二次創作小説(新・総合)

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【呪術廻戦二次】ツイステ微クロス有 パッと思い付いた設定2つ
日時: 2022/02/14 19:09
名前: ゆずれもん (ID: 08bdl7kq)

【】状況 <>説明 ○五条 ●創作主

※夢要素を多分に含んでおります。閲覧する際は充分に注意してスクロールして下さい。
※文章がありますが、あくまで脳内の情景や私が考えているキャラの思考回路を少し具体的にメモったに過ぎません。雑です。つまり小説ではないのでご留意下さい。
※返信欄にR-14くらいの続きがあります。頑張りました。



【降雨】

[五条&創作主 -女-]
○五条・自覚無し。野暮ったくて鈍くさい奴だと思ってる。
●創作主・センシティブな漫画に出てくる性質。オタク(であればいいと思ってるけど多分違う)。
五条に対しては軽い恐怖心があるけどちゃんと大切な友人として見てる。

(人っ子一人居ない地方の遠征任務。
 数時間に一度の頻度で来るバス停までやっと辿り着いた二人、撥水加工が施してあるとは言え、濡鼠のようにびしょ濡れの状態。だぼついた服でボディラインがくっきり見える)


<バス待ち場にて、申し訳程度の屋根の下ぽつんと置かれたオープンのベンチ。誰が使うのか疑問に思いながらも着席(●)、雨音の中二人きり。>

「うえぇぇ靴ん中がプールだよプール!」

●靴と靴下を脱ぎ、立ち上がってスカートをたくし上げて雑巾のように絞る。ビシャビシャと水が地面に叩き付けられ、思わず謎の歓声を上げてしまった。

「うわ見て見てコレ、やばぁ……。道理で重い訳だ」

○男とも女とも取れない、どちらかと言えば高い声が、雨の音で掻き消されていく。眉間に皺を寄せ目を凝らしても、灰色の何かが見えるのみで文字らしい物は見えない。

「絶っっ対バスとか来ないよ。確定演出入ってんもんコレ」
「朗報~、確信に変わった。あのバス停信じらんねぇ」

<服を絞りながら身を屈め屋根下へ入ってくる五条、察した主。>

「ずいぶん年季が入って趣のあるバス停だったわ、文字掠れてて殆ど何も見えねーし」

<ぶつくさと文句を言いながらも、頭の中ではどうしようか思考が巡っている二人。五条、ベンチに着席。>

「迎え来て貰うとか」
「バカ言え、何時間かかると思ってる」

○適当な相槌を打ちながら横を見遣ってみれば、いつも体の線がハッキリしない服が雨によって体に張り付いており、どうにも妙な気分になる。自らも服を絞り、ベンチに座ってぼーっと曇り空を見つめた。

「デスヨネー。大前提として此処なぁんにも繋がってないですもんネ」

<圏外だわ、と短い言葉を点々と紡ぎながら、ただ時が過ぎるのを待つだけ。余りの寒さに身震いが走るが、まだ歯は鳴っていない。>

●OKOK何も問題は無いモーマンタイ……。心中で呟きながらそっと五条の方を盗み見る。
 白銀に煌めく髪は雫が滴り二度見する程のハイライト、サングラスが取っ払われた碧眼はぶすーっと虚空を睨む。長い足を大きく広げチマチマ手遊びをしている五条は、いつもの癪に障る感覚が少ない。いつもであれば退屈だなんだと文句を垂れる筈なのに。

○静かな静寂の中で、あいつと二人きり。この状況が何故だが無性に嫌で堪らなくて、だが面倒だからとか生理的に無理とか、そういう理由も無いのに、変に嫌なのだ。何かが嫌で仕方が無い。あといつまでこうしていればいい。バスの望みは薄い、ならば徒歩か……。時刻は夕方過ぎ、急げば駅に間に合うなんて筈も無く。

「……待って? 暇過ぎん??」
「今か」
「いやする事無さ過ぎて最早ハゲる。…てかどした? 何か怒ってる?」
「…何で」
「極端に口数少ないやん無言やん、マジで怖ぇよ自称最強が無言だよ怖ぇよ……」
「“二人で”な」

○ハァー…と大きな溜息を吐きながら後頭部をガシガシと掻き、首ごとあいつの方を向く。じとっと睨みつけてみても、怯えるでも困惑するでもなく、「はァ?」みたいなふざけた顔しかしない。

●急募・ムカつく顔面国宝が急に無言になってクソでか溜息を吐いたと思えばめちゃくちゃ睨まれた時の対処法
 そう脳裏にタイピングして送信ボタン(概念)をクリックするまでがハッピーセット。とりま目ぇ逸らしとこ……。

「は?」
「エ怖ッッ、急に良い声でド低音出さんといてくれる??」

○何か、何かが変だ。気に喰わない、何かが。
 何気なく視線を下にズラすと、あいつの体の線が目に映る。狭い肩幅と震える白腕。段々下へ視線は向かう。薄い胸板に膨らみと、細いくびれ。柔い太腿、未だ雨の滴る生足……。

「……おい」
「な、何。サンドバッグにはならんよ?」
「………」
「え、え、何? 無言? 嘘だろコイツ」
「……お前良いのか そんなんで」
「んぇ急に哲学的な話出てきた今? どゆ意味??」

●ちょっとキャパオーバー、タイム! 頭の中でそう腕をTの字にしてみるが効果は無い。さっきから五条の視線が変だ。何かかにかに絡み付くような視線が……怖。
 と、急にガッと手首を掴まれる。「だから、」と吐き捨てるように五条が叫んだ。




力尽きた^^
(P.S.返信の所にR-13くらいの続き書きました。付き合ってたら問答無用で襲ってたんちゃうかなと思って書いたので五条さんが大分ガンガンいきます。でもピュアピュアです。
キャラでえrを書いたのは始めてだったので新感覚でした。でも私には向いてないかな……)

私ね、元々主人公が女なの嫌なんですよ(作品の話じゃなくて書く方の話)。…いや、語弊がありますね。自分が女だから口調が寄っちゃうのが悩みなのは確かなんですけど、こう、何か、ね?
自分でも自分がそう思ってるのか分からないんだけど、「チッここでも夢主かよ」みたいなこと思われそうで(圧倒的被害妄想)なんかね……。
でも苦手克服のために書きました。ちなみにラブストーリー系は見るのも書くのも苦手なんだけど、寄せてみようと思って。続きません。②に続く!! (これには続かない)


“柔い太腿、未だ雨の滴る生足……。”
             ↑ここ“絶対領域”ってルビ振りたかったけど我慢した(偉い)。










※めっちゃ分かりにくい設定出てくる
※クロスオーバーちょぴっと入ってる(キャラは居ません)



名前:自称『廿楽つづら』。偶に関西弁が出るようだが都会暮らしの都会育ち。
「名前? あー……廿楽だよ。呪術師。忘れてくれて構わない」
―――偽名である。



術式:自称『魔法』。周囲からは「よく分かんねーけど何かやべーし何かすげー」。
簡単に言えば「想像の具現化」だが実際にはちょっと違う。対象が物理的に存在していない殆どの場合、使おうとする『魔法』を物理現象に持ってくる過程に呪力を使っているだけで『魔法』の行使自体には魔力or聖なる力が必要なので呪力は其処まで必要じゃない。
ちな魔力or聖なる力は必要なだけで使ってない。あくまで“必要である”という“印象”なので。心の底から思っている“印象”がそうなのであれば魔力も聖なる力も必要無い。
「呪力はねえ、まあ普通だよ普通。……多分」
―――呪術そのものをよく分かっていないので呪力感知に乏しい。残穢は見える。


その術式の正体は「印象の具現化」である。
例えば剣を使おうとすると、彼の中でその剣がどれ程強いのか、どのように使うかなどの深く根付く「印象」がその剣に適用される。どれ位の切れ味?振り上げる?突き刺す? のように。
これは対象が物理的に存在している時のみで、彼の言う『魔法』を使おうとするとその魔法がどれ程強いのか、言うなれば“信用”によって威力・効果は異なる。

更に『魔法』の正体とは、『現実世界から飛ばされてきた彼の魔法』である。何が言いたいかと言えば――それは例えば<フェアリーテイル>。例えば<まどか☆マギカ>。例えば<ドラゴンボール>、<ワンピース>、<僕のヒーローアカデミア>――。ゲームで言うならば<ゼルダの伝説>、<ツイステッドワンダーランド>、<東方project>など。他にも沢山あるが、彼らが使う様々な『魔法』、若しくは『聖なる力』、若しくは『能力』。その印象を使う。
(エルサの第六の精霊の力とか、ラプンツェルの治癒の力とかも使って欲しい)
「つまり、強くなるにはどれだけ常識の枠を超えた思考回路してるかって事さね」
―――皮肉なものだ。



戦闘方法:手数が何よりの武器。その手数故パワーバランスも良く、戦闘・潜入・援護など大体の状況に対応出来る。反転術式など全く以て出来る訳ないが治癒能力はある(ブレワイのミファ―とかラプンツェルとか)。
腰の背中側に【残心の小刀】を模した短刀を携えており、切れ味は呪具の中でも抜群。『魔法』を使いながら接近してきた敵を斬る、というのが板についている。偶に違う剣を携えている事や、何処からか槍や大振りな武器・日本刀・苦無や弓矢、銃などを持ち出したりもする。
【残心の小刀】の印象がリンクが使ってる所だから彼にもそれが反映されて、リンクと似たような事するし破茶滅茶に強い。
「なッ……強くない!! 俺は強くないよ!!? いや彼らはとっても強いのだけどね!!!」
―――(呪術の子達にとっては)意味不明な言動を口走る事が多い。


手の内は簡単には見せられないので命を賭けた戦闘でも先の事とか考えちゃって本気出せない事が多々あるし、どれだけ身近な人も数種類の『魔法』しか知らない。
よく自分に縛りを設ける。これめっちゃ便利とは彼の言葉。「○○のこんな能力のみしか使わない代わりに能力の底上げと呪力消費を抑える」という縛りをめちゃくちゃ使う。手数が凄いからこそ効果も凄い。○○に似合った紋章・マーク・光などが身体の何処かに浮かび上がる。印象が強かったら口癖とかも偶に移る。

(ここが一番初めに思い付いた設定。呪術廻戦の世界でツイステのユニーク魔法使わせるにはどうしたらいいか考えてる時に、例えばオフウィズryってる時、頬とか手の甲とかに薔薇の色付の刺青みたいなんが体に浮かんだら面白くない? と思って。
縛りを使ってる時は寮章が浮かべばいいなー。あとハーツラビュルで縛ってる時は、「勝負の切り札はハートのエース…ってね」とか、何か教えてた時に「…お分かりだね?」とか言って変な目で見られてて欲しい。他寮でも同様)
「『魔法』が何なのかって? 面白い事を訊くね。魔法は魔法、それ以外の何物でもない」
―――中二病を拗らせている。



等級:二級行けそうな三級。本編開始の時は二。これ以上上がらないように頑張っている。準一飛ばして一級いけるが命が惜しいので評価されないよう気張っている。
「待っ、待っっ?? 御上から通達来たな思たら我二級??? は?????」
―――こうなるのは原作が始まる約二年前くらい(ちなみに「ふざっっっっけんなよ!!!!」と届いた紙を地面に投げつけ叫ぶのはお察し)。



容姿:特に整ってない一般的な二次元の顔面だけど三次元から見れば二次元のモブは美形。性別がハッキリしないので美女かイケメンか分からないがマジで一般的。目は特に特徴の無いアーモンドアイ、睫毛も普通で二重。髪はストレートで、結べそうだけど結べないなー位のショートボブ。偶に前下がりボブにしてる事もある。
元は黒髪黒目だけどちょくちょく目の色とか髪色とか縛りの影響でほんのり変わるかメッシュぽくなる。目は片目だけだったり瞳孔だけ・水晶体だけなどあるが結構がっちり変わる。

服は中性的。膝下まであるブラックのメンズスカートを履き、グレーのタイツを下に履いている。上は真希さんのトップスをだぼっとさせた感じの服を着て、下にブラックの長袖ハイネックを着ている。夏は冷気を纏わせ服も通気性を良くしているが見た目は同じ(暑苦しいと不評)。靴は機能性抜群のハイカットスニーカー、よく汚れるのでベージュとネイビーどっちも持ってる。両方とも靴紐は白。
色が暗く地味でボディラインがハッキリしない服が多く、また露出が少ない服を好む。休日などに外出する場合は、夏なら通気性の良いスカイブルーのシャツブラウスにダメージジーンズ、透明度が高く涼やかなクマツヅラのイヤリング(服は変わるがイヤリングはしょっちゅう付けている)。冬なら鍔の付いたブラックブラウンの帽子にホワイトベージュのオーバーコート、スタイリッシュなスリットニットパンツとヒール低めのキャメルブーツ。他に私服としてカシュクールブラウスやタイパンツなどを持っている為、矢張体付きがよく分からん服が多い。

右耳の近くに、縦型の全ての蕾が開花したクマツヅラの髪留めをしている。淡い桜色をしたクマツヅラの花が何列も連なっている髪留めは、黒髪に似合う彼のトレードマーク。状況によって前髪を留めている事もある。
「周りの顔面パンチ力が強過ぎてどっかのムスカ並に視力削られたんどうしてくれる??」
―――目がッ、目がァッ!!



口調:オタク語りは披露しないがオタクの口調ではある。一人称が定期的に変わる。都会育ちなのによく関西弁になっているが特に深い意味はない。立場が下・対等の場合どう思われるかは知ったこっちゃねぇと何も気にしないが、立場が上の場合は大分丁寧な言葉遣いにジョブチェンジ。クソ上層部も例外ではなく、しかし心の中では罵詈雑言が飛び交っている。
前世で二次元に触れ過ぎて口調がブレブレ。五条みたいに喋る時もあれば夏油みたいに話す時もある。それに加えて縛りによる口癖移りがある為、術師きっての変人という認識。
「更に中二病こじらせてるからさ、もー自分でも何が何だか☆」
―――自覚はある模様(故に自制は利く)。



境遇:転生者ではなく、転世者。作者わたしがいつ、彼が“転生した”と言っただろうか。彼は“飛ばされてきた”のだ。身一つで術師に昇り詰めるまでの時間を考えると、彼がどれ程の齢で飛ばされたのか見当も付かない。
「みたいにシリアスしてるけど言うて苦労してないで」
―――推しの部屋の壁or床希望だった彼は、このようにシリアスをぶち壊す事は少ない。



所属:ほぼフリーランスのような生活しているが一応高専所属。任務も他方から受ける。
「私、高専に通ってた頃もほぼ登校出来なかったじゃん? 適当に流されてるのが楽だよ」
―――嘘である。



その他:推し活以外だと乗馬と読書と料理が好き。好きな食べ物はモンブランと南瓜たっぷりのほうとう、嫌いな食べ物は蒟蒻。夢・腐・姫・二次全てに精通し、ピュアっピュアの王道からグッッロい悲劇、Rが付くゑちな物まで何でも見る。漫画・アニメ・小説・ゲームなど方法を選ばず、SF・恋愛・ファンタジー&ダークファンタジーその他諸々全てを受け付ける地雷が無いオタク。ただ自己投影はしないタイプ。全部ひっくるめるなら“二次元オタク”と言え、他に声優オタクでもある。
オタクと言えども術師やってる位にはイカれてるし忍耐力もある。基盤はまともで真面目、正義感のある術師だが色々と狂っている。基本自分本位だが推しの優先度は大分高い。見た事のある作品の殆どを箱推ししており、今回飛んだ次元も例外ではない。
「この世界直ぐ人死にそうだし…推しに悲しい思いも痛くて辛い思いも、IFを除いてして欲しくないから」
―――良い事言ってる風だがIFでは良いのか、IFでは。



裏設定:クマツヅラという花から着想を得たキャラクター。最初に思い付いたのは「クマツヅラの廿楽さん」という語感の良い詩で、そこから性癖を含めながら妄想を広げて行ったらこうなった。何でや。クマツヅラは10月26日の誕生花で彼の誕生日。趣味の乗馬は“馬鞭草”という別名から。
古代ローマでは“聖なる花”とされ、止血・消炎作用及び通経・黄疸・下痢に効果があるとされた。ヨーロッパでは解毒・婦人病・皮膚病に効く薬草とされ、キリスト教のキリストの出血を止めた草。潜伏任務の場合は姿を変え“バーベナ”と名乗る。これはクマツヅラの英名である。

元々ああいう術式使う子書きたいなーと思ってて、そのイメージが魔法だったから「魔法」の花言葉を持つ花を調べていたら出会った花。他に“魔法の力”“魔力”“魅惑”“心を奪われる”の花言葉を持つ。これから呪術廻戦の子達が魅了されて心を奪われるかは知らん。
「一般的に“雑草”とされてるみたいだけどね、クマツヅラ……」
―――そうそう。あの髪留め、クマツヅラを模しているだけあって“何か”があるみたい。




6000文字超えだってよ。
結構時間かけて練ったんだけどここまで文字数少なくなるとは思わんかったわ。

ここまでの長いお付き合い、誠にありがとうございました。



ばいちゃ☆

Re: 【呪術廻戦二次】ツイステ微クロス有 パッと思い付いた設定2つ ( No.3 )
日時: 2022/02/20 15:21
名前: ゆずれもん (ID: 08bdl7kq)

●ちょっと細かく
ユニ魔とラプンツェルやりました。気が向けば続く。



・ユニ魔(詠唱、縛り含む)

縛り ― どこか寮のユニ魔しか使えない代わりに呪力消費を抑え威力が向上する。
    寮章が体の何処かに浮かび上がり、寮やキャラによって目・髪色や口癖が反映。
    寮章や目・髪色の異変が常時起こる訳ではなく、状況による。私の匙加減。

↳ ハーツラビュル→左目の近くの頬に、皆のフェイスペイントのように寮章が浮かぶ。
  発動→皆のマークが描かれたトランプを投げる。
  体→隣接した毛束にエデュの赤青のメッシュが入る。発動時以外、目は普通。

 サバナクロー→左腕上腕辺りに寮章が浮かぶ。おまけで聴覚・嗅覚もちょっと上がる。
  発動→背後に何れかの動物が出現し(透けてる)、対象に向かっていく。
  体→瞳がレさんの緑に、髪は一部ジャックのがインナーカラー入るけどほぼ見えない。

 オクタヴィネル→鎖骨の中心辺り。サバナもオクタも普段見えないけどシチュで誤魔化す
  発動→伸ばした手から何れかの魚達が出現し(透けてる)、対象に向かっていく。
  体→リーチ兄弟の髪色でメッシュ入る(フロと同じ位置)。発動時以外、目は普通。

 スカラビア→左側の首筋に浮かぶ。横に居ると蛇に睨みつけられるよ☆
  発動→カリの場合は清らかな魔力の渦が天に昇り雨が降る。
    ジャは赤くなった瞳に蛇のマークがぽっと浮かび、片方がジャミの目色になる。
  体→瞳がカリの真っ赤に、髪は殆ど変わらないけどよく見たらジャミの色になってる。

 ポムフィオーレ→右手の甲に浮かぶ。絶対しないけど近く行くと何かの香りがしそう。
  発動→浮かんだ寮章を対象に翳す。これは寮服に書いてあるマーク故手首までいってる
  体→ヴィみたいに下からグラデかかってる(色はエペの髪色)。瞳の色は特に変わらん。

 イグニハイド→ユニ魔不明なんで保留!
  発動→
  体→発動時のみ髪がシュラウド兄弟と同じく青に燃え上がる。

 ディアソムニア→上に同じく!
  発動→
  体→目がマレさんの色に、右側にセベのメッシュが入りちょっと八重歯に。常時眠い。




・怪我した誰かを治癒する所×初めてさしすに術式見せた時

 大人数で行った任務で大多数の負傷者が高専に担ぎ込まれる。運悪く前日、今日と負傷者が多く、呪力も気力も最悪のコンディション。救援を求められるが、まだ一年の家入には到底荷の重い任務。飄々とした態度が崩れ、汗を流し肩で息をする家入を見兼ねた五条と夏油がドクター()ストップするが、このままでは術者に命は無い。絶体絶命!(ここまであらすじ)

治癒ヒール

 突如として凛とした声が響き渡り、床に巨大な緑の魔法陣が展開された。声の主は分かり切っている。勢いよくそちらを振り返ると、そこにはベッドに寝かされた負傷者に向かって腕を伸ばしている廿楽の姿が。

「今…術師・廿楽つづらの名に置き、此処に縛りを設ける」

 そう静かに呟き、伸ばしていた腕を上に掲げる廿楽。その表情は何を映している訳でも無い無表情だ。言っている意味が理解出来ず、家入は眉を寄せる。自分の中での呪力の流れが途絶えている事に気付いて、慌てて反転術式を構築し直した。
 ――途端、背後でぶわあぁっと呪力が溢れるのを肌で感じる。再び呪力の流れが途絶え、無意識に体の動きが止まった。目が見開かれ、指先一つ動かない。コツ、コツと踵を鳴らしてこちらに近付いてくるのを理解した頃には、既に廿楽が家入の隣に立っていた。膝を折って体を屈め、座っていた家入の背を優しく撫でる。

「……もう無理しないで良いよ、家入」

 恐る恐る横を見遣ると、声も顔立ちも廿楽なのに、呪力量と艶やかな髪色が違う別人が、優し気な顔で微笑んでいた。耳の近くに付いている特徴的な髪留めと言いカスタマイズされた制服と言い、廿楽そのものなのに。家入は捉えどころのない違和感を感じていた。疲労で朦朧としている頭を叱咤してどうにか動いている状況下では、理解出来る物も出来ない。

「後は私が何とかするから。家入は休んでいて」

 言われた途端、途轍もない眠気が霧がかるように頭を支配し、家入は半ば気絶するように眠りについた。最後に目に映った輝かんばかりの美しい金の髪を記憶に残しながら、ガクンと倒れた体を誰かが支えるのを、家入は確かに感じていた。
 廿楽は家入を二人に任せると、先ずは此処からだと家入の残穢を感じる男に向き直る。深く息を吸って吐いて、そして再び吸うと、軽やかで伸びの良い歌声が部屋中に響き渡った。

―――Flower, gleam and glow Let your power shine

 そう歌い出し、廿楽の背後に居た五条と夏油の二人は大きく目を見開く。黒髪が突如として金髪に変わったのもそうだが、その金の髪が風も吹いていない室内で大きく靡き、淡く光を放ち始めた事に、これ以上に無い驚愕を感じていたのだ。

 ―――Make the clock reverse Bring back what once was mine

 髪はより光を増し、辺りを照らす。低く重厚になった声に共鳴するように呪力が周りに溢れ出し、伏せられた廿楽の瞳がゆっくり開かれる。

 ―――Heal what has been hurt Change the Fate's design

すっと嫋やかな手付きで腕を伸ばし、より背筋を逸らし胸を張り、廿楽は手に込める呪力を多くした。

 ―――Save what has been lost Bring back what once was mine

 伸ばされた手から、太陽を模った模様が浮かび上がる。七方に伸びた火のような物を中心に円が描かれたその模様は、負傷者の大きく抉れた横腹の上でゆっくりと回っている。

―――What once was mine

 半透明だったその模様は、廿楽が歌い終わった途端にカッと光を放ち、呼応して髪の発光が収まっていった。少しして模様が消え去ると、そこには切れた服から傷一つない脇腹が覗き、血色の悪かった青白い顔には幾分か血の気が戻っている。

「……は?」

 五条は呟き声を洩らした。今、目の前に居るこいつは何をした? 骨までは行っていなかったにしても、拳一つ分程も抉れていた脇腹に…呪術をかけ、治したとでも言うのか。ハッと隣を見遣ってみれば、夏油も同じく驚愕を隠していない。

 廿楽は何とでも無いという風に立ち上がり、淡々と部屋の中心に向かっていく。二人は廿楽に声を掛ける事も、これが何なのか問う事も出来ずその光景を眺めていた。

「驚かないで」

 感情一つ籠っていない声で廿楽が呟く。再び「は?」と零しそうになるのをぐっと抑えて、五条は事の成り行きを見守る。
中心に背を伸ばして立つ廿楽は、虚空を見つめた後に目を伏せて、胸上の辺りで祈るように指を絡めた。

「私の髪は魔法の髪、歌うと光る魔法の髪」

 地に向かっていた目線を上げ、廿楽は絡めていた指を解いてバッと腕ごと手を後ろにやる。後ろに伸ばした腕を追うように金の髪が靡いて伸びていく。伸び続ける髪をそのままに、廿楽は腕を左右に伸ばし気合を発した。

「ッ、」

 夏油が少し後ろにたじろぐ。それ程の呪力量なのだ。五条は顔を顰め、夏油を驚きに顔を染めその光景を見ていた。丁度先程の魔法陣と同じように、あの太陽の模様が部屋の壁、天井の三方に広がる。見慣れない三つの模様が部屋を囲んだ。その頃には、廿楽の髪は本人の背を抜かすまでに伸びていた。金の髪は後ろに靡き、再び淡い光を発し始めている。

「私は消えたプリンセス……」

 この距離の二人にも聞こえない程の小声で呟き、横たわっている多くの重傷者の上に太陽の模様を出現させた。そして廿楽は、最後の仕上げにふっと目を伏せ再び開く。
ぽつん。
 右頬を伝って零れた涙が、空気を揺らして床に落ちた。瞬間、その涙を中心に、床全体に太陽の模様が広がった。四方を金色に光る模様に囲まれながら、吐きそうな程の呪力に耐え、二人は何も言わず固唾を飲んでそれを見つめる。

―――花は煌めく 魔法の花
   時を戻せ 過去に戻せ
   傷を癒せ 運命の川
   遡れ 蘇らせろ 過去の夢―――

 そう歌い上げ、空気中の呪力濃度がより高まった時……ドサッと重い音を立て、廿楽が倒れた。ぐったりして動かない廿楽に、家入を支えていた夏油を制し五条が駆け寄った。依然として動かないが、息はしているし、この“目”で見てみても特別異常は見受けられない。シュウゥ…と音を立て元の髪色に戻っていく廿楽に奇妙さを感じながら体の下に腕を回して立ち上がろうとすると、重力に従ってガクンと体が落ちる。起きるつもりはないようだ。仕方無く担いで夏油と家入の所まで行くと、心配そうな気配を押し殺す夏油と目がかち合う。恐らく自分も似たような顔をしているのだろう。

「生きてはいる」
「…そうか」

ぶっきらぼうに放った言葉に、夏油がほっと安堵の息を洩らした。クラスメイトの半分―と言っても二人―が倒れた現状に思う所はありつつ、二人は今起こった現象について考え込む。

「縛りとか言ってたよな」
「ああ。多分……術式なんだろう」

 その二言を交わした後、夏油はふと他の重症者に目を向ける。思った通り、彼らの傷は既に塞がっていた。疑惑を感じる前に夏油が感じたのは、廿楽への明確な興味だった。
 これが、廿楽がクラスメイトに初めて術式の一端を開示した瞬間である。

―――お気づきだろうか? まださしすに見せてはいない。さ、すに見せたのだ……(絶望)。

Re: 【呪術廻戦二次】ツイステ微クロス有 パッと思い付いた設定2つ ( No.4 )
日時: 2022/03/03 18:00
名前: ゆずれもん (ID: 08bdl7kq)

○ワンクッション○
ツイステクロス有りとありますが、今回はゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルドのクロスオーバー及びネタバレを含みます。地雷の気配を察知した方は速やかにブラウザバックを推奨致します。



・怪我した誰かを治癒する所×初めて術式見せた時(灰七)×英傑達の加護(縛り含む)



~久し振りに書くギャグのあらすじ~ 廿楽が七海&灰原と任務に来たよ!


「にしてもこんなに早く後輩と任務に行ける日が来るなんてね」
「本当ですね~。僕、廿楽先輩の術式見た事ないので、凄く楽しみです」
「ハハ、過度な期待は止してくれよ? 主役は君達なんだから」

 ケラケラと笑う廿楽にふんすふんすと意気込む灰原、その隣で半歩後ろを付いてくる七海。場所は山奥、二級呪霊討伐任務。入学して間も無い二人に、廿楽はサポートとして駆り出されていた。二級討伐と言ってもその三級がボスというだけで、他に四~三までの呪霊がウヨウヨといる呪霊スポットに三人は訪れていたのだ。
 まだ昼過ぎなのにも拘わらず、どこか暗く悍ましい雰囲気の山奥でも、灰原は明るく陽の気を振り撒き元気一杯である。七海はそこまで親しく無い廿楽に興味を示さなかったのか、時折灰原に話題を振られた時以外は黙っていた。

「う~ん、呪霊の気配がプンプンするね。俺は補佐だからあんまり活躍出来ないんだけど、二人だけでいけそう? マズそうだったら援助するけど」
「はい、任せて下さい! 少なくとも雑魚は僕達で祓っちゃいたいし。ね、七海」
「そうですね」

 もう大分奥まで来た、呪霊の気配も呪力の濃度も濃くなっている。そろそろだな、と廿楽は二人に気付かれない程度の微量な呪力を足裏に流し込み、ぽつりぽつりと呪力の足跡を残していった。

「……―――、――――?」
「…!!」

 始めにソレに気が付いたのは、意外にも灰原だった。僅かな呪力の膜が迫っている。木々の隙間でナニカが蠢く気配がした。急に立ち止まった灰原に、七海が怪訝そうに眉を寄せる。

(呪霊に対して一際敏感だな、察知が早い)

 と言っても、廿楽が気付いていなかった訳はなく。フッと息を吐き出すと、三歩程後ろに退いた。七海も理解したようで、そっと呪具に手を掛ける。

「――ア、アアアアアァァァ……」
「っ!」
「……チッ」

 影を縫って這い出てきたその呪霊に、二人は思わず息を呑んだ。七海の方は小さく舌打ちを零し、二人共ぐっと柄を握り締めて臨戦状態に入る。
 ――奥から現れたのは、一体の巨大な呪霊……ではなく、低級呪霊が塊のように個を成し、まるで一体の呪霊のように見せかけているという珍しい事例モノだった。所々二級になりかけの呪霊も混じっている。一体一体の姿形は全く違う物であり、うごうごと身をくねらせる気味の悪い光景は二人の緊張を高めるのに十分だ。

「んじゃ、頑張ってね~」
「ッはい!」
「良ーい返事、優しい先輩は後ろで見守ってるからね。…安心して、死ぬ気で挑んで」

 ヒラヒラと手を振り後方へ下がっていく廿楽に、七海は本当に見てるだけなのかと呟きそうになったが寸での所で抑え、相手の動向を窺う。

「闇より出でて、闇より黒く。その穢れを禊ぎ祓え」

 廿楽の呟き声が後ろの方で聞こえた。どぷっと廿楽の位置を中心に、真っ黒い帳が下ろされる。呪霊は生い茂った木と木の隙間で同じように蠢くだけで、こちらに向かってきたりも攻撃してきたりもしない。拍子抜けしそうになった、その瞬間。

「……あらま」

 廿楽の微かな呟き声だけを聞き取って、視界がぐるりと反転した。

「ぅわっ!?」
「っ!」

 ずるんと一気に体勢が崩れる。慌てて受身を取ろうとするが、まだまだ未熟で投げ飛ばされ慣れていない二人は、体の軸になる腰と頭を守る事しか出来ず、支障は無い程度に足を痛めてしまった。

「くっ」

 七海が焦り、呪霊に向かっていく。呪力の流れは良いが、冷静さを欠いた。灰原もそれに続くかと思いきや、一旦下がり呪霊を見つめている。意外だなと心中で小さく呟いた途端、呪霊を形作っていた外側の一個体が三体、こちらに向かって来るのが分かった。

(所詮は低級か)

 呪力を纏わせた左手で空を薙ぐと、先頭に居た二体が消し飛ぶ。戦う意思を見せていない自分に刺客を放つとは、矢張低級。その頃には、灰原の七海の加勢に走っていくのを目の端が捉えた。残りの一体を鉤爪の印象イメージで一刀両断すると、廿楽はまた二人の観察に入る。
 二人ならば、あの呪霊そのものを倒す事など容易いだろう。術式すら持ち合わせていない悪意の塊だ、それこそ呪具に適当に呪力を込めて捌けば簡単だ。まあ、それを良しとしないのが呪霊なのだが。

 ―――スパッ、と見慣れた鮮血が舞った。七海の右足首の少し上辺りが切られたのだ。廿楽は眉一つ動かさず灰原を見遣る。予想通り、七海の負傷に焦っていた。少し開けた場所で戦っているのに、形振り構わず突っ込んでいく。
 七海が「灰原!」と叫んだ。場の有利を活かせていない、減点ポイント。七海も痛みに耐えて灰原の補助に徹するが、そもそもサポート向きの術式ではない。二人共不慣れな山と焦りとで冷静さを欠いた、減点ポイント。

(…でも)

 突っ込んでいったのは塊になっている低級呪霊の左側。外側の呪霊がべりべりと剥がれていき、ほんの少しその塊が小さくなったように見える。死角から来る繋がった呪霊も、持ち前の運動神経と反射神経で避けていた。それに、七海が立ち止まったのは後方。灰原を邪魔しないし、全体が良く見える。運が良ければ灰原を襲おうとしている繋がった呪霊を祓える位置だ。……加点ポイント。と、七海が碌な処置もしないで右側に突っ込んでいった。

 この勝負、実際はあの塊に近付けばほぼ勝ちなのだ。二人共呪具を使うのだ、端から端まで切り裂ければ、少なくとも多くの呪霊を祓う事が出来るのだから。何故近付けなかったかと言えば、始めの方に二人が転んだ理由と繋がる。
 近日の雨で地面がぬかるみ、且つ細長く繋がった無数の低級呪霊が死角に回り込み足を掬ってくる。更には遠回りしてきた数体が、ランダムで捨て身の攻撃を放ってくるのだ。文字に起こすとそこまでではないように思えるが、実際問題 少しの危険があるのと無いのとでは精神的余裕も違ってくる。いつ何が起こるか分からない状態と言うのは戦闘に限らず恐怖を誘うだろう。加え、片一方の負傷。これに関しては言う事も無い。

「はぁん、成程ね」

大体二人の行動パターンは分かった、もう観察する理由も無いだろう。そう腕組みを解き、すうっと息を吸って深く深く吐き出した。

(……あ゙~、加勢したい。でもしない方が良い気も……)

 そしてこの廿楽、とっても悩んでいた。始まりは七海が負傷した時。見慣れたとは言え、それが誰の物かで反応は違ってくる。不愛想と言えど可愛い後輩である事に違いは無い。術師をしていれば少なからず怪我をするだろうが、それを見て見ぬ振りに無視している自分が、本当はとんでもなく嫌だったのだ(※こいつは心の中で点数付ける位上から目線ですが、本当はとても頭の弱い自称ミステリアス系高校生です)。
 うーんうーんと頭を悩ませどうでも良い事を考えている内、シュワアァァ……と音がした。ん? と片目を開いてみると、喉の奥から「ん゙ッェ??」と変な声が出たのが分かる。ハーッ、ハーッと肩で息をする二人を、廿楽は茫然と眺めた。

「……wow」

 気が付くと、脳から直結で呟き声が洩れていた。いつの間にか木の幹ほども太さがあった呪霊の塊が、足を掬う攻撃手段として使われていた細長い呪霊の束 六本ぽっきりを作れるだけの数に減っていたのだ。
 二人が腰を落とし、最後の仕上げと言わんばかりにチャキッと呪具を握り締める。息ぴったりで呪霊に向かって走っていくと、打ち合わせでもしたかのようにシンクロした動きで、左右の二本を上から切り裂いた。残りの一本がしゅるしゅると解け、一個体として二人に向かっていく。二人は呪力の出し惜しみを一切せず、そのまま爆発音を響かせて、最後の一体を祓った。

「……な、七海……足………」
「これくらい平気でしょう、深手でもありませんし。私は呪術師ですよ」

 灰原が、戦闘中の凛々しい顔とは裏腹に、今にも泣き出しそうな情けない顔で七海に問いかける。当の七海は溜息を吐き、灰原の行き場のない手をそっと下ろさせた。
 廿楽は色々と言いたい事はあったが、この光景を見て言わずにはいられない一言を全力で呟いた。

(……青春やなぁ)

 血痕の残った場所を見つめ、何とか心の中で呟いた一言は、微かに鉄の匂いが漂う戦場には全く似つかわしくない単語で。それでも、片方が無事で良かったと笑い合う姿は、廿楽には輝いて見えたのだ。同じ学年という事で、二人が共に任務に赴いたのはこれが初めてでは無いのだろう。だが廿楽の目には、確かに二人の絆が深まったのが見て取れた。
 二人が一段落してこちらに向かってくる。ああ、と意識を取り戻し、廿楽は急いで七海の元へ向かう。

「二人共、お疲れ様。よく頑張ったね」
「いえ! 七海と一緒だったので!!」

 嬉しそうに笑みを深める灰原に、微妙な顔をする七海。友情だわと目を細めたのも束の間、重要な事に気が付いて、廿楽は呪力を両手に集中させた。

「七海くん、傷を見せてくれる?」
「え、…ああ いえ、応急処置は施しましたし、処置は帰ってからでも……」
「こォら」

 廿楽はコツンと七海の頭をチョップした。ぽすん、と軽い擬音が響き、灰原は意外そうな顔を、七海は状況が理解出来ていないような顔をした。

「いい? 術師ってのは体が商売道具なの」
「しょ、商売……」
「体にどれだけ傷痕が残っても、君が構わないなら別に良いんだけどさ」

 そう言って、廿楽は少しだけ眉を寄せ、子供を叱るような口調で続ける。二人共、廿楽は同じ学年の三人とは違って特に有能でも無く、だが無能でも無く、言われた事を難なく遂げ、またふらっと何処かへ行ってしまうような印象があった。それは一重に、二人が余り廿楽に関わった事が無かったから。
 蓋を開けてみれば、良く言えばフレンドリーで、悪く言えば薄い人間関係しか構築出来ない人という印象に変わった。だが、自分達に特別興味を懐かれていないような、どこか取っ付きにくい雰囲気を感じてもいたのだ。そして、今。

「今は任務中。ほんの少しの痛みで体が鈍り、咄嗟の判断が出来ないなんて事はザラなんだよ。集中力も欠くし、雑菌が入り込む可能性も高くなる。……それに何より、」

 廿楽は七海を地面に座らせ、切れたズボンを傷の上まで捲る。二人はそれを不思議そうに眺めていた。

「罪悪感が残っちゃうでしょ」

 呟かれた一言に、二人は目を見張る。――罪悪感。それを感じると言うのは、少なからず自分達に情を掛けていると言う事だからだ。更に二人は、廿楽の手から溢れる呪力に気付く。その手は七海の傷に近付き、淡い水色の光が、その両手と傷との狭間に生まれた。水面のようにゆらゆらと発光しながら、その光はどんどん輝きを増していく。

「……私が守る」

 目を伏せ呟かれた言葉を、二人は聞き逃してはいなかった。廿楽の両手が、光を伴って胸の辺りに置かれる。三角のようなマークを作って、廿楽はそっと呟いた。

「【ミファーの祈り】」

 廿楽がそう発した途端、その水色の光が高い音を立てカッと発光すると、七海の傷に平行に象のようなマークが浮かぶ。二人はその光景を、声も出せずに見つめていた。
 ――やっと光が収まり、廿楽の呪力の気配が薄まると、二人は余りの眩しさにぎゅっと瞑っていた目を開けた。

「……!!」
「こ、れは……!?」

 足に痛みが無い、赤も見えない、痕も無い。眩い光が消えた途端に傷が消えたなどと言って信じる者が居るだろうか。だが本当なのだ。二人は困惑した。この人は反転術式使いだったのか? いや、それは家入先輩だろう。七海は額に汗を浮かべて思考する。あれ? 反転術式って凄い貴重じゃなかったっけ…? などと灰原は考え始める始末だ。

「……さ、行こっか」

 真顔だった顔が、目が明けられると共に色を持つ。何事も無かったようにすっと立ち上がる廿楽に、七海は思わず「ちょ、っと」と声を発した。

「どうかした?」
「いや…これ、これ何なんですか? 傷が治ってる……貴方が反転術式を使えるなんて話も聞いた事が無いし、そもそも今…ッ」
「……まさか」

 早口混じりに話を続ける七海に被せるように呟いたのは灰原だ。らしくなく神妙な顔をした灰原が、廿楽の目をしっかり見て言う。

「それが、廿楽先輩の術式?」

 七海が目を見開く。廿楽も予想外の反応に少し目を見張った。廿楽からすれば、最近は治癒能力に周りが慣れてきて別に良っかなー後輩だし~というノリだったのだが、とんでもない勘違いをされていると気付き慌てて弁明を計る。

「いや、いやいや違うよ! 俺の術式はそんな大層な物じゃ、」
「術式じゃないって言うなら何なんですか! 吐け!!」
「七海くん!?」

 客観的に見て、二人はとても混乱していた。日本には様々な呪術師が居るが、その中でも反転術式が使える術師が何人居ると思ってる? これが夢か何かでない限り、そして秘匿されていない限りは大事件だ。廿楽とは一体何者なのか? この治癒能力は? 二人の頭の中はこの問題で一杯だった。

「いや、本当に違うんだってば! 確かに傷が治ったのは俺の術式だけど、違うの!! 取り敢えず一旦落ち着け!!」

 廿楽がそう叫んで、二人はやっと冷静さを取り戻す。唸って後頭部を掻く廿楽に、二人は「すみません……」と頭を下げる。

「いーのいーの、こっちの配慮が足りてなかっただけだよ。目の前で急に傷治されちゃそうなるよね。説明すると、先ず第一に俺は反転術式使いじゃない。でも治癒能力を持ってる」
「……それは」
「でも、治癒が俺の術式じゃない。副作用みたいなもんだよ。……さ、もう行こう。詳しい事は歩きながら話すよ」

 一方、廿楽は焦っていた。少し此処に長居し過ぎた、山中の呪霊が自分達に気付いていても不思議ではない。補佐である自分が足を引っ張っては元も子も無いし、監督不行き届きが出されても良い位に時間が経ってしまった。任務は早々に切り上げるがモットーの廿楽にとって、これは大きな問題だった。
 そのまま奥へ向かって進み始め、廿楽は自分の術式のことを話した。

「実を言うとね、この世界のだぁれも俺の術式の全貌を知らないの。俺以外はね」
「…え?」
「“六眼”持ちの五条でさえもだよ」

 へらっと笑って廿楽は付け足した。声は出していないが、七海も大きく目を見張っている。

「俺の術式は『印象』、『イメージ』。特に名前は無いんだ。俺自身呪術師の家系でも無いし、誰も術式の事を理解出来ないんだから名前が付けられないのも当然だよね。だから俺はこう呼んでる――」



「魔法、って」






 文字数足りないんで一回切る(5960文字)。

Re: 【呪術廻戦二次】ツイステ微クロス有 パッと思い付いた設定2つ ( No.5 )
日時: 2022/03/05 09:45
名前: ゆずれもん (ID: 08bdl7kq)

○ワンクッション○
ツイステクロス有りとありますが、今回はゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルドのクロスオーバー及びネタバレを含みます。また、今回は台詞のみゼルダ無双 厄災の黙示録のネタバレを含んでおります。地雷の気配を察知した方は速やかにブラウザバックを推奨致します。尚、こちらは前レスの続きとなりますのでご留意下さい。




「――ッ!!」

 七海は先刻起こった事に思いを馳せていた。だがそれも、向かってきた呪力の塊に対応する為に粉砕される。七海も灰原も傷だらけだった。

「ねぇ、ちょっと! そろそろ加勢して良い!?」
「もう少し!! もう少し粘ります!!!」
「うあ゙ぁ~っ、もう君達が傷付く所見たくないよ……!」

 今対峙しているのは、ボスである二級呪霊。呪術師として働いている者達に比べれば経験が足りない二人には少し荷が重いが、灰原の意地により補佐として来た廿楽は前に出させて貰えない。この二人を取り込めば直ぐにでも準一級になれる程に、二級の中では上の上の呪霊だ。廿楽は気が気でなかった。

「!」

 と、廿楽の頭の上で豆電球が光る。狡いかな~と思いながらも、廿楽は二人が一旦退き、体勢を立て直している最中に叫んだ。

「ねえ! まだ五条達にも見せてない“魔法”、見せてあげよっか」

 二人がぴくりと動く。言葉には出さないが、二人の目にはキラキラとした好奇心が光っている。廿楽はニヤッと笑い、迷い無い態度で二人の前に出た。

「無言は肯定だよ、二人共。…ほら、早く後ろへ。後は任せてくれるでしょ?」
「っ…悔しいですけど、廿楽先輩に格好良い所を見せるのはまたの機会にします」
「やっと休める……」

 全ては灰原の意地である、七海は乗り気で無い。土埃を被り、頬を掠った攻撃に沁みる。二人で駄弁りながら後ろへ下がった。廿楽は何を、と思い、灰原はチラリと後ろを振り返る。
 廿楽はと言えば、巨体の呪霊を目(?)を合わせる為に……飛んでいた。その光景を目にした灰原は、「え゙、」という声を発して固まる。七海も連られて振り返ると、「は?」と呟いて硬直した。

(いや~これ巫女服だったら絶対“見えて”、…いや何考えてんだ俺)

 赤の巫女服が印象的なあの少女【博麗霊夢 空を飛ぶ程度の能力】の応用である。あんたもスカートだろ、だって? 残念、見せパン(タイツ)履いてんだよ。
 どうやって飛んでいるかなど知った事では無いが、彼女は“飛べる”。なら自分も“飛べる”のだ。廿楽は呪霊に向かってフッと余裕な笑みを見せる。そして二人の方を振り返ると、すっかり固まって動かない二人を二度見した。

「…どした?」
「せっ、つ、廿楽先輩っ! 先輩、う、浮いて……!!」
「……信じられない。治癒能力に浮遊能力まで……?」
「ンだから魔法だってば」

 「じゃ、良く見ててね」。そう呟いて呪霊に向き直ると、廿楽は声高々に叫んだ。右手を上に突き出し、背筋を伸ばし、胸を張って。

「今、術師 廿楽の名に置き、此処に縛りを設ける」

 そう言い終わった途端、突き上げた右手の甲に、眩い金色に光る三つの三角形で構成された文様――【トライフォース】が浮かび上がった。そしてそれぞれ四人の英傑達の霊体が、ふわりと廿楽…俺を中心に円を描き、消える。体に力と呪力が満ちるのが分かった。
 それに何を刺激されたか、呪霊が吠えて攻撃してくるのを目の端で捉える。咄嗟に体をガードしたが、痛みや衝撃を何一つ感じず違和感を覚えたのも束の間、突然目の前が炎のオレンジ色に染まった。

「……ダルケル!!」

 声にならない無声音で、廿楽が驚きの声を発する。縛りを設けたからかほぼオートで発動した【ダルケルの護り】。廿楽は驚きに身を浸す時間も無いまま不敵にハッと笑むと、「邪魔すんじゃねえ、黙っとけ!」と叫んだ。それに、目の前の緋色―その中心には、神獣ヴァ・ルーダニアを模した文様が浮かんでいる―が呼応するように光る。今日の口調とは少し違うが、考えも無く自然に出た言葉だった。
 どこからか出現した【巨岩砕き】をいとも簡単に振り回すと、廿楽は呪霊に突進していく。足の筋肉を最大限に活かしてバッと飛び上がると空中で身を捻り、半ば叩き付けるように攻撃する。

「終わりだ、止めだよ……【リーバルの猛り(リーバルトルネード)】!」

 叫んで巨岩砕きを仕舞い、左右に両手を伸ばす。その勢いのまま腕を呪霊の方に向け気合を発すると、呪霊が「アアァアァ???」と声を発しながら身をもつらせ、頭と思われる部分が強風により吹き飛んだ。その正体は巨大な上昇気流だ。

 耳障りな呪霊の叫びに耐えながらフンッと嘲る吐息を洩らし、廿楽は空高く舞い上がった。元々地面に居た場所には、緑がかった神獣ヴァ・メドーの象徴であるマークが点滅しながら回っている。
 核となる箇所を吹き飛ばされ呪力を大分消費した筈だが、呪霊は未だ動いている。チッと舌打ちを零して、廿楽は「気に入らないね」と呟いた。

「失せな、目障りだ!」

 トライフォースの浮かび上がった右手を空に向かって突き出すと、パチン! と小気味良い音を響かせて指を鳴らす。カアァ…と人には聞き取れない高音を発しながら、呪霊の上には神獣ヴァ・ナボリスの文様が浮かんでいた。その色は、今最も見たかった色……黄色だ。

―――ドカァン!

 そんな雷鳴が立て続けに三発、呪霊に向かって轟く。【ウルボザの怒り】はこの中でも攻撃力の高い加護、ありがとうと心の中で言いながら、廿楽はゆっくりと地上に降りて行った。
 今やすっかり元気を無くした呪霊がせめてもの足掻きに攻撃を放ってくる。それを炎の色を纏わせた右手で払い飛ばして、廿楽は地を踏みしめて呪霊に近付いた。すっ、と右手を呪霊に掲げる。耳を劈く悲鳴も、悪意を振り撒く負の感情も、今は何も感じないような感覚がしていた。

「私にも……出来る事があるなら」

 呟いて、翳した右手のトライフォースを見つめる。そうすると、それに呼応するように呪霊にトライフォースが浮かんだ。この右手の物よりも何十倍も大きな金色のトライフォースが、呪霊を捕えて離さない。
 ―――辺りが、金色の光に満ちた。





「……ハァ」

 一息ついて、廿楽はふと後ろを見遣る。心の中ではヤッベー呪霊一体倒すのに五つ位の手の内晒しちまったよヤッベーなどなど呟いているが、顔はいつも通りに澄ましている。だがその鉄仮面も、この時ばかりは「へ?」と外れてしまった。

「ぇ、え、引……??」

 二人が縮こまりながら、こちらをドン引きするような目で見つめてきているのだ。何故? 何ゆえ? 何か引かれるような事した? 廿楽は混乱しながら二人に近付く。

「ど、どしたの 二人共……」
「…せ、先輩」
「…廿楽先輩」
「はい?」

 困惑しきっている今の廿楽の頭では、二人の顔が何の表情を表しているかなど分からなかった。俯瞰して見てみると、灰原は好奇心と憧れに満ちたキラッキラの目を輝かせ、一方七海は、“廿楽とは何者なのか”という疑問と純粋な尊敬の入り混じった微妙な顔をしている。先に口を開いたのは七海だった。

「貴方、一体何者なんですか……?」
「凄い、凄かった! 廿楽先輩ってそんなに強かったんですね!!」
「え、え、えぇ……? ちょ、情報過多 情報過多、一旦離れよ? ね?」

 二人がむんっと廿楽に詰め寄り、問いかけやら賞賛やらの言葉を次々に投げ掛けていく。どうどうと二人を抑える廿楽の行き場の無い手は、何の抑止剤にもなっていなかった。

「ワーッ!! もう、俺は聖徳太子じゃないんだから! 話すのは一人ずつ!!」

 こういう感じのやり取りさっきもした気が……と現実逃避していた廿楽は、とうとう二人に向かって叫んだ。ピタッと周囲の音が止み、呪霊の居なくなった山に戻ってきた鳥の囀りがチュンチュンと響く。風がざあっと舞い、緑の葉が舞い落ちた。

「……スウゥ………ハアァ……。よし、OK。先ず始めに言っとくけど、さっきも話した通り俺の術式は手数が全てなの。でも簡単に手の内は明かせないんだ、汎用性のある物は半分にも満たないから。だから一体の呪霊を倒すのに、普通なら一,二種類の魔法しか使わないんだけど……今回は特別。あんまり他人に話しちゃダメだよ?」

 そう言って人差し指を唇に当てると、二人は少しの間息を詰めて黙りこくった。どしたんやろと心の中で呟くが、廿楽は気持ちを切り替えて「さぁ、もう帰ろっか」と言葉を掛ける。

「…そうですね。大分時間も経ったし、………」
「? どしたの、七海」

 急に言葉に詰まった七海を、他の二人は不思議そうに見遣った。七海はサッと顔を青くして、気付いてはいけない事に気付いてしまったかのような顔をして呟く。

「……これ、帰り道どうするんですか」
「帰り道? …あ゙」

 灰原が何の気無しに後ろを振り向くと、そこには無惨に薙ぎ倒された木々と抉れた地面、濃ゆく残った残穢で、それはそれは酷い有様だった。「あー……確かに立派な自然破壊だねぇ」などと笑っている廿楽の気が知れず、二人は硬直したまま何言ってんだコイツという風に廿楽を凝視する。

「あっはは、そんなカオしないでよ。優しい先輩はちゃんと策を講じてるからさ」

 そう言うと、廿楽は迷わず左へ足を踏み出した。慌てて二人もその後に付いて行く。

「さながらヘンゼルとグレーテル。ここに来た時に、俺の呪力で目印を付けておいたんだ。残穢を見る時みたいに目を凝らせば、ある所には二人も見えるんじゃない? 今は俺の呪力を辿っているから見えないだろうけど」

 パンじゃないから小鳥達にも食べられないでしょう? そう笑う廿楽の後ろで、二人は顔を見合わせた。
 ――この人は、どこまで先を見越しているのだろうか。そんな考えがふと頭を過るが、考えるのも野暮だと頭を振った。この人は魔法使いなのだ。きっとこれからも、自分達を導いてくれるに違いない。

 ……そんな、少し不思議な高校の、先輩と後輩の話。自然破壊を免れた木の枝の上で、青い鳥が一声、チュンと囀った。

Re: 【呪術廻戦二次】ツイステ微クロス有 パッと思い付いた設定2つ ( No.6 )
日時: 2022/03/07 16:35
名前: ゆずれもん (ID: 08bdl7kq)

○ワンクッション○
ツイステクロス有りとありますが、今回は『蟲師』の微クロスオーバー及びネタバレを含みます(キャラは出てきません)。地雷の気配を察知した方は速やかにブラウザバックを推奨致します。
また、ツイステのキャラのユニーク魔法ネタバレもございますので、十分にお気をつけてスクロールするようお願い致します。
前編・中編・後編に分ける予定ですのでご留意下さい(予定が変わる場合もございます)。





「前編」


・ユニ魔(詠唱、縛り含む)×サバナクロー×蟲師  ※別世界線、謎時空

~本日のあらすじ 作者シェフの気紛れクロスオーバー~
 な な なんと、高専に侵入者が!? 生憎な事に学長は会議に出ているし、五条は四徹&体調不良で寝込んでしまった! 残る二年生(戦闘要員・二人)+一年生(同)でどうこの場を切り抜ける!? 次回、廿楽死す(精神面で)! デュエルスタンバイ!!


―――ハーッ、ハー……

 濃い殺気と呪力の残穢、むわっと漂う錆びた鉄の匂い。それらを肺一杯に吸い込み、廿楽つづらはすっかり変わり果てた高専を見渡す。単独行動に入って一時間が過ぎた。木の陰に隠れ、絶えず気配を殺し、そして気配を探りながら息を整える。彼・廿楽は、段々と収まっていく喉の痛みを感じながら、頭の中で今の状況を整理し始めた。

 未だ校舎まで突破されてはいないものの、戦況はあちらの有利にある。何せこちらの戦闘員が少な過ぎるのだ。よりによって今日――いや、今日を“狙って”きたのだろうが、三年生と教師陣は京都へ赴き、今日は自習という名の休日だったのだが。一昨日、五条が四日ぶりに帰って来て、今日立てていた遊びの予定は崩れ高専に残る事となったのである。四日間寝ておらず、術式を行使しっ放しで四日間を過ごしたと言うのだ。季節の変わり目で体にも負担があり、精神的にも肉体的にも不調が続いていた最中の事だった。

 相手が何の目的で攻めてきたのかは分からない。相手が何者なのか、規模や、強いのか弱いのかさえ分からない情報弱者の状況で、四時間半に及ぶ長期戦に持ち込めたのは奇跡と言っても良い。だが電波を阻害する帳が下ろされているし、京都へ出向いた彼らは一日戻らない。あとはもうそろそろ高専に戻ってくるであろう補助監督から教師陣への連絡を期待するほか無い。これ以上戦況が悪化するのは避けたい所だ。
 加えて、何をしたか誰かの術式か、侵入者が来た事を知らせるアラートすら発動していない。唯一の救いだったのは、外から中、中から外の電波が阻害されているだけで、中から中への連絡手段が絶たれていなかった事だ。

 一番始めに応戦した後、夏油と灰原、七海、他数名の術師と話をしたが、五条を守る為に二級の術師が一人高専に残っている以外には、こちらの戦闘員は廿楽を含めても六名(家入はヒーラーなので戦闘要員には入れず、二級術師と共に五条を見張っている)。その内二人は夜蛾学長へ報告書を提出した帰りの術師だった。
 スマホから発射される電波を探られ居場所がバレるかもしれないという意見もあったが、それはそれ、これはこれ。もしそうなったら集合場所へ敵を誘導し、その間張った罠で仕留めようという事になった。


『奇襲より四時間三十七分が経過。
五時間以上の長期戦は肉体的及び精神的な疲弊に繋がると推測。
校舎から北東の場所に位置する木に赤の目印を付けた。これより敵の詮索を開始する。
敵を目視で確認次第目印を付ける。皆の行動は五時間を回った後を要求。』


 必要最低限の簡素な文字を素早く打ってポケットに仕舞うと、もう家の庭のような扱いを受けている高専の山を駆ける。足に強化魔法を掛けても良いのだが、長期戦となるなら呪力を残しておきたい。呪力消費を抑える=縛りという公式が頭の中で構築されている廿楽が何故縛りを設けないかと言えば、それだけ余裕が無いと言う事だ。
 彼の一番の武器はその圧倒的な手数。一般の術師ならそこまで強い縛りにならないが、手数を制限されるというのは廿楽にとって大きなハンデ。だからこそ強い縛りとなり、効果が出易いのだ。今は呪力消費よりもしもの時の手数を優先したのだった。

(――【呪力遮断・気配遮断・遮音】……【結界】)

 自分を中心に、直径一メートルの半円を描くようなイメージで呪力、気配、音を完全遮断する結界を張る。本当に外界からシャットアウト出来ているかなど知らないが、廿楽じぶんがそう“信じて”いるならそうなのだ。
 どんどん呪力が濃くなり、微かな人の気配を捉えた。徐々にスピードを落とし、自分を透明人間にでもしとくんだったな、と後になって後悔する。

「……ッ」

 木の陰に隠れ気配のする方を見遣ると、そこには数えるのも悍ましい数の術師達が居た。術師と言うより呪詛師だろうが、兎にも角にも一切顔を見たことが無い。関係者で無い事は確かだった。だがこれで全てという訳は無いだろう、奇襲を受けた時より少なく感じる。廿楽は敵の集団の裏手に回り、周囲を詮索する事にした。
 隠れていた木より少し離れた位置に赤の印を付け、廿楽はポケットから再び携帯を取り出す。走りながら確認した画面によると、既に返信が来ているようだ。


『何言ってるんだ 危険すぎる!』
『廿楽?』
『私も向かうから少し待っていてくれ』


 返信の横に表示されている時刻の間隔が少し開いている、廿楽からの返信を待ったのだろうか。焦るあまりそんな事を言い出すのは、仲間想いの夏油らしい。


『落ち着け。廿楽なら上手くやれるでしょ』

『でも家入先輩、廿楽先輩が心配です!
七海は平気だろうって言ってるけど……』

『私は廿楽が成功するに一票。七海もね。夏油と灰原は信じれないって?』

『平気か平気じゃないかの話じゃないんだ。あの数と廿楽が対面でもしたらどうする?』

『少なくとも五時間を過ぎれば行動して良いって言ってんだし』
『あの数の奇襲を凌げたのは廿楽が的確な指示を出してくれたおかげでしょ。長期戦に持ち込めてるのも冷静だったあいつの功績なんだから』
『少しくらいあいつを信じてやんなよ』


 ここでまた時間が空いている。走り始めて敵を見つけたのに十分もかかっていないが、極限状態に追い込まれて反応スピードが早まっているのだろう。


『家入の借りてるけど俺、五条。
俺も別にいいと思う。あいつそこまで弱っちくねえし』

『五条先輩! 具合は大丈夫ですか?』

『駄弁る暇あんなら気配探りつつ逃げろよ』
『ここに張んのも七海と交代でやれ。俺も呪力がもうちょい回復したら応戦できっかもしれねぇk』
『って言ってるけど戦える容態じゃない。ごめんだけどあんま期待すんな』


 ここで返信は途切れている。夏油がどうなったのかだけが心残りだ。もし向かって来ているのなら、少し、大分、結構ヤバい。本当にまずい。夏油は応戦できる唯一の二年生だ、自分と固まって動いて欲しくないのに。
 ……仕方が無い。

(来い)

 ここは山、あの印象イメージにぴったりだ。靴を脱いでから片膝立ちで地面に屈み、服の袖を捲る。左手を枯葉の落ちた地面に付け、深呼吸を繰り返した。

(来い……)

 左手に体重を掛け、目を閉じてアレが這い上がってくる感覚を待つ。閉じた目の外側で、自分を中心に平たい盃が出現するのが呪力の気配で分かった。金色に光る酒――光酒こうきが独りでに盃から湧き上がり、ゆらゆらと明滅するのを感じる。

(来い、【ムグラ】!)

 ――バッと、地に付けた左手から、脳で処理しきれない程の情報量が伸し上がってきた。
 【ムグラノリ】。【ムグラ】と呼ばれる山の神経のような蟲に意識を潜らせ、山のあらゆる場所を駆け巡る、蟲師の技の一つ。
 無意識に濁音の混じった呻き声を出しながら、何とか夏油を探し出した。あいつの呪力や気配を求めて、山を意識で走る。居ない、…居ない。何処だ? 反対側へ、山の反対へ。

(!!)

 居る、居た。あそこだ! 自分が大雑把に指定した通りの場所に居る。良かった、一先ず安心だ。

「……ッ、はッぁ…」

 恐ろしく体力を使うな、ムグラノリ。始めて使うからどうかと思ったが、何とかなって良かった。頬から顎を伝う汗を乱暴に拭って立ち上がり走り出す。敵に気付かれないよう一定の距離を保ちながら、他に敵がいないか全速力で探した。


『五時間経過より後八分、増援は必要無い。
校舎より北北西に敵の集団を目視で確認。その数およそ四十~五十。
これが全勢力だとは思えない。』
『また、現在複数の呪術を並行して使用中。呪力消費が著しいと思われる。
五時間を回ればこの戦線から離脱する。』


 縛りを設けていないムグラノリでは、容姿や呪力が分かり切っている人物を探すのが精一杯だ。他の人物など探せないし、山には人間以外の命――植物や虫、小動物などが多く存在している。生命反応から探し出すのも不可能に近い、それに何より体力と呪力を消費する。長期戦で避けなければならない事ベスト3に入る事項だった。
 万が一を想定して返信時のバイブレーションや音声はOFFにしている。定期的に画面を確認すると、既に返信が来ていた。夏油と家入からだ。


『廿楽!平気か? 気付かれていないのか?』

『お前の事だから平気だとは思った
怪我してんなら一回戻って来て。治療にお前の貴重な呪力は割けない』

『敵からの反応、負傷は無い。気配、呪力、音を遮断する結界を常時使用している。』


 打つと、直ぐに反応が返ってくる。『結構無茶してない?』と家入から来て、思わずギクリとしてしまった。
 数時間ぶりにまともに仲間と意思を疎通して気が抜けてしまったのか、長い間術式を行使し続けてしまったからなのか……どちらも無きにしも非ず。自分も未熟だったのだと今となっては割り切れるが、これで怪我でもしてしまっていたらどうするつもりだったのだろう。タイミングも悪かった。残りの数分で元の場所に戻るつもりで、ショートカットで敵の集団の近くを通ってしまったのだ。用心して遠回りすればよかったものを。

「――……ぁ、」
「っ!? おい、構え!!」

 これで!? と心の中で叫びそうになる。高低差もあるし距離的にも離れてるぞ、と。思わず気が抜けて、自分の中の呪力の流れが止まったのが分かった。
 相手は相当な手練れらしい。少し呪力を漏らしただけで気付く物だろうか……いや、気付くのだろう。それが強者だ。

 その後の事は、あまり覚えていない。取り敢えず逃げた、死ぬ気で走った。結界を張り直して、呪力消費を躊躇わず足に呪力を込めて。一つ覚えているのは、左のふくらはぎと背中側の右脇腹を浅く、自分に気付いた術師だと思われる男に、右腕の上腕を深く。朧気とも取れる意識の中、熱く焼けるような鋭い痛みがあった事。
 気付いた頃にはボロボロだった、見慣れた山に生えた木々の枝がまるで凶器のように思える程に。鋭い枝々で頬やら手やらが切れ、呪詛師から攻撃された所を庇っていた所為で小さな傷が大量に出来てしまっている。呪力も残り少ない、体力も、気力も。あちこちが痛い。何も気にせず術式を行使する事も出来ない。

(やめろ)

 考えるな、考えるな。こんな事考えるなら打開策を考えろ。教師陣達が帰ってくるまで軽く十時間はある筈だ。弱気になるな、頭を回せ!


『すまない家入』
『今からそっち転がる』


 それだけ打って生身で走った。痛みに耐えて、耐えて耐えて耐えて。少しの嗚咽も零さなかった。精神を削って気配を殺し、探り、耐えて耐えて。ぎりッと奥歯が鳴るのが分かる。――ああ、やっと高専が見えてきた。早く、早く、早く……。

「……、……ら!」

 意識が朧気だ。でも、分かる。聞き慣れた、大切な声が、そこに。

「廿楽!!」

 ドサッと重い音を立て、廿楽が倒れた。急いで家入が駆け寄り、その場で反転術式を行使する。ポゥ……と、脇腹から全身へ、優しい呪力が回るのを感じた。

(………あたたかい……)





一旦ですが前編は終了です(約5000文字)。
これが一段落したら新しいスレ作って(クマツヅラの廿楽さんって題名で)廿楽シリーズ纏めようと思います。気が向いたらスレ来てください。
…まぁこれが見られているのかすら分からないんだけど。
じゃ、中編でお会いしましょ~。

Re: 【呪術廻戦二次】ツイステ微クロス有 パッと思い付いた設定2つ ( No.7 )
日時: 2022/03/12 19:54
名前: ゆずれもん (ID: 08bdl7kq)

○ワンクッション○
ツイステクロス有りとありますが、今回は『蟲師』の微クロスオーバー及びネタバレを含みます(キャラは出てきません)。地雷の気配を察知した方は速やかにブラウザバックを推奨致します。
また、ツイステのキャラのユニーク魔法ネタバレもございますので、十分にお気をつけてスクロールするようお願い致します。
前編・中編・後編に分ける予定ですのでご留意下さい(予定が変わる場合もございます)。



 パチ、と目を開く。眩い光が目を劈いた。

「お」
「――…ッッ!!」

 その声を聞いた途端、体が勝手に起き上がる。家入の隣には所々に包帯の巻いてある五条も居た。二級術師だけが見当たらないが取り敢えず無視して、なるべく声量を落とした声で囁く。

「何分寝てた」

 そう言うと、家入は微かに眉を寄せ、五条が「ウワァ…」と如何にも嫌そうな顔をした。わざとらしく大きな溜息を吐いた五条に、視線で何だと伝える。

「お前、何て声してんだよ。肩に力入り過ぎ、眉間に皺寄せすぎ。ハゲるぞ」
「寝てたのはざっと二十分ちょい、こっちが聞き返したい位早いよ。喋れてるし起き上がれてるし、大丈夫っぽいね。ほんと前から思ってたけど、廿楽の体ってどうなってんの?」

 カルテを捲りながら喋る家入を見て、極限の緊張状態で気ぃ張ってたんだろうなと心の中で呟いてから、一度大きく深呼吸をして肩の力を抜いた。チラリと未だ痛む気のする右腕を見遣ってみると、かなり広く、そして深く服が裂けていた。大雑把に言えば、円を描く袖の部分の半分が切れている状態だ。だが、少し引き攣れているだけで、激しく動かさなければ痛みを感じない程度に治癒してくれたらしく、白い皮膚が垣間見えていた。「あ゙ー」と呻きながら顔の上辺りを手で覆う。

「……二級の人は?」
「水谷さん? 急いで“赤印”の場所に向かったよ」
「は!? え、嘘、何で!!?」
「落ち着けって、あの人も伊達に術師やってねぇから。敵が居る所じゃなくて、元々お前が居た配置場所に向かったの」

 窘めるような宥めるような口調で話す五条の声を聞いて、ほ、と吐息が洩れた。勢いで立ち上がりかけた体をベッドに戻し、入ってきた補助監督さんが持って来てくれた水を喉に流し込む。その間に五条が七海くんや灰原くん、夏油に自分の目が覚めたと連絡してくれたらしい。

「分かってるだろうけど、呪力が凄い減った。このままだともう作戦無しに易々と術式を使えない。……自分の判断ミスだ」
「出し惜しみしてもっと怪我してたら堪ったもんじゃないよ。間違っては無かったでしょ」

 くるくるボールペンを回しながらカルテを見続ける家入と、手遊びし出す五条。緊張感が無さ過ぎる。それが口に出ていたようで、馬鹿にしてんのと両方から言われてしまった。今速攻で考えた作戦を二人に伝えようと姿勢を正す。

「弱ってる五条を前線には出したくない。だけど、この人数対あの人数だと、ご存知の通り生きてられるかも分からない。戦況は最悪、コンディションも何もかも。
 ……でも、その状況をひっくり返す手が、一つだけ、ある」
「へえ?」
「流石」

 上から自分、五条、家入。五条なんか本当に悪い顔をしている。自称「二人で最強」の片割れがニヤァッとしていたら、家入曰く「流石」の自分でも背筋が粟立つ。家入も負けたもんじゃないバッドガイの顔をしている、嫌いじゃ無い。

「この戦況で一番ネックなのはこの戦闘員の差、次に一切情報が手に入っていない事。どれだけ強くても、特級とかじゃない限りこの人数差はカバー出来ない。……その“多過ぎる”人数を利用する」

 今の自分では、精々縛りを設けて呪力消費を抑えながら戦うしかない。だから、一か八かで賭けに出るのだ。
 ――作戦はこう。なるべく汎用性が高く攻撃力に優れた物だけで縛り、なるべく大人数が集まっている集団でどうにかして内乱を起こす。強い奴は誰かが足止めして、弱い奴らから仕留める作戦だ。自分の役割は雑魚処理と全体をよく見て指示を出す事。その為にはこの山全体を回って敵が集団で居る所を洗い浚い調べ上げなければならない。そこが難しい所だ。
 内乱を起こしある程度の実力者を洗い出せれば、後は簡単。全力を以て気絶(死)or降参(屈服)に至らしめるだけだ。そこは腕の見せ所よ、と笑う。ここまで上手く行くとは流石に思っていないが。

「ある程度メモしたから送っとく、後で確認しといて。一番大変そうなのは敵の探索と強い奴の相手かな。私はいつも通り後方支援に回るけど、そこ二つどうするつもり?」
「ここまで上手くいくとは思ってない。だから様子を見つつ、ゆっくり着実に仕掛ける。時間だけはたっぷりあるんだから……死への時間は短いかもだけど。
 でも家入の言う通りで、負担が掛かるのはその二つ。そこをどうにか出来れば、勝ちに一歩近付けると思う」

 携帯を取り出し家入の送ったメールを確認すると、ある程度は省かれ要旨だけが上手く纏められていた。ありがとうと言ってから、付け足しで「立候補可」と打つ。
 と、ずっと黙っていた五条がふと呟いた。

「……一つ不確定要素があるな。一番イヤな感じがするのは、最初に奇襲かけられて、次に補助監督達が襲われて、それ以降あっちが一切手出してこない事じゃねえ? 何かあると見た方が良いと思うけど」
「五条がそういう事言うの珍しいな。いつも攻め手に回るのに」
「は? 慎重になる時とならない時ぐらい弁えてるわ、馬鹿にすんな」

 こんなやり取りでも、緊張を感じずにはいられない自分にとってはとてもありがたい空気だった。いつも通り、何も気にしていないような言葉が、自分の心を軽くしてくれる。

「取り敢えず何で縛るか決めなきゃだと思うんだが……一応決まってるんだ」
「へー、何にすんの?」

 まだ見せた事は無いと伝えると、五条だけでなく家入にも露骨に嫌そうな顔をされた。術式の概要を教えているだけでも親しい方なのだが。

「そう言えば五条、ピンピンしてるように見えるけど。本当に悪いの?」
「五条も気張ってんでしょ」
「は?」
「呪力の消費はこいつの事だしどうにでもなるけど、」
「おい」
「体の方にキてるんだよ。メンタルもなー、五条だし」
「俺何で蔑ろにされてんの?」

 何とか話題を逸らし足に力が入る事を確認すると、ベッドからゆっくり立ち上がる。流石は家入、貴重な反転術式使い。難無く立ち上がる事が出来た。そのまま呪力の巡りを確認し深く息を吸う。二人はピタリと会話を止め、この光景を不思議そうに、そして神妙な面持ちで見つめていた。

「今、術師 廿楽の名に置き……」

 左腕を折り曲げて肩の位置まで上げると、左手首に右手を翳す。呪力を右手で練って、静かに右手と左手首を触れさせた。

「ここに縛りを設ける」

 そう発した途端、右手を翳していた左手首に光の輪が出現する。ブレスレットのように発光する輪は、オレンジが強い黄色だ。翳していた右手でその光の輪をくるりと回し、手首を覆うようにして手首の“内側”に押し込める。

「我、百獣の王に準ずる者。不屈の精神に傅き、命の輪を重んじる者。――いざ、導かん」

 左手首を覆っていた右手をそっと話すと、その空間からあの光が生まれ、また光の輪になると、その輪は徐々に形を伴い光を失っていく。呪力の流れで空気が揺らめき髪が靡いた。目は閉じたままだが、手首には確かにずっしりとした重みを感じる。
 完全に光が消えた時には、光の輪は赤、青、緑の石で作られたブレスレットになっていた。二人が自分の左手を覗き込むのが気配で分かる。

「……ブレスレット?」
「てかお前、今縛り設けたの? 仰々し過ぎない? めんどくさ」

 おうおう好き放題言ってくれるじゃねぇか、と心の中で呟き、だがそれも無視して姿を隠せるような物は無いか問う。家入曰く仮眠室にローブがあるらしく、目を閉じたまま仮眠室に向かった。あったのはローブというより前まであるマントに近く、ファンタジーで魔法使いが来ているようなローブとは少し違う。フードが付いているのはありがたい。
 黒いローブに腕を通しフードを被ると、やっと目を開ける事が出来た。フードを少し持ち上げて、仮眠室に付いている小さな鏡で自分の顔を確認すると「おぅっ…」と声が洩れる。コレで縛りを設けるのは初めてだからどうなる事かと思ったが、平気なようだ。

「あ、戻ってきた」

 二人でカルテを覗き込んでいた二人が、家入の声でこちらを向く。目が見えない程フードを深く被っている自分を怪訝に思ったのか、「どうかしたの?」と声がする。

「いや、何でも。……ああ、このブレスレットは、縛りを設ける上で…誓約書のような役割を担っているんだ。決して壊される事は無いけれど、本人が壊そうとすれば簡単に壊れて縛りが解ける。あんな“仰々しく”したのはこれを作る為だよ」

 そう説明すると、「相変わらず変な呪術の使い方するよな」「独学だから」とヒソヒソ話をされる。あ゙ん? とメンチを切りたくなる気持ちを抑え、精神安定の為に適当な話をした。

「このブレスレットは、太陽の赤、空の青、大地の緑を表してる。今の自分にはこの色の通り、火炎、水氷、草木の魔法と、他に三つの魔法しか使えない。汎用性は高くない」

 へーと生返事をしながら、特に気にする様子も無くクルクルと事務椅子で遊んでいる五条を端目に、若干鋭くなっている聴覚が機械的な音を拾った。

「……ん」
「どした」

 家入が手を制服のポケットに回す。バイブがONになっているらしく、携帯を見ながら「夏油からだ」と呟いた。五条が隣に身を乗り出して画面を覗き見る。

「廿楽が起きたのは『良かった』、だってさ。でも作戦については……」
「あいつらしい文章」
「それ。大筋に異論は無いけど、内乱を起こすってので『廿楽の負担が大き過ぎないか』って」

 ぎく、と息が詰まるのが分かった。――これは賭けだ、博打なのだ。自分の気力や呪力が持つかどうか、そして自分の術式が通用するかどうかの、賭け。切った張ったの大博打というヤツではないが、一歩踏み外せば秒でデスする、正に“命懸け”の作戦。

「……」 (※家入)

 自分が失敗すればこの作戦は基盤からガラガラと崩れ行く。その可能性を少しでも排する為に確定的な情報が欲しいだけの事で、もっと自分に実力があれば情報弱者の立ち位置など気にしなくて良くなるのに。

「まァたお前変な事考えてるだろ。前から思ってたけど、お前弱くはねぇけど明らさまに強いかって言われたらそうでもないのに、全部一人でやろうとし過ぎなんだよ。誰もお前にそこまで期待してねーし、見てるこっちが吐きそうになる」
「吐……」

 これ自分が悪いの? と口に出したくなるような文章を投げ掛けられているが、多分これは五条なりの気遣いなのだろうと思うと、ふっと顔が綻んでしまう。
 そんな良い雰囲気の時、「……ごめん」と家入の声が響いた。謝罪ではなく、場に断りを入れる方の「ごめん」だった。五条も自分も家入の方に顔を向ける。
「恐らく凶報。五分五分の確率なんだけど……―――」
 後に続いた言葉に、キィインと耳鳴りがするのを感じた。目が零れんばかりに見開かれ、無意識に薄く口が開いてしまう。
 ……ああ、廿楽じぶんの所為だ。

「ここ三十分、灰原と七海からの反応が無い」






中編①終わりです。合計で4650文字くらい。


過去の廿楽「キタァァァァァアいざみちいぃぃぃぃぃぃ」

―――そんな思いが、暗唱にも反映しています。


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