二次創作小説(新・総合)
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- 第3回最大トーナメント!【完結!】
- 日時: 2021/06/16 19:03
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
今年もはじまりました、第3回最大トーナメント!
今回の参加者は歴代の大会優勝者である南ことり、津島善子、宮下愛に加え、初参戦のリエラメンバーが全員参加! スター流からはスターとジャドウの二大強豪が参戦!
そしてアイカツ勢からは日向エマ、紅林珠璃、姫石らきが参戦。
どんなバトルを見せてくれるのか。
いよいよ最強を決める戦いの幕が開きます。
不定期更新です!
キャラの扱いに差があります!
参戦者一覧
1 津島善子
2 南ことり
3 絢瀬絵里
4 宮下愛
5 黒澤ルビィ
6 天王寺璃奈
7 澁谷かのん
8 唐可可
9 日向エマ
10 紅林珠璃
11 姫石らき
12 水野亜美
13 マウント斗羽
14 アントニオ猪狩
15 力剛山
16 ローランド・イスタス
17 リチャード・フィルス
18 アイアン・マイケル
19 渋川剛気
20 ガオラン・ウォンサワット
21 ユリウス・ラインホルト
22 嘉手納碧流
23 ドクターセカンド
24 美琴
25 スター=アーナツメルツ
26 ジャドウ=グレイ
27 モンブラン博士
28 嵐千砂都
29 葉月恋
30 平安名すみれ
31 浄谷瑞斗
32 エイジア
本大会のルール
武器の使用は禁止(使用した場合 即座に負けとなる)
1ラウンド10分間で行う
決着が付かない場合はラウンドを重ねていく
KOもしくはギブアップにより勝敗が決まる
女子キャラはハンディとして大幅な補正を与える(例 攻撃力防御力共に普段の数十倍の増大となる)
以上。
募集用紙>>1
- Re: 第3回最大トーナメント! ( No.25 )
- 日時: 2021/06/14 20:45
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
絢瀬絵里は控室で入念に準備体操をしていた。急に激しい運動をすると筋肉が激しい痙攣を起こし、試合どころではなくなってしまうため、適度に身体を温める必要があるのだ。既に3試合が終了し、次は4試合目となる。
彼女は長い金髪を束ね、いつものポニーテールにすると深呼吸をした。
そしてじっとテレビ画面に映る自分の対戦相手を見据える。
「ことり、今回は私が勝たせてもらうわね」
遡ること最初の最大トーナメントの準決勝において、絵里はことりに惨敗している。余計な感情に囚われ試合に集中できなかったと言えばその通りだが、彼女は彼女なりに後輩を守ろうと懸命に頑張ったのだ。結果的にことりが優勝を遂げたものの、もしザ・サードが優勝していたらと考えるとゾッとするものがある。
だが、今回の闘いは違った。
ミスターXによる陰謀もなく試合は皆が正々堂々としている。
クリーンに実力のみを競うことができるのだ。
あれから絵里は数々の闘いに挑んできた。
ブラック将軍に勝利し、七人の悪魔超人の一角であるアトランティスにも勝利。
決して弱くは無いのだ。実力はある。成長もした。
絵里は微笑み、リラックスの為の小さな一口サイズのチョコを口に放り込む。
甘い味が口一杯に広がり、気合も満たされた。
「いくわよ!」
ロシアの女帝、今宵、最大トーナメントに再降臨。
- Re: 第3回最大トーナメント! ( No.26 )
- 日時: 2021/06/14 20:59
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
絵里とことりはリング中央でがっちりと組み合った。
これまでの試合とは異なる王道の出だしだ。
しばらくの間力比べをしたあと、絵里はことりをヘッドロックで締め上げる。
そして放り投げて横転させつつ、グランドヘッドロックに移行する。
たっぷりと締め上げて離すと、ことりも立ち上がった。多少フラつくのか、首をブンブンと振って痛みを和らげると、ことりは絵里に向き合った。
互いに同時にロープを背にして反動をつけて、ドロップキック。
両者の蹴りが空中で激突し、ふたりは墜落。
しかしすぐに起き上がってくる。
「やるわね」
「絵里ちゃんも」
観客から「わぁっ」と歓声が上がり、数多の足踏みの音が聞こえる。
互角で王道のプロレスに観客も喜んでいるのだ。
再び組合い、今度はことりが絵里をヘッドロック。
散々に締め上げられるが、絵里はことりの腰を掴んでバックドロップ。
倒れたことりに覆いかぶさり、フォール。
レフリーのカウントが開始される。
「1!」
だが試合序盤ということもあり、ことりは膝の力を利用して絵里を跳ね飛ばして復活。
絵里は後頭部にダメージを与えようとことりの腰を掴んで、バレエで鍛えた柔軟性を活かしたジャーマンスープレックス。
大きく弧を描かれるが、寸前でことりが絵里に足をかけて河津落としで反撃。
簡単には決めさせてはくれないのだ。
流れる汗しぶき。絵里は疲労を感じながらも充実感を覚えていた。これまでの陰惨なものとは全く違うどこまでも爽やかな戦いに充実していたのだ。
棒立ちのことりの隙を突いて、彼女の細い首にラリアート。
ことりはそれを敢えて受け切り、伸びきった腕をとって腕固めで絵里の身体を地に伏せる。
「ギブアップ?」
レフリーが問うが絵里は首を振って答える。
「ノーッ!」
渾身の力を込めて腕固めから逃れると、するするとコーナーポストの最上段へと昇っていき、そこから勢いよくダイブ。
フライングボディアタックだ。
倒れていることりはこれも受けるかに思われたが、両膝を立てて逆に絵里にダメージを与える。七転八倒している絵里に好機を覚えたことりは、自分も対抗してコーナー最上段に登ると、コーナーを蹴ってニ―ドロップを見舞った。
その光景に観客だけでなく参加者までもが驚愕の色を見せていた。
ことりは生まれつき膝が弱く、幼少期には手術を受けたこともある。
彼女の膝には今でも小さな古傷が残っているのだ。
その膝で膝爆弾を見舞うことがどれほどの覚悟と勇気が必要か、参加者達は察することができた。
絵里はまるで時間が止まったかのように、本当にゆっくりとことりが落下していくのを目撃した。膝は自分を狙っている。けれど、恐怖は無かった。
躱すことは可能。だが躱したらことりに非礼をすることになる。
ここは先輩として完璧に受け切ることが礼儀。
ことりの膝が絵里の喉に完璧に食い込んだ。
「ゲホォッ!」
むせるような声と共に唾を吐きながらも、絵里は幽霊のようにゆっくりと立ち上がる。髪は汗で濡れて湿っているが、青い瞳は対戦相手だけを捉えている。
ことりは自身の最大技を繰り出し、私はそれを受け切った。
もう、後は無い。
ここを耐えきれば、自分が勝つ。
絵里は踏ん張りを聞かせてマットを踏みしめ、後輩に向かっていく。
跳躍して、ことりの頭を両足で挟み込んでくるりと一回転。
ローリングクラッチホールドを決めた。
レフリーがカウントを開始。
「1、2、3!」
カウント3。絵里はことりからフォールを奪い、勝利したのだ。
技を解くと、ことりが手を差し伸べてきた。
「絵里ちゃん、強くなったね」
「ことり、ありがとう」
手を握るふたりの目には自然と涙が浮かんでいた。
そして彼女達は健闘を称えるハグをする。
絵里にはことりの温もりが、ことりには絵里の温もりが伝わってくる。
「絵里ちゃん、ことりの分までがんばってね」
「もちろんよ」
会場にはふたりの勝負に満足した客達が絶え間ない拍手で祝福していた。
勝者 絢瀬絵里
敗者 南ことり
- Re: 第3回最大トーナメント! ( No.27 )
- 日時: 2021/06/15 08:05
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
元世界ヘヴィ級ボクシング王者であるアイアン=マイケルが現れた。
こげ茶色の肌に盛り上がった筋肉から繰り出される鉄の拳でマイケルはあらゆるボクサーを倒し、KOの山を築いてきた。本来ならばこの大会に参加するような人物ではないが、彼は自分の実力を試してみたかったのだ。世界最高峰の実力者が多数参加するこの大会で自分がどこまで勝ち進めるかどうかを。
彼の見据える先には漆黒のタキシードに葉巻を加えた男が仁王立ちしていた。
その名をリチャード=フィルス。用心棒として二千試合無敗を誇り、地元では地球一のタフガイと名を馳せている。奇しくも同じアメリカ人同士の対決となった。リチャードは基本的にはルール無用の喧嘩の住人ではあるが、レフリーからの説明が終わるまではおとなしくしていた。両陣営のコーナーに戻り、試合開始。
まだ、マイケルはどうやってリチャードを殴打するか考えていた。すると、靴音を鳴らし、リチャードが接近してきた。突進ではない。
あくまでも散歩でもするかのような悠々とした足取りである。
「かかってきな」
葉巻を加えながらふてぶてしい面構えで呟く。
その言葉を受け取り、マイケルは容赦のない打撃をリチャードの顔面に放つ。
鉄の拳がめり込むがリチャードは平然と殴りかかってきた。リチャードのパンチは大振りのため軌道が読みやすく簡単に躱すことができる。マイケルは躱した後、今度はボディーブローを見舞った。腹に拳が食い込むがリチャードは倒れない。それどころか口に咥えた葉巻も離してはいなかった。
そこでマイケルはラッシュで一気に畳みかけようと考えた。
ジャブ、右ストレート、左ストレート、アッパーと怒涛の攻撃でリチャードを責め立てるが、用心棒は流血さえしていない。
マイケルの背筋に冷たい汗が流れた。
地球一のタフガイという異名は決して伊達ではなかったのだ。
仮にも世界チャンプだった自分のパンチを食らってよろめきもしないとは。
リチャードは微動だにせず、マイケルの攻撃を待っている。
攻撃する気配は見られない。まるで自分からサンドバックにでもなっているかのようだ。ただし、世界一タフなサンドバックなのだが。
マイケルは思案した。グローブに保護されたパンチではKOできない。
ならば封印を解く。マイケルはグローブのリスト部分を噛んで己のグローブを外すべく行動を開始。
メリメリと乾いた音が静寂な会場に響き、マイケルの両の拳は剥き出しとなった。つまりボクシングではなく本気の喧嘩を始めるつもりなのだ。
相手は生の拳でなければ倒せないというのが彼の導き出した結論だ。
マイケルは咆哮し、渾身の力を込めてボディに一撃。
腹に食い込んだ拳に初めてリチャードの口から葉巻が飛んだ。
効いている。マイケルの表情に明るさが戻り、再び一撃を見舞わんと顔面に狙いを定めた瞬間、ハンマーのようなリチャードのパンチが命中。
その重さにマイケルの膝が笑った。立て続けに顔面に拳を受け、マイケルの鼻から血が噴き出す。
掌を開けて滴る真っ赤な血を受け止めた。
素人に殴られて鼻血を出すなど、あっていいはずがない。
マイケルは現実を否認して再び攻撃を再開しようとするが、それよりも早くリチャードのパンチが顎に着弾。ぐるりと白目を剥き、盛大に血を吐いてダウンした。
リチャードは葉巻を拾い、再び口に咥えると少々の苛立ちを覚えた顔でリングを後にした。
勝者 リチャード=フィルス
敗者 アイアン=マイケル
- Re: 第3回最大トーナメント! ( No.28 )
- 日時: 2021/06/15 10:15
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
津島善子の顔は沈んでいた。
自分は昔から生まれついての超不幸体質だとは思っていた。
くじ運も無いということは分かっていた。けれど何もこの大会で発揮されなくてもいいじゃない。不運な自分に苛立ちを覚えて額を指で軽く叩く。
今は試合に集中することが大事だ。
でも、よりによってなんで私の対戦相手が――
誰もが知っている入場曲と共にファンの前ならいつでも全盛期の男がやって来た。長い顎に鍛え上げられた肉体、そして赤いタオルが特徴の大レスラー、アントニオ猪狩だ。
プロレスというリングの形式上、圧倒的に相手が有利である。
だが、考えてみれば萌える闘魂の伝説のレスラーを相手にできるのは非常に幸運なことかもしれない。彼を相手に自分がどれほどの実力があるのか確かめる。
これ以上ないほどの絶好の機会だ。どのような結果になるにせよ、全力を尽くす。
善子は考えを改め、対戦相手に不敵な笑みを見せた。
「余裕じゃねぇか、お嬢ちゃんよぉ」
「フッ、人間風情が堕天使ヨハネと戦える幸運を味わいなさい」
「堕天使キャラとは、プロレスラーに向いてそうだ」
「地獄の炎で焼き尽くしてあげましょう」
「生憎俺は熱いのは大好きでね。お前の炎で俺が焼けるかな」
双方の口撃と睨み合いは試合前から早くもヒートアップ。
年齢も体格も親子ほどの違いがあるが、戦いは公平だ。
鐘が鳴ると猪狩は赤いタオルを外し、気合を入れた。
「ウシャッ!」
世紀の一戦の幕が開くと、善子は猪狩の周りをぐるぐると回り出す。
相手の隙を伺っているのだ。すると、猪狩が姿勢を屈め指でクイクイとこちらへ来るように指図した。明らかに罠の匂いがするが、遠距離では倒すことは難しい。
渋々と言った体で彼の元へ向かうと、善子は無防備な彼の長い顎を掴んで固定し、大きく腕を引いてパンチ。猪狩の上体が反り返った。
「どうしたぁ。もっと打って来いよ、チビ」
「いくわよ、堕天使ヨハネパンチ!」
繰り出される拳を受け続け、猪狩の額が割れ顔面が赤く染まっていく。
掟破りの逆ナックルアローに会場が湧き始めた。
「ダッシャアッ!」
いきなり猪狩の反撃。強烈なビンタを頬に受け、善子の身体は錐揉み回転で吹き飛び、コーナーに背中を打ち付ける。単純な掌底だが凄まじい威力だ。
善子は頬を抑え涙目になりながらも立ち上がり。
「い、痛いわけないじゃない。この身体は単なる器なのですから」
「もう一丁!」
「へぶっ!?」
二発目の掌底を受け、善子の両頬はリスの頬袋のように腫れ上がり真っ赤になっている。しかし、勝負は捨てない。突進して猪狩の背後に回りこむと素早く手足を掴んで己の最高技に仕留めた。
「堕天流鳳凰縛!」
「出たぁ~!」
善子の得意技に観客が拍手をした。猪狩に対してコブラツイストをかける。並の対戦相手にこれほどの勇気が出せるだろうか。否、善子だからこそできる芸当なのだ。
「クククッ、やるじゃねぇかお嬢ちゃん」
「私はお嬢ちゃんじゃなくて善子! じゃなくてヨハネ!」
「まあ、善子ちゃんでもヨハネちゃんでもどっちでもいいや。
俺にこの技をかけるとどういう結末になるか、君は知っているかね」
「百も承知よ。でもだからこそ、一気に絞る!」
善子は額に大粒の汗を浮かべながら渾身の力で絞る。
補正の力も働いていることも手伝い、確かに善子のコブラツイストは効いていた。関節が軋み悲鳴を上げる乾いた音が猪狩の身体から聞こえるではないか。
だが猪狩は善子の後頭部に手を回すと、腰投げで彼女を投げ捨てた。強かに腰を打ち、善子は尻をさする。
目前には大きな手を広げ仁王立ちする猪狩の姿が。
「ま、負けないわよ!」
放たれた猪狩の拳を回避し、彼が躱された勢いで後方を向いた時に跳躍しての延髄斬りを見舞った。自身の技を使われた猪狩はその威力に片膝をつく。
形成は逆転した。善子は猪狩の腰を捉えて止めのジャーマンの体勢に入るが、どれだけ力を込めても猪狩の身体は持ち上がらない。唇を噛みしめ顔を真っ赤にするが、反り返るのは自分の身体のみ。反り返った拍子に善子の制服が捲れ、素肌と共に縦長のへそが現れるというまさかのサービスに狂喜するものもあった。
疲労困憊の善子にローリングソパットで反撃の狼煙を上げた猪狩は、先ほどの仕返しとばかりに善子の華奢な身体にコブラツイストを仕掛けた。
本家の技だけあってその威力は絶対的で善子は口から血泡を吐き出しながら、ゆっくりと気を失っていった。最後のあがきとして唇を動かし、言葉を紡ぐ。
「善子じゃなくて、ヨハネぇ・・・・・・」
勝者 アントニオ猪狩
敗者 津島善子
- Re: 第3回最大トーナメント! ( No.29 )
- 日時: 2021/06/15 10:37
- 名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ショートヘアに眼鏡をかけた少女を前に、モンブラン博士の手は震えていた。
小柄で華奢なおよそ格闘技とは無縁と思える少女、水野亜美。
だが彼女はモンブラン博士にとっては恐怖の対象そのものであった。
「お互い、健闘を尽くしましょう」
笑顔で差し出された手を握り返し、どうにか握手をしたものの、少女を見る顔に覇気は感じられなかった。
黒い燕尾服にシルクハットの紳士は、自軍コーナーで思案する。
何故、彼女がこの大会に参加したのかその真意を確かめたかったのだ。
開始ゴングが鳴っても彼女は仕掛ける気配を見せず、泰然と手を後ろに組んでいる。よほどの勝算があるのだろう。そうでなければ棄権するはずだ。
「モンブラン君、どうぞ」
澄んだ声で告げると、水野亜美はいきなり自らの制服を捲り上げ、腹とへそを露わにした。縦長の窪みを見せて接近する彼女に博士は後退していく。
だが、やがて背はロープに衝突し、追い詰められた格好となってしまった。
「他人におへそを見られるなんてあまりないから、恥ずかしいのよ」
顔を赤らめつつ語る亜美。普段から露出が低い服装を好む彼女にとって、このような破廉恥な行動をすること自体が非常に稀なのだ。だが、モンブラン博士にとっては効果は抜群だった。普段、隠れていればいるほど、見えなければ見えないほどにへそ出しの効果というのは上昇していくのだ。普段からへそ出しをしている相手だと慣れが生じ、効果はやがて半分以下になるのがオチだろう。
儚げな文学少女が恥じらいを見せるからこそ圧倒的な破壊力を生むのだ。
モンブラン博士は鼻から血を噴き出し、両膝をついた。息は荒い。
ここで亜美は服を元に戻すといつもの調子に戻り、掌を差し出した。
その手の上に乗っていたのは巨大なカタツムリ、アフリカマイマイの殻だ。
先ほどまでの興奮が一変し顔面蒼白となる博士に容赦なく手を差し出す亜美。
「やめろ、やめてくれ!」
手を振って拒絶するが亜美は歩みを止めなかった。
目に涙を浮かべ小鹿のように震える博士を前に亜美は毅然と言い放つ。
「耐えるのよ。ここで恐怖を克服しないと、いつ恐怖に打ち勝つというの?」
「ダメだ。君は何もわかっていない。カタツムリがどれほど恐ろしい存在かを」
「小さいものならともかく世界最大級のマイマイを見たら、誰だって恐ろしいと思うわよ。私だってそうよ。でもこれを乗り越えない限り、あなたは前に進めないの」
「その凍り付きそうな声で説教はやめてくれ。だから私は君が大嫌いなんだ」
「でしょうね。でも私も私にしかできないと思ったからこそここに参加したの。
荒療治かもしれないけれど、トラウマを乗り越えるのよ」
「断る! 帰れ!」
「えいっ」
亜美は殻を投げつける。モンブラン博士の絶叫が木霊する。
恐怖に思考が支配されそうになりながらも、どうにか跳躍して距離を置く。
心臓の鼓動は早くなり、流れ出る汗は冷たくなっている。
幸いにしてマイマイは殻だけで本体は収納されていないらしかった。
どうにか息を整え、彼は思案した。
これまで亜美はへそ、マイマイと私の弱点を完璧についてきた。
流石は頭脳明晰だけはある。そうなると残るひとつの弱点も突くはずだ。
彼の予想通り、亜美はタックルを慣行し横転させると、博士に覆いかぶさってきた。
「う、動けん」
「頑張って。これを克服してこそあなたは勝機を見いだせる」
「・・・・・・なるほど、君の目的がわかったよ」
「嬉しいわ」
「君に対する義理は無いが、ここまで言うのであれば仕方あるまい。
私なりにやってみるとしよう」
肩を極める亜美に空いている右の拳を顔面に見舞って肩固めから逃れると、再び立ちの状態となった。
咆哮を上げ、亜美の顔面に再度拳を当てる。
眼鏡が割れ、赤い血が噴き出すが亜美は笑っていた。
非力な少女は両肩の力を抜き、ノーガードとなった。
彼女は受けるつもりなのだ。モンブラン博士の攻撃を。
博士の口角が上がり、悪魔の如き形相へと変貌した。
怒涛の乱撃と膝蹴りを食らい、満身創痍の亜美はゆっくりと倒れながら、小さな声を発した。
「これで・・・・・・私のトラウマ克服講座は終わりよ・・・・・・」
地に伏し、ピクリとも動かなくなった亜美を一瞥し、博士は言葉をかけた。
「これが私の言う、最初で最後の礼となるだろう。ありがとう。
おかげ様で本来の標的と戦えそうだ」
彼の語る本来の標的とは誰か。
この大会の参加者なのか、それとも別人か。
答えが明らかになるのはまだまだ先だ。
勝者 モンブラン博士
敗者 水野亜美