二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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絶チル×ヒロアカ】結成!ヒーローチーム【キャラ急募集!】
日時: 2017/05/22 19:07
名前: ハナ@閻魔天使 ◆vNlZvSsx3A (ID: dY22Nade)
参照: http://mecuru.jp/novel/20253

23世紀、超能力者(エスパー)は増え続けていた。彼らは軍事、外交、経済等あらゆる分野で活躍し、国際競争の鍵を握っていた。さらに超能力人類が生まれつつもあった。
世界総人口の約8割が超常能力“個性”を持つ超人社会。“個性”を悪用する敵(ヴィラン)を“個性”を発揮して取り締まるヒーローは人々に讃えられていた。
しかしヴィラン襲撃により危険にさらされたこの国である作戦を考えた。それは、レベル5以上の超能力人類らがチームを結成しヴィラン,P.A.N.D.R.A,黒い幽霊の連合軍を倒せるほどの力を得ること。
果たしてそれが吉とでるか?

チームは6人とリーダーで組みます!

キャラは募集中です!

項目は
メインチーム【後3】
リーダー【締切】
司令官【後1】
敵陣【後7】
その他【後9】
です!

ただしメインチームは18歳以下でお願いします!


投稿はこちらに
名前:
性別:
一人称:
二人称:
役割:
容姿:
レベル:
能力:
性格:
設定:



これでお願いいたします!
能力はできるだけオリジナルでお願いします!
どこかのアニメのパクリとかはなるべくなしで…(見てどういう能力なのかを知るのがめんどくさい)
ではお待ちしています!

あ、小説は消えるといけない気がするので、メクるの方に書きます!
リンクは張っておきますのでご自由に読んでください!

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Re絶チル×ヒロアカ】結成!ヒーローチーム【キャラ急募集!】 ( No.67 )
日時: 2017/05/23 01:28
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: eso4ou16)

お待たせしました。
ある程度まとまりましたので、以前から言っていた特別編の方を投稿させて頂きます。
今回は敵陣メンバーの1人、「濡羅 刈奈」の過去編を描いてみました。
思った以上に文字数が増えてしまったので、何回かに分けて投稿致します。

本編とはだいぶストーリーカラーが異なっていると思いますがご了承ください。



特別編:濡羅 刈奈の過去(1)


 これは濡羅 刈奈が今の居場所に収まる前の話。
 濡羅 刈奈が今の濡羅 刈奈になるまでの話。
 彼女にとって最も苦い思い出であり、彼女の人生の転機となった出来事の話。



 とある町。
 とある住宅街。
 とある一軒家。
 とある朝。
 今日もいつもの様に、濡羅 刈奈は自分の部屋の隅っこに立てられた大きな鏡の前で学園へ行くための支度をしていた。
 女の子らしい部屋の風景に溶け込んだ縦型の鏡とにらめっこを繰り返しながら、服装を上から下まで完璧に仕上げるのが刈奈の毎朝の日課だった。
 真っ白い下着を身につけた素肌の上に、シワ1つ無い制服を手足に通していく。
 刈奈にとって、学園の制服をオシャレに着こなすコツは、校則通りに服装を整えること。
 周りの生徒の中には、無駄に格好をつけようとしてボタンを開けたり、ズボンを腰の下まで下ろしたり、スカートを大胆に短くしたりと変わった着方をする連中が何人もいるが、刈奈からすれば、そんなのはオシャレでもなんでもない。
 ただ自分を大きく見せようとしているだけ。子供の発想なのだ。
 中学生である自分達の年齢を考えれば歳相応の発想なのかもしれないが、時々幾つになっても子供っぽさが抜けない大人もいるから質が悪い。
 子供には子供の、大人には大人のオシャレの仕方というものがあるのだから、どうせ大きく見せるなら、それぞれの土俵の上で格好をつければ良い。
 そんなことを考えながら、周りの人間を観察し、無言のファッションチェックを開くのが刈奈の趣味——いや、癖でもあった。
 制服に着替えた刈奈はスカーフを結び、仕上げに紫色のリボンで髪の毛を後ろに束ねた。
 当時の刈奈は、ファッションの知識が豊富なだけの、それ以外は何処にでもいる普通の女の子だった。

 刈奈の両親は共にファッション関係の仕事をしている。
 父は男性からも女性からも人気のファッション雑誌の編集長をしている。
 母は和服のデザイナーで、パリコレ等の審査員を務めるほどの、その世界では有名な人物だ。
 いつでも多忙の両親が家にいる日はほとんど無く、基本的に刈奈はこの広い家の中でいつも1人だった。
 しかし、それでも別に寂しいと思ったことは無い。
 刈奈にとっては、両親がくれたファッションの知識と、クローゼットの中に山ほどある衣服が家族の代わりだった。
 自分で作った朝食で空腹を満たした刈奈は、「いってきます」という言葉を誰に言うことも無く、無言のまま玄関の鍵を閉めて学園に登校した。


 学園に到着した刈奈は真っ直ぐと自分の教室へ向かった。
 教室の中は既に賑やかで、昨日の恋愛ドラマの話題で盛り上がる女子生徒の集まりや、朝っぱらから携帯ゲームを持ち出してはしゃいでいる男子生徒の集団等が視界の中に飛び込んできた。
 刈奈はそれらを掻い潜るように自分の席を目指した。
 すると途中、カシャリと音を立てて何かが足元に転がってきた。
 それは男子生徒が手にしていた携帯ゲーム機だった。
 プレイに熱中するあまり、興奮してゲーム機を滑り落としたのだろう。
 刈奈は徐にそれを拾い上げた。
 携帯ゲーム機の画面には、カラフルでポップなフィールドと緑色の恐竜の背中に乗った赤い帽子と黒いひげが特徴のキャラクターが映っていた。
 刈奈はそんな映像を尻目に、携帯ゲーム機を1人の男子生徒に差し出した。

「ねえ、コレ……」
「あ、わりぃ! ありがとな、濡羅」

 携帯ゲーム機を受け取ったのは同じクラスの男子生徒、西村俊太だった。
 俊太は携帯ゲーム機を手に取りながら刈奈に向かって笑顔を浮かべる。
 西村俊太はクラスの中でもイケメンの部類に入る顔つきをしており、女子生徒からもそれなりに人気があった。
 しかし、当の本人にその自覚は全く無く、ラブレターよりもカードゲーム、異性よりもデジタルゲームの攻略にいつでも夢中だった。
 周りの何人かの女子生徒が、俊太の浮かべた笑顔にときめいている中、対面している刈奈の視線は、その笑顔では無い——彼の着ている制服の方に向いていた。

「ねえ、西村。あなたの着ている制服、ボタンがずれてるわよ」

 我慢できなかった刈奈はハッキリと言い放つ。

「えっ? あ! うそ!? マジで!? うわっ恥ずかしー」

 刈奈に言われて自分の着ている制服に視線を向けた俊太は、声を上げながら慌てふためいた。
 彼女の言うとおり、ボタンと穴が1つずつずれて留まっていたのだ。
 今の今まで気付かなかった俊太は、頬を赤く染めながら急いでボタンを揃えた。

「教えてくれてサンキューな。気付かなかったら普通に恥掻いてたわ〜」

 そう言って、俊太はまた笑顔を浮かべた。
 しかし刈奈は呆れ顔で口を開く。

「ゲームも良いけどさ、少しは服装に気を使ったら? いい歳なんだし」
「うん……まあ、そうだけど、さ……」

 刈奈にきつめに言われ、思わず言葉を詰まらせる俊太。
 するとそこへ、

「おい、まだかよ俊太! 早く続きやろうぜ!」

 ゲームの続きを待ちわびていた他の男子生徒達が催促してきた。
 刈奈がそれらにも視線を向けると、彼女の癖が始まった。
 俊太の後ろにいた3人の男子生徒達の服装を見てみると、やはりというか予想通りというか。
 3人のうち、誰1人としてまともに制服を着こなしている生徒はいなかった。
 1人はズボンの膝の部分に穴が開いている。
 1人は汗で黄ばんだスクールシャツをそのまま着ている。
 1人は袖のボタンが取れたままになっている。
 だらしないとはいえ、活発な男子生徒のことを考えれば当然の格好とも言えるのだが、ファッションに敏感な刈奈はその光景が我慢ならなかった。

「あんた達も! もうちょっとまともな格好したらどうなの? みっともない! そんな格好で外を歩いて恥ずかしくないの?」

 言いたいことだけ言って、刈奈は男子生徒達に背中を向けてその場を去ろうと歩き出す。

「はあ? 何だよアイツ……」
「ほら。濡羅ってたしか、両親がどっちもファッション業界で有名だから」
「あ〜、俺らのこと馬鹿にしてるのね」
「ムカつくわ〜……」

 刈奈に指摘された3人の男子生徒は、不快な表情を浮かべながら刈奈の後姿を睨みつけた。
 3人の言葉が立ち去る刈奈の心に重く突き刺さる。

「……」

 彼らのことを想って——親切で言ったつもりなのに。
 刈奈は歩きながら唇を噛み、一瞬手のひらをギュッと握り締めた。
 力を込めた手をそっと解いた時、指先から一滴の水の粒が垂れ落ちたことに、刈奈は気付かなかった。

「濡羅……」

 何処か寂しそうな刈奈の背中を見つめながら、俊太は静かに呟いた。

Re絶チル×ヒロアカ】結成!ヒーローチーム【キャラ急募集!】 ( No.68 )
日時: 2017/05/23 01:47
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: eso4ou16)

特別編:濡羅 刈奈の過去(2)


 ☆


 その日の夕方。
 下校のチャイムが鳴り、生徒達が帰宅していく。
 刈奈は下校する他の生徒達に混ざって、帰り道である河川敷の傍を歩いていた。
 朝の出来事がずっと胸の中に引っ掛かっていたせいで、今日はろくに授業に集中できなかった。
 友人ともあまり会話する気になれなかった。
 朝の低いテンションをずっと引きずったまま、刈奈は帰っても誰もいない自宅を目指して歩みを進める。
 なんとなく足取りも重い気がする。
 そんなことを思いながら、刈奈はため息を漏らす。
 と、するとそこへ、

「おーい! 濡羅ぁ!」

 突然背後から呼び声が聞こえてきた。
 刈奈が足を止めて振り返ると、視界に飛び込んできたのは西村俊太の姿だった。
 息を切らして駆け寄ってきた俊太は、刈奈の眼前で足を止める。
 わざわざ走って追いかけてきたというのか。
 刈奈が呆然とした表情で汗が滴る俊太の顔を眺めていると、俊太は息を整えてからいつもの笑顔を浮かべた。

「一緒に帰ろうぜ、濡羅」

 開口一番、俊太が口にした言葉がそれだった。

「えっ?」

 俊太の言葉の意味が、そして行動が刈奈には理解できなかった。
 わざわざ走って追いかけてきて、「一緒に帰ろう」だなんて。
 西村俊太とは同じクラスメイトであっても、特別仲が良い訳ではない。
 今までそれほど会話を交わしたことも無い。
 なのに今日になって何故急に?

「ちょっと待って。どうしたの? いきなり」

 刈奈は思った疑問をそのまま俊太にぶつけてみた。

「どうしたって、言葉通りの意味だよ。一緒に帰ろうぜ!」

 俊太は人懐っこい笑顔をキープしたまま同じ言葉を言う。
 駄目だ。会話がかみ合わない。

「ひょっとして、朝のこと気にしてるの? それだったらゴメン、謝るよ。私も偉そうに言いすぎたと思ってたから……」

 刈奈は申し訳なさそうな表情を浮かべながら軽く頭を下げた。

「なんで濡羅が謝るんだよ?」
「えっ? だってムカついたんでしょ? 私にあんなことを言われて……」
「いや。他の奴らはどうか知らないけど、俺はお前にああ言われて助かったと思ってる。お前が指摘してくれたおかげで、今日1日恥を掻かずに済んだからな」

 そう言って、俊太はまたニカッと笑う。
 夕日に照らされて橙色に輝く彼の笑顔に釘付けになった時、刈奈は実感した。彼に恋焦がれる女子生徒達の気持ちを。
 そうか。西村俊太の笑顔は単なる作り笑いではない。
 彼の笑顔は彼の優しさを象徴するもの。
 嘘偽り無く、心の底から優しいから、彼は笑顔を絶やさない。
 西村俊太に惚れる女子生徒達の人を見る目は間違ってはいなかった。
 それを今、刈奈は実際に体験して理解した。

「……ありがと」

 俊太と顔を合わすのが急に恥ずかしくなった刈奈は、慌てて視線を逸らし、俯きながら小さく呟いた。
 刈奈の声が耳に届いていたのか、俊太は嬉しそうに彼女を見つめると、意外な言葉を口にした。

「なあ、頼みがあるんだけどさ。もし迷惑じゃなければ、服の着こなし方とかオシャレの仕方とか、そういうのもっと色々教えてくれないか?」
「どういうこと?」
「なんて言うか、その——」

 俊太は恥ずかしそうに指先で頬を掻きながら言葉を続ける。

「お前ともっと沢山話がしたいと思ってさ……。迷惑かな?」

 俊太の言葉を前に、刈奈は全力で顔を横に振った。

「ううん! 全然迷惑じゃない。寧ろ嬉しい。色々教えてあげる」

 そう言った刈奈の表情は本当に嬉しそうだった。

「その代わりって訳じゃないんだけど……、私からも良いかな?」
「何を?」
「ゲーム……。教えてくれないかな? 西村、詳しいんでしょ?」
「良いけど、濡羅ってゲーム好きだっけ?」
「ううん。だから覚えたいの。私が西村にファッションのことを教えるように、私も西村からゲームのことを教わりたい。駄目?」

 別にゲームに興味を持ったわけではない。
 ただ、俊太が好きなものは自分も好きになりたい。気持ちを共有したいと、刈奈は思った。

「全然! いくらでも教えてやるよ!」
「ありがとう」

 俊太の笑顔に、刈奈も精一杯の笑顔で応える。
 2人は河川敷の斜面に腰掛けると、日が沈みきるまでゲームとファッションについてを語り合った。


 ☆


 その後、刈奈と俊太は頻繁に同じ時間を過ごすようになり、2人の仲は恋人関係にまで発展した。
 互いを下の名前で呼び合うようにもなったし、携帯電話の番号もアドレスも交換した。
 休日の日は、朝から晩までずっと肩を並べた。
 日中は様々なデートスポットを巡り、夜は両親が不在であることを利用して遅い時間まで刈奈の自宅で過ごした。
 ある時は1日中ゲームに熱中し、ある時は2人だけのファッションショーを開いたりもした。
 勿論キスは何回もしたし、何度も抱き合ったりもした。
 いつの間にかクラス中に噂は広まり、いつしか学級公認のカップルになった。
 そんな幸せな日々が続いてから3ヶ月が経った。


 ある日の昼休み、俊太は3人の友人から呼び出しを喰らい、体育館倉庫へと向かっていた。
 廊下を歩いていた刈奈は、そんな俊太の姿を見かけて後を追いかけることにした。


 ひんやりとした空気とホコリっぽい臭いが立ち込める体育館倉庫の中で、俊太は3人の友人に問い詰められていた。

「なあ俊太、お前最近付き合い悪くね? 何度遊びに誘っても全部ガン無視だしよ」
「濡羅の奴と付き合ってるっぽいけど、俺らのことはどうでもいい訳?」
「どうでもいいって、そんなことあるわけ——」
「でも俺達と一緒にいる時より、濡羅と一緒にいる時の方が断然楽しそうだよな?」
「だから気のせいだって!」

 俊太が必死で宥めようとしても、3人の友人は全く聴く耳を持たなかった。
 それどころか、話せば話すほど友人達の感情はヒートアップしていく。
 その様子を、刈奈は物陰から心配そうに見守っていた。

「最近お前、服装にも洒落っ気が出てきたよな。何? それも濡羅の影響なの?」
「へ〜。お前、あんな奴の言葉真に受けてんだ。なんかガッカリだわ〜」
「おい! 刈奈のこと悪く言うなよ!」

 大事な恋人のことを悪く言われ、さすがの俊太の表情にも笑顔が消える。

「“刈奈”だってよ。もう下の名前で呼び合う仲ですか?」
「だったら俺達にも刈奈ちゃんのことを紹介してくれよ。どんな女か味見してやるからよ」

 その言葉に、俊太の堪忍袋の緒が切れた。
 次の瞬間、俊太の拳が友人の1人を殴り飛ばした。
 暴力なんてしたことの無い俊太が、怒りに任せて拳を振るったのだ。

「てめぇ!」
「なにすんだよぉ!」

 感情的になった2人の友人が、声を荒げながら俊太の制服に掴み掛かる。
 俊太も負けじと友人の腕に絡み付く。
 体育館倉庫の中は完全に修羅場と化していた。
 そしてその様子を、刈奈はただ恐怖しながら見つめることしかできなかった。

「俊太……」

 大事な彼氏が傷つけられる様子を見るに耐えられなくなった刈奈は、とうとうその場を後にした。
 震える肩を抑えながら、刈奈は逃げるように走った。
 早く誰かを呼ばないと。先生に言わないと。
 涙を浮かべながら、刈奈は職員室を目指した。
 いつの間にか、彼女の両手からは水がポタポタと滴っていた。


 刈奈に呼び出された教師達の手により、俊太達の喧嘩は治められた。
 幸い、俊太も3人の友人達も軽傷で済んだ。
 しかし、事態が事態であったため、俊太も3人の友人達もその日は早退となり、一足早く下校することになった。
 俊太のことが心配で堪らなかった刈奈は、授業の合間に俊太にメールを送った。
 返信は意外に早く、「大丈夫だよ。心配かけてゴメン」と笑顔の絵文字と共にメッセージが返ってきた。
 その言葉に、刈奈はホッと胸を撫で下ろすのだった。

Re絶チル×ヒロアカ】結成!ヒーローチーム【キャラ急募集!】 ( No.69 )
日時: 2017/05/25 02:56
名前: YU-KI ◆.FlbxpLDSk (ID: so77plvG)

特別編:濡羅 刈奈の過去(3)



 ☆


 喧嘩騒動から3日が過ぎた。
 その日の放課後、担任教師に用事を頼まれたことで珍しく帰るのが遅くなってしまった刈奈は、荷物を取りに教室へ向かっていた。
 勿論、一緒に帰るために教室では俊太が待ってくれている、はずだった。
 教室に入ってみると、そこには誰もおらず、机の上に自分の鞄と俊太の鞄、そして1枚のメモ用紙が置いてあるだけだった。
 メモ用紙には、殴り書きで「屋上で待ってる」とだけ書かれていた。
 鞄が置いてあるということは、俊太はまだ帰っていない。
 多分、本当に屋上にいるのだろう。
 そう思った刈奈は、自分の鞄と俊太の鞄を持って屋上へと向かった。



 階段を上り、4階建ての校舎の屋上の扉を開けると、夕日の光が差し込んで一瞬視界を遮られた。
 眼を細くして俊太の姿を探すが、そこに俊太の姿は無かった。
 代わりにあったのは、先日俊太と喧嘩して、傷もまだ完全に癒えきってはいない3人の俊太の友人だった。
 3日前の喧嘩の光景が眼に焼きついていることもあり、刈奈は3人に対し警戒心を持っていた。

「あなたたち……。俊太は?」

 2、3歩後退りしながら、刈奈は3人に尋ねる。

「いねえよ」
「お前を呼んだのはあいつじゃねえ。俺達だよ」
「えっ?」
「単刀直入に言うけどさ、お前ウザいんだよ! 急に俊太とイチャイチャしやがって。すっげえ目障りだわ、ほんと」

 自分を睨む3人の目つきを見て理解した。
 3人は俊太と付き合っている自分に嫉妬しているんだ。
 私が俊太と付き合うことで、彼らは友人を1人奪われたと思っている。
 しかもそれだけじゃない。
 恐らく、私と付き合う俊太にも、彼らは嫉妬している。
 恋人がまだいない自分達よりも先に、彼女を作った友人に。
 出し抜かれたと思っているんだ。
 それはつまり二重の嫉妬。
 友情と愛情から来る二つの嫉妬。
 これは質が悪いな。

「なによ! 私が誰と付き合おうとあなた達には関係ないことでしょ!」

 刈奈は負けじと反論するが、額には大粒の汗が滲んでいた。
 どちらかというと強気で負けず嫌いな性格の刈奈だったが、争い事に特別強いわけではない。
 既に気持ちは、3人が放つプレッシャーに押し潰されそうになっていた。

「関係大ありなんだよ! 俊太は俺達のダチでお前の私物なんかじゃねえ! 今からそれを、お前の身体にわからせてやる!」

 そう言うと、3人は背後に隠していたピラミッド状に積み重ねられたバケツ缶を手に取った。
 それは美術室に保管されていた液状のペンキ塗料が入ったバケツ缶だった。
 3人は一斉にバケツ缶を振り上げ、刈奈に塗料をぶっ掛けた。

「いやぁあああああ!! やめてよぉ!」

 悲鳴上げるも既に遅く、刈奈の全身は赤と青、そして緑の塗料を浴びてドロドロに染まってしまった。
 上着もスカートも下着も、髪の毛さえも、3つの色が混ざって濁った色に塗り潰された。
 力尽きたようにその場にペタンと座り込んだ刈奈の瞳からは、大量の涙が溢れていた。
 涙と共に、指先からは水の粒がポタリと零れ落ちる。

「も、もう……やめて……」

 悲痛な姿に成り果てた刈奈。
 自慢の着こなしも台無しになってしまったが、その光景に味を占めた3人は、楽しそうに次のバケツ缶を握り締めていた。

「お願い……。お願いだから、もう……」
「何言ってんだ? これからだろう! 俺達がお前の好きなコーディネートって奴をしてやるよ! 俊太が抱きしめるのを嫌がるほどに、グチャグチャにな」

 3人は完全に遊び感覚だった。
 狂気さえも感じさせる彼らの笑顔を前に、刈奈は心の底から戦慄した。
 胸の奥から湧き上がってくる恐怖という感情。
 しかし、それと共に、別の“何か”が身体の中から溢れ出ようとしていた。

「それじゃあ2発目いくぜ! せーの!」

 3人は再びバケツ缶を振りかぶり、一斉に中の塗料を放り出した。

「やめてってばぁああああああ!!!」

 感情の爆発と共に、刈奈は咄嗟に腕を振り上げた。
 降掛かる塗料から、わが身を守ろうとするように。
 すると次の瞬間、

「うわああっ!?」
「な、なんだよこれ!?」
「どうなってんだよぉ〜!?」

 悲鳴を上げたのは刈奈ではなく、3人の方だった。
 3人がバケツ缶から放り出した塗料は、どういう訳か3人の全身を汚していた。

「え……?」

 刈奈が呆然とした表情で前を見ると、そこには自分と3人の間を遮るように形成された水の壁があった。
 しかもそれはただの水の壁ではない。
 水銀のように光沢を放ち、鏡のように周囲の風景を反射している。
 まさに“水の鏡”だった。
 地面から吹き出すように生まれた水の鏡に跳ね返されて、塗料は3人の元に戻っていったのだ。
 黒とピンクと黄色の塗料に塗れてドロドロに汚れた3人は、突然出現した水の鏡とそれを作り出した刈奈の姿に恐怖を覚えた。

「濡羅お前、もしかして超能力者(エスパー)なのかよ!?」
「エ、エスパー……? 私が……?」
「ば、バケモノだぁ!」
「やべえ! 殺される!」

 眼前の3人が、突然怯えて騒ぎ出す。
 刈奈は呆気にとられながらも自らの手を見つめた。
 世の中には、超能力者(エスパー)だの個性だのと不思議な力を持った人間がいることは知っていた。
 知ってはいたが、まさか自分が?
 唐突に発現した自らの力に、刈奈は途端に怖くなった。
 全身がペンキ塗れなのも気にせずに、刈奈はその場から立ち去ろうと走り出す。
 が、しかし、

「あっ……」

 校内へと続く扉の前で、鉢合わせたのは屋上に駆けつけた俊太だった。

「俊太……」
「……」

 俊太の複雑な表情を目の当たりにし、刈奈はすぐに察した。
 水の鏡を生み出す力も、超能力者(エスパー)の話も。
 きっと見られた。
 きっと聴かれた。
 刈奈は俊太の前に立つことに耐えられず、すれ違うようにその場を後にした。
 彼女の後姿を、俊太は追いかけることができなかった。


 ☆


 薄暗くなってきた街頭を照らすように、歩道に並んだ電灯がチカチカと灯りだす。
 学園を飛び出した刈奈は、1人街中を歩いていた。
 全身ペンキ塗料に汚れてとてもじゃないが外を歩く格好ではなく、街中を歩く人々が、すれ違うたびにジロジロと見てくるが、今の刈奈にとってそんなことはどうでもよかった。
 自分が超能力者(エスパー)かもしれない。
 自分がバケモノかもしれない。
 俊太の友人の3人が言っていた言葉が、ずっと心の中に刺さっていた。
 様々な考えが、憶測が、感情が、刈奈の思考を支配していく。
 振り払おうとしても次から次へと沸いてくる不安と絶望感に、心がギュッと押し潰されそうになる。
 虚脱状態に陥った刈奈は、ふらついた足取りでひたすら街中を彷徨っていた。
 するとそこへ、突然1個の赤いボールがコロコロと刈奈の視界を横切った。
 見ると、ボールが出てきたのは小さな公園だった。
 続けてボールを追いかけて一人の少女が視界を横切っていく。
 白いスカートを穿いた幼稚園児ぐらいの女の子だった。
 疲弊した刈奈は、ボーっとした表情でボールと少女を眼で追いかける。
 が、次の瞬間、彼女の意識は完全に覚醒する。
 ボールと少女は歩道を抜け、車道へと飛び出した。
 同じタイミングで、交差点を曲がった1台の乗用車が姿を現す。
 それなりにスピードを出していた車は真っ直ぐとボールと少女に近づいていく。

「あぶないっ!」

 反射的に叫んだ刈奈は、咄嗟に少女を目指して走り出す。
 車道の真ん中に佇む少女の姿に気付いた車の運転手も、慌ててブレーキを踏むが明らかに間に合いそうになかった。
 少女を守るように抱きしめた刈奈は、一か八か能力を使うことにした。
 まだ自分の力がどんなものかもわからない。
 使い方だって知らない。
 この力で少女を救える保証だってない。
 だけど、少しでもその可能性があるのなら、とにかく今はそれに賭けたい。
 ついさっき、バケツ缶の塗料を跳ね返した時のことを思い出しながら、刈奈は力いっぱいその手を振り上げた。
 刈奈の手の動きに合わせて、アスファルトから水の鏡が噴出した。
 刹那、車は水の鏡に衝突すると、まるで分厚い壁にぶつかったようにボンネットが拉げた。
 そして、反発するように車はバウンドして大きく宙に舞い上がる。
 なんとか少女を救うことができた。
 ホッと一安心する刈奈だったが、そう思ったのも束の間、空中に放り出された車は反対側の歩道の上に落下した。
 大きな音を立てながら、グシャリと車体が潰れていく。
 次の瞬間、無数の悲鳴が街中に響き渡った。
 歩道にいた数人の歩行者が車の下敷きになったのだ。
 車が落下した場所には、営業中のサラリーマンや手を繋いだカップル、そして買い物中の主婦の姿があった。
 それら全員が、落下した車の餌食になった。
 数秒後、ガソリンが引火し、轟音と共に車は爆発、炎上する。
 車の中にいた運転手も、サラリーマンもカップルも、買い物中の主婦も全員、炎の中へと消えていった。
 周囲は既に大混乱となり、悲鳴や車のクラクション、サイレンが終始鳴り続けた。

「そ、そんな……」

 刈奈は少女を抱えたまま言葉を失っていた。
 1人の少女を救うために行なった行為が、結果的に大勢の命を奪ってしまった。
 そんなつもりなかったのに。
 彼女の中の不安と絶望が、さらに大きく膨らんでいく。

「未来!」

 公園から出てきた1人の女性が、大慌てで近づいてくる。
 刈奈が抱える少女の母親だった。
 母親は娘の名を呼び叫びながら、血相を変えて駆け寄る。
 ここにいたらまずい。
 そう思った刈奈は、少女を置いて急いでその場を後にした。


 混乱する街の中、立ち去る刈奈の姿を、ビルの屋上から1人の男が観察している。
 そのことを知る者は、この街の中には誰もいない。

Re: 絶チル×ヒロアカ】結成!ヒーローチーム【キャラ急募集!】 ( No.70 )
日時: 2017/05/25 07:18
名前: ルイージ (ID: gQELPCFY)

7大貴公子の残りの5人は後で書きます
後、僕がリクエストした敵陣の過去とか書いていいですか?

Re: 絶チル×ヒロアカ】 ( No.71 )
日時: 2017/05/27 10:04
名前: ハナ@閻魔天使 (ID: p93wLE8R)
参照: http://mecuru.jp/novel/20253

>>70
ルイージさん
どうぞ!大歓迎ですよ


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