二次創作小説(映像)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

劇場版 風林火山プリキュア!
日時: 2017/07/18 22:01
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31192

初めまして、愛です。
今日からしばらくの間は、私が書いているオリキュアの風林火山プリキュアの劇場版という名目の、中編小説を書かせていただきたいと思います。
ちなみに、原作の風林火山プリキュアはURLを貼ってあるので、是非そちらからどうぞ。
あと、この小説に登場するぴろんぬというキャラクターはリア友から頂いています。
だから、もしかしたら世界観に合わない可能性がございますが、ご了承ください。
それでは、よろしくお願いします。

Page:1 2 3



Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.6 )
日時: 2017/07/20 10:56
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode

 名乗りを終えた瞬間、一気に周りにいた人たちが飛びかかってくる。
 狭い通路であるため、退路はない。
 すぐに、モンテとウィングが、それぞれの方向に立つ。

「不動の山よ! 我に集い、力と成れ!」
「疾き風よ! 我に集い、力と成れ!」

 それぞれそう叫び、技を放つ。
 片方から来ていた人たちは風によって押し返され、もう片方から来ていた人たちは山によって立ち往生。

「横から逃げられる道はない……どうする!?」
「とりあえず、上に行こう! 屋根の上を伝って逃げればどうにか……!」

 フレイムはそう言って壁に手を当てる。
 三人はそれに頷き、壁を走って屋根の上に上る。
 試しに屋根の上から自分達を追って来た人たちを覗いてみると、かなりの人だかりが狭い通路に密集していた。

「これ、少なくともこの町の人たちは全員いるよね……」
「そうね……それより、ぴろんぬが心配だわ。置いてきちゃったから」

 ウィングの言葉に、フレイムは「そうだぴろんぬ!」と言って顔を上げた。
 その時、妖精の姿でフヨフヨと浮いて自分達の方に飛んでくるぴろんぬの姿を見つけた。

「ぴろんぬ!」
「皆、無事だったんぬ……?」

 そう漏らすぴろんぬに、すぐにフレイム達は駆け寄る。

「私達こそ、ぴろんぬが無事で安心して……」
「ごめん……皆」

 ぴろんぬがそう言うと同時に、フレイム達とぴろんぬの間の空間に穴ができる。
 それに、四人は目を見開いた。

「ぴろんぬ……!?」
「ちひろんぬのために……犠牲になってほしいんぬ……」

 その言葉が、四人が穴に吸い込まれるまで、最後に聞いたぴろんぬの言葉だった。
 やがて、穴は静かに消滅し、ぴろんぬはホッと息をついた。

「グロルに……報告するんぬ……」

−−−

「うわっとぉッ!」

 情けない声を漏らすと同時に、フレイムは慌ただしく着地する。
 顔を上げるとそこは、赤い岩石に囲まれた不思議な空間だった。

「ここは……? それより、ぴろんぬを……!」
「ひぃやっはぁ!」

 歩き出そうとした瞬間、フレイムの目の前の地面から火が噴き出す。
 それに、フレイムは咄嗟に後ろに跳び、目の前に立つ人影を見た。
 真っ赤な肌に、髪がある部分は体の数か所からは小さな火が噴き出した男。
 眼球がある部分は空洞で、中は真っ白だった。

「何、アンタ……」
「ここから出たければ、俺様を倒していきな」

 その言葉に、フレイムはすぐにファインティングポーズを取った。

−−−

「……ここは……?」

 穴から出たウィングは、そう呟いて辺りを見渡した。
 地面は砂で、辺りには視界を塞ぐものが何もない空間。
 地平線が広がり、白い砂と、青い空の二色しか存在していない。

「……何、ここ……」
「貴様がそれを知る必要はない」

 その言葉と同時に、旋風が吹き荒れる。
 ウィングが咄嗟に腕を構えて吹き飛ばされないようにしていると、徐々にその旋風が一か所に集まり、やがて、その風は霧散し、一人の男が立ちふさがる。
 青い、仙人のような服を着て、肌も真っ青。
 長い髪が、自分で起こしたであろう風になびき、瞼を開いたその奥には、白い空洞が広がる。

「貴方は……?」
「何かを知るのは、勝者の特権だ。知りたくば……」
「まず、貴方に勝つしかないってわけね」

 拳を構えながら言う千速に、青い男はニヤリと笑った。

−−−

「っつぅ……朱莉ちゃん……?」

 岩に囲まれた広い部屋で、モンテはそう呟いて立ち上がる。
 穴から出た時に着地に失敗して多少体を打ち付けたが、今はそれどころではない。
 服に付着した砂を払い、辺りを見渡していた時、数メートル離れた地面がボコボコと盛り上がるのを見つけた。

「……!? 何……!?」

 怯えた表情で言うモンテ。
 その間にも地面は盛り上がり、やがて、ゴーレムのような見た目の化け物になる。

「な……!」
「グォォォォォ……」

 言葉にならないうめき声をあげるゴーレム。
 モンテはそれに、目に涙を浮かべながら後ずさる。

−−−

「ふむ……林、ですか……」

 自分を囲む木々を見つめながら、フォレストはそう呟いた。
 その時、木から葉の塊が落下し、彼女の目の前に着弾する。

「……?」

 不思議に思っていると、その葉の塊は徐々に縦に伸び、やがて、人の姿を模す。
 やがて、それは、パァンッという音とともに弾け、中から緑色の女が現れる。
 長い新緑の髪に、スレンダーな体つき。緑色の肌に、深い緑の唇。

「……貴方は誰ですか?」
「貴様に名乗る名前は無いわ」
「そうですか」

 フォレストはあっけらかんとそう言うと、静かに腕を構えた。
 その様子に、緑の女はニヤリと笑い、同じように構えを取った。

Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.7 )
日時: 2017/07/20 15:01
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode

「ほう……仕事は終わりか? ぴろんぬ」

 部屋に入ってきたぴろんぬを見て、男はそう言った。
 その言葉に、人間の姿になったぴろんぬは静かに目を伏せた。

「……きっと、ね。町の人たちを押しのけてまで逃げて来たのは驚いたけど、あの部屋は抜け出せないと思うよ」
「ほう、そうか……」

 満足気に言う男に、ぴろんぬはすぐに駆け寄った。

「ねぇ、プリキュアを倒したら、本当にこの町から手を引いて、ひろちゃんのことも……!」
「あぁ。分かっているさ。お前がプリキュアを倒せたら……な」

 男の言葉に、ぴろんぬは顔を綻ばせた。
 その様子に、男はニヤリと笑いつつ、ソファの肘置きをトントンと指で叩いた。

「ところで……プリキュアの様子を見ることはできないのか?」
「えっ? あ、ちょっと待って……」

 ぴろんぬはそう言いつつ、手を掲げた。
 すると、薄ピンク色の四角い板が四枚出現し、それぞれプリキュアを映す。
 それを見て、男は「ほう……?」と呟いた。

−−−

「侵掠の火よ! 我に集い、力と成れ!」

 フレイムがそう叫び炎を出した瞬間、赤い男は腕に炎を纏わせる。

「燃え盛る爆炎よ! 我に仕えよ!」

 そう叫んだ次の瞬間、空中で二人の炎がぶつかる。
 一瞬、互角かと思われたが、すぐに赤い男の炎がフレイムの炎を呑み込み始める。

「しまっ……!?」
「うおらぁッ!」

 その叫びと同時に、一気に爆炎がフレイムの体を包み込む。
 ボロボロになったフレイムは地面に倒れ伏す。
 なんとか立ち上がろうとするが、傷だらけで、何度も立ち上がろうとしては倒れるを繰り返す。

「クク……もう勝負あり、か?」

 ニヤニヤと笑いながら言う男を、フレイムは睨み付けた。

−−−

「はぁぁぁッ!」

 地面を蹴ったウィングは、青い男に拳を突き出す。
 それを男は、まるで消えるくらいの速度で躱し、ウィングの背後に回る。

「クッ……疾き風よ! 我に集い、力と成れ!」

 咄嗟にそう唱え風を巻き起こす。
 しかし、男には通用していないようで、その風をものともせずに一気にウィングとの距離を縮める。

「な……!」
「フンッ……風と言っても、所詮、そよ風だな」

 そう呟くと同時に、ウィングの胸を蹴り飛ばす。
 ウィングはそれに「カハッ……」と息を漏らし、砂の上を跳ねた。

−−−

「ガァァァァァッ!」

 咆哮をあげながら、ゴーレムは突進してくる。
 しかし、咄嗟にそれを躱し、モンテは地面に手を当てた。

「不動の山よ! 我に集い、力と成れ!」

 そう叫んだ瞬間、ゴーレムの足元から山の盾が生まれ、ゴーレムの体を破壊する。
 バラバラになったゴーレムの体を呆然と眺めながら、モンテはその場にへたり込む。
 しかし、地面に転がる綺麗な丸い石を見て、サッと血の気が引くのを感じた。

「やめ……!」

 立ち上がりながらそう言うのと同時に、その石を中心に、ゴーレムのバラバラになった体が集まっていく。
 そして、ちょうど駆け寄ろうとしていたモンテの体を殴り飛ばした。

「カハッ……」

 地面を転がってから、モンテは咳き込む。
 顔を上げると、無心に、自分に近づいてくるゴーレムの姿があった。

−−−

「徐かなる林よ! 我に集い、力と成れ!」

 その叫びと同時に、フォレストは自らの体を隠す。
 目を開けると、すでに緑の女もいない。
 誰もいない空間……いいや、その場には二人の存在が隠れているのだ。
 フォレストは足音を立てないようにその場から離れながら、耳を澄ます。
 相手の足音にさえ気づければ、こちらのもの……。

 パキッ……。

 その時、乾いた音が響いた。
 フォレストは、それに自分の足元を見つめた。
 見ると、そこには折れた枝があった。
 ———しまっ……!

「見つけたァッ!」

 その叫びに、咄嗟にフォレストは後方に大きく跳んだ。
 しかし、その際に立てた大きな足音で気付かれたのか、突然空中でその動きが止まる。

「グッ……!」

 次の瞬間、腕が何者かに両手で掴まれ、そのまま大きく体が回転した。
 バァンッ! という音と共に背中を大きく打ち付け、フォレストは大きく咳き込む。
 しかし、見失わないようにという配慮か、すぐに腹を強く踏まれ、身動きができない。

「ぅぐッ……!?」

 その足をどけようとするが、それより前に胸ぐらを掴まれ、足が宙に浮く。
 それどころか、相手が見えないから、ほとんど自分自身が宙に浮いているような感触になる。
 奇妙な感覚に襲われていた時、先に、フォレストの技の効果が切れ、その姿が露わになる。

「ぐッ……?」
「へぇ〜。時間制限があるのね」

 女はそう言うと、フォレストの体を空中に放り、そのまま殴り飛ばした。
 フォレストは地面を何度か跳ねて、やがて、その動きを停止させた。

Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.8 )
日時: 2017/07/20 16:32
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode

「あかりん……!」
「ふむ……? プリキュアに同情するのか?」

 画面を見つめながら声を発したぴろんぬに、男はそう言った。
 それに、ぴろんぬは口を噤み、目を逸らす。
 彼女の反応に、男は嘆息した。

「まさか、たったあれだけ一緒にいただけで、情が移ったわけではあるまい?」
「……違うよ」

 そう言いつつも、ぴろんぬは手首に巻き付いたコスモスを優しく撫でた。
 その時だった。

『全く、そろそろ諦めたらどうなんだ? すでに満身創痍。負けが確定したようなものじゃないか』
『諦めない……ぴろんぬの為にも!』

 その言葉に、ぴろんぬは顔を上げた。

−−−

「ぴろんぬぅ〜?」
「そうだよ……約束したんだ。あの、コスモス畑で……ちひろちゃんを助けるって!」

 そう言って、フラフラと立ち上がるフレイム。

−−−

「私だけなら、きっと諦めてた……でも、フレイムはきっと、諦めない……だから、私も諦めない」

 そう言いながら立ち上がるウィングに、男は目を細める。

−−−

「朱莉ちゃんは、ここで、約束を破ったりしない……朱莉ちゃんを隣で支えることが、私の役目だと思うから!」

 生まれたての小鹿のように震える膝で立つモンテに、ゴーレムは首を傾げる。

−−−

「友達の責任は、連帯責任……一人でも破ったら、そこでその約束は破棄されちゃいますから」

 木に寄りかかるようにして立ちあがるフォレストに、女は僅かにたじろぐ。
 すると、足元にあった落ち葉が、微かに音を立てた。

−−−

『『『『だから私達は、絶対あきらめない!』』』』

 別世界にいるにも関わらず、そう同時に叫ぶ四人。
 それに、ぴろんぬは驚いたように目を見開いた。

「なんで……なんでそんなに、一生懸命になれるの……?」
「ほう……? これはまた、面白い状況だな」

 顎に手を当てながら呟いた男を無視して、ぴろんぬは画面に縋りついた。

「なんで!? 出会ったばかりなのに、そんな、一生懸命に……!」
『友達だから……』

 まるでぴろんぬの叫びに応えるように、フレイムはそう口を開く。
 それに、ぴろんぬは目を見開いた。

『友達を助けることは……当たり前、だからぁ!』

 そう叫ぶと同時に、フレイムの体を炎が包み込む。
 轟々と燃え上がる炎の中、フレイムは叫んだ。

『ちひろちゃんを……そして、ぴろんぬとの約束を! 私は絶対に、守ってみせるんだからぁぁぁぁぁぁッ!』

Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.10 )
日時: 2017/07/20 17:49
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode

「なんだ、この力は……!?」
「動くこと、雷霆の如し! サンダーブレス! フレイム!」

 フレイムがそう叫ぶと、彼女を包み込んでいた炎に雷が落下し、それが混ざり合い、彼女の手首に巻き付く。
 やがて、それは真っ赤な腕輪になり、熱気を発する。

「ッ……この、人間風情がぁぁぁぁぁッ!」
「侵掠の火よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! フレイムバーンッ!」

 そう叫んだ瞬間、サンダーブレスから業火が噴き出す。
 それに、赤い男は動きを止め、すぐに腕を構えた。

「燃え盛る爆炎よ! 我に仕えよ!」

 炎と炎がぶつかりあい、岩石で囲まれた空間を熱気が支配する。
 男は、次も自分が勝つだろうと思っていた。
 しかし、フレイムが発した炎は想像以上に強く、ジワジワと自らが発した炎を呑み込んでいく。

「グゥッ……!? 俺が、プリキュアに……!?」
「いっけぇぇぇぇぇぇッ!」

 フレイムが叫ぶと同時に、さらに炎が進行し、やがて、赤い男の体を包み込み、燃やし尽くす。
 そして、フレイムより前の空間は全て燃え、鮮やかな赤だった岩石は全て、真っ黒に焦げた。
 全力を使い果たしたフレイムは、その場に仰向けに倒れ、そして、天井に向かって拳を突きあげた。

−−−

「動くこと、雷霆の如し! サンダーブレス! ウィング!」

 ウィングがそう叫ぶと、風と雷が同時に発生し、それらが絡まり合い、青い腕輪となる。
 それを見た瞬間、青い男は忌々しそうな顔をした。

「その程度の力で、俺の速さに付いてこれると思うなぁッ!」
「疾き風よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! ウィングアクセル!」

 そう叫んだウィングは、青い男の攻撃を躱すように横に動いた。
 すると、クッキリとした残像が残り、分身のようにそれは増えていく。

「なに……分身……!?」
「さぁ、本物が分かるかしら?」

 その言葉と同時にさらに分身は増え、青い男の八方全てを塞ぐ。
 それに、男は舌打ちをし、踵を返して走り出す。

「まともにやり合っていられるかッ! 逃げてしまえば、俺のもの……」
「今の私から逃げきれると思ったら、大間違いよ?」

 耳元でそう聴こえ、男は狼狽する。
 先ほどいた場所から、数秒で100メートルほどは離れたであろうに……。
 そう思っていた時、首を両足で掴まれた。

「がッ……!?」
「風はどこにでも吹き荒れるッ!」

 そう叫び、ウィングは男の首を両手で挟んだまま体を捻り回転させる。
 すると、男の体も吹き飛ばされ、地面を跳ねた。
 首の骨を折ったのだろうか。地面に倒れ伏せた男は、そのまま消滅していった。
 分身が消えていくのを見ながら、ウィングは空を見上げた。

−−−

「動くこと、雷霆の如し! サンダーブレス! モンテ!」

 モンテがそう叫ぶと、砂嵐が巻き起こる。
 そこに雷が落下し、それらが絡み合って、黄色の腕輪と化す。

「ガァァァァッ!」

 ゴーレムはそれに巨大な咆哮をあげ、一気にモンテに向かって突進する。
 やがて、右腕で拳をつくり、振り下ろした。
 しかし、モンテは両手を交差させてそれを受け止め、悲しそうな目でゴーレムを見上げる。

「貴方は、本当はこんなことしたくないんだよね? 本当は、ただ平和に生きたいだけなんだよね?」
「ガァッ……!?」

 困惑した声を漏らすゴーレムに、モンテは優しく微笑んだ。

「大丈夫。私が今、楽にしてあげる!」

 そう言い、モンテはゴーレムの腕を引き寄せた。
 咄嗟にゴーレムはモンテを殴りつけるが、モンテはそれを左手で受け止め、一気にゴーレムまで距離を詰め、胸元の岩に触れた。

「不動の山よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! モンテムーロ!」

 そう叫んだ瞬間、ゴーレムの体の全方向から岩の山が突き出す。
 当然、それは内側にも反映され、内部破壊を繰り返し、修復不可能にまで部品が粉々になっていく。
 キラキラと光る粉が零れ落ちていくのを見つめながら、モンテはその場にへたり込んだ。

−−−

「徐かなる林よ! 動く雷霆よ! 今、二つの力よ! 我に集い、力と成れ! フォレストロッド!」

 そう叫ぶと、フォレストの体から緑色の光と黄色の光が飛び出す。
 それぞれを片手ずつに宿したフォレストは、胸の前でその手を合わせる。
 すると、合わせた手から光が溢れ、ゆっくり手を離すと、それは、一本の棒状の武器と化す。

「ほう……? 大層な武器じゃないか。だが、その程度じゃ私には勝てないよ!」
「いいえ。諦めなければ、結果は分かりません。だから、信じることを、私はやめない」

 フォレストはそう言い、瞼を閉じた。
 その様子に女は忌々しそうに舌打ちをした。

「舐めているのか? 目を瞑って」
「私は大真面目です。どうしたのですか? 早く攻撃すれば良いじゃないですか」
「何を……! このクソガキが……!」

 そう言いながら、女はフォレストに歩み寄る。
 怒りのあまり冷静さを欠いたためか、足音にまで気を配ることができず、目を瞑ることで聴力に集中していたフォレストには丸聞こえだ。
 ———まだです。まだ……もっと、近くに……。
 そう思っていた時、足音が、かなり近い位置から聴こえた。

「今ですッ!」

 そう叫び、フォレストは思い切りフォレストロッドを振るった。

「ガハァッ!」

 首筋にフォレストロッドをクリティカルヒットされた女は、声をあげながら地面に倒れる。
 予想外の出来事だったためか、透明化の能力が切れる。
 慌てていた時、首筋にフォレストロッドをあてがわれた。

「ッ……!」
「これで終わりです」

 優しく微笑んだフォレストは、そう言ってフォレストロッドを構え直す。

「二つの力よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! デュアルバーストッ!」

 その叫びと共に、二つの光が絡まり合いながら、女の元に飛んでいく。
 そして、女が消え去っていくのを見つめながら、フォレストはゆっくりと息をついた。

Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.11 )
日時: 2017/07/20 18:43
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode

「……ッ!」

 プリキュアの勝利を見届けたぴろんぬは、静かに唇を噛みしめる。
 それに、男は退屈そうな目でぴろんぬを見つめた。

「プリキュアが勝ったなぁ……? これじゃあ、お前の大好きなひろちゃんは……」
「分かってる! まだ……まだ、終わってない!」

 捨て台詞のように叫ぶと、ぴろんぬはその部屋を飛び出した。
 苛立った様子で歩きながら、ぴろんぬは静かに指を鳴らした。

−−−

「ん?」

 唐突に現れた空気の穴に、フレイムは首を傾げる。
 しかし、黒焦げになり、自分以外いなくなったその場所にいる理由など無い。
 少し迷いつつも、フレイムはその穴に一歩、踏み入った。
 すると、体が一気に引っ張られ、やがて、見知らぬ空間に出る。

「ここは……?」

 そこは、屋敷のロビーのような場所だった。
 青白い不気味な電灯で照らされ、少し薄暗い。
 困っていた時、三つ空間に穴が空いて、中からウィング、モンテ、フォレストがそれぞれ飛び出す。

「皆、無事だったんだ!」
「朱莉ちゃんこそ、無事で良かったよ!」

 再会を喜び合うフレイムとモンテに、ウィングは呆れたように笑った。
 すると、彼女の肩を叩き、フォレストは優しく微笑んだ。

「無事だったんですね、千速」
「フォレストこそ……」

 そこまで言った時、バァンッ! という銃撃音が響き渡る。
 その音を放った原因になるであろう弾丸は、ちょうどフレイムの前髪を掠め、壁に穴を空ける。

「なに……!?」

 驚きつつも、フレイムは咄嗟にモンテの前に立ち、銃弾を撃ったであろう人物に視線を向けた。
 そして、目を大きく見開いた。

「……ぴろんぬ……?」
「あぁ……外しちゃった……銃弾、一発しか無いのに……」

 うわ言のようにそう言いながら拳銃を床に投げ捨てたぴろんぬは、腰から提げた剣をゆっくりと抜く。
 その様子に、フレイム以外の三人は息を呑む。

「あんな場所に連れて行かれた時点で察してはいたけど……そういうこと」
「そういうことって、どういう……ぴろんぬ。これは一体どういう……」
「うるさいッ!」

 未だに、この場で唯一状況を理解できていないフレイムの言葉を、ぴろんぬは一言で黙らせた。
 それに、フレイムは口を噤み、ぴろんぬをただ見つめた。
 ぴろんぬはその目を睨みながら、ゆっくりと歩いて行く。

「ちょ、ぴろんぬ! 一緒にちひろちゃんを助けるんじゃなかったの!?」
「フレイム、いい加減に気付きなさい! 私達は騙されてたの!」
「騙してなんかないよ〜」

 ウィングの言葉を、ぴろんぬは、やけにのんびりした口調で言う。
 彼女の言葉に、ウィングは「どういうこと……?」と聞き返した。
 それを馬鹿にするように、ぴろんぬは微笑した。

「騙してないよ? ひろちゃんはね、囚われているの。……死という名の概念に」
「これは話が通じないタイプの人のようですね」

 ジト目で言うフォレストの言葉を無視して、フレイムは口を開いた。

「訳が分からないよ! ちひろちゃんは、敵に捕まってるんじゃないの!?」
「あかりんは馬鹿だなぁ……だからさぁ、ひろちゃんは捕まってるんだって。死という名の、全ての人間にとっての敵に。だからね、助けてほしいの。貴方達を倒せば、ひろちゃんは生き返るから……だから……」

 そこまで言うと、ぴろんぬは剣を突き出した。
 剣先は、ちょうどフレイムの喉元に当たり、恐らく、少しでもぴろんぬかフレイムが前に出れば、恐らく、フレイムの命はない。
 しかし、フレイムはそれに動じず、ただジッと、ぴろんぬの顔を見ていた。

「朱莉ちゃん!?」
「朱莉、なんで逃げないんですか!? そのままじゃ……!」
「え、なんで逃げないといけないの?」

 フレイムが、まるで当たり前のことのように発したその言葉に、三人は口を開けてポカンとした。
 それに、フレイムはぴろんぬの顔を見て、ニコッと笑った。

「ぴろんぬ。これは、どういう遊びなの? この世界で流行ってる遊び?」
「なんで……そんな……」
「でもこの剣って本物だよねぇ。子供にさせる遊びにしては少し野蛮すぎるんじゃ……」
「あかりんッ!」

 動揺したぴろんぬは、咄嗟にその剣を前に出した。
 しかし、フレイムはそれを、体全体を横に傾ける形で躱し、そのままぴろんぬの手を叩いて剣を落とさせた。
 ぴろんぬがそれに驚いていた時、フレイムは優しく、ぴろんぬの肩を叩いた。

「ダメだよぴろんぬ? あれはオモチャじゃないんだから、あそこで前に出したら危ないから、次からは気を付けて……」
「……なんで……」

 気付いたら、ぴろんぬの紫色の大きな目からは、ボロボロと涙が溢れだしていた。
 彼女の反応に、フレイムは首を傾げる。
 ぴろんぬはその場に膝をつき、「なんで、なんでぇ……」と声を漏らした。

「なんであかりんは……私を疑わないの……!」
「……友達だから」

 その言葉に、ぴろんぬは顔を上げた。
 するとそこには、自分に向かって手を差し出し、微笑んでいるフレイムの姿があった。

「ぴろんぬは、もう私の友達だから。友達を疑うことなんて、するわけないじゃん」

 その言葉に、ぴろんぬは震える声で「あかりん……」と、息を吐くように呟いた。
 そして、ゆっくりと手を伸ばし、フレイムの手を……———。

「全く、つまらないショーだったな」

 その時、どこからか、男の声が響き渡った。


Page:1 2 3