二次創作小説(新・総合)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- Re:脱出ゲーム
- 日時: 2021/04/25 18:10
- 名前: RAM・SHERRY (ID: CxgKVnkv)
第1話 ななもり。編
「ハァ、ハァ、ハァッ…」
俺は雨の降るなか、傘もささずに走っていた。なんでこんな状況になっているのか。話は1時間前にさかのぼる。
1時間前。
俺はやらないといけないことを全部終わらせ、寝ようとしていた。寝室に向かって、明かりを消してベッドにもぐりこんだ時、外から音が聞こえたんだ。この家は周りにほとんど何もなくて夜はものすごく静かだから物音がしたらすぐに分かる。窓からこっそりのぞいたら、車が1台、停まっていた。男たちがぞろぞろ出てきた。一人が持ってた懐中電灯が車を照らしたとき、俺は青ざめた。その車は、俺たち変色者が敵対している秘密警察の車だったから。ドアを閉める音で我に返った俺は父さんの形見である懐中時計と母さんの形見であるペンダントを掴んで寝室に作っておいた小さい出入口から外に逃げたんだ。
…そして今に至る。俺の唯一の居場所だったあの家がやつらの汚い手で荒らされていると思うと胸が痛む。でも、俺があの家に戻るにはまずやつらから逃げ切らないといけない。だから俺はずっと逃げて来たんだ。思わずペンダントを握って今はいない父さんと母さんに心の中で問いかけた。
『父さん、母さん、俺、どうすればいい?』
返事はない。でも、聞きたくなるんだ。こうやって父さんと母さんに問いかけて俺の思う正解へと進んできたんだ。とりあえず休もう。そう思って隠れられる道を探した。しばらく歩いた時、とてもよさそうな脇道を見つけた。俺はその脇道に入って座り込んだ。胸元のペンダントの鎖がカシャリ、と音を立てた。懐中時計を取り出して時間を確認した。今は12時過ぎ。家を出たのが11時くらいだったから1時間くらい逃げてたのか、俺。そう思った瞬間、今までたまってた疲れが一気に襲ってきた。眠いし、疲れたし。でも、寝たら多分やつらに捕まる。俺は呼吸を整えて立ち上がった。行こう。同じとこにずっといるのは危ないかもしれないから。俺はゆっくり立ち上がると脇道から出て歩き出した。
「いたぞ!追え!」
嘘だろ。俺が後ろを振り向くとやつらが追ってきていた。どこで俺のことをかぎつけたんだろう。俺は猛ダッシュで走り出した。でも、相手は大人。俺はあっという間に追いつかれ、周りを囲まれてしまった。
「もう観念したらどうだ?」
やつのそんな戯言に、俺はなぜか冷静でいられた。
「いやだと言ったら?」
「力ずくでやるのみだが?」
俺はいつ来るか分からない攻撃に身構えた。ペンダントを握るとやつらをキッとにらみつけた。すると真ん中にいた男が隣にいたやつに何か言った。言われたやつがうなずく。それと同時に俺はめまいを覚えた。頭がくらくらする。上手く立っていられない。マズい。ここで座ってしまったら俺は多分もう立ち上がれないだろう。頭が痛い。もう立つことだけで精一杯だ。俺は素早くあたりを見回し、その目が銃らしきものを捉えた。なるほど。く、薬か…。俺はここまで考えて意識を手放した。
- Re:脱出ゲーム ( No.3 )
- 日時: 2021/05/04 21:02
- 名前: RAM・SHERRY (ID: CxgKVnkv)
脱出ゲーム 第4話 ころん編
「どうしよ~、寝れないよ~。」
僕は夜道を歩きながら言った。いや、別に夜更かししようって思ってるわけじゃなくて。単に寝れなかったの。で、まぁ散歩に出てきた感じなんですけども。あ~、とりあえず僕の事紹介しときますね。
どうもみなさんころんくんですっ!(笑)今は15歳ですね。え~と、まぁこの世界では変色者って呼ばれてる人種ではあるんですけども、今は一人暮らししてるんでものすごい気楽。僕の特徴としては髪と目が水色で声がガサガサのいわゆるヤギボですね。はい。ははは。ちなみに家はね、なんかてきとーに歩いてた時に見っけた結構郊外の家なんだけど、めっちゃ静かなのよ。話し相手もいないし。暇なんだよね(笑)
…とまぁ、自己紹介はここまでにして。あのね、僕、幼馴染がいるんだよね。あのさ、その子、さとみっていって。男なんだけど僕よりかっこいいの!正直、うらやましい。その子は僕と同じ変色者なんだけど。絶対変色者じゃなかったら超モテモテだっただろうね。僕がここに来る1年位前にその子が引っ越したんだけど。覚えてるかな、僕の事。わかんないや。えっとね、何話そうと思ったんだっけ?なんだろ。まぁいい…え、ちょまって後ろ誰かいるんだけど。え、ここ来る理由ある?だってここ、ほとんど人こないへんぴな場所だよ?しかも今夜だよ?
……はぁ。終わった。秘密警察だわ。でもなんでやつらが僕の居場所知ってるんだろ。とりま逃げる。
僕は走り始めた。後ろから追っかけてくる足音も聞こえた。いやめんどっ!!ダルいて、ほんとに。
僕が走ってたら今度は前からなんかいっぱい来た。つまり、囲まれたってわけ。ヤバいじゃん。詰んだんだけど!
「誰ですか?そこ、通りたいんですけど。」
「では、なぜさっき走った?」
「後ろから誰かつけてくるからですよ!ただでさえ夜なのに!」
「悪いが、お前を逮捕する。」
「え?」
僕はびっくりした。だって、逮捕されるようなことしてないもん。
「1週間前の深夜0時ごろ殺人事件があった。お前はその犯人として指名手配されている。」
「僕はやってない!」
「証拠も証言もある。言い逃れなんてできない。それに、単独ではなく共犯らしいな。」
「だから僕はやってないって!!」
「こいつとやったんだろ?」
そう言ってやつが見せた写真を見たとき、僕はびっくりした。だって、そこに映ってたのは僕のよく知ってる凛々しい顔、鮮やかなピンクの髪、深みのある群青の目を持った
―――――――さとみくんだった。
「さとみくん!」
「知ってるのか?」
「どうでもいい!僕はさとみくんと1年以上あってない!」
「じゃあ何でこの男の名前が分かった?」
「それはっ…面影が残ってるから!僕と別れたときと変わってない!」
幼馴染っていうのは言わなかった。それこそ怪しまれるし。
「まぁいいだろう。今、そいつの家も割れたからそこにも向かわせてる。今度は牢獄で再会を分かち合えるだろうよ。」
「!?おい、放せっ!!」
僕は後ろにいたやつに腕を掴まれて、拘束された。正直言うと腕痛い。ほどこうとして暴れるけど、力が強くて全然ほどけない。気づいたら、僕としばらく対話してたあいつが目の前に来ていた。手に持ってるやつは…スタンガン!?
「それじゃ、いったん寝てもらおうか。なぁ、〝ころん″」
「(今ころんって…)ゔ、ああああぁぁぁぁっ!!!!」
僕は首に冷たいのが付いたのと同時に痛みが来て、目を閉じてしまった。
- Re:脱出ゲーム ( No.4 )
- 日時: 2021/05/04 21:03
- 名前: RAM・SHERRY (ID: CxgKVnkv)
脱出ゲーム 第5話 莉犬編
「疲れたよぉ…。」
俺は雨の降る道で座り込んだ。俺は莉犬。変色者で、プラス獣人なんだ。獣人っていうのは簡単に言うと獣と人間のハーフである人種の事。ちなみに俺は狼とのハーフなんだ。見た目的なこと言うと髪は赤で目は右が紫、左が黄色なんだ。で、犬耳としっぽが生えてるんだ。俺は犬耳と思ってるけど、猫耳に見えたりとかするんだろうね、昔「猫の獣人?」って聞かれたことあるもん。
ん?何で俺が雨降ってる中で座ってるのか?
答えは簡単だよ?疲れたから。
え?何で疲れたのか?
ああ、そういうことね。あー、まぁ軽く言うと追っかけられてたから、かな。なんで追っかけられてるのかっていうのを話すと意外に長くなるんだけど。ん~と、ま、話そっか。
―――――――――――――
俺はねぇ、獣人として生まれたんだ。最初は俺は獣人なんだ~、ぐらいの感覚だったんだけど。俺がどんどん大きくなるにつれて差別がひどくなってさ。俺は黙って耐えてたんだけど、両親が耐えきれなくて。……自殺しちゃったんだ。そこから俺は1人。でもね、俺、大丈夫だったんだ。信頼できる人を見つけられたから。その人は俺と同い年で、変色者だったの。でもね、その人は俺より境遇が酷かった。聞いた話だと両親は一般人らしくて。一般人から変色者が生まれることはほぼないから、虐待されてたらしいの。で、15歳になったときに家から追い出されたんだって。今は郊外の人がまったく来ないとこに建ってた家に住んでるみたい。ちょっと前にその子にあったんだけど、なんか寂しそうに笑ってた。
「もしかしたらもう会えないかもしれない」
って言って笑ってた。俺はその時何も言えなかった。ただうんっていうことしかできなかった。でも今はものすごく会いたい。このまま会えないなんて絶対に嫌だ。せめて1分だけでも会いたい。笑顔で抱きしめてほしい。ちょっと黒い笑いで俺にあのセリフを言ってほしい。
……俺はしばらく回想をしてた。本能が危ないって告げてる。何か来てる。多分俺を追ってきてたやつだと思う。ヤバい。逃げないと。俺は走り出した。後ろから声が聞こえる。なんか言ってる。
『逃げないと。捕まったらそれこそもう会えないかも。まずは逃げ切らなきゃ。』
俺はそのあと無我夢中で走った。すべてはまたあの人と会うため。ただそれだけ。そして俺はしばらく走り回って本当のこと言ったらここがどこかもちょっと分からない。うん。遠回しに言ったけどはっきり言うと迷子になったんだよね(笑)どうしよう。土地勘ないし。
「追え!!」
はい、終わった。見つかった。うん。……逃げるが勝ちぃっ!!!
俺は走った。一応獣人だから走るのには自信あるんだ。でもって走り回った結果。迷子だよぉ(*´Д`)ほんとにどうしよう。
―――って考えてたら腕を掴まれた。
「ふう。手こずらせやがって、このガキ。」
うん。こんどこそ終わった。手を振りほどこうとしたけどきつく握られてて逆にもっと痛くなる。
「放せ!」
「無理だな。お前はこれから拘置所に行くんだから。」
「何でだよ!?俺がお前らになんかしたか!?」
「知らねぇ。上の命令だ。これ以上抵抗するんなら強硬手段に出る。」
「どうでもいい。早く放せ!!」
「どーします?」
「やれ。」
「早く放せって!!」
やつは俺の腕を掴んだまま何かを取り出した。黒い機械。多分…スタンガンだ。あれに触ったらだめだ。絶対だめだ。俺の本能が告げた。
「もういい。やれ。」
「了解。」
「やめろ…。やめろ!放せ!!」
俺は暴れた。でもやつの方が力が強くて。逃れたくても逃れられなかった。パチパチッ、って音が聞こえる。俺はその音と首筋につく冷たい感触、首に走る痛みが同時に襲ってきて世界が暗くなった。
『ごめんね…。またいつか会えるといいな…。』
- Re:脱出ゲーム ( No.5 )
- 日時: 2021/05/06 07:58
- 名前: RAM・SHERRY (ID: CxgKVnkv)
脱出ゲーム 第4話 ジェル編
「なーくん、大丈夫なんかな…?」
俺は夜道を走りながらつぶやいた。俺はジェル。ん~と、まぁ、変色者や。オレンジ寄りの茶色の髪と明るい黄緑の目を持っとってな、そのせいで気味悪がられたりいじめられたりって感じでいろいろあったんよ。今は家から追い出されたけん適当に渡り歩いとる。いわゆるホームレスやな。こないだ芋れるとこ見っけたけん今はそこにおんで。生活はできとる。ん?なーくんのこと?ああ、なーくんってのはな、俺の幼馴染や。昔俺が住んどった家の近くに住んどって。なーくんも変色者で、その関係もあって仲ようなったんよ。でも俺が引っ越すことなって、そこで別れてそのままずっと会ってへん。俺は覚えとるけど、なーくんが俺の事覚えとるかは分からん。正直に覚えられてなくてもええんや、別に。俺の大好きやったなーくんのはじけるような明るい笑顔さえなーくんが失ってなければ。俺は今まで何をされても、何を言われても、なーくんの笑顔を見て、声を聴いて、思い出すことでずっと耐えてこれたんや。
「いつまでも大好きや、なーくん…。」
俺を覚えとらんくてもええ。また会えた時にそっけない態度してもええ。ただ、俺に向けてくれたあの優しくて太陽みたいな笑顔だけは失わんといてほしい。
「大好き。もし会えたら、またあの時みたいに笑ってな…。絶対に会いに行くけん。なーくんも頑張って逃げ切ってな。」
俺は空を見上げて一人つぶやいとった。なんしとるんやろ(笑)俺はゆっくり歩きだして、休める場所を探し始めた。いや、ほんとにさ、ずっと走っとったけんめっちゃ疲れとんのよ。足痛いし、明日は筋肉痛コース確定や。確定するとなんが困るかっつったらもし明日もやつらとチェイスすることになったらどうするんや、って話よ、要は。筋肉痛なると足痛いけん捕まる確率高まるんよ。やけん絶対1回は休むようにしとる。それだけでだいぶマシになるんよ。ふと頭の中になーくんの声が聞こえた。
「ジェルくん!頑張ってよ。ジェルくんが頑張ってくれなかったら俺が今まで頑張ってきた意味なくなるじゃん!」
ちょっと拗ねているようで優しく俺を包み込むような落ち着く声に俺は思わず笑顔になる。
「分かったって。俺も頑張るけんなーくんも頑張れよ。」
俺は立ち上がるとまた歩き出した。さっきから雨も降りだしとって、俺の服を濡らす。でもそんなの気にならへん。俺の目的はただ1つ、逃げ切ることや。なーくんも多分それを願っとると思うし。
「…行こか。」
深く息を吸って、俺は走り出した。筋肉痛とかもうどうでもいいわ。俺はその場にいないなーくんがなぜか応援してくれとるような気持ちになった。なーくん、待っとってや。頑張って逃げ切るけん。
「追え!」
ハンターたちのお出ましや。どーしよー。俺もう体力残っとらんし…。しかも俺はその状態でやつらに囲まれてしまった。
「いいかげん諦めろ。このゲームはもう、チェックメイトだ。」
「チェックメイトなんてしゃれた言葉を使うじゃないですか。まだ戦略はありましたけど。」
「悪いがこのゲームは俺たちの勝ちだ。」
やつはそう言うとなんかの黒い機械を出してきた。形からして多分スタンガンやろうけど。やだわ~あれ。痛いやん。その黒いやつが目の前に迫ってきた。俺は反射的に腕で防いだ。電気食らった腕がしびれてちょっと痛い。しかも別のやつから腕掴まれたんやけど。
「っつ…。放せよっ!!!」
「さようならだな。また手合わせできることを祈っているよ。」
やつは俺の首筋に冷たいものを当てた。わずかな痛みが来て、俺はそのまま目を閉じた。
- Re:脱出ゲーム ( No.6 )
- 日時: 2021/05/08 20:59
- 名前: RAM・SHERRY (ID: CxgKVnkv)
脱出ゲーム 第2章 再会と出会い
ななもりside
「うっ、ううん…。!どこだ、ここ…。」
俺は冷たい床の感覚で目が覚めた。薬で眠らされていたから頭が痛い。俺は逃げていた時とは違う服を着ていて、手首に何かのわっかが付いていた。どうやら鍵式みたいで、外れない。周りを見るとそこには俺と同じような服を着ている人が5人、倒れていた。共通しているのはみんな―――――変色者だってこと。
?「うぅん…。莉犬、大丈夫かな…?」
誰かが目を覚ましたみたい。振り返ると黄色の髪の男の子が起き上がったところだった。
「あの…。」
俺が彼に声をかけようとすると、
?「初対面で失礼かもしれないけど誰?」
素早く身構えられた。警戒されてる。そりゃそうかもだけど。
「俺はななもり。よろしくね!」
彼は少し戸惑ったような表情をしていたけど、しばらくしてから言った。
る「…るぅと。」
「るぅとくんか。よろしくね!」
る「ええと、よろしくお願いします。」
るぅとくんも俺と同じような服を着ていて、変色者だってことは分かった。俺と決定的に違うのは髪と目の色。当たり前だけど。るぅとくんは黄色の髪と琥珀色の目を持ってる。ものすごくきれい。薄くなくて、濃いわけでもなくて。色が偏りなく入ってるっていうか。俺みたいな1色使いの色じゃなくて、必要な色が全て調和して1つの『琥珀色』っていう色を作ってるっていうのかな?分かんないや。
る「ななもりさん?どうかした?」
るぅとくんに声をかけられて我に返った。
「何でもないよ。」
る「それならよかった。急に黙るからびっくりした。」
るぅとくんは少し幼さの残るショタボで言った。少し周りを見るとそこに倒れている人たちはピンクや水色、赤、オレンジ寄りの茶色の髪と、いろいろな色があった。あまり顔は見えないけど、少し見えてる目はまつ毛が長くてイケメンの部類に入りそうだった。
「どうしようか。起こす?」
る「そうだね。僕はピンクの人と赤の髪の人を起こすから残りの2人をお願いしていい?」
「いいよ。お願いね。」
俺はるぅとくんに頼まれた通り、水色の髪の人とオレンジの髪の人を起こした。でもなんか、オレンジの人どっかで見たことある気がするんだよな…。気のせいかな?まぁいいや。水色の人は寝起きが悪いみたいでなかなか起きなかったけど(苦笑)
――――――――――――
とりあえず全員が起きた。ピンクの髪の人はイケメンの一言で尽きるくらいかっこよくて、ちょっとうらやましい。水色の髪の人は声がガサガサで、風邪なのかと思ったけど本人によるとこれが地声らしい。るぅとくんと赤い髪の人は仲がいいみたいで、ずっと一緒にいる。俺は隅っこでぼんやりしてた。
るぅとside
「うぅん…。莉犬、大丈夫かな?」
僕は目が覚めた。真っ先に思い浮かんだのは莉犬の顔。薬で眠らされていたからちょっと頭がズキズキする。僕が起き上がった時、後ろから声をかけられた。
?「あの…。」
僕は思わず身構えて言った。
「初対面で失礼かもしれないけど誰?」
紫の髪のその人は言った。
な「俺はななもり。よろしくね!」
一瞬信じていいか考えたけどしばらくしてから僕も名乗った。
「…るぅと。」
僕がそう言うと彼――――ななもりさんは笑顔でよろしくね!と言ってくれた。そのまぶしい笑顔は莉犬とは少し違った優しさを持ち合わせていた。僕も笑う。どうせにせものだけど。僕の本当の笑顔は、莉犬しか見たことが無い。僕はいじめられ始めてから素を隠し、仮面をかぶって生活してきた。まだ信用してないし。するとななもりさんは僕の顔をジッと見て黙っている。
「ななもりさん、どうかした?」
僕がばれないようにするのも兼ねて声をかけるとななもりさんはハッとしたように笑った。
な「何でもないよ。」
何を考えてたかは触れないでおこう。僕はみんなを起こさないか、と提案して莉犬を起こした。もう一人の人はピンクの髪で、かなりのイケメンだった。反応とかを見る限り、水色の髪の人とピンクの髪の人は仲がいいみたい。僕はずっと莉犬と一緒にいた。ななもりさんは部屋(牢屋)の隅っこでぼんやりしていた。僕は莉犬の健康状態のチェックをしようとしていて、莉犬にきつくないかとかを質問してた。
莉犬side
俺は誰かに体を揺すられて起きた。目を開けるとそこには俺の大事な、大好きな友達、るぅとくんがいた。スタンガンで気絶したんだ、俺…。それを思い出した瞬間、俺は背筋が凍った。となると、ここは専用拘置所。一応俺は獣人であって、変色者でもあるんだけど。るぅとくんは俺を心配そうに見つめる。俺は心配をかけないように二っと笑って見せたけどるぅとくんは心配そう。まったく、好きな人には心配性なんだから。逆にこっちが心配だよ(笑)るぅとくん以外は全員知らない人。水色の髪の人とピンクの髪の人は仲がいいみたいだけど。るぅとくんの口ぶりではまだ誰も信用してないって。相変わらずの疑り深さ。俺ですら全然信用されなかったからね、るぅとくんと会った頃は。それに比べたら今はものすごくいい関係が築けてる。とは言え、みんなは誰だろう。そう思って俺はみんなに提案した。
「ねぇ、とりあえず自己紹介しない?」
みんなが俺の方を見る。俺はみんなに聞こえるように大きな声で言った。
「お互いの事知るのって大事じゃん。だから自己紹介しよ!」
そしたら、紫の髪の人が賛成してくれた。
?「そうだね。とりあえず自己紹介はした方がいいと思う。」
その人は部屋(牢屋)の隅の方でのんきに言った。こんな状況でも落ち着いていられるのはすごいな、ってつくづく思う。顔は陰になっててよく見えないけど、なんかかっこいい。声はすごく優しそうで、こんな人が親だったら絶対幸せだろうなって思う。彼の意見と俺の提案で自己紹介をすることになった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一通り自己紹介が終わった。俺の意見に賛成してくれた紫の髪の人はななもりと言うらしい。ピンクのめちゃくちゃ顔面偏差値が高そうな人はさとみ、風邪ひいたみたいにガサガサの声の人はころん、オレンジっぽい髪の人はジェルっていうみたい。ジェルって人、方言すごいけどどこ出身なんだろ。俺は獣人だということもみんなには言っておいた。あとでいろいろ聞かれたりするとめんどくさいもん。結局話すことなくなっちゃった。俺たちはまた別々に話したりし始めた。
ジ「あのー、ななもりくん?」
ジェルの声が聞こえた。
な「ジェルくん…だっけ?どうしたの?」
ジ「俺の事覚えとる?」
な「へ?」
ジ「まって、質問変える。幼馴染とかおったん?」
な「ん~と、いたような気はするけどあんま覚えてない。ただ、その子が俺の事なーくんって呼んでて、オレンジっぽい髪だったな。覚えてるのはそれだけ。」
ジ「なーくん…か。なーくんやん!久しぶりぃ!!」
な「え!?なになになに!?」
大きな声をあげてななもりに飛びついて抱きしめるジェルくんと、逃れる間もなく抱きしめらたななもりくんは照れくさそうに頬を掻いてる。
ジ「俺の幼馴染ぃ!やっと会えた!!」
な「えっと…。ジェルくんが俺の幼馴染ってこと?」
ジ「そういうことや!」
な「でもごめん…。俺、あんまり覚えてないや。」
ジ「それでもいいんや。よかった、なーくんがその笑顔失っとらんくて。」
な「ありがとう。」
どうやらジェルくんとななもりくんは幼馴染だったみたい。ある意味感動の再会だよね。分かんないけど。その時、外から声が聞こえた。
?「おい。」
俺が声のした方を振り返るとそこには1人の男がいた。隣の雰囲気が変わる。るぅとくんを見上げるとるぅとくんは立ち上がってそいつを見つめていた。るぅとくんは言った。
る「…何でここに来た?」
るぅとくんはいつもと違って冷たい雰囲気をまとってた。キレてるときのるぅとくんだ。るぅとくんの声は普段より低くて、それも冷たい雰囲気を助長してる。
る「用なんてないだろ。さっさと失せろ。消えろ。吐き気がする。」
男「お前さ、よくあそこまでやったなぁ?」
『やった…?』
さ『莉犬くん、大丈夫か?ふつーにビビってんじゃねえか。』
こ『るぅとくんって怒らせたら怖そう。』
ジ『めっちゃいうやん。』
な『大丈夫かな?間に入った方がいいかな?』
無言で男とにらみ合うるぅとくん。
る「はっ。それがどうした。わざわざここまで言いに来ることでもないだろ。」
るぅとくんはやつの言いたいことが分かってるみたい。どういうことだろう。俺は次に男が放った言葉に度肝を抜かれることになった。
男「なぁ、…人殺し。」
る「なぁんだ。お前らも気づいてたんだね。まだ気づいてないかと思ったよ。気づいてないのならヒントにもう1回やろうかと思ってたのに、捕まっちまった。もう1回くらいやりたかったなぁ。」
男が立ち去るとるぅとくんは俺のところに来た。ビビッて立ち上がれない俺をぎゅって抱きしめてくれる。やっぱりこの暖かさがるぅとくんだ。
な「…るぅとくん、聞かせてほしい。君の家庭環境と人殺しって呼ばれるようになった理由を。」
る「分かりました。」
そう言ってるぅとくんは話し始めた。俺ですら知らない過去を。
- Re:脱出ゲーム ( No.7 )
- 日時: 2021/05/14 07:33
- 名前: RAM・SHERRY (ID: CxgKVnkv)
第2章 1話 るぅとの過去
僕は15年前、ある家に生まれました。最初は可愛がってもらえました。でも、僕が6歳くらいになると急に虐待し始めて。殴られたり、ご飯を食べられなかったりなんて普通でした。学校でもいじめられて、家では虐待される。僕はそのせいで誰も信用できなくなりました。虐待もいじめもどんどんエスカレートしていって。小学校5年生のころには何をされても何も思わないくらいに心が死んで、感情も失って。そこからは「愛なんて、好きって気持ちなんてない、ただの戯言だ。」って思うようになって。今思うと本当に危険な状態だった。
そしてある日、僕は家にいるのが嫌だったのでこっそりと家を出て家の裏手にあった山へ行きました。頂上まで登って、そこから景色を見たりしていた時に声をかけられたんです。
「ねぇ、一人でどうしたの?」
って。それが莉犬でした。最初莉犬を見たときは獣人だとか変色者だとか思うより前に何でここにいるんだろうって思いました。それから自己紹介とかをして。莉犬は、親が自殺したって言ってて。僕よりも境遇が酷い気がして。莉犬ももちろん最初は信用してなかったけど、一緒に過ごすうちに「ああ、この人は信用できるな」って思って。そこからは莉犬との時間が僕の楽園でした。学校と家での傷はすべて莉犬との時間で癒していきました。今思えば、莉犬がいたから僕は感情も、理性も保てて、僕が『僕』という存在を見失うことがないんです。もし莉犬がいなかったら、僕はもう壊れてました。感情もなくただ差別だけを受け続けて、両親に虐待される人形みたいな人生になるところでした。
でもある日、僕はとうとう犯罪に手を染めました。両親を殺したんです。そしてそのまま逃げて。莉犬にもそのことを言いました。罵倒されると思ってたのに莉犬はそんな僕も受け入れてくれました。そして僕は莉犬と別れました。そこからはやつらに見つからないようにただ逃げるだけ。僕が捕まったのはその生活を始めてから1カ月くらいたった時でした。当時僕が隠れて過ごしていた場所にやつらが来てて。僕はそのまま逃げたんですけどたぶん、やつらに足音が聞こえてたみたいで、追いかけてきたんです。僕はいろんな路地裏を走り回ったんですけど、どこにでもやつらはついてきて。そしてある日の雨が降ってた夜、ありましたよね?あの日、僕は捕まりました。まぁ、あまり体力のなかったこともありますけど、やつらは50人くらいでおいかけてきましたから。回り込まれて退路を断たれたうえに腕を拘束されて。おかげで今もまだ少し痛いんですよ。殴られたんで挑発してやったら首に注射の針を刺されて。そのあとはもう、記憶がないです。そして気づいたらここにいて、みんなと会ったわけです。
…これが、僕の過去です。
Page:1 2