二次創作小説(新・総合)
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- 呪われた鏡〜シーエ亜種物語〜
- 日時: 2021/04/10 16:39
- 名前: 命華ーみことばなー (ID: 3YwmDpNV)
!注意!
この作品はシーエ亜種、『鏡之シーエ』のストーリーとなっております。
虫の表記あります。苦手な方は読まないようにお願い致します。
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俺の名前は灰原 笑夢司(はいばら えむじ)。
『呪われた』とされる道具達を回収する【呪品回収屋】(じゅひんかいしゅうや)として世界を走り回っている。
そして、今回の品物は白雪姫の鏡の元ネタになったともいわれる鏡だ。
どうやら、【シーエ】と呼ばれる生き物を探しているらしいが…
そんな事を考えながらドイツの森に入って行く。
ドイツは白雪姫の原作が作られた場所でもあるからな。
そこに鏡があってもおかしくはないだろう。
品物の影響だろうか?
森は重く苦しい空気が漂い、人を寄せ付けなくなっている。
生き物…動物や、虫の気配すらない。
こんなにも霊に好都合な場所もないだろう。
沢山の霊がうごめく森の中、結界を自分の周りに張って森を進む。
迷子にならないように、通り道の木々には証拠として切り目を入れながら。
どんどんと日が沈んでいき、不気味な雰囲気の森は、更に不気味さを増していく。
真っ暗な夜の奥深く、そこに古びた洋館があった。
洋館の前まで来た所で俺はお経を唱える。
洋館に漂う霊気は今までにないくらい強い。
だが、何か冷たい光のような何かの気配も同時に感じている。
一体、どんな品物が眠っているのか。
俺は不安と期待を胸に洋館の扉を開けた。
- 呪われた鏡〜シーエ亜種物語〜四章 ( No.3 )
- 日時: 2021/04/10 17:11
- 名前: 命華ーみことばなー (ID: 3YwmDpNV)
厳重そうな大きな扉の前に来た俺とナトリウム11世。
【…実は、この扉は開かなくなってしまったのです。】
ナトリウム11世が言う。
「いや、開かないって…じゃあナトリウム11世はどこから来たんだよ?」
俺が不思議そうに聞くとナトリウム11世が答えた。
【実は、この屋敷の隣の部屋に続く穴が少し空いて…
私はそこから行き来してますね。
まぁ私は呪いを微力ながら避けれるのでそれも関係してますが…
ここの扉も呪いが関係して、開かなくなってしまったのです…
鍵は掛けて無いんですけどね…。】
と、いう事は。
「要はこの扉の呪いが解ければ入れるってことだな?」
ナトリウム11世が言う。
【その通りですが…】
「やれるだけやってみる!」
そう俺は答えると、例のゴキブリの羽を一枚むしり取る。
このゴキブリは俺の師匠が特別に作った物で、ゴキブリ自体から発する力は俺の結界となり、そしてその羽は御札に使うと強力な力を発揮する。
何故ゴキブリなのかというと、師匠の趣味である。
いい師匠なのだが変な趣味でな…。
と、いうのは置いといて。
俺はむしり取ったゴキブリの羽に気を込めて霊符を書いていく。
…書き終わると、お経を唱えながら御札を扉に貼る。
が、呪いがかなり強力なのか、御札が貼れない。何かの力で結界を張られているような感覚がする。
それでも俺はめげずに、一層気を込めて御札を持ちながらお経を唱え続ける。
「…っ!」
無理矢理ねじ込む形で御札を貼る事に成功した。
すると、周りに漂う霊気が少しずつ減っていく。
「ハァ…ハァ…。」
流石に力が必要だったのか、少し疲れたな…。
【笑夢司(えむじ)様、大丈夫ですか?】
ナトリウム11世が心配そうに俺を覗き込む。
「…大丈夫、と言いたい所なのだがな…。ハハっ。」
俺は苦笑した。
…しかし、ここで止まる訳にはいかない。
俺は、俺の仕事を全力でこなすまでだ。
「…大丈夫だ。進もう。」
そう言うと大きな扉を開いていくのであった。
- 呪われた鏡〜シーエ亜種物語〜五章 ( No.4 )
- 日時: 2021/04/10 17:17
- 名前: 命華ーみことばなー (ID: 3YwmDpNV)
俺は大きな扉を開けた。
ーギイィィィッ
古びた扉の軋む音がして、扉が開く。
そこには霊力の塊とでもいわんばかりの鏡が飾られていた。
廊下にある鏡よりも大きなその鏡はこんなにも古びた屋敷の中で、綺麗すぎるくらいに飾られていた。
「シーエ…」
鏡の中から声がして、『何か』が近づいて来る。
…そして、鏡の奥に赤くモヤのかかった人影が現れる。
【鏡之。随分長い間待たせてしまいましたねぇ…。
ようやく、救ってくれる方が現れましたよ。】
ナトリウム11世がゆっくり、人影に語り掛ける。
「…もしかして、この影がシーエなのか?」
俺が聞くとナトリウム11世はこっちに振り返り、答えてくれた。
【はい。
…正確には『鏡之(かがみの) シーエ』と申します。
シーエの平行世界を幾つも渡ってきましたが、区別が付かないままでは不便なので私が名前を付けました。】
ーなるほどな。
俺は鏡之に話し掛けてみた。
「はじめまして。俺は灰原 笑夢司(はいばら えむじ)。よろしくな。鏡之。」
シーエは少ししてから喋りだす。
「ワ…から無い…。ウ…チは…ワ…から無い…」
ナトリウム11世が申し訳なさそうに言う。
【鏡之は、言葉がほとんど理解できません…。
朝の挨拶、寝る前の挨拶など、色々な言葉を教えてきましたが、覚えた言葉は一つもありませんでした…。】
俺は少し考えてみたが、鏡之の本心を聞くのが一番手っ取り早い気がした。
「なぁ、ナトリウム11世。このゴキブリ頼んだわ。ちょっと鏡之と話しに行くわ。」
ナトリウム11世が慌てだす。
【なっ…何を考えているのですか!?
いくら貴方が優秀だとしても、鏡之の呪いは強力ですよ?
貴方が鏡之に取り込まれる可能性だって…!】
…確かにリスクは高い。
だが、この方法でアイツの本心を知ってきちんとアイツの望みを叶えてやりたいと思ったのだ。
「大丈夫だよ。ちゃんと戻って来るから。な?」
俺は笑顔をナトリウム11世に向ける。
ナトリウム11世はしぶしぶ、といった感じで
【…分かりました。ただし、貴方もくれぐれも無理はなさらないように。
無理だと思ったら逃げていただいて構いません。】
と言う。
「分かったよ。ありがとうな。」
そう言うと俺は鏡に体を突っ込んでいった。
- 呪われた鏡〜シーエ亜種物語〜六章 ( No.5 )
- 日時: 2021/04/10 17:30
- 名前: 命華ーみことばなー (ID: 3YwmDpNV)
鏡の中に入ると薔薇の蔦に絡まっている女性がいた。
フリルの服装に白い肌、ツインテールのその女性は綺麗で、それだけで作品のようにも見えた。
まずは彼女を目覚めさせなければ。
と、彼女前でお経を唱える。
周りの霊気は歪み、女性は目を覚ました。
…が、すぐに怯えた表情になり、震える。
俺が咄嗟の判断で後ろに振り返ると、そこには赤くモヤの掛かった鏡之(かがみの)がいた。
瞬間、鏡之が俺に攻撃を仕掛けてきた。
俺は必死に対抗しながらお経を唱える。
その時、ゆっくりと蔦に絡まっていたはずの女性がこちらへ泣きながら歩いてくる。
「ごめんね…?
苦しいよね。悲しいよね。
私のせいだよね…。
私が貴女を創ったの。
私が貴女を苦しめたの。
…分かってる。だから私と一緒に還りましょう?
もう、苦しむ必要なんて無いのよ…。」
女性はそう言うと、鏡之を抱きしめる。
鏡之は戸惑った様子で固まる。
女性の言葉で分かった事だが、この方こそがシーエ•エッフェンベルクなのだろう。
俺は二人に近づいて言う。
「…俺でよければ、二人を成仏させる手伝いをさせてください。」
その時鏡之がボソボソと話しはじめた。
「…カエル?
デモ、ウチハ鏡ノ中ニイタ…。
ズット、ズット…ドコニカエル?
ウチハドコニ?」
…そうか。コイツは鏡の中で、ずっと長い間閉じ込められてたんだもんな…。
けどよ。
「鏡之。大丈夫だ。お前にはきっとここじゃなく、本当にいる場所があるはずだから…。」
そう言うと、俺は合掌してお経を唱える。
…この二人が、安らかに旅立っていけるように…。
もう、苦しむ必要がないように。
- 呪われた鏡〜シーエ亜種物語〜七章 ( No.6 )
- 日時: 2021/04/10 17:36
- 名前: 命華ーみことばなー (ID: 3YwmDpNV)
ー気付くとそこは、綺麗な夜空だった。
何故か俺は夜空の上に立ち、純白のドレスを身に纏ったシーエ•エッフェンベルクを見つめていた。
シーエ•エッフェンベルクは微笑みながら近付いて来る。
「…ありがとう御座います。
私と鏡之は、元は同一人物。
今は二人で一つの体です…。
もう、この世に未練はありません。
これからは鏡之として呪って来た数…
それ以上に、苦しむシーエを救っていきたいと思っております。」
…そうか。
ちゃんと成仏できたのか。
安堵で頬が緩む。
【シーエ様。私もお供致します。】
とナトリウム11世がシーエの肩に乗る。
「皆、成仏できたんだな…。」
ぽつり、俺が言う。
シーエは笑みを浮かべて、俺に背を向けて歩いていった。
…目覚めた時には俺は鏡之がいた鏡の前にいた。
動かなくなったナトリウム11世に預けていたゴキブリを服に付け直すと、俺はゆっくり立ち上がる。
窓からは、キラキラと朝日が部屋を照らす。
俺は、鏡を壁から外し、御札を貼るとお経を唱えた。
そして鏡を回収して、俺は日本に帰るのだった。
- 呪われた鏡〜シーエ亜種物語〜作者あとがき ( No.7 )
- 日時: 2021/04/10 17:42
- 名前: 命華ーみことばなー (ID: 3YwmDpNV)
最後までお付合いいただきありがとう御座います。
作者の命華(みことばな)と、申します。
最初は思い付きで生まれた鏡之シーエでした。
シーエを怨み、シーエを欲しがる概念として、彼女は今まで生きてきました。
…ですが、彼女はエムジという、一人の照らした僅かな光からきちんと成仏していきました。
きっと、この作品を読んでくださった皆様にも消えない過去の傷や、それによって未だに苦しむ事もあると思っております。
ですが、『誰か』は必ずあなたを見ています。
あなた方を照らしてくれると思います。
だからこそ、めげずにもがいて下さい。
いつか、救われるその時が来ます。
勝つ必要なんて無い。ただ、負けないで下さい。
私の小説があなたの足元を少しでも照らせたなら嬉しいです。
最後に、本家シーエの親であるDeino様。
シーエ亜種としての活動を見守って下さった皆様。
いつも仲良くしてくださるシーエ界隈の皆様。
本当にありがとう御座いました。
ここまでやって来れたのは皆様の協力があってこそです。
そして、これからもよろしくお願いします。
令和三年 四月 十日
作者 命華
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