二次創作小説(新・総合)
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- 灰色の騎士は美少女になる【完結!】
- 日時: 2021/07/09 20:14
- 名前: モンブラン博士 (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
あの渋く、狡猾で冷酷なスター流の忠臣、灰色の騎士 ジャドウ=グレイが目が覚めたら美少女になっていたというお話です!
古風な口調でとっつきにくいイメージがあるかもですが、内容は完全にコメディ路線となっています!普段では絶対に観ることのできない彼の姿に抱腹絶倒してほしいなと思っています!
もちろんラブライブ!のキャラも登場しますのでご安心を!
- Re: 灰色の騎士は美少女になる ( No.2 )
- 日時: 2021/07/09 11:15
- 名前: モンブラン博士 (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「認めぬ! 認めぬ!」
吾輩は鏡の現実を否認し、拳を振るった。
しかし、鏡には亀裂が入ったものの、自分の拳も傷を負い、赤い血が雫となって滴り落ちる。あまりにも脆過ぎる身体だ。これは本当に吾輩なのか。
「吾輩は灰色の騎士、ジャドウ=グレイ! 悪を以て人を救いに導く、忠臣である!」
名乗りを口にして、喉を押さえた。
なんだ、この声は。
吾輩のバリトンの声はどこへ消えてしまったというのだ。
川にでも流れていってしまったのか。
あまりの変貌ぶりに眩暈が起き、吾輩はベッドに倒れ込んでしまった。
これまで受けたいかなる攻撃よりも強大かつ悪辣極まりない。
このような行いをした仕打ちは、たとえ誰であろうとも思いつく限りの拷問で肉体はおろか精神さえもズタズタに引き裂き、破壊して差し上げよう。
これから訪れるであろう、復讐に心を躍らせていると、扉の叩く音が耳に入る。
「クレイちゃん、いるー?」
女の声だ。
少なくとも吾輩の知らぬ者なのは間違いない。
自らの変貌に気を取られ気づかなかったが、よく見ると、ここは吾輩の部屋ではなくなっている。第一、愛用のサーベルも軍服も全て消失しているではないか。
「クレイちゃん、開けるねー?」
甲高い反吐の出そうな声と共に扉が開かれ、眼鏡をかけた小娘が姿を見せた。
短い髪に赤い縁の眼鏡をかけた物静かな印象の小娘だ。
だが、そんなことはどうでも良い。
「貴様、吾輩の前に下らぬ顔を見せるな。失せよ」
「酷いなあ。今日のクレイちゃん、なんだか変だよ?」
「知った風な口を利くが、貴様は吾輩のことを何も知らぬ。吾輩は――」
「あなたは影山クレイちゃん。流星学院の二年生で、ロシア人と日本人のハーフ。
私の隣の寮に住んでいるんだよ」
「何だと・・・・・・」
吾輩は目を細め、可能な限りの低音で訊ねた。
「それは真か」
「うん」
長い沈黙。
そして吾輩は喉から声を振り絞り叫んだ。
「スター様! どうか、吾輩をお助けください!!」
- Re: 灰色の騎士は美少女になる ( No.3 )
- 日時: 2021/07/09 15:47
- 名前: モンブラン博士 (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「もー、クレイちゃん。こんなことしてないで早く朝ごはん食べに行くよー」
「放せ、小娘風情が吾輩に触れるな!」
吾輩は今、屈辱的な仕打ちを受けている。
服の後ろ襟を掴まれ、ズルズルと引きずられているではないか。
西部開拓時代には罪人を馬で引きずる拷問が流行り、吾輩も喜々として参加したが、まさか自らが似たような目に遭うとは。
どれほど暴れても決して振りほどけぬ、謎の女の強力に吾輩は戦慄を抱いた。
何故、女子の分際でこれほどまでの怪力を有している?
どうやらこれは情報を集めた方が得策かもしれぬな。
「時に小娘よ。名は何と言う?」
「忘れるなんて酷いよぉ。私は森山くるみだよ」
「くるみとやら、いつか焼き菓子の具に入れ食してやるからありがたく思え」
「怖いよぉ」
「吾輩にはお前の怪力の方がよほど恐ろしく思えるが。そして、いい加減に離せ」
「だーめ。放したらクレイちゃん、また逃げそうだもん」
どうやらこの女は侮れぬ。
ここは大人しくして弱点を探る方に専念するに限るか。
多少の信頼を経て後で容赦なく裏切れば、こやつの絶望感も増すであろうからな。
「くるみよ。吾輩にこれを食せと本気で言っているのか」
「朝ごはん食べないと元気でないよ」
「断る」
「食べて。お願い!」
くるみは両手を合わせ、瞳に水滴を浮かべながら懇願してくる。
このような祈りが何の意味を持つというのか。実に下らぬ。
祈った程度で願いが叶うのならばこの世は平穏に満ちているではないか。
どうやらこの小娘はそれすれも知らぬ実に愚かな下等生物なのだろう。
だが、心とは裏腹に体に力が入らぬのも事実であった。
腹の音が鳴り、体力を消耗していく。
これが人間の弱さというのか。
目の前にはカレーライスなる洋食が置かれている。
確か第二次世界大戦の時にこのような食い物を見た記憶があるが、どうも食す気にはなれぬ。そもそも吾輩は食べ物を摂らずとも酒さえ飲めれば生存できる。だが、問題はこの食堂には一瓶たりとも酒瓶が存在しない事実だ。
右を見ても左を見ても、小娘、小娘、小娘。
おお、なんと恐ろしき光景か。吾輩はどうやら地獄の一丁目に足を踏み入れたらしい。冥府ならば庭も同然のために容易く攻略できるが、地獄に縁はない。
「ほら、あーん」
気味の悪い笑顔でくるみは銀色の匙に米とルウを掬い、吾輩に差し出してくる。
「食えと言うのか」
「あーん」
「・・・・・・」
「あーん」
どれほど顔を背けても、匙は吾輩の顔に回り込み、決して逃げられぬ。
回避がままならぬならば、ここは受けに徹するべし。
とはいえ、実に不本意ではあるが多少の信頼を得るためにも芝居は仕方あるまい。
「はむっ」
「偉い! 食べられたね」
白米とルウが吾輩の胃の中で暴れまわり、全力で拒否反応を示す。
食べるなと体が拒絶する最中、くるみはまたしても匙を突き出す。
「はい、あーん」
こやつはどうやら吾輩を亡き者にしたいらしい。
- Re: 灰色の騎士は美少女になる ( No.4 )
- 日時: 2021/07/09 16:13
- 名前: モンブラン博士 (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
数億年ぶりの食べ物の摂取が終わり、ようやく吾輩は解放された。
一口ずつ口に運ばれるという赤子にも等しい行為を女子にされるなど、これ以上の屈辱が他にあるであろうか。否、存在しない。
食事が終わり、くるみ曰く1時間目の授業が開始するとのことで、指示された教科書を取りに寮に戻る。
鍵を開け、中に入るがそこには吾輩の部屋だった面影は微塵も無い。
やはり、ここはスター流ではなくなっている。
いつの間に移動させられ、女子の身体になるに至ったか。
この謎が解けぬ限り、おそらく吾輩が元の姿に戻ることはなかろう。
スカートとかいう薄布は風通しが良い半面、頻繁にめくれ、太腿などが露わになってしまう欠点がある。細い四肢を誰かに凝視されたらたまったものではない。
言われた通りに教科書を手に取り、教室まで急ぐ。
中では大勢の小娘共がまるでアリの大群であるかのように群れをなしていた。
止むことの無い喋りに辟易しつつも、顔見知りのくるみの隣に腰かける。
授業は広大な部屋で行われ、席は大学の講義の如く自由に選択できるとのことらしい。吾輩は視力が良いので最後列でも黒板は見ることができる。
「シャー! くるみと仲良くしているなんて生意気ですわ!」
突如、どこからともなく現れた小娘が爪と牙を剥き出しにしてきた。
吊り上がった目に猫耳の如き髪型、訳が分からぬ肉球の手甲を纏っている。
「貴様は何者だ」
「わたくしを知らないなんて失礼ですわね。早乙女あこですわ」
「貴様の中ではその下らぬ肉球を装着するのが流行なのか。時代の最先端を走るとは大した奴だ」
「馬鹿にしていますわね!」
「当たり前だろうが。貴様のような馬の骨、否、どこの猫の骨ともわからぬ奴に敬意を払うわけがなかろう」
「言いましたわね!」
「気に要らぬのなら拳で示すが良い。いつでも相手になって差し上げよう」
「望むところですわよ」
空中に飛び散る両眼から放出される火花がはっきりと見てとれる。
どうやら吾輩の戦闘意欲だけは衰えていないらしい。
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて」
くるみが愛想笑いで制止したので、その場は双方共に矛を収める。
「くるみに感謝するんですわね」
「誰がこやつなどに礼を言うか」
「クレイちゃん。この子は早乙女あこちゃんって言ってアイドルをしているんだよ」
「偶像をしているとは妄言も甚だしい」
「嘘じゃないもん」
頬を膨らませるくるみには構わず、早乙女あこを凝視する。
どうもこやつはどこかで見た覚えがある。
膨大な記憶の引き出しから奴に関するであろう記憶を出してみる。
思い出した。こやつが何者であるかを。
「早乙女あこ。四ツ星学園は鳥の劇組所属の一年だな」
「どうしてわかりましたの!?」
「古い記憶に貴様の情報が残っていたのでな。時に何故、この流星学園とやらに在籍している。貴様の居場所はここではなかろう。猫は猫らしくコタツで丸くなっていれば良いものを」
「あなたの耳障りな言葉はともかくとして、わたくしも知りませんわよ。
気づいたらここの寮にいましたわ」
「体の変化は無かったか?」
「別に変わったところはありませんわよ。そろそろ講義がはじまりますので、失礼致しますわ」
あこは棘のある態度でその場を離れる。
吾輩はぐるりと教室内にいる小娘を一瞥し、察知した。
どうやら何名かは吾輩が面識のある者がいるようだ。
ということは、何者かの仕業により世界の壁を越えて一同に集められた可能性が高いということか。
そうなれば、ますます情報が必要になってくるであろうな。
そのようなことを思案していると教室の扉が開き、教師が入ってきた。
「今日の授業をはじめマース! シャイニー♪」
数字の「6」に似た癖のある金髪。間違いあるまい。
あの教師は小原鞠莉だ。
- Re: 灰色の騎士は美少女になる ( No.5 )
- 日時: 2021/07/09 19:58
- 名前: モンブラン博士 (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
小原鞠莉。浦の星女学院の理事長を務めた小娘だったはずだ。イタリアと日本の混血で、妙な口調で喋る特徴がある。だが英語教師が奴とは。
単なる高校生の分際で教壇に立つなど少々思い上がりが過ぎるのではなかろうか。授業内容を聞いて思ったが、奴の指導力はせいぜい中の下といったところであろう。あのような者でも授業ができるのだから、この学園はよほど人材が不足しているらしい。
だが、そんなことよりも気になる点がある。
この学園に在籍している小娘共は皆、年齢がバラバラなのだ。
小学生から高校生までが同じ教室で学んでいるのである。
吾輩の目から見ても風変わりな授業風景に思える。
この謎もいずれは解ける日が訪れるのであろうが、今は授業になれることが最優先だ。
「家庭科の先生はね、とっても可愛くて優しいんだよー」
「やはり女子か」
「そうだよー。どんな先生かは授業が始まってからのお楽しみ、かな」
「吾輩をはぐらかすとは貴様も少しは知恵が出てきたようだな」
「えへへ。クレイちゃんに褒められるなんて嬉しいなあ。滅多に褒めないから」
「当たり前だ。スター様を除く他者など褒める価値などあるはずがなかろう」
「スター様って誰?」
「貴様は知らぬだろうが、吾輩にとってこの世で最も大切なお方だ」
「彼氏ってこと?」
この女は何を言い出すのか。吾輩とスター様が恋愛関係にあるなどと勝手な憶測をするとは。無知蒙昧極まれりとはまさにこのこと。
「スター様と吾輩は主従の関係であり、それ以外の関係など存在せぬ」
「あっ、調理実習室についたよー」
こやつ、吾輩の話を無視するとは中々に肝の据わった奴だ。
この借りは後で数倍にして返して差し上げよう。
「今日はチーズケーキを作るよ~」
馬鹿な。吾輩は教師の姿を見て絶句した。
教師の頭頂部のとさかとベージュ色の髪色が全てを物語っていた。
「南ことり!?」
- Re: 灰色の騎士は美少女になる ( No.6 )
- 日時: 2021/07/09 20:14
- 名前: モンブラン博士 (ID: pRqGJiiJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
人間は高く幼稚な声を聴くと甘いと認識すると聞いたことがあるが、南ことりの声はその中でも群を抜いて甘い声に聞こえるのだろう。その色香と声で人を惑わし堕落の道へと落とすとは大した小娘だ。
多くの親衛隊なる者共が結成されるのも頷ける。
吾輩に言わせれば砂糖に群がるアリのような連中でしかないのだが。
髪を纏め、意味のわからん多数の装飾を施したエプロンを着て料理に取り掛かろうとする奴の姿に、吾輩は対抗意識が芽生えた。このような輩から指導されるなど、冗談にもほどがある。吾輩は断じて認めぬ。
挙手をして、吾輩は口を開いた。
「教官殿、大変失礼なのは存じておりますが、吾輩から見て貴殿は指導する立場として相応しき実力があるようにはとても思いませぬ」
「そうかなあ。ことり、これでもお菓子作りには自信があるんだよ?」
「貴殿の実力など所詮は井の中の蛙でありましょう」
「クレイちゃんは、ことりのおやつにしちゃうぞ(・8・)」
「ほほう。遂に獰猛な捕食者としての本性を見せたようで。その天使の如き可憐な外見の下に隠れた恐るべき腹黒さ、吾輩も見習いたいものですな。
しかし、吾輩を菓子にすると? 失礼ながら教官殿、吾輩の料理の腕が凡庸とでもお思いですかな?」
怒りに身を任せ、冷静さを失うが良い、南ことりよ。
そして料理勝負で吾輩に挑み、大衆の前で惨めな醜態をさらすが良い。
このジャドウ=グレイ、たとえ女子の身になろうとも策略だけは変わらぬ。
全てはスター様の為に。スター流は格闘以上に料理に重きを置く。
戦闘よりも料理こそ本領を発揮する場なのだ。
吾輩の腕に完敗をして、惨めに涙を流すが良い。
だが、吾輩の未来予想図は一瞬にして崩れ去る。
ことりが奴に相応しくない毒々しい紫色のケーキを出してきたのだ。
「これは優木せつ菜ちゃんが作ったケーキなんだけど、舌に自信がありそうだから、真っ先にクレイちゃんに味見をさせてあげるね♪」
「おい、待て。それはどう見ても普通のケーキとは思えぬ」
「あーん」
「これは食べ物ではない。兵器だ。吾輩を消滅させる気か」
「あーん」
「先ほどの非礼は詫びる。貴殿を愚弄した過ちは受ける。だが、その焼き菓子だけは食させないでくれまいか。後生だ」
「味見も料理には欠かせない仕事だよ。ちゅんちゅん(・8・)」
「スター様、お助けを! 吾輩はまだ終わらぬ! ここで終わっては・・・・・・」
口に放り込まれた紫色の塊を食した吾輩の視界は暗くなった。
おわり。
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