 ダイヤが貼り付き、しばらくしてそれは巨大なナケサケーベになる。
 僕は口角を釣り上げ、笑った。

「さぁ・・・・・・不幸の時間だよ。プリキュアの皆さん」

−−−

「そういえば、修弥君に聞いてた、シーザーって誰?」

 修弥君がいなくなった後で、ラブちゃんはそうせつなちゃんに聞いた。
 せつなちゃんはそれに、「実はね」と切り出す。

「ラビリンスの最高幹部って、ノーザとクラインの他に、もう一人。いたの」
「それが・・・・・・シーザー?」

 美希ちゃんの言葉に、せつなちゃんは頷く。

「えぇ。なんか、よく覚えてないんだけど、複雑な、何かの研究データや実験とかの記録と一緒に彼のデータが出てきたの。もちろん、私たちは彼とは接触なんてしていないし、倒したわけじゃない」
「ってことは、まだ最高幹部が残ってるってこと!?」
「その可能性は高いわ。最高幹部って、ラビリンスへの忠誠心がかなり強かったし、もしかしたら、また暴れだす可能性も・・・・・・」

 そこまで言った時、突然どこからか爆発音が聴こえた。
 見ると、そこではゴミ箱のような見た目の化け物が暴れていた。
 胸に付いたダイヤを見て、それがナケワメーケであることに気付く。
 その時、私は別のことに気付き、戦慄した。

「あそこ・・・・・・修弥君が帰った方向だよ・・・・・・」
「修弥君が!?」

 私たちはすぐに走ってナケワメーケの所に向かう。

「それにしてもナケワメーケが出てくるなんて!やっぱりシーザーが・・・・・・」
「いいえ。あれはナケサケーベよ」

 ラブちゃんの呟きに、せつなちゃんが訂正を入れた。
 それを聞いたラブちゃんが目を見開いた。

「ナケサケーベって・・・・・・たしか!」
「えぇ。私がラビリンスにいた頃、カードを使って出していたものよ。あれは、元々シーザーのナケサケーベを再現するために作られたカードなの」
「再現・・・・・・」
「シーザーに関する説明は後。今は、ナケサケーベを倒さないと!」

 そんな会話をしながらクローバータウンストリートに向かうと、そこではゴミ箱のナケサケーベが建物を破壊しながら暴れまわっていた。
 私は周りを見渡して修弥君を探した。しかし、どこを探しても見つからない。
 その時、突然目の前に地面が抉れる。破片が吹き飛び、私はその場に尻餅をついた。
 顔を上げると、ゴミ箱のナケサケーベが立っていた。

「あぁ・・・・・・プリキュアの皆さん、やっと来たんだ。待ちくたびれたよ」

 どこからか声がする。
 声がした方向を見ると、黒に黄色のラインが入ったジャケットを着た少年がこちらに歩いてきていた。

「あなたは・・・・・・」
「イース、いや、今は東せつな、とか言ったっけ?とにかく、彼女以外は初めまして、だよね」

 よく透き通る声が、まるで私の心臓を撫でるように響く。
 彼はナケサケーベの前に立つと、胸に手を当て、私たちに向かって礼儀正しく礼をした。

「僕の名前はシーザー。ラビリンス総統、メビウス様が下僕にて、ラビリンスの最高幹部を務めています」

 彼は顔を上げ、怪しい笑みを浮かべた。

「以後、お見知りおきを」

Re: フレッシュプリキュア!〜僕は敵に恋をした〜 ( No.8 )
日時: 2016/07/21 20:53
名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)

「貴方がシーザー・・・・・・ッ!」

 ラブちゃんはシーザーを睨み、ギリリと歯ぎしりをした。
 私は立ち上がり、周りを見渡す。すでに、周辺に人はいなかった。

「あぁ、僕はシーザーさ。キュアピーチ」
「なぜ今更こんなことをするの!もう、ラビリンスは滅んだのよ!」

 せつなちゃんの言葉にシーザーは冷たい笑みを浮かべ、「だからだよ」と言った、

「昔の君のようにFUKOを集めれば、メビウス様を復活させることができる。管理国家ラビリンスの再興さ」
「貴方はメビウス様に利用されているだけなのよ!なんでそれを・・・・・・」
「せつな!」

 熱くなってきたせつなちゃんに、ラブちゃんが叫ぶ。
 振り返ったせつなちゃんに、ラブちゃんは笑って見せた。

「今は、戦うしかないよ」
「・・・・・・ッ!・・・・・・そうね」

 私たちはリンクルンを取り出し、胸の前に構えた。

「行くよ。美希たん、ブッキー、せつな」

 そしてクローバーの形を模した鍵を差し、変身する。
 すぐに私たちは四方に跳び、それぞれナケサケーベに向かって武器を構える。

「届け!愛のメロディ。キュアスティック、ピーチロッド!プリキュア!ラブサンシャインフレッシュ!」
「響け!希望のリズム。キュアスティック、ベリーソード!プリキュア!エスポワールシャワーフレッシュ!」
「癒せ。祈りのハーモニー。キュアスティック、パインフルート!プリキュア!ヒーリングブレアフレッシュ!」
「歌え!幸せのラプソディー。パッションハープ!吹き荒れよ、幸せの嵐!プリキュア!ハピネスハリケーン!」

 それぞれの技が直撃し、四色に染まるハートに包み込まれるナケサケーベ。
 やったか。そう思った瞬間、そのハートははじけ飛ぶ。

「な・・・・・・ッ!?」
「あっはは。もしかして、イースが使っていたナケサケーベと同じ強さだと思ったのかい?」

 建物の上でこちらを見下ろすシーザーはしばらく嘲笑した後で、「君たちはなんて馬鹿なんだ!」と言った。

「あれは失敗作。生命エネルギーを吸っても、僕の力を完璧には再現し切れなかった!」
「だからって、勝てないわけじゃない!」
「でも、クローバーボックスも無いのに・・・・・・」
「クローバーボックスなら、あるで!」

 どこからか聴こえた声に、私たちは振り向く。
 そこには、両手でクローバーボックスを掲げたタルトちゃんと、楽しそうに笑うシフォンちゃんの姿があった。

「タルト!シフォン!なんで・・・・・・」
「説明は後や!とにかく、これでトドメを!」
「ОK!」

 私たちはクローバーボックスを使い、「プリキュア ラッキークローバー・グランドフィナーレ」を放つ。
 かなりナケサケーベは抵抗していたが、しばらくの葛藤の末に、浄化されていった。

「やった!なんとか勝てた・・・・・・ッ!」
「・・・・・・あーあ。スイーツ王国に帰っていた妖精がこっちに戻ってくるのは、計算外だったなぁ・・・・・・」

 地面に着地し、シーザーはそう言った。
 そして口元に陰鬱な笑みを浮かべる。

「面白いね、君たちは。ちょっとだけ、相手をしたくなったよ」

Re: フレッシュプリキュア!〜僕は敵に恋をした〜 ( No.9 )
日時: 2016/07/23 17:05
名前: 春太郎 (ID: LN5K1jog)

「面白いね、君たちは。ちょっとだけ、相手をしたくなったよ」

 僕はそう言いながら、胸の前で拳を合わせ、指をパキパキと鳴らしてみる。
 異世界調査やスプリンガー達の復活、基地探しなので、ここ最近は疲れるイベントの盛りだくさんだったのだ。
 だから、本気は出せないかもしれないが、多少はマシだろう。
 僕は軽く靴のつま先を地面にトントンとつけ、そのまま靴の裏全体を地面にしっかりと着ける。
 そんな僕の準備運動を、彼女等は終始身構えたまま何も言わず眺めていた。

「せいぜい、楽しませてよ」

 僕は一度の踏み込みで、キュアピーチと息がかかるほどの距離まで近づく。
 そのまま体を捩り、彼女の首筋に回し蹴りを放った。
 建物にぶっ飛んだ彼女を横目で流しつつ、僕はすぐにキュアベリーの頭上までジャンプする。

「な・・・・・・ッ!プリキュア!エスポワー・・・・・・」
「おせぇッ!」

 両手に力を溜め、衝撃波を撃ち込む。
 その時に浮き上がった瓦礫に足を乗せ、それを踏み台にキュアパッションまで跳ぶ。
 そして空中で身を捩り、彼女の体にかかと落としを食らわせた。
 僕は地面に着地し、眼球だけ動かしてキュアパインの居場所を探した。

「プリキュア!ヒーリングブレアー・・・・・・」

 その時、背後から声がする。
 振り返ると、キュアパインがすでにパインフルートを構え、空中に巨大なダイヤを出現させている最中だった。

「フレーッシュ!」

 放たれたダイヤに、僕は咄嗟に横跳びをした。
 そしてそのまま踏み込み距離を詰め、真っ先にパインフルートを蹴り飛ばす。
 地面に突き刺さるパインフルート。キュアパインがそれを取りに行こうとしたところに、その顔面に蹴りを放つ。

「ぁれ・・・・・・?」

 しかし、蹴りはキュアパインには当たらなかった。
 キュアパインがかわしたわけではない。彼女は元々プリキュアの中でも特に運動ができない方だ。
 僕の足は、彼女の目前で止まっている。止めるつもりも、理由もないのに、止めてしまった。

「・・・・・・今日はこのくらいにしといてあげるよ。色々あって疲れたし。でも、次に会った時は手加減しないから」

 とりあえず捨て台詞を吐き、僕はすぐに裏路地に消える。
 建物に背中を預け、息を大きく吐く。
 疲れたわけでもないのに、心臓がバクバクと音を立てている。
 まるで、今動き出したかのような、不思議な感じ。
 左胸に手を当て、僕は静かに目を瞑った。すると、瞼の裏に祈里の顔が浮かんだ。

「なんで・・・・・・」
「お前は・・・・・・」

 声がした方を見ると、金髪の男と黒髪の男が立っていた。
 金髪の男の手にはカオルちゃんのドーナツカフェ、とやらの袋が握られていた。

「あぁ・・・・・・サウラー君とウェスター君・・・・・・いや、今は南君と西君だったかな?」

 僕が馬鹿にするように笑いながら言ってやると、二人とも苦い顔をした。

「なんでお前がここにいる!」
「僕がここにいたら、おかしいのかい?君たちに負けたわけでも、旅の途中で死んだわけでもないだろう?」
「た、確かにそうだが・・・・・・」

 悔しそうに顔をしかめたウェスターの肩を掴み、サウラーが前に出る。

「今更何をするつもりなんだい?メビウス様は、もうプリキュアが爆発させてしまったよ」
「だからだよ。頭の良いサウラー君なら気付いているだろう?FUKOを集めれば、メビウス様を復活させることができることに」
「それは・・・・・・ッ!」
「おい、瞬!それは本当なのか!」

 ウェスターはすぐにサウラーの肩を掴み、問いただす。
 それに対し、サウラーは「あぁ、本当だ」と顔をしかめながら答えた。
 僕は両腕をだらんと下ろし、彼等を観察する。
 このまま逃がしてもいいのだが、奴らの持っているドーナツが、ハッキリ言えば欲しい。
 ・・・・・・奪うか。

「君たちは、ラビリンスの裏切者、だよね?罪には罰をって、この世界では言うらしいじゃない?」

 僕は軽く拳を構え、笑って見せる。

「とはいえ、弱い者いじめは好きじゃない。変身して、本気で来い」
「舐められたもんだね・・・・・・行くよ、隼人」
「あぁ!スイッチオーバー」

−−−

「さて、と・・・・・・」

 僕は手をパンパンと叩き、埃を払う。
 足元に転がったドーナツの袋を掴み、中身を確認する。
 良かった。中のドーナツは無事だ。傷一つついていない。

「じゃあ、プリキュアによろしくね、二人とも」

 僕は笑い、歩いてその場を去った。


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