二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【ポケモン】夢幻の世界へ
日時: 2016/12/29 16:29
名前: シエル ◆UaO7kZlnMA (ID: KCZsNao/)

初めまして!シエルと申します。
もうじきサンムーン発売と言うことでポケモン熱が発生しまして、スレッドを立たせて頂きました。
ストーリーとしてはオリジナルの地方で、異世界トリップした少女のドタバタを描けたらなーと思います。

※注意事項—苦手な方はご注意下さい—
・アニメのような表現があります。ポケモンの鳴き声は作者のイメージ。そのためゲームとは異なる描写があり、ファンタジー要素も大いに含まれます(氷のアクアジェットとか。

・いわゆる荒らしと呼ばれる行為はご遠慮ください。極端に文字数の少ない宣伝のみ・本小説に言及のない雑談の類もスルーしますのでご容赦下さい。ポケモン話に関してはいつでも歓迎しています。

・更新速度が異常に遅いです。数ヶ月消えることもあると思われます。

・舞台はオリジナル地方です。登場キャラもオリキャラだらけ。生息するポケモンも色々です。

・他地方の伝説・幻のポケモンが登場します

・ポケモンはORASまでに出たポケモンの予定。
 ただしサンムーン発売後はシエルの気まぐれで、アローラのポケモン出る可能性があります。オリポケ等は一切ないです。

・オリキャラの募集はある程度ストーリーが進み次第、募集する予定でいます。

それではよろしくお願いします。

登場人物>>15

その旅は夢か、幻か

序章「始まりの風は彼方より」
>>2.>>3

ハクサンタウン「旅は最悪、災厄」
>>8->>14

センガタウン「忍び寄る悪夢を少女は知らず」
>>18-

Page:1 2 3 4



Re: 【ポケモン】闇の神と異界のトレーナー ( No.10 )
日時: 2016/11/19 22:11
名前: シエル ◆GU/3ByX.m. (ID: ./E8qlXb)
参照: ハクサンタウン「旅は最悪、災厄」

アオキ博士の研究所を出たことはの夢と希望に満ちた旅が今、

「パジャマで旅するのは無理ね」
「ブイ?」
 
 始まるはずがなかった。
 博士がある程度荷物を揃えてくれたとは言え、ことはの格好はパジャマにスリッパ、布製の手提げ袋のみ。誰がどう見ても、長い旅に出られる格好ではないだろう。
 次に取るべき行動を考え、ことはは鞄から冊子——『初心者トレーナーガイドブック』と書かれている、を取り出してパラパラとページを捲る。

「まずは買い物が先ね。この冊子によると、トレーナーカード使えばコンビニでお金をおろせるらしいからおろしてお金を手に入れましょ、イーブイ」
「ブイ」

 イーブイは何故かボールに戻ろうとしないので、こうして出しっぱなしにしてある。イーブイはことはの左肩を定位置と決めたらしく、ずっと居座っていた。今は左肩を器用に掴み、身を乗り出して冊子を見ている。図鑑によるとイーブイは6キロあるらしいが、肩に負担はない。アニメの主人公だって、ピカチュウを肩や頭に乗せていたのだ。そんなに重いはずがない。いい加減か図鑑だ、とことはは思った。

(異世界に来ちゃったのかぁ……)

 肩に乗る重さは異世界に来て、自分がここにいると言う証。実感がようやく沸いてきて、ことはは大きな不安を感じていた。お金はあるとは言え、旅は一人。つい昨日まで家族がいて、あれこれ支援してくれた生活とは訳が違う。上手くやっていけるか、不安は強い。
 でも、とことはは我が物顔で自身の左肩を占領するイーブイの頭を撫でた。博士にも言われたが、ことはは一人ではない。このイーブイがいる。生身のポケモン、というものは触れたことがないが。こうして慕って、付いてきてくれるのは素直に嬉しい。手から感じる温もりは、ことはの不安で揺れる心を不思議と癒やしてくれた。不安も大きいが、イーブイとなら何とかなりそうな。そんな気もしてくる。

「イーブイ、よろしくね。私たち、今日から友達よ」
「ブイっー!」

 正直なところを告げると、イーブイは嬉しそうに尻尾を振った。
 ポケモンのトレーナーになると言うことは、元の世界で言う動物のご主人様になることに近いものを感じることは。家でも犬を飼っていたが、ことははご主人様だとか上下関係を持ち出すのを嫌っていた。強いて言うなら友達のような、そんな気軽な存在でいたいと願う。故にイーブイとの仲も、「友達」と表現した。

「まあ何すればいいか分からないけど、何とかなるよね」

 不安を振り払うように、わざとことはは明るく言った。本当は不安で押し潰されそうだし、泣きたい気持ちである。しかし泣いたところで、何も変わらない。現に研究所前で突っ立っていても、何も変わっていない。行動するしかない。行動しなければ、何も変わらないのだ。

「さあ、行こうイーブイ!」

 肩に乗るイーブイに声をかけ、ことはが一歩を踏み出した。その時。

「チルーっ!」

 近くから鳴き声が聞こえた。明らかに人ではない。動物の鳴き声、ポケモンのモノだろうか。
 ふと肩に乗るイーブイに目をやればピンと両耳を立て、ピクピクと動かしていた。辺りの様子を窺っているらしい。鳴き声からして、そう距離は離れていない。ことはは慎重に辺りの様子を探りながら、歩き始めた。
 ハクサンタウンは、何もない町だ。研究所の周りには原っぱが広がるばかりで、家や店の類はない。ポケモンの一匹や二匹、出てきそうな光景だ。

(あれは……)

 しばらく探していると、黒い犬のようなポケモンが三体、何かを取り囲んでいる光景が目に飛び込んできた。近くにはトレーナー——アオキ曰く、ポケモンのご主人様、なのか。柄の悪そうな男がニタニタと笑いながら、鳥ポケモンを見下ろしていた。

「へ、弱っちいポケモンだな。ポチエナたちの経験値にもならないぜ」
「チ……ル……」

 その黒いポケモンたちが取り囲んでいたのは、一匹の鳥ポケモンだ。小さめな体格、くちばし。雲のようなふわふわした翼が特徴だった。鳥ポケモンは瞳を潤ませ、身体をガタガタと震わせていた。あの犬のようなポケモンたちに襲われたのか、青い体や白い羽は汚れており、ところどころ傷もある。

「泣いても助けは来ないぞ」
「チルウゥ……」

 涙声で鳥ポケモンは後退る。が、その先にはあの犬のようなポケモンが待ち構えていた。前を見ても、横を見てもあの犬のようなポケモンたちがいる。彼らは前傾姿勢を取っており、いつでも襲いかかる準備は出来ているのが遠目でも分かる。

「三体一って数の暴力じゃない。ひどいことするわね……」

 言いながら、ことははまずポケモンたちの情報を知ろうとポケモン図鑑を取り出した。あの鳥ポケモンを助けに行きたい気持ちはあるが、どうすればよいか分からずことはは固まっていた。緊張でポケモン図鑑を持つ手が震える。

『チルット わたどりポケモン 自分も まわりも きれいでないと 落ち着かない 性格の ポケモン。汚れを見つけると 羽でふき取る』

 あの鳥ポケモンは、チルットと言うらしい。

「で、あの犬たちは……」
『ポチエナ かみつきポケモン しつこい 性格の ポケモン。 目をつけた 獲物が ヘトヘトに 疲れるまで 追いかけ回す』
(チルットがポチエナ三体に囲まれているのね。一体何なのかしら?)

 現状を把握したことはは、どうするべきか考えを巡らせる。チルットを助けたいが、ことははトレーナーとしてど素人。イーブイ一匹で、ポチエナ三匹とやりあえる自信など皆無だ。
 何があったかは分からないが、柄の悪そうな男の表情からチルットを追い詰めて楽しんでいるように見えた。——少なくとも、チルットがイジメられているのは間違いない。そのことを感じ取っているのか、肩のイーブイも牙を剥き出しにして怒りを顕にしていた。
 こうなったら、ポケモンに慣れていそうな人を呼ぶしかない。例えばアオキ博士。

「お前もここまでだな。トレーナーはここにいない! トレーナーがいないポケモンなんぞ、指示待ち症候群で使い物にならねえ。ここで終わりだ。やれ、ポチエナ!」

 アオキを呼ぼうとした時、三匹のポチエナの内、一匹がチルットに襲いかかる。抵抗する力はないのだろう、チルットはきつく目を閉じるだけでされるがままだ。
 反射的にことははイーブイに指示を出していた。

「イーブイ、た、体当たり!」

Re: 【ポケモン】闇の神と異界のトレーナー ( No.11 )
日時: 2016/11/23 18:51
名前: シエル ◆GU/3ByX.m. (ID: OYZ4MvwF)
参照: ハクサンタウン「旅は最悪、災厄」

「イーブイ、た、体当たり!」

 ことはの肩から飛び降りたイーブイは、ポチエナの一匹に向かい力いっぱい身体をぶつける。思い切りイーブイの攻撃を受けたポチエナは仰向けになるように地面に倒れ、ぐったりとしていた。突然の襲撃者にポチエナ二匹は牙を剥いてイーブイに近づくが、イーブイは涼しい顔でそれを受け止める。ポチエナたちを睨み返しながら、ゆっくりと後退しイーブイはチルットの前に立った。
 ポケモンたちが睨み合う中、トレーナー同士も鋭い視線を向け合っていた。

「なんだ、お前は?」
「あなた、ポケモン一匹を三匹で寄ってたかっていじめるなんて! ひどいわ!」

 邪魔された柄の悪そうな男は、心底不機嫌そうにことはを睨みつける。その眼力の鋭さにことははたじろぐが、勇気を振り絞り。男を怒鳴りつける。が、男は声を出して笑った。

「一匹で来るなんて良い度胸だな。ポチエナ! 二匹でイーブイに体当たりだ」

 身を低くしていた一匹が、イーブイに襲いかかる。

「イーブイ、前!」
「気をとられやがったな。ポチエナ、体当たりだ!」

 一匹のポチエナに気をとられているすきに、もう一匹のポチエナがイーブイに攻撃を仕掛けた。身体を力いっぱいぶつけてくる。気がつくのが遅れたイーブイは、もろに攻撃をくらった。

「イーブイ!」
「今度は横からの体当たりだ!」

 地面に叩きつけられる寸前、イーブイは受け身を取って態勢を整える。そこを狙いポチエナたちが追撃してきたが、イーブイはぎりぎりのところで身を翻して避けた。攻撃の対象を失った二匹は激突し、痛そうにうめく。二体の動きが止まっている間に、イーブイは二匹と距離をとる。そして、指示を仰ぐようにことはを振り返った。

(な、何をすれば……)

 頭の中が真っ白になり、イーブイへの指示が出てこないことは。
 相手のポチエナを倒すため、イーブイが攻撃しなければならない。そのために指示を出すのが必要だと、頭では分かっている。が、ポチエナが二匹いるせいで頭が混乱しているのだ。先程の戦いでも一匹ですら緊張していたのに、相手が倍となり余計に頭が回らなくなっていた。
 その様子を見ていた柄の悪そうな男はニヤリと笑った。

「ポチエナたち、そいつにトドメだ。一斉に攻撃しやがれ! 体当たり!」

 痛みが回復したポチエナたちが、二匹でイーブイを取り囲む。そして、体当たりをくらわせようと身を低くした。その時。

「チ、チルー!」

 いつの間にいたのか。チルットが、小さなくちばしで、イーブイの正面にいたポチエナを思い切りつつく。ポチエナは痛みで飛び上がり、もう一匹のポチエナも突然のことに戸惑う。

「チルット?」
「くそ、イーブイが来て元気になりやがったな」

 男が憎々しげに舌打ちをする。チルットはポチエナの尻尾を何回もくちばしでつつく。おかげでポチエナからイーブイの注意がそれ、倒すべき相手は一匹となった。今なら行ける、とことははイーブイにようやく攻撃の命令を出す。

「イーブイ、真後ろのポチエナに思いっきり体当たり!」

 ことはの命を受けたイーブイは助走をつけ、その勢いでポチエナにぶつかる。犬のような悲鳴を上げながら、ポチエナは地面に倒れた。

「な、ななっ! くそ、瀕死状態、戦闘不能かよ……」

 ポチエナは、目を回したまま動かない。瀕死状態、確かゲームだとポケモンの体力がゼロになり戦えない状態をさしていたはず。
 ふとチルットに目をやれば、ゼェゼェと息をするチルットと地面に倒れたもう一匹のポチエナ。決着はついたらしい。

「ポチエナは倒したわ」

 そうことはが告げると、男は三つのボールを無言で取り出す。スイッチを押すとボールからはそれぞれ三つの光線が伸び、ポチエナに触れると彼らを包み込んだ。その光はモンスターボールへと戻っていき、後には何もない。
 ポチエナたちを倒しことはは一安心、かと思いきや違った。柄の悪そうな男がニヤニヤと笑っていたからだ。愉快で仕方ない、と言いたげな気持ち悪い笑みにことはは嫌なものを感じる。

「はは、俺のポチエナたちをよく倒したと褒めてやるが真打は最後に登場するもんさ! 来い、グラエナ!」

Re: 【ポケモン】闇の神と異界のトレーナー ( No.12 )
日時: 2016/11/27 17:20
名前: シエル ◆GU/3ByX.m. (ID: OYZ4MvwF)
参照: ハクサンタウン「旅は最悪、災厄」

柄の悪そうな男がボールを投げると、光が弾け新たなポケモンが姿を見せた。ことはの印象はポチエナが成長したような感じのポケモン、だった。大型犬程の大きさがあり灰色の身体。手足の先や尾は黒かった。されど、顔付きは厳つくなり牙もまた鋭くなっていた。名前こそポチエナによく似ているが、立派どころか凶悪さを増して成長した別のポケモンのようである。見た目からして強そうだ。イーブイとチルットもその強さを感じ取っているのだろうか。イーブイは全身の毛を逆立て、低く唸る。チルットもまた、おずおずとしながらも甲高く鳴いていた。
 グラエナの情報を知るため、ことはは素早く図鑑を手提げ袋から取り出した。

『グラエナ かみつきポケモン グループで 行動していた 野生の 血が 残っているので 優れた トレーナー だけを リーダーと 認めて 命令に 従う。ポチエナの進化系』
「進化……」

 ゲームでは一定のレベルとなったポケモンが、姿を変えることを指し示していた。姿が変わることで、ポケモンたちはより強くなる。進化とは上手い表現である。

「くく、グラエナの特性は威嚇。相手のポケモンの攻撃力を下げる特性さ。そこのチビたちのなけなしの攻撃力なんざ、ないも同然ってことさー!」
「特性?」
「そこのチビたちとタイプ相性がないのが残念だが、まあいいな。ひゃははは」
(うう、外国語話されてる気分。特性? タイプ相性? 何なの?)

 同じ日本語を話しているはずなのに、ことはは柄の悪そうな男の言葉を理解できない。おかげで、言葉の通じない外国に来たかと思い頭が混乱しかかる。が、すぐに我に返った。グラエナがトレーナーの指示もないのに、イーブイへと突進してきていたから。慌てて、ことはは叫ぶ。

「イーブイ、前!」

 ことはの注意で、イーブイは身体を捻ってグラエナを避ける。目標を失ったグラエナは転び、頭から地面へと派手に激突した。

「命令してないのに攻撃ですって?」
「こいつは、俺の言うことを全く聞かない暴れポケモンさ。自分が戦いたいように戦う、どうしようもないポケモンだが強さはポチエナの比じゃねえ」
(言うこと聞かないなら……)

 自慢する男に対し、ことはは心の中でツッコミを入れておく。そして、図鑑の説明を反芻する。優れたトレーナーだけをリーダーとして認め、命令に従う。早い話がこのグラエナ、柄の悪そうな男をトレーナーとして認めていないと言うこと。傍若無人に振る舞う、獣そのものなのだ。そのせいか、グラエナはスキが多い。バトルに慣れていないことはでも分かる。

「イーブイ、体当たり」

 派手に頭をぶつけ、怯んでいるグラエナにイーブイが思い切り身体をぶつけた。が、グラエナはふんばり、逆に前足でイーブイを薙ぎ払った。小さな白銀の身体が地面に叩きつけられ、砂埃が舞う。幸いイーブイは受け身を取ったが、負った傷は明らかにポチエナの攻撃時よりも深い。白い身体に無数の赤い切り傷ができていた。

「全然効いてない……」

 グラエナは、イーブイの攻撃がなかったかのようにすくっと立ち上がる。先程頭を激突した痛みがまだ残るのか、顔を顰めてはいるが。

「当たり前だろ。進化すれば攻撃力、防御力、素早さ。体力だって、格段に上がる。しかも、お前のポケモンはグラエナの威嚇で、攻撃力が下がってるんだ。そうそうダメージは受けないんだよ!」

 痛みが回復したらしいグラエナは、標的をチルットに変更。イーブイには目も向けず、チルットに向かっていく。先程の戦いからチルットは怪我を負っているせいか。その場から逃げられず、チルットは座り込んでいた。グラエナに襲われたら、ひとたまりもないだろう。

「イーブイ、砂かけ!」

 視界を奪えば、と考えたことは。少し遅れ、イーブイは片目をつむりながら後ろ足で砂をグラエナに蹴りつけた。チルットに集中していたグラエナは、目に砂が入り立ち止まる。ぎゅっと目を閉じたまま、頭を左右に動かしている。ことはの狙い通り視界を奪われ混乱しているらしい。
 グラエナの動きを封じたことに安堵する一方、ことははイーブイがかなり消耗していることに気づいていた。砂かけの時に、技を行うタイミングが遅れていたし身体もチルット程ではないが傷を負っている。長期戦は無理だろう。

(ゲームで言ったら、ピコピコ音が鳴ってるくらいなんだろうなぁ……)
「くそ、目をやられたか。嗅ぎ分けるでも覚えさせとくんだったな。まあ、そこの瀕死なりかけ二匹なんぞグラエナの敵じゃないがな」

 自身のグラエナに、よほど自信を持っているのだろう。柄の悪そうな男はイーブイとチルットを見下すような発言をした。バトルの知識がないとは言え、自身のポケモンであるイーブイを。仲間であるチルットを馬鹿にされたことはは、怒鳴りそうになるが怒りを飲み込んだ。馬鹿にされた本人——人間ではないが適切な表現が浮かばない、がじっとこらえていたからだ。負けないと言いたげに、イーブイとチルットはグラエナを睨む。少なくとも彼らはまだ諦めていない。ここでトレーナーが怒鳴っては、彼らに申し訳ないとことはは強く思いグラエナを見た。相変わらずグラエナは、視界を奪われて当惑している。

「ったく、抵抗する気になったか。ムカつく瞳だぜ」
「イーブイ、グラエナに体当たり!」
「チルルルー!」

 チルットも加勢し、困惑しているグラエナに攻撃を仕掛ける。イーブイは体当たり、チルットはグラエナの足下をつついて攻撃。しかし、グラエナが前足や後ろ足でイーブイたちを払い除け二匹は飛ばされてしまう。人間が身体についた汚れや虫を払うような仕草だった。グラエナは低く唸りながらイーブイたちを求めて動き回り、イーブイたちは距離を置くようにゆっくり逃げ回っていた。このままでは埒(らち)が明かない。

「攻撃力や命中率を下げても、グラエナにはダメージを与えられないぜ。そこのおチビ達にグラエナは倒せない」

 悔しいが柄の悪そうな男の言葉は、本当である。多分しつこく攻撃を繰り返していれば。いつかはグラエナを倒せるだろう。しかしイーブイたちは傷を負っており、長くは戦えないだろう。二匹とも息も上がっているし、動きがどんどん遅くなっている。

「ああ、ビートルズみたいに毒針の技でダメージを与えられたらいいのに。あのウザさがあれば……」

 今頃になって何故か。
 ことはは子供の頃、トキワの森で虫ポケモンの毒針と言う技に苦しめられた記憶を思い出す。戦闘に出ているだけでじわじわと体力を削られ、歩くたびに体力が減っていく。ウザくて仕方なかった。これを用いればグラエナを倒す勝機になるかも、とことはは思うが。イーブイやチルットに、角らしきものはない。無理か、とことはは諦めかけたが。ことはの言葉を黙って聞いていたチルットが、イーブイに何やら話しかける。

「チル、チル、チルット!」
「ブイ?」

 イーブイはピンと耳を立てた。驚いたように目を丸くするが、ことはにはポケモンの言葉は分からない。

「チル、チルルー!」
「ブイ、イーブイっ」

 チルットの力強い鳴き声にイーブイは頷き、くるりと背を向ける。そのままグラエナやチルットがいるのとは逆方向に走り出した。

Re: 【ポケモン】闇の神と異界のトレーナー ( No.13 )
日時: 2016/11/30 19:07
名前: シエル ◆GU/3ByX.m. (ID: ILWrwkSr)
参照: ハクサンタウン「旅は最悪、災厄」

「え、イーブイなんで逃亡してるの?」
「チルーッ!」

 ことはの疑問の答えは、すぐに分かった。チルットは翼を力いっぱい羽ばたかせて、風を起こす。ただし、その風は辺りの風景が霞む程の温度を伴っており、色は炎のような色。灼熱が風となり、グラエナを襲う。吸う息も熱さに包まれる中。グラエナは、声にならない悲鳴をあげもがき苦しんでいた。なるほど、イーブイが逃亡するはずである。

「っ、こいつは熱風の技か! くそ、グラエナが火傷状態になりやがった」
「火傷は火傷じゃないの?」

 熱風を受けたグラエナの身体は、ところどころが熱を持ったように赤くなっていた。人間の火傷と似たようなもの。それに状態を付ける意味が、ことはにはよく分からない。

「おい、グラエナ。そのチビたちをさっさと倒しな!」
「イーブイ、砂かけ」

 グラエナはトレーナーの命令に逆らうように鳴く。そこへ戻ってきたイーブイが容赦なくグラエナの視界を奪う。火傷により、グラエナも徐々に動きが鈍っているのが分かった。また目が痛いことで、辛くてたまらないのだろう。苦しげにうめくグラエナの声は哀れだが、戦いなので仕方ないとことはは気持ちを切り替える。

「グラエナ、炎の牙! バカ、噛み付くじゃねえ。こんな時くらい命令を聞け! こんなチビポケモン二匹に何苦労してやがる」
「グルル……」
「お前は進化系なんだぞ、あんな進化前の雑魚に負けるくらい弱いポケモンなのか、お前は! 行け!」

 追い詰められた柄の悪そうな男は、苛立ち混じりに指示を出した。しかしグラエナは言うことを聞くことなく、何もない場所に噛み付いていた。もうやけになり、適当に攻撃をしているようだった。

「グラエナ、炎の牙! イーブイは左だよ。右じゃねえ!」

 グラエナが勢い良く突進してきた。が、その足が不意に止まる。金縛りにあったかのように全身が強張り、やがてグラエナの身体が地面に横になった。動かない。戦闘不能、と言う単語がことはの頭をよぎる。——イーブイとチルットが勝利したのだ。柄の悪そうな男は、グラエナをボールに戻し、悔しそうにこちらを睨む。

「ぐ、グラエナがこんなポケモンたちに負けるなんて……」
「もうチルットを虐めるのは、やめなさいよ」
「ち、分かったよ。こいつのゲットは諦めてやるよ」

 舌打ちを残し、柄の悪そうな男は逃げていった。彼の背が遠ざかるのを見送っていると、イーブイとチルットがことはの足下にやってきた。二匹とも足取りはしっかりしているが、顔は疲れている様子だ。特にポチエナからのダメージが溜まっているチルットは、特に疲労が見える。
 ポケモンの怪我を治療するには、どうすれば良いか分からない。まだ、アオキ博士の研究所が近いのでことはは戻ることを決めた。

「アオキ博士のとこに行って、怪我を治そうか。抱いてくよ」

 言って、ことはは二匹を抱き上げる。チルットはイーブイよりも軽く、楽々と持ち上げられた。重いと言うわけではないが、イーブイは米袋を持ち上げた時のように腕に重さが食い込んできた。先程まで肩に乗っていたのが信じられない。
 ことはに抱かれた二匹は、戦いの疲れからかぐったりしていた。早く治療してやろうと、ことははアオキ博士の研究所に逆戻りした。

Re: 【ポケモン】そのトレーナーは異界より。 ( No.14 )
日時: 2016/12/13 21:37
名前: シエル ◆GU/3ByX.m. (ID: YQou4sy7)
参照: ハクサンタウン編 了

「アオキ博士っ!」

 ことははドアを何度もノックし、インターホンを何度も鳴らした。しかし返事はなく、研究所は静まり返っていた。人がいる気配や物音がなく、留守なのは明らか。アオキは外出したと知ったことはは落胆する。

「弱ったなぁ。どこかに病院ないかな?」

 ポケモンの知識がまるでないことはには、ポケモンが傷付いた場合の対処方が分からない。故にイーブイとチルットを抱いたまま、研究所の前で途方に暮れていた。腕の中の二匹は、ことはに体重を預けてぐったりしている。どこか病院——具体的には、動物病院がないかな、とキョロキョロしていたことは。そこへ、声がかかる。

「あ、あ、あいつです」

 聞き覚えのある声に振り向くと、先程の柄の悪いトレーナーがいた。しかし顔は強ばっており、声も怯えきっていた。先程の威勢はまるでない。

「あなたはさっきの。何か用?」

 そのことに違和感を覚えながら聞くと、柄の悪い男の前へ割り込むように別の人間が入ってくる。足元まである黒いローブに身を包み、フードを目深に被った奇妙な人間。体付きから男性らしいことは分かるがそれ以外の情報は読み取れない。

「見つけたぞチルット。トレーナーが助けを求めるため逃したようだが、その企みもここで終いだな」
「あなた何なの?」

 男は視線を上げ、ことはの腕の中にあるチルットを見つめる。フードの下にある金色の瞳が、ギラリと光った。チルットは意識を失っているからか、ぐったりしたまま。
 捕食者のような冷徹な瞳にぞっとしながらも、ことはは冷静に問う。チルットを守るように、イーブイとチルットを自分の方へと寄せながらことはは下がった。

「答える義理はない。直に忘れてしまうからな。ゲンガー、催眠術」

 その言葉で、ことはは自分の身体から力が抜けていくのを感じた。眠気のようなものが身体の底から湧き上がり、抗うことができない。地面に膝を付いたことはは、霞みゆく視線の中で一体のポケモンを見た。紫の身体に、短い手足。形だけ見れば、子供が粘土か何かで作り上げた人形みたいとことはは思った。そこに浮かぶのは赤い瞳、ニタリと笑う口。何もできないことはをあざ笑っていた。意識が沈む。言い返したいが、眠気に飲み込まれていく。

「お前たちがチルットのことを覚えていると、困る者がいるのさ。何もかも忘れるがいい。君たちの旅の無事を祈っているよ」

 霞みゆく視界の中、男が手を振る。それを最後に、ことはの意識は完全に暗闇の底に沈んだ。



 それからしばらくして、ことはは暗闇の中で身体を揺すられる感覚を覚えた。ゆっくりと目を開けると、イーブイが心配そうに自分のことを覗き込んでいた。うつ伏せとなっていたことはは、ゆっくりと起き上がる。

「あ、イーブイ? 怪我は? ん? 私何言ってるんだろ」

 目の前にいるイーブイには、怪我はない。だが、ことはは何故かイーブイが怪我をして途方に暮れていた記憶がある。アオキ研究所を出て、研究所の前で寝ていたのに何故イーブイが怪我をするのか。その理由が分からず、ことはは悶々とする。

「私、何でこんなところで寝てるの。何かしてたような気がするけど……」

 思い出そうとしても、モヤモヤして何も出てこない。足元のイーブイも気になることがあるのか、顔を顰める。うんうん唸っていたことはは、不意に自分の姿を見る。パジャマには、土が付き汚れていた。気が付いたことはは、勢い良く立ち上がる。

「やだ! 寝間着が土まみれ! 早く新しい服買いに行かなくっちゃ」

 研究所に背を向け、ことはは歩きはじめる。イーブイは、定位置であることはの左肩に飛び乗った。

「いきなり眠くなるなんて、災厄よ。服が汚れたわ。気分は最悪……」

 そんなことをブツブツと呟きながら、ことはは服を売っている場所を探すためハクサンタウンへと歩き始める。チルットを救うためトレーナーと戦ったことも、謎の男とポケモンのことも。チルットのことさえも。何もかも忘れていた。


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