二次創作小説(新・総合)
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- 南国生まれの女子校生
- 日時: 2021/03/16 19:02
- 名前: まなち (ID: jCCh2JPd)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi/
現代の日本では少子化故に男女別学(男子校、女子校)の学校は減少傾向にあり多くの学校は共学校となっている。
しかしながらそんな中であるにも関わらず今からおよそ10年前、東京にて新たに開校された小中高一貫の私立女子校「美葉女子学園」があった。通称は「みよ女」。この学校に偏差値は存在しないが小学校から高校までの一貫校教育を行っており、転編入生の受け入れも柔軟に行っている学校となっている。この物語はそんな学校が舞台である。
(この作品はフィクションです。)
主な登場人物
主人公:冬瀬 葉風渚(ふゆせ はぷな)
17歳。身長159cm。沖縄県那覇市出身。美葉女子学園高等部2年1組の生徒である。眼鏡をかけており、前髪も重めで髪の長さは肩より少し長い程度で地味な見た目をしている。
小学校時代から高校1年まで沖縄にある公立共学校に通っており、高校に至っては那覇市でもトップの進学校に通っていた。しかしながら同級生の男子を中心に虐められ続けたことを理由に東京の美葉女子学園の高等部に2年次新学期転入してきた。人間不信に陥っており葉風渚というキラキラネームにコンプレックスを抱いている。
麗華
17歳。身長162cm。東京都港区出身。美葉女子学園高等部2年の中でトップの成績を誇り、生徒会メンバーでもある。クラスは葉風渚と同じく2年1組。ストレートのロングヘア(前髪なし)で他の生徒よりも垢抜けた見た目をしている才色兼備な少女。
美葉女子学園には小学部5年の時から在籍している。美葉女子学園に転入するまでは東京で1番の名門でミッション系の私立女子校「マリア女子学院」の小学部に通っていたが、周りの生徒のレベルが高すぎた故にマリア女子学院の中では成績最下位となってしまった。プライドが高い麗華にとってはそれが耐えらなく、自らマリア女子学院を退学し美葉女子学園の小学部に5年次転入学した。学年のリーダー格であるものの、共学進学校から転入してきた葉風渚をずっと敵視している。そして担任の秋野教諭とは特別な関係にある。
なお
17歳。身長170cm。千葉県浦安市出身。葉風渚や麗華と同じく美葉女子学園高等部の2年1組の生徒。前髪なしのショートヘアでボーイッシュな見た目をしている。葉風渚と同じタイミングで高等部に2年次新学期転入してきていた。身長が高くボーイッシュ故にで転入当初から「イケメン系女子」「みよ女の中で1番イケメンかもしれない」等と校内で注目を浴びているが、美葉女子学園に転入するまでは男の子のような見た目である事をコンプレックスに感じていた。又、同じ転入生である葉風渚の存在が少し気になっている。
秋野教諭
26歳男性。身長178cm。東京都港区出身。美葉女子学園中学部と高等部の英語教員。2年1組の担任、若くして葉風渚たち高等部2年生の学年主任でもあり身長が高くハーフ顔である事から多くの生徒たちから人気を集めているが一部の生徒は秋野教諭の存在を快く思っていなかった。保護者の前ではとても紳士で爽やかな教師を振舞っているが実は恐ろしい裏の顔がある。
みゆき
16歳。身長150cm。神奈川県藤沢市出身。前髪が少し長い為目が隠れていてショートボブヘアである。美葉女子学園高等部1年2組の生徒。中学部3年の時から美葉女子学園に在籍しているが、無口な性格で常に一人で過ごしている。又、ある出来事が原因で秋野教諭に対して大きな不信感を持っている。
友明
17歳。身長156cm。東京都世田谷区出身。前髪薄めのロングヘア。美桜女子学園高等部2年1組の生徒。中学部1年の時から美葉女子学園に在籍している。典型的なパリピ系女子だが麗華同様に担任の秋野教諭とは特別な関係にある。しかしながらその一方で学年が1つ下のみゆきとは深い因縁がある。
りん
16歳。身長152cm。東京都千代田区出身。髪型はツインテールである。美葉女子学園高等部1年1組の生徒。小学1年生の頃からずっと美葉女子学園に在籍している。麗華と同じ生徒会のメンバーでもある。
春見校長
54歳女性。身長157cm。美葉女子学園の校長。品があっておしとやかな教師だが今の時点では秋野教諭の悪業にまだ気づいていない。国語の教員免許を持っている。
作者のTwitter→@nmktigktks_km
Instagram→dream__cute777
- 第2章 やっぱり私は教室という場所が苦手だ ( No.2 )
- 日時: 2021/02/11 23:11
- 名前: まなち (ID: jCCh2JPd)
第2章
頭が真っ白になりながら、震えた足で2年1組の教室に入った。
「はい皆んな!静かにして。このクラスに今日から2人の転入生が入る事になった。2人とも自己紹介して。あっ、最低限下の名前を必ず名乗ってね。」と秋野先生は震えている私に対してニヤつきながら言った。
「はい。はじめまして、千葉の共学校から転校して来たなおです!よろしくお願いします!」
なおさんの自己紹介は拍手喝采だった。
「よろしくね、なおちゃん。」「あのなおっていう子、めちゃくちゃイケメンじゃない?」
「そうよね!身長も高くてスラッとしている。憧れるなぁ〜。」と皆なおさんにうっとりしていた。そんな中で私は自己紹介をすることになった。「…は、はじめまして。冬瀬と申します。冬瀬と呼んで頂けると嬉しいで…」
「葉風渚!!」私が自己紹介をしている最中に遮るようにして秋野先生が怒鳴り始めた。
「下の名前を必ず名乗れと言ったろ!もういい、俺からお前の紹介をする。こいつは沖縄から転入して来た葉風渚だ。みんな、仲良くしてやれよ。それでは今日のホームルームは以上とする。この学校では席を自由にしているから2人とも空いているところに座って。」私となおさんは「はい。」と返答した。
「取り敢えず、空いているところに座ろうか。」なおさんがそう言うと「うん、そうだね。」と私は返した。
「はぷな〜私の隣空いているからこっちにきて〜」と1番前の席にいるとても綺麗な子が私に対して声をかけてきた。「あっ、ありがとう…」と私は言った。
「私の名前は麗華。よろしく。容姿端麗の麗に華やかと書いて麗華だから覚えておいてね。」自己紹介してくる麗華さんに私は「麗華さんね、私は冬瀬です。こちらこそよろしくお願いします。」と返した。
すると麗華さんは「はぷなって、随分と変わった名前なのね。漢字でどう書くのよ。とっても興味があるわ。」
漢字を教えたくない私はこの窮地を何とか切り抜けようとして「えっとその…私の名前の漢字は結構難しいから口ではうまく説明できない。それに葉風渚ではなく苗字の冬瀬って呼んで貰えると…」と言ったその時だった。
「ごちゃごちゃうるさいわね!この私が名前の漢字を教えなさいと言いっているのよ。さっさと教えなさいよ。口で説明できないのなら今から黒板に名前の漢字を書いて来なさい!」と麗華さんは大きな態度を取り始めたのだ。
「はい皆んな注目〜!今から転入生である冬瀬はぷなさんの名前の漢字を教えたいと思います!はぷなさん、早く黒板に書いてくれる?」
私は何も言い返す事が出来なかった。悔しくて仕方なかった。結局私は麗華さんに従って黒板に自分の名前を書いてしまったのだった。
「あっはは!なにその字!完全に当て字過ぎて読めない〜(笑)。みんな見てよ、ウケるでしょ(笑)。」
教室が段々と重い空気になっていた。何故こんな事になってしまったのだろうか。
私が黙って立ち尽くしていると麗華さんが小さな声で耳打ちして来た。「貴方、那覇の進学校から転校してきたんでしょ。私はみよ女でずっと成績トップだったの。貴方みたいな田舎者の女にトップの座を奪われたくないのよ。だから私はなんとしてでも貴方を蹴落とす。わかったわね?」そう麗華さんは言った。
やっぱり私は教室という場所が苦手だ。再び怖くて仕方がなくなってしまった。友達を作ることも諦めようとこの時心の奥底から誓った。
- 第3章 麗華の立場 秋野教諭との禁断の関係 ( No.3 )
- 日時: 2021/03/16 19:12
- 名前: まなち (ID: jCCh2JPd)
私の名前は麗華。数ヶ月前から付き合っている彼氏がいる。私にとってその人はなくてはならない存在。その人がいるから勉強も生徒会活動も頑張れているの。
私の今の目標は名門の私立女子大学「マリア女子学院大学」に合格すること。そしてその愛する彼と一生一緒になることなのよ。
私は小学校4年生の時まで小学校から大学まで一貫の名門女子校「マリア女子学院」の小学部に通っていたのだけど、勉強のレベルが高すぎてついて行けなくなって自主退学をし、小学5年生で美葉女子学園にやって来た。ここの学校なら偏差値が無いから私が常に余裕で成績トップでいることができた。そして尚且つ成績トップの生徒1名のみが指定校推薦で名門のマリア女子学院大学に進学することができる。一般入試でマリア女子学院大学に入るのは極めて困難な事だから、こうして私は名門のマリア女子学院に戻る為の指定校推薦を勝ち取る為に今必死で学年トップを守り続けているの。そしてそんな私の頑張りを認めてくれる彼が側に居てくれていることが私の励みになっている。
因みに今日は生徒会の活動があって放課後居残りをしていたのよ。同じ生徒会のメンバーにはりんって言う私と仲が良い後輩がいてその子とはよく喋ったり、学校外でもよく一緒に遊びに行ったりもしている子なの。そんなりんに私は時々彼氏の惚気話をしている。
「麗華先輩、そう言えば彼氏さんとは順調なんですか?」とりんも私の惚気話になかなか食いついてくる。「ええ、もちろんよ。」と私は答えた。「付き合うってどんな感じなんですか?私は小学1年生から女子校で過ごしているから、男の人を好きになる気持ちとか全然理解出来ないです。麗華先輩って確か小5からみよ女ですよね?みよ女に来る前だって、名門の女子小学校って言っていましたし、一体どこで彼氏ゲットしたんですか?」と質問してくるりんに「それは秘密よ。」と答えた。りんは少し残念そうに「えぇ〜先輩教えてくださいよ〜」と言ったが私は彼氏の年齢や職業等についてはりんにも一切明かしていない。
生徒会活動が終わった後、私は誰も居ない体育館の倉庫にやって来た。
「麗華、今日もよく頑張ったね。お疲れ様。」
「秋野先生もお疲れ様です。」
そう、私の彼氏は担任の秋野先生。禁断なのはわかっている。でも私は秋野先生の事が本当に誰よりも大好き。大人で爽やかでどんな男の人よりもかっこいいの。秋野先生以外の男を好きになるだなんてこの先の人生で一生有り得ないわ。
「でも麗華、わかっているよな?俺と一生一緒にいるにはこの前した約束を守って貰わないと。」
「えぇ、勿論わかっていますわ。あの葉風渚という転入生には絶対負けません。」
そう、私は冬瀬葉風渚が転入してくる際に秋野先生とある約束をしていた。
その話は高等部1年の3月の個人面談に遡る。
「麗華、今年も君が学年1位だ。流石だよ。」秋野先生は優しい声で私にそう言った。
「いいえ、秋野先生のおかげで私はこの1年間も頑張る事が出来ました!これからもずっと学年1位を維持し続けて先生もお望みの名門マリア女子学院大学に必ず指定校推薦で合格してみせます。」と私は言った。
「そうだな、麗華。俺は名門の総計大出身で出身高校も都立で1番の進学校だったし、俺の両親自体厳しいもんだから嫁さんにもそれなりの学歴の人を求めている。だから君と結婚するには君自身にも頑張ってもらわないといけないんだよ。」この日の面談もこのように2人で楽しく会話していた。でも、秋野先生の表情が少し曇りはじめてきていたの。「だけどねぇ麗華、ちょっと困ったことが起きてさぁ…」と秋野先生が切り出し少しシリアスな雰囲気になった。「どうされたのですか?」と私は聞いた。
「いや実は、今度入ってくる転入生がもしかしたら君の強敵になってしまうかもしれないのだよ…」と秋野先生は言った。それはどういう意味なのだろうか、この時点で私にはまだよくわからなかった。すると秋野先生は1枚の書類のコピーを私に差し出し、「まあまずその転入生の調査書のコピーを君に見せるよ。この調査書に書いてある通り彼女の名前は冬瀬葉風渚。経歴を見ての通り生まれも育ちも沖縄の那覇。そしてこいつの高校名を見てくれ。この高校は那覇で、沖縄県で1番の進学校なのだよ。国公立大学への合格者数を毎年150人以上も出しているらしいんだ。そして尚且つこの冬瀬葉風渚も君と同じく都内の名門女子大学を志望してる。」と言ったの。私は落胆した気持ちになってしまったわ。そんな馬鹿な、ずっと私が1番だったのに、来年度からはこの女にトップの座を奪われてしまうというの?途端に自信を無くし困惑している私に対して秋野先生は「だが心配する必要はないぞ、麗華。こいつの学力は確かに高いがメンタルは弱い。だから蹴落とす方法なら幾らでもある。俺の言う通りにこの女を蹴落とせば君は今までと変わらず学年1位で居続けることができると思うよ。」と言って来た。
「それは一体どうすれば良いのですか?」と藁にもすがる思いで私は質問した。
「あぁ、とっても簡単なことさ。まずは彼女のこの葉風渚というキラキラネームを執拗に馬鹿にし続けていれば良い。こいつが東京に来る理由の1つには名前による執拗な虐めがあるのさ。」と秋野先生は答えた。
確かに葉風渚って名前に私も思わず笑いそうになった。こんな非常識な名前は今まで見たことなかったわ。「わかりました。私は絶対この冬瀬葉風渚という転入生なんかに負けません。必ず学年1位を死守してあのマリア女子学院大学の指定校推薦枠をこの私が勝ち取ります。」と私は言った。
「あぁ、頑張ってくれよ。」秋野先生がそう言って面談は一旦終了した。
そう、私が冬瀬葉風渚の名前をみんなの前で馬鹿にしたのも秋野先生と自分自身の為。秋野先生は私の全てなのだから。
冬瀬葉風渚、私は貴方なんかに絶対負けないわ。
- 第4章 なおの立場 新学期開始から1ヶ月後 ( No.4 )
- 日時: 2021/03/17 13:31
- 名前: まなち (ID: jCCh2JPd)
私の名前は、なお。千葉の共学校から美葉女子学園に転入してきてからまだ1ヶ月程だ。私には今少し気掛かりになっているクラスメイトがいる。それは私と同じタイミングで転入してきた葉風渚ちゃんの存在。葉風渚ちゃんは転入初日にして秋野先生から理不尽な理由で怒鳴られるパワハラ、そしてクラスメイトの麗華ちゃんからは名前を馬鹿にされ嫌がらせを受けてしまっていた。その後も葉風渚ちゃんは秋野先生と麗華ちゃんからの虐めを受け続けている。このまま何もしなければ私もただの傍観者になってしまう、虐めをしている秋野先生や麗華ちゃんと何も変わりない加害者になってしまう。そう頭の中ではわかっているけど転入してきたばかりの私の立場は正直お世辞にも強いとは言えない。だから何もできていない。
私は身長が高くてボーイッシュな見た目をしているから、女子校であるこの学校に転入してからはクラスメイト達から「イケメン系女子」と注目を浴びているけど、前にいた千葉の共学校では全くそんなことがなかった。むしろ男子達からは避けられていた。クラスの男子に話しかけても無視されるなんてことは日常茶飯事。それだけではなく「見た目が女らしくない、完全に男」「ああいうタイプの見た目の女とは付き合いたくない」等の悪口もよく言われてきた。実際小学生の時も私の事を知らない児童や先生からは男の子と間違えられることもよくあった。そういう人達には「私は男子じゃなくて女子です」とわざわざ言わなければ通じない程だった。そういえば、私の「なお」って名前は男子と女子どちらにもある中性的な名前だから「なおくん」と呼ばれてしまうこともよくあったなぁ。まぁ私の経緯は大体こんな感じ。ここから先は私の最近の出来事についての様子を伝えたいと思う。
「おい葉風渚!お前英語の発音下手過ぎるんだよ。もっとまともな発音はできないのか!」
「申し訳ありません…秋野先生。」
今日の英語の授業もこんな感じ。相変わらず秋野先生が葉風渚ちゃんの粗探しをしては理不尽に怒鳴りつける。もうお決まりのパターンだ。そうして頻繁に秋野先生は「よくお前みたいな奴が那覇の進学校に居れたもんだなぁ。麗華、代わりに君がこの英文を読んでくれ。」と言うのだ。そして「はい、秋野先生。」と麗華ちゃんが言う。私には正直、何故秋野先生と麗華ちゃんが頑なに葉風渚ちゃんを目の敵にしているのかがさっぱりわからなかった。麗華ちゃんが英文を読み終わるといつものように「麗華は相変わらず美しい発音をするなぁ。本当に素晴らしいよ。」「ありがとうございます、秋野先生♡」というまるでイチャついているかのようなやり取りをする。はぁ…もうこのやり取り何回目だよ。見ていてこっちまで呆れてくる。でもそれに対して何も出来ない自分がもっと呆れる。
そして秋野先生は「いいか葉風渚、お前がこの学校で1番の優等生で1番頭が良いだなんて思うなよ。」と葉風渚ちゃんに言うと「あの…先生、私は全くそんな事は思っていません。」と葉風渚ちゃんは恐る恐る反論する。それに対し秋野先生は「お前の顔にそう書いてあるんだよ!俺くらいの男になればなぁ、見ればわかるんだよ。」と言うのだ。こんなやり取り、明らかに粗探しの度が過ぎている。
すると「それは違います、先生。」も葉風渚ちゃんが珍しく強気に反論し始めた。すると麗華ちゃんは「まだわからないの?葉風渚。秋野先生の仰る通り、この学校でトップの成績を取り続けているのは私だけ。私以外の誰でもないわ。キラキラネームのくせに貴方生意気なのよ。」と言い始めた。それに対して葉風渚ちゃんは「キラキラネームかどうかは今関係ないよ、麗華さん。」と言ったのだった。
あれ?今日の葉風渚ちゃん、いつもとは少し違うなぁ。気のせいかもしれないけど少なくとも私にはそう見えた。今までなら秋野先生や麗華ちゃんに対してあまり反論せず弱気な態度だったにも関わらず今日は違うように思った。一体どうしたというのだろう。
6時間目の授業が終わって私は隣の席にいる葉風渚ちゃんに声をかけた。「ねぇ、葉風渚ちゃん。」葉風渚ちゃんは私の方に振り返り、「どうしたの?なおさん。」と言ってきた。
そして「こんな事聞いて良いのかわからないけど…秋野先生と麗華ちゃんからの嫌がらせ、辛くないの?」と私は問いかけた。すると「正直辛いよ。今までも辛かった。でもね、私は負けたくない。例え苦しい境遇に陥っても戦おうって決めたの。」と葉風渚ちゃんは答えた。一体どういうことなのだろうか。
「確かに転入早々、秋野先生と麗華さんに嫌がらせされた時は本当にショックだった。でも転校先を女子校のみに絞った理由をふと思い出して、このままでは駄目なんだ、ちゃんと立ち向かわないといけないんだって思ったの。」と葉風渚ちゃんは話し始めた。「どうして女子校に絞ろうと思ったの?」と私が質問すると、「女子校はなんといっても生徒は女子しかいない。そうなると部長や委員長、グループワークのリーダー等、全ての役割を担うのは必然的に全て女子。でも共学だと男子がリーダーになって女子は補佐的な役割に回る事がどうしても多い。性別によって役割を分けられてしまう事も本当に多いし、それもあるから男女平等が謳われてから何十年と経過した今でも女性の社会的地位やリーダー性が低いと言われてしまうのでは無いのかな。そういった意味で女子校では女子の自立心やリーダーシップ力が必然的に育成されているのでは?と考えたの。でも沖縄には女子校が1つも無いし、誰も知り合いがいない場所で新たに気持ちを切り替えて頑張りたいと思って、それで東京まで来た。」と葉風渚ちゃんは言った。
確かに、葉風渚ちゃんの言っていることは間違いではなかった。言われてみれば私が前にいた学校でも男子がリーダー的立場になっている事が多かったし、葉風渚ちゃんの話には説得力があるように感じた。
「私はね、小学校の頃からこの名前と他の女の子より劣った容姿が原因で虐められ続けて人間不信に陥っているから、今後の人生で友達も恋人も作るつもりはないの。だから自分1人だけの力で生きていけるよう自立心を養って強くなりたいと思って、女子校を選んだんだよ。だからこそ秋野先生や麗華さんに負けてはいけない、1人で戦おうって決めたの。私の夢は高い学歴を手に入れる事じゃない。この学校でやるべき事をやって大学も女子大に進む、そうして自立心のある強い女性になる事が私の夢なんだよ。」と言う葉風渚ちゃんに対して私は「なるほど…そうだったんだね。」とだけ返した。この時、葉風渚ちゃんからは何か強い意思というか、覚悟みたいなものを感じた。
でもそれと同時にこんな疑問が浮かんだ。彼女は今後の人生で友達も恋人も作るつもりはないと発言していたけど、そういう人生って寂しくはないの?私だったら自分の周りに誰もいないって正直寂しい。
帰りのホームルームも終わった後、私は学校の帰り道で葉風渚ちゃんの話していた事についてそうやってずっと考えていた。
- 第5章 2学期、葉風渚の計画 ( No.5 )
- 日時: 2021/03/17 14:13
- 名前: まなち (ID: jCCh2JPd)
月日は流れ、春夏が過ぎて2学期を迎えていた。葉風渚は相変わらず1人で過ごす学校生活を送ろうとしていた。秋野教諭と麗華からの嫌がらせに負けないように、そして今自分のやるべきことを精一杯頑張ろう、そして正しくあろうという気持ちを心に秘めていたのだ。そして彼女にはある計画があった。
その反面で葉風渚と同じ転入生だったなおはクラスメイトに溶け込んでいる様子だった。今日も生徒達のたわいもない会話が教室を飛び交っている。でもそんな中でもなおは相変わらず葉風渚の事は心の中で少し気にしていた様子だった。
だが実は1年2組にも葉風渚と同じような境遇の生徒「みゆき」が存在していた。勿論学年が違う為葉風渚はそんな事を最初は知る由もなかったのだ。しかし、そんな2人の出会う瞬間が遂に訪れる日が来た。
それはある日の放課後だった。学校の隣にある書店にみゆきが入ってた瞬間、彼女は見開き状態で名前と学年が表紙に書かれてあるノートを落としてしまった。それを偶然目撃した葉風渚はそのノートをみゆきに届けようとする。しかしそのノートには驚きの真実が書かれていることに葉風渚は気付いた。その時葉風渚は、これは今自分が計画していることに使えるものになるのではないのかと考えたのだ。
「ねぇ、これ貴方の日記帳だよね?さっきそこで落としているのを見た者です。」と葉風渚はノートを落としたみゆきに声をかけた。
「あ、うっかり落としてしまいました。届けてくださりありがとうございます。」
「いえいえ、とんでもない。」
そう、みゆきが落としたノートというのは日記帳だった。続けて葉風渚は「あっ、申し遅れました。私は高等部2年の冬瀬と言います。いきなり不躾なことを聞いていたら申し訳ないんだけど、貴方は今高等部の1年生なのかな?1つだけ聞かせて欲しいことがあるの。」と問いかけるとみゆきは「なんですか?」と返した。葉風渚は本題を切り出し「秋野先生のこと、恨んでいる?」と言った。するとみゆきは「い、いきなりなんて事聞くんですか…!せ、先生方の事を恨むはずが無いじゃないですか。」といった。すると葉風渚は、「貴方のその日記帳の内容、私見てしまったのよ。」と言いこれに対しみゆきは何も言葉を返せなかった。そして葉風渚は「勝手に中身を見てしまったことは申し訳なかったと思っている。でも私も貴方と同じく秋野先生の行動や言動を許せないと思っているの。転入早々秋野先生からずっと酷い態度や発言をされてきた。そしてクラスメイトを操って私に嫌がらせしていたことにも気がついてしまったの。証拠だってある。」と言った。するとみゆきは「証拠があるなら校長先生とかには早く言えば良いんじゃないですか。」と言った。しかしながら「いいえ、まだ言うつもりはない。今は敢えてあの秋野先生を泳がせているの。悪業の証拠が多ければ多いほどあの人の罪も重くすることができる。私は彼の悪業を見逃したまま美葉女子を卒業したくない。貴方だって本当はそう思っているんじゃないの?日記の内容からは少なくともそう感じた。」と葉風渚は言った。葉風渚にはみゆきが自分と同じ気持ちを抱えているということを何気に察していたのだった。
しかしみゆきは「そうなんですね。でも私は事なかれ主義にしたいんです。自分の不満を文字にしてノートに悔しい気持ちをぶつける。それだけで私は充分なんです。だから日記をつけるようになったのです。私には冬瀬先輩みたいな行動力は無いので。」と言ってみゆきは書店から去って行った。葉風渚はみゆきが持つ悔しいさや悲しみの気持ちがひしひしと伝わっていたが、この時の葉風渚はみゆきと手を組もうとは一切考えていなかった。
しかしながら翌朝の教室で葉風渚がいつものように1人で登校していると、みゆきが2年1組の教室の前にいた。「みゆきさん、どうしたの?」と葉風渚は声を掛けた。するとみゆきは「もし良かったら私と一度手を組んでみませんか?秋野先生のこと、やっぱり放っておくわけにはいかないと判断したんです。」と言い、それに対し葉風渚は「事なかれ主義にしたいんじゃなかったの?」と返した。
しかしみゆきは「今まではそう思って過ごしていました。でも、昨日の冬瀬先輩の話を聞いて秋野先生の被害に遭う生徒をなくす為にも頑張ってみたいと思ったんです!冬瀬先輩、駄目ですか?」と言った。葉風渚は少し考え込んだが、「わかった。ここで一度手を組みましょう。」と答えた。そしてみゆきは「でも、どうしたら良いのですか?」と質問をしてきた。
すると葉風渚は「貴方にこの小型録音機を渡しておくわ。私はこれを使って証拠を今まで見つけてきた。秋野先生が貴方に暴言を吐いて来るところをこれから毎日録音していくの。この録音機を毎日制服のポケットに入れて来て。」と言った。続けて葉風渚は「それとその日記も毎日その場でしっかりつけて残して続けておいて。証拠品としては録音よりはかなり弱くなってしまうけど何かの役には立つかもしれない。」
みゆきは葉風渚に「わかりました、これからよろしくお願い致します。」と伝えその場を去っていった。
こうして2人は協力し合うことを約束したのだった。
秋野教諭を制裁するために。
- 第6章 みゆきの立場 ( No.6 )
- 日時: 2021/03/17 14:26
- 名前: まなち (ID: jCCh2JPd)
私はみゆき。高校1年生。冬瀬先輩と手を組んでから1週間程が経っていた。今回は私が何故秋野先生からのパワハラを受けるようになったのか、そして何故一人きりの学校生活を送ることになったのか等の私の経緯について話したいと思う。
話は今から2年前、私が中学2年生の冬に遡る。私はこの頃美葉女子学園の中学部3年次転入試験に合格し転入学が決定した。転入に至った理由としては、以前通っていた藤沢の公立中学校で虐められて不登校になってしまったからだ。勿論その公立中学は男女共学だった。
「今度の席替え楽しみだなぁ~」
「だよな!俺このクラスで1番美人なあの子の隣の席になりてぇ。」
「それは俺もだわ。ブスの隣の席だけにはなりたくないわな(笑)」
「めっちゃわかるわ~特にあのみゆきって奴。あいつの隣だけは嫌だわ(笑)」
「それは俺も(笑)だってあいつの見た目キモいもん。」
「てか最近あいつ学校サボっている事多いじゃん。このままこの学校から消えてくれたらいいのに(笑)」とリーダー格の男子が言うと他の男子たちも口を揃えて「だよなぁ~(爆笑)」と爆笑しながら言われた。
私の公立中学時代は本当にこんな感じだった。席替えの度に私はこのような悪口を毎回言われていた。そしてどうやらクラスメイトの男子がクラスメイトの女子全員へ容姿ランク付けをしていたらしく、私はそこでも最下位にされていたらしい。私が男子に近づくとバイ菌扱いもされた。こんな嫌がらせはもう懲り懲り、そう思って転校に踏み切った。
美葉女子に中学部3年次転入した春、昔からピアノを弾くことが好きだった私は軽音部にすぐ入部した。そこで私は明るくて歌がとても上手な友明先輩に出会った。
「私の名前は友明!友達の友に明るいと書いてゆあです、よろしくね!ボーカルをやっているんだぁ~」とフレンドリーな感じで話しかけてくる友明先輩に「はじめまして、みゆきです。幼い頃からピアノをやっています。」と私は返した。すると友明先輩は「まじ!?ピアノできるの?じゃあうちのバンド入ってよ~丁度キーボード出来る人を探していたところなんだよねぇ。」と言った。
私は思わず「わ、私で良いのですか?」と問いかけた。そんな友明先輩は「私達のバンドにはキーボードがいなくてさ。だから入って!」と言ってきた。先輩に優しい対応をしてもらったことが私にとっては何より嬉しかった。
こうして転入してきて間もない私を受け入れてくれたのは友明先輩だった。友明先輩と過ごす時間が本当に楽しかった。私の凍り付いた心をまるで溶かしてくれるような感じだった。そう、あの時までは…
ある日友明先輩は少しシリアスな雰囲気で「ねぇみゆきちゃん、私彼氏ができたんだよね。」と言った。
私は「そうだったのですね!おめでとうございます!お相手はどんな人なんですか?」問いかけた。すると友明先輩は「誰にも言わないって約束出来る?」といった。「はい、勿論約束致しますが。」と答えると、「秋野先生だよ。」と言われた。
私はこの時、一瞬時が止まったかのような感覚になってしまった。
自分の尊敬している先輩がまさか禁断の行動に出るだなんて…と思ったんだ。
「失礼ですが友明先輩、それって駄目な事なんじゃないのですか?教師と生徒が付き合うだなんて…」と私は言ったが、「でも仕方ないじゃん。お互いに惹かれあったんだよ、私達2人は。」と友明先輩は言った。
自分の尊敬していた先輩が禁断の行動出た事が信じられなかった。そしてそんな禁断の行動に出る秋野先生に不信感を感じた私は秋野先生について探ろうと思って秋野先生の後を放課後こっそりついて行った事があった。すると秋野先生が別の綺麗な女子生徒、校内でも有名な麗華先輩とイチャイチャしているところを目撃してしまったのだ。
「おい、そこにいるのは誰だ!」
「まさか私達の事を覗き見していたんじゃないでしょうね。」
私の足音がばれてしまったのだろうか。いろいろと怖くなった私は思わずその場から逃げ去ってしまった。友明先輩に伝えないと。友明先輩は秋野先生に弄ばれている。他の生徒にまで手を出すだなんて信じられない。この時そう思って友明先輩にすぐ電話した。
「もしもし、友明先輩!大変です、私のこれから話す事をよく聞いてください。」という私に対して「何、大袈裟だなぁ(笑)どうしたの?」と友明先輩は呑気な返事をしてきた。
「秋野先生は他の生徒にも手を出しています。あの先生に対して本気になったら駄目です!」と言ったが、それでも友明先輩は「いや、突然何を言い出すの?(笑)秋野先生がそんなことするはずないでしょ。一体何を言い出すの!?秋野先生は間違いなく私一筋って言っていたんだよ?」と友明先輩は私の言う事を信じてくれなかった。
そしてこの翌朝、私は秋野先生に呼び出され、「昨日俺と麗華の事を見ていたのはお前だよな?」と言ってきた。
「昨日見た事は誰にも言わないでくれ。それと今すぐ軽音部から退部するんだ。」と言われ、私はその言葉に混乱した。
「えっ!?何故ですか?」と私が問いかけると、秋野先生は「昨日お前が友明に電話している様子を俺は見たんだよ。俺と友明の関係を続けるには、お前が邪魔なんだ。」と言ったのだ。何とも理不尽な理由だった。
「だからって…私は軽音部で凄くやり甲斐を感じていたんです!それに大切な先輩もできました。そんな大切な先輩を傷つけるだなんて私は見過ごせません。」と反論したが、「俺の言う事を聞けないのか?それならみゆき、お前の人生台無しにしてやるぞ。大人しく俺の言う事を全部聞け。」と言われてしまった。
勿論軽音部を退部するだなんて納得出来なかった。でもこの時の私は秋野先生の指示を従う以外に方法が思いつかなかった。
「秋野先生、ひとつだけ聞いても良いですか?秋野先生はどうして複数人の生徒とお付き合いされているのですか?」と最後に私はこれだけを秋野先生に聞きたくて質問した。すると「だって可愛い子がいたら出来る限り捕まえておきたいじゃん。男っていうのは平均で5人の女を同時に好きになれる生き物なんだよ。女と違って、男は子孫繁栄という遺伝子に組み込まれた本能に抗うことができない者で、本来なら複数の女を一度に愛することができる生き物なのさ。今すぐ俺の目の前で退部届を書け。」と言って秋野先生は退部届を差し出してきた。
男としてどうか以前に、これは教育者の発言する事なのかと耳を疑った。秋野先生は普通じゃない、異常だ。恐ろしい存在だ。何故友明先輩はこんな人を好きになってしまったのだろうか。私の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。そして私は、軽音部に退部届を提出してきた。当然こんなの不本意だった。
「友明先輩、あの…短い間でしたがお世話になりました。」と私は最後に友明先輩に声をかけたが、「みゆきちゃん、もう私に二度と話しかけないで。秋野先生を侮辱した事、私許していないから。」と友明先輩から最後に言われた言葉はこれだった。友明先輩と過ごしたこの数ヶ月間は何だったのだろうかと感じてしまった。だから私はこの時、もう誰のことも二度と信用しない、1人で生きていこうと決めた。そう決意し高校1年生なって、時が過ぎ2学期を迎えたある日に冬瀬先輩と出会った。冬瀬先輩もまた秋野先生の被害者であるということ、そして秋野先生の悪業をこのまま見過ごすわけにはいかない、そんな思いから冬瀬先輩と手を組む事を決意した。
季節はもう冬になっていた。寒い日が続く中、冬瀬先輩と私は秋野先生の悪業の証拠を順調に集まっていた。しかし私は最近、このことについてずっと頭の中で考えていた。冬瀬冬瀬先輩の言う通りにしていれば本当に秋野先生に対して制裁できる日が来るのだろうか?制裁したところで秋野先生は悔い改めるのだろうかと。
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