二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 劇場版 風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/07/18 22:01
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31192
初めまして、愛です。
今日からしばらくの間は、私が書いているオリキュアの風林火山プリキュアの劇場版という名目の、中編小説を書かせていただきたいと思います。
ちなみに、原作の風林火山プリキュアはURLを貼ってあるので、是非そちらからどうぞ。
あと、この小説に登場するぴろんぬというキャラクターはリア友から頂いています。
だから、もしかしたら世界観に合わない可能性がございますが、ご了承ください。
それでは、よろしくお願いします。
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.1 )
- 日時: 2017/07/18 22:44
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
「ホラホラ! 三人とも速く!」
後ろ向きに走りながら言う朱莉に、蜜柑は苦笑する。
「もう、朱莉ちゃん。そんなに急がなくても逃げないよ」
「でもさぁ、速く見たいんだもん! ホラ、速く速く!」
「……相変わらず子供ね。まぁ、付き合うわよ」
千速はそう呟いて呆れたような笑みを浮かべ、朱莉の元に駆け寄る。
その様子に、皐月は「千速は人のこと言えませんよ」と言って笑った。
「そうこなくちゃ! ホラ、二人も!」
そう言って両手で大きく手招きをする朱莉に、蜜柑と皐月は顔を見合わせて、すぐに朱莉の方に向かって走り出す。
それから四人で道路を駆け抜け、そして……目的地に出る。
「「「「うわぁ……!」」」」
目の前に広がる光景を見た瞬間、四人は感嘆の声をあげた。
赤や白、ピンク色のコスモスが咲き乱れ、それはそれは綺麗な風景が広がっている。
「忍ヶ丘では、この季節にはコスモス畑が出来るんだよ。私達はこうして毎年見に来てるけど、やっぱり見飽きないねぇ」
蜜柑の説明に、千速は「へぇ〜」と感心した声をあげた。
皐月は「素敵ですね」と言って胸の前で手を合わせ、キラキラした目でコスモス畑を見つめる。
二人の反応に、朱莉は腕を組んで、うんうん、と満足そうに頷いた。
「ヘヘッ……今年は絶対、千速達にも見せてあげたいねぇ〜って、蜜柑とコッソリ話し合ってたんだよ〜?」
「そんな話し合いを……でも、ありがとう。すごく綺麗」
「えぇ。こんなに綺麗な風景を見たのは初めてです。感動しました」
「いやぁ、そんなに言われると照れるなぁ」
照れ隠しのように頬を掻きながら朱莉が言うと、三人はそれにクスクスと笑った。
その時、蜜柑が朱莉より後ろの方の空を見て、固まった。
「ん? 蜜柑、どしたの?」
「え? あぁ、いや……あそこの空、変じゃない?」
「空ぁ?」
蜜柑の言葉に、朱莉はそう聞き返しながら自分の背後の空を見る。
すると、そこでは、空の一点が歪み、少しずつ穴が空こうとしているのが分かった。
「皆、下がって!」
咄嗟に朱莉は三人を自分の背後に隠し、両手を広げた。
それとほとんど同時に歪んでいた部分は一気に裂け、中から、朱莉達と同い年くらいの少女が飛び出してくる。
「うわぁッ!?」
そしてそれは、そのまま朱莉の顔面にクリティカルヒット。
朱莉の体は大きく後ろに揺らぎ、咄嗟に、蜜柑が支える。
同時に、朱莉にぶつかった少女はポンッと小さな煙と同時に、掌サイズになって、地面にポテンッと落ちた。
「いっつぅ……」
「朱莉ちゃん、大丈夫?」
「ん〜……多分……」
「ねぇ、その子は一体……」
千速の問いに、全員の視線が地面にへたり込む小さな女の子に釘付けになる。
ピンク色のツインテールに、フリフリした可愛らしい服。
紫色のクリクリした大きな目をパチパチと瞬きしてから、少女は、ゆっくりと朱莉達を見上げた。
「貴方達は……プリキュアんぬ?」
「んぬ……? えっと、私達はプリキュアではあるけど、でも……」
朱莉が代表するように答えると、すぐに少女は朱莉の顔の高さまで飛び上がり、声をあげた。
「プリキュア! 助けて欲しいんぬ!」
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.2 )
- 日時: 2017/07/19 15:30
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
「き、急にそんなこと言われても……ねぇ?」
朱莉はそう言いながら、他の三人に視線を向ける。
三人はそれにコクコクと頷き、浮かんでいる手乗り少女を見る。
すると、少女はプクッと頬を膨らませ、ポンッという音と小さな煙とともに、同い年くらいの少女へと早変わりする。
「うわッ!?」
「もしかして、ライデンみたいな……?」
「そう! 私はお世話妖精のぴろんぬだよっ!」
そう言って決めポーズをとるぴろんぬに、朱莉達は若干引いた素振りを見せる。
すると、ぴろんぬは、すぐにハッとした表情をして、朱莉の手を握った。
「プリキュアの皆! 助けてほしいの!」
「えっと、とりあえず話聞くから落ち着こう?」
「う、うん……きっと色々ありすぎて混乱してるだけだよね?」
「えぇ。まずどこかに座って休憩したら……」
「ぴろんぬは疲れてないんぬ!」
妖精の姿になったぴろんぬは、目の前にいた朱莉の顔面をツインテールで強打した。
明らかに髪の量が多いため、朱莉の顔面は思い切り右を向く。
その間にぴろんぬは人間の姿になり、スタッと地面に着地した。
「いっ……たぁ!?」
「改めてっ! えっと、こっちの世界の人から見たら異世界……なのかな? そこでお世話妖精をしています! ぴろんぬです! よろしくですっ!」
「ちょっと待って!? 今の髪の毛の威力じゃないよ!? 鉄の棒仕込んでたりしない!?」
「朱莉ちゃん大袈裟だよ……」
「いや、蜜柑は殴られたことないから!」
呆れながら言う蜜柑に、朱莉はツインテールで殴られた頬を押さえながら抗議する。
しかし、それを軽く無視して、残りの三人はぴろんぬに視線を向けた。
「無視……だと!?」
「それで? わざわざこの世界まで来て、何の用? 朱莉を殴りに来ただけ……ではないわよね?」
千速の言葉に、ぴろんぬはコクッと頷いた。
彼女の反応に、朱莉もさらなる抗議を重ねるのをやめ、ぴろんぬの次の言葉を待つ。
「私達の住んでる国は、今、幽鬼軍に支配されてて……それで、私がお世話してる子が捕まっちゃってるの!」
「それで、プリキュアである私達に助けを求めた……と?」
皐月の言葉に、ぴろんぬは頷く。
その反応に、四人は顔を見合わせる。
「私には、アイツを倒すことなんてできない……でも! プリキュアなら、きっと倒せると思って!」
「ぴろんぬ……」
朱莉はしばらく間を置いた後で、ゆっくりと頷き、ぴろんぬの手を握った。
ぴろんぬは、それに、驚いた素振りを見せ、顔を上げた。
「私、火場朱莉! 一緒に幽鬼軍を倒そう? ねっ?」
「あかりん……うんっ!」
「え、今の一瞬で、あだ名考えたの!?」
蜜柑がそう驚くのを見て、ぴろんぬはニカッと笑った。
その笑顔に、朱莉は「よしっ。明るくなった!」と言って、一緒に笑う。
「ていうか、朱莉ばかりが自己紹介してもアレよね。私は風間千速」
「あっ、じゃあ……私は遠山蜜柑。よろしくお願いします」
「神林皐月です。よろしくお願い致します」
朱莉に続くように三人も自己紹介をして、手を差し出していく。
ぴろんぬはそれに顔を上げ、目を潤ませる。
「ちーたん……みかにゃん、さっきー……」
「あだ名に一貫性がない……だと……」
「皆、ありがとう!」
朱莉の言葉を無視するようにぴろんぬはそうお礼を言うと、手を掲げた。
すると、空間がグニャグニャと歪み、やがて、大きな穴が開く。
「おぉ〜!」
「それじゃあ皆、付いてきて!」
ぴろんぬはそう言って朱莉の手を引くと、穴に引き込んだ。
「うわ、ちょ!?」
「朱莉ちゃん!?」
引っ張られた朱莉を咄嗟に守るように、彼女の腕を掴む蜜柑。
しかし、華奢な体のどこにそんな力があるのか、蜜柑諸共穴に引き込まれる。
「はぁ……まぁ、やるしかないわよね」
「ですね」
残された千速と皐月はそう言って顔を見合わせ呆れたように言うと、二人で手を握り合って、同時に穴に飛び込んだ。
すると、それと同時に穴は閉じ、消えて行った。
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.3 )
- 日時: 2017/07/19 20:26
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
「うわわわッ!」
驚いた声をあげながら、朱莉は地面に倒れる。
それに、蜜柑はその横に着地しつつ、「大丈夫!?」と朱莉を見た。
「もぉ〜。プリキュアなんだからしっかりしてよ〜」
「今は変身してないから、普通の女の子だよ!」
「変身もせずに果敢にオンネーンに立ち向かう女の子を普通とは言わない」
後から穴から出てきた千速の声に、朱莉は「何を〜!?」と言って起き上がる。
すると、目の前に広がる街の光景に、すぐに言葉を失った。
「うわぁ……!」
「私達の世界の……中世ヨーロッパくらいの街並み、なのかな?」
「んー。それはよく分からないけど……良い所でしょ?」
コテン、と首を傾げながら聞くぴろんぬに、朱莉は「うんっ!」と大きく頷いた。
そして辺りを見渡していた時、とある物を見つけ、朱莉は「あれ何!?」と言って駆けだす。
「ちょっ、朱莉ちゃん!」
すぐに蜜柑が心配して駆けだす。
二人のやり取りに、皐月がクスクスと笑った。
「あの二人は相変わらずですね」
「いつもあんな感じなの?」
「えぇ。というか、昔からそうなんじゃない? あの二人、幼馴染だから」
「……幼馴染……」
千速の言葉に、微かにだが、ぴろんぬの表情に影がかかる。
そして、千速と皐月のやけに近い距離を見て、口を開いた。
「……二人も、幼馴染?」
「え? えぇ、まぁ……」
「そう、ですけど?」
「ふぅん……」
興味無さそうな口ぶりで言ったぴろんぬは、視線を朱莉達が走って行った方向に向けた。
そこでは、屋台で何かを買っているのが見えた。
「それじゃあちょうどだね。毎度」
「朱莉ちゃ〜ん」
朱莉の元に駆け寄った蜜柑は、朱莉が持っているものにげんなりした表情をする。
その様子に、朱莉は首を傾げた。
「蜜柑、どしたの?」
「どしたの、じゃないよ……何買ってるの」
「ん? あぁ、これ? チュロス」
朱莉はそう悪びれる素振りすらなく言うと、チュロスの先端を齧ってモグモグと頬張る。
彼女のその様子に、蜜柑はため息をついた。
「あのさぁ、私達はこの世界に観光に来たんじゃないんだよ? ぴろんぬちゃんを助けるために来たんだよ?」
「それは分かってるよ〜……あ、これ美味しい!」
「ちょ……人の話聴いてる? 大体朱莉ちゃんはいつもそうやって……」
「まぁまぁ、良いではないかぁ〜」
「むぐっ!?」
蜜柑の話を遮るように、朱莉は蜜柑の口にチュロスを突っ込んだ。
しばらくそれを頬張っていた蜜柑の目は、徐々にキラキラと輝く。
「美味しい!」
「でしょ!?」
「何流されてるの……」
「えー良いじゃん。千速も食べなよ〜。美味しいよ?」
チュロスを差し出す朱莉に、千速は「いらないっ」と言ってそっぽを向く。
しかし、やはり欲しいのか、少し羨ましそうにチュロスをジッと見ている。
その様子に皐月は苦笑し、屋台のおじさんにチュロスを注文し、金を出して買った。
「ちょ、皐月まで何を……」
「え? だって、欲しそうにしていましたから。私も一緒に食べたいですし」
「べ、別に食べたくなんて……!」
「本当ですか〜?」
悪戯っぽく言いながら、皐月は千速の目の前でチュロスを振る。
千速はしばらくムスッとした表情でそれを見ていたが、食欲には勝てなかったのか、やがて、サクッと音を立ててチュロスを齧った。
そして、恥ずかしそうに目を逸らし、「美味しい」と言った。
「フフッ、昔から千速は甘いものが好きですからね。全部食べますか?」
「……そうしたら皐月が食べる分が無くなるから良い」
「じゃあ半分こしましょう。それで平等ですよ」
「うぅぅ……」
不満そうに頬を膨らませる千速に、皐月はクスクスと笑う。
その様子をずっと見ていた朱莉と蜜柑も笑った。
「あははっ、千速子供みたい!」
「なっ……子供じゃない!」
朱莉の言葉に千速は怒り、朱莉に掴みかかろうとする。
しかし、朱莉はそれを躱し、ケラケラと笑った。
「……本当に仲が良いんだね。四人とも」
その様子を見ていたぴろんぬは、そう呟いて、膝まで伸びる桜色の髪を指で梳いた。
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.4 )
- 日時: 2017/07/19 21:54
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
それから、ひとしきりやり取りを終えた四人は、ずっと黙って見ていたぴろんぬを見て気まずそうに目を逸らした。
「あ、えっと……ごめんね? 遊びに来たわけじゃないのは分かってるんだけど」
「ううん。仲良しなのは良い事だもんね」
笑顔で言うぴろんぬに、朱莉はホッと胸を撫でおろした。
その様子に、あくまでぴろんぬは表情を崩さずに、妖精の姿になる。
「付いてきてほしいんぬ。見せたいものがあるんぬっ」
「見せたいもの……?」
聞き返す朱莉に、ぴろんぬは「見てのお楽しみんぬっ!」と言って、進み始める。
四人は不思議そうに顔を見合わせつつ、ぴろんぬについて歩き出す。
「それにしても、かなり平和というか……ごく普通の活気ある街、に見えますが……本当に幽鬼軍に支配されているのですか?」
「……基本的には、自由にさせてもらっているんぬ。でも、もし少しでも逆らったら、捕まって罰を受けるんぬ」
「じゃ、じゃあ、私達をこうして連れて来た時点でぴろんぬちゃんは捕まるんじゃ……」
「あっ、着いたんぬ!」
ぴろんぬはそう言うと同時に人間の姿になり、走り出す。
朱莉達はそれに驚きつつも、ぴろんぬについて一緒に走る。
やがて、通路を抜けた先には……コスモス畑が広がっていた。
「これ、私達がいた町にもあった……」
「そっ! コスモス畑。……私と、ひろちゃんの思い出の場所なんだ」
「ひろ、ちゃん……?」
蜜柑がそう聞き返すと、ぴろんぬはビクッと肩を震わせた。
「あー、えっと……私がお世話してた女の子……本名はちひろって言うんだよ」
「へぇ……ちひろちゃんとはどんな思い出があるの?」
朱莉の言葉に、ぴろんぬは柵から身を乗り出すようにして、コスモス畑を見つめた。
そして、目を細めた。
「よくここで、こうやってコスモス畑を見ていたんだぁ……ひろちゃんに悲しいことがあった日は、ここで励まして。嬉しいことがあった時は、ここで一緒に、お花の冠作って」
「え、無断で入って良いの!?」
「んー……ある程度なら、勝手に摘んでも良いみたいだよ。ここのは」
「へぇ〜」
朱莉は返事をしつつ、柵に肘をついて遠くを見た。
そして、ポンッと手を打ち、柵から身を乗り出してコスモス畑の中に入る。
「あかりん!?」
「よいしょっと……ちょっと失礼しますよっと……」
朱莉はそう言うと、一本のコスモスを摘み取る。
それから、また柵を乗り越えて外に出ると、ぴろんぬに手を差し出す。
「……?」
「ぴろんぬ。ちょっと手出して」
「う、うん」
ぴろんぬが手を出すと、朱莉はその腕にコスモスの花を巻き付けた。
やがて、ちょうど上にコスモスの花がくる、可愛らしいブレスレットのようになる。
「これは……?」
「千速達がいた村ではね、ミサンガっていうお守りが有名なんだって。願い事を込めながら巻いて、お守りが切れる時に、願いが叶うっていう。今すぐはそのお守り作れないから、その代わりに」
朱莉はそう言ってニコッと笑った。
それに、ぴろんぬは驚いた表情で自分の手首に巻き付いたコスモスを見る。
そして、顔を綻ばせた。
「えっと……ありがとう。あかりん」
「ヘヘッ……絶対、ちひろちゃんを取り戻すからね」
朱莉がそう言った時、ぴろんぬの頭に、コスモスの花でできた冠が乗る。
「もう、朱莉ちゃん。何一人で約束してるの?」
「私達もいるんだから。朱莉とぴろんぬの約束じゃなくて、私達全員の約束なこと、忘れないでよ?」
ぴろんぬの背後から現れた蜜柑と千速に、朱莉は「蜜柑、千速……!」と言って目を輝かせた。
すると、皐月が一輪のコスモスを片手に、ぴろんぬの隣に立つ。
「もしこれがお守りなら、色はピンクと黄緑。調和と友情、ですか。フフッ。ちひろさんを取り戻すのに良い色合いかもしれませんね」
「皐月!」
「……なんか、ありがとう。皆。……私、皆がプリキュアで、すごく嬉しい」
はにかみながら言うぴろんぬに、四人はそれぞれ微笑む。
その反応を見つめながら、ぴろんぬは背中に隠した右手でゆっくりと……指を鳴らした。
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.5 )
- 日時: 2017/07/19 23:02
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
ブ————ッ
まるで、機械のスイッチが入ったような、奇妙な音が響く。
それに、朱莉達は動きを止め、音源を探すように辺りを見渡した。
『この国が支配されているのは、風林火山プリキュアのせいだ』
その放送が流れた瞬間、町を歩いていた人の目から光が無くなる。
「え、嘘ぉ!?」
そして、なぜかそれを真に受ける朱莉。
彼女の様子に、三人は呆れた様子で息をついた。
「朱莉ちゃん……まさかと思うけど、身に覚えあるの?」
「ないよ!?」
「でしょうね。もちろん私達も。だって、この国に来たのはこれが初めてなんだから」
千速はそう言いながら、目を鋭くして辺りを見渡す。
周りにいる人たちの目は明らかに異常で、フラフラと、おぼつかない足取りで朱莉達に近づいてくる。
異様な光景に、四人は後ずさる。
「とりあえず……逃げよう!」
朱莉はそう叫ぶと、すぐに蜜柑の手を引いて駆け出す。
それに、すぐに千速も皐月と手を繋いで、朱莉の後を追って走る。
「朱莉! この国のこともよく知らないのに、逃げ切れると思ってるの!?」
「分からない! でも、逃げる以外に選択肢ある!?」
「……ない!」
千速の言葉に、朱莉は「じゃあとにかく走るしかないじゃん!」と叫んで、前を見る。
すると、前から町の人たちがやってきているのが見えて、四人は足を止める。
背後からも少しずつ町の人々が近づいてきているのが見え、朱莉は静かに息を呑んだ。
「朱莉ちゃん……これ……」
「んー……結構ヤバい状況……」
「だよね……」
蜜柑の言葉に、朱莉は小さく頷いた。
そして、上着の中に手を突っ込み、アウラシュリフトロレを取り出す。
「とにかく……やるしかないよね」
「でも、そんなことをしたら町の人たちが!」
「先に手を出したのは向こう側です。ですから、仮に何かあっても、正当防衛がまかり通るでしょう」
皐月の言葉に、蜜柑は困惑する。
しかし、すぐにため息をつき、アウラシュリフトロレを出した。
「蜜柑諦めるの早いよ……」
「千速ちゃん……こうするしかないと思うよ?」
蜜柑の言葉に、千速はゆっくりと辺りを見渡し、諦めた様子でため息をついてアウラシュリフトロレを取り出した。
そして、四人はそれを構え、叫んだ。
「「「「プリキュア! フォースオーラチェンジ!」」」」
叫んだ瞬間、アウラシュリフトロレが展開して、文字が舞う。
そして、それらが体に付く度に、コスチュームとなっていく。
やがて、変身を終えるのと同時に、セリフが四人の脳裏に浮かぶ。
「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
「動かざること、山の如し! キュアモンテ」
「徐かなること、林の如し! キュアフォレスト!」
「風!」
「林!」
「火!」
「山!」
「「「「プリキュア!」」」」