二次創作小説(新・総合)

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Genshin - ChaosDays -
日時: 2024/01/02 17:08
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

皆さん、どうも初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。HALと申します。

過去3度も挫折をしたにも関わらず、やっぱりどうしても小説という形にしたかった物語を書きたくなった為に4度目の執筆をしてからもう半年以上。実は、私が取り扱おうとしたジャンルが「多重コラボレーション」を禁じているのでは、という指摘を受けまして、内容を修正しようと検討していたらこんな日月に……

ということで、これじゃあ埒があかないと思い、急遽HAL史上初の「単独ジャンル日常小説」の形で再開させてもらうことにしました。クロスオーバーではなくなったのでタイトルが過去例から大分変動しておりますが、今まで通り「カオスな日常」をテーマにしているので…… まぁ、おおらかな目で見て頂けますと幸いです。
※カオスな日常がテーマなので、やっぱり公序良俗心配です。え、理由?私も含めた皆様の過去の日常小説をご確認ください……


〔 目 次 〕

『ようこそ、どうしようもないテイワット大陸へ』 >>1-6
『帰らぬ熄星 - 翼にねがいを - 』 >>7-10
『とある雪山でのすれ違い』 >>11-14


─ 注意事項 ─

・この小説では、どんなに著者が頑張っても独自解釈によるキャラ設定(キャラ崩壊率???%)が施されてしまいますので、どうかご了承ください。また”設定変更の可能性”もございます。
・圧倒的文章量(の少なさ)、徹底的誤字数(の多さ)
・募集企画は……いつかやるかもしれませんね。その時を待ってください。
・荒らし相手にはそれ相応の処置をしますのでそのつもりで。
・4度も挫折してるという事実からも察せられるように、更新頻度は壊滅的に遅いです。またしても挫折する可能性もありますし、更新できたとしても数ヶ月かかる事も予測されますので、よほど暇がある方のみが読まれることを推奨致します。
・これは人によって制限されていない様なのですが、こちらの小説ではマナーを守った投稿をお願い致します。

帰らぬ熄星 - 翼にねがいを - ( No.10 )
日時: 2023/07/02 22:09
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

フィッシュル達が周囲に散らばった隕石を回収したからか、この地に影響を及ぼしていた元素力の変動も薄まり、昏睡状態になっていた町人達も次第に意識が回復して言った。しかし、まだ全員が回復した訳ではないようだ。


「困りましたね…… まだ全員の意識が回復したわけではないようです」
「どうやら、意識を奪われた者達の中でも数人程は、より堅牢な呪いに掛けられてしまったようね…… なんと嘆かわしい事かしら……!」
「流石に隕石の影響はだいぶ緩和された筈です。追加で何かしらのアクションを起こしてあげれば、彼らの目を覚ます事が出来ると思うのですが…… ベネット、昏睡状態の彼らにはなにか他の特徴などはありませんでしたか?」
「特徴か? …………あっ、そういえば。何度か寝言を呟いてた筈だ。「翼がほしい」とかなんとか言ってたはずなんだが……」
「翼? なんでまたそんな……」


フィッシュル曰く、呪いと称された今回の事件。ベネットが言うには、昏睡状態の人達はだいたい皆が「翼がほしい」という訳の分からないことをうなされながら呟いていたようだ。

あまりにも訳が分からなかった一行は、せっかくなので寝言の全文を聞く事にした。

今も尚倒れている男から、次第にこんな言葉が聞こえてきた…………





「今……私の…………

願……い事が…………

叶うな……らば…………

翼が……欲し……い…………

この……背中に…………

鳥……のように…………

白い……翼…………

付けてく……ださ……い…………

この大……空に…………

つばさを広げ…………

飛んで……行きた……い……よ…………

悲し……みのな……い…………

自由……な空……へ…………

ツバサ……はため……か……せ…………

行きたい………………」



「……この寝言、なんといいますか……詩のようですね」
「けれど、わたくしの記憶にはこのような旨の叙述詩は存在しなかった筈。だとすれば、この呪われし文は一体……?」
「清泉町でもそんなお話は聞いたことないにゃ……」
「……? どうした、旅人? なにか思い当たる事でもあったのか?」
(……これ、まさかあの歌だったりしないよね?)



……はい。読者の皆さんであれば一発で分かると思われるのですが、どうやら男がうなされている悪夢から生じる寝言が、どう聞いてもあの定番の卒業ソングなのである。どういう物語の弄り方したらそんな形になるんですか。ていうか翼をください歌ってうなされる悪夢こそ何なんだよ。

おまけに、ここまでの事実が判明したとして、じゃあここからどうやって呪いを解くなりして皆の目を覚まさせるんだって話になる訳で。状況が見えたら却って解決手段が分からなくなるってどういう事ですか?


──しかし、ここで異郷の旅を続けてきた空に、とある1つの案が浮かんできた。



「……もしかしたら」


これらの情報から何かを思いついたのか、空は皆にこんな提案をしてきた。

「皆、このうなされ声は暗号かもしれない。各暗号に呼応した言葉を届けてあげれば、きっと呪いが解かれて目を覚ますはずだ!」
「ほぅ? 暗号…… 良いわ、この断罪の皇女も貴方達の力になる事を約束するわ!」
「なるほど、良い着眼点ですね。試す価値はありそうです……」
「暗号……? それ、なんだ?」
「ええっと、そうだな…… レザーにとってのルピカみたいに、その人達じゃないと分からない言葉、みたいなものかな?」
「暗号に呼応した言葉、ですか…… 出来る限りは頑張ります!」
「にゃっ! 男がまた寝言を言いそうだよ! 試すなら今のうちにゃ!」


ディオナが呼び掛けたように、倒れている男はまたしても悪夢?にうなされはじめた。
物は試しという事で、早速全員でそれぞれ思い浮かんだ呼応する単語を放つことにした。

※ここからは一時、地の文がフェードアウトします。呼応の1連のやり取りを是非とも最後まで見届けてやってください。





「今……私の…………」

パイモン「気持ちを込めて……!」

「願……い事が…………」

ノエル「……祈るように」

「叶うな……らば…………」

モナ「ほんとはモラとか欲しいけど」

「翼が……欲し……い…………」

空「やっぱり原石(ガチャ石)欲しいかな!?」



パイモン「ちょっと待て!? こういう感じか!? こういう感じなのか!?」
空「確実に手応えがあるぞ!」
モナ「…………はっ! わ、私は一体何を……?」
フィッシュル「占星術師よ。あなた、本当に大丈夫なの……?」



「この……背中に…………」

レザー「ハト、鷺、ヤマガラの」

「鳥……のように…………」

ディオナ「泥とか跳ねたら目立つけど」

「白い……翼…………」

ベネット「頼むから聖遺物を!」

「付けてく……ださ…………」

フィッシュル「…………ファトゥス執行官の単位!」

「位…………」

フィ&モナ&空「「「ファデュイ滅ぶべし!!!」」」



ディオナ「本当に解読出来てるのコレ!?!?」
ベネット「何言ってるんだ! ホプキンスさん(倒れている男性)の表情がみるみる変わってきている! 解読出来てる証だろ!?」
ノエル「でも、どこか苦しんでいる様にも見えるのですが……;」
フィッシュル「解呪が容易くいくとは思わない事ね。何かを成すには、それ相応のリスクというものを背負う必要があるわ」
レザー「……! 次、来る!」



「この大……空に…………」

パイモン「蒼鳥」

「つばさを広げ…………」

ディオナ&レザー「「風域」」

「飛んで……行きた……い……よ…………」

フィッシュル「滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器、湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる 爬行はこうする鉄の皇女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ」

「悲し……みのな……い…………」

ノエル&ベネット「「モンドの」」

「自由……な空……へ…………」

空「夕凪」

「ツバサ……はため……か……せ…………」

モナ「公子のお金で琉璃亭」

「行きたい………………ってうわああああっ!?!?」

全員『目が覚めたぁ!?!?!?』





  な  ん  だ  こ  れ



完全に○ごメ○で流行ってた翼をくださいネタを最新&原神アレンジで提供しやがったよコンチクショウ!
しかもフィッシュルとモナが比較的ボケ役に回ってるのどうかしてるだろ!?

何はともあれ、この謎詠唱の影響は大きかったのか、残っていた悪夢に囚われた者達も無事に全員目覚めたので、この話はこれにて一件落着となった。





さて、その帰り道での事だった。

フィッシュル達は街に帰る為、空達は街に着く為、レザーはせっかくなのでもう少し遊ぶ為にモンド城に移動していたのだが、門の前で帽子から衣服まで燃え上がるほど真っ赤な幼女が立っていた。


「あっ、栄誉騎士のお兄ちゃんにパイモンちゃん! それにレザーにみんなも! おかえりなさい!」
「! クレー、久しぶり……!」


クレーという女の子に直ぐさま駆け寄ったのは、意外にもレザーだった。

実はクレー、西風騎士団の「火花騎士」という少々特殊な役職で騎士団に守られている。の割には結構アウトドア派で、野山に遊びに行った際にレザーを気に入って仲良くなったという経緯がある。

……しかし、彼女に対して特殊な反応をした人物がいた。



「……やっぱりです! 私は彼女に用があってモンドまで来たんです! 偉大なる学識の継承者に!!」
「「えっ、クレーが!?!?」」


……ちょっと待て。モナ、君は何を言ってるんだ?
こんな完全なおこちゃまであるクレーに学識の継承とか出来てるのだろうか?

当然ながら不安になる空とパイモンだったが、そんな心配をよそに、モナはクレー達の方へと歩みよっていった…………



尚、今回の一連の流れで縁を結んだという事で、解散間際に今回関わったメンバーを全員塵歌壺に招待してあげた。なんならモンド城まで帰ってきたので、西風騎士団の皆やディルック、ウェンティにバーバラも壺に招待した。やりたい事はきっちり全部やってのけてしまう辺り、空もちゃっかりしていたのであった。








……最後に、場所は打って変わって、とある海岸。

ここには、今回飛来した流星群の大元みたいなものが残されていたのだが、1人この巨大な隕石を調査している者がいた。


「……っはは。とんでもない事だよ。『この星空自体、全て巨大な嘘』だなんてね」


散兵は1人、大元の隕石に込められた記憶──いや、厳密にはその記憶が意味するテイワットの星空に関わる考察に、心を踊らせていた。


しかし、この考察の詳細については、現在進行形で未だなお明かされてはいないのであった…………





──────────────────


はい、ここまでが実質プロローグ後編となります。

本シナリオの元ネタは原神Ver 1.1『帰らぬ熄星』、及びモナの伝説任務、映天の章となっております。黎明期の頃のネタなので多分大半は知らないかもしれません。私は実はやっておりました。原神古参勢です、ハイ。

次回からは大幅な人員増加はないのですが、今後も適時メンバーを追加出来たらと思います。

それでは感想をどうぞ!

とある雪山でのすれ違い ( No.11 )
日時: 2024/01/02 16:58
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

今回の物語は原神Ver1.2「白亜と黒龍」が元ネタです。随分古いお話ですが、まぁ宜しくお願いいたします。それでは、早速本編です。





「~~~~んっ。たまには、こんな感じにゴロゴロする昼下がりも悪くないよな」



あてもなく日々過酷な依頼をこなしながら妹の行方を追う男、空。

この日は久々に、予定を詰め込む事もなければ街にくりだすこともなく、ただただ塵歌壺で穏やかな時間を過ごすことを選んだようだ。尚、パイモンも塵歌壺だと緊張感が薄れるのか、現在絶賛ぐっすりおやすみ中である。


しかし、現在塵歌壺に居座っているのは実は空とパイモンだけではなく…………




「あ、あのっ! き、今日は私を家(?)……に招待してくれて……本当にありがとう……!」

空「おっ、スクロース! やっと実験がひと段落ついたのか。話しかけても全然気づいてくれなかったからなぁ……」



1階右奥の部屋から顔を出してきたのは、淡い緑色の髪と大きな丸ぶちめがねが特徴的なスクロースという挙動不審ぶりが目立つ女の子だ。

西風騎士団の錬金術師という肩書きを持っており、中でも彼女は生物錬金を専攻分野としていた。


しばらくモンドに滞在してる際にたまたま縁があったのでスクロースを塵歌壺に招待したのだが、休日の日はもっぱらこちらに引きこもるようになってしまった。なんでも、休みの日も引きこもって研究に明け暮れたいのだが西風騎士団が許してくれないので、休みを正当化しつつ研究に没頭できるこの塵歌壺は願ってもない存在だった模様。




そんなスクロースとの縁についての話をしたところで、彼女がまた口を開いた。どうやら何か話したいことがあるようだ。



スクロース「あっ、あの。今日ここに来た時に、家の入口に置いてあった冊子についてなんだけど……あれは一体、何なの……?」
空「ん? あぁ。この間、アルベドに呼ばれてドラゴンスパインまで行ってきたんだけどさ。ちょうど同時期に写真機が出回ってさ。運良く手に入ったもんだから使わない手はないと思って、旅の道中を写真に収めてきたんだよ。冊子はその時に撮った写真集」
スクロース「へぇ…… 先生にお呼ばれしたあの時の…… 私も、詳しく見ていいかな?」
空「勿論。なんなら、当時のエピソードでも聞いてくかい?」
スクロース「……! うん!」



スクロースが先生と呼び慕うアルベドという男は、西風騎士団の首席錬金術師かつ調査小隊の隊長を務める、『白亜の申し子』と呼ばれる天才肌の人物だ。首席錬金術師と聞くと性格に難でもあるのかと疑いたくなりそうなものだが、彼はちゃんと誠実な人である。強いて言うなら、他者と密接な関係性を築くのをあまり好まないので一定の距離感をとっているという位か。





そうこうしている内に、スクロースは入口に置いてあった冊子を1部持ち出してきたらしい。それを流し目で確認した空は、印刷元の原本をバッグから取り出した。

2人はゆっくりと冊子を開いたのだが、ここで実は手違いが発生してしまう。空は右側から冊子を開いたのだが、スクロースは左側から開けてしまったのだ。しかも両面とも白紙の表紙だったために、2人は全く気づきもしない。ここで確認をすればよかったのだが、そのままテイワットが誇る雪山の思い出話が始まってしまった……





空が見ている写真:1枚目の拠点の写真
スクロースが見ている写真:6枚目の遺跡の写真





空が見ているのは自分達が道中お世話になった旅の拠点の写真。この洞窟はアルベドがドラゴンスパインで研究を行う為の拠点であり、様々な実験器具などが持ち込まれている。防寒対策や料理なども保障されており、身も凍る大自然の脅威と対峙するにあたり、あの場は重宝していたと空は当時を振り返っていた。

一方、スクロースが見ているのは雪に閉ざされた巨大な門だ。中は秘境となっており、1度きりの高難易度試練や武器の突破素材、今回だと己を強化する為の『聖遺物』を入手できる場となっている。原神プレイヤーである旅人諸君であれば、何度もこの場を訪れたのではなかろうか?


いきなり秘境の写真が出てきたことに驚くも、続いたのはさらに衝撃的な言葉だった。







空「俺達、しばらくはここで過ごす事になったんだ」
スクロース「……えっ!? ここで生活していたの!?」
空「まさかティマイオスも一緒だとは思ってなかったよ」
スクロース「ティマイオスさん、ここに来ちゃったの……!?」
空「道中もアルベドの研究を手伝わされてさ、実のところ休みはほぼないようなものだったよ」
スクロース「先生、こんな所でも実験出来たんですか!?」
空「挙句の果てには料理を作ってくれなんて言われてさ。そりゃあまぁ大変だったよ」
スクロース「料理作る暇あったの……!? 魔物に襲われなかった……?」



ここで聞きなれない名の人物が挙げられたので紹介しておこう。
空が話していたティマイオスという男。彼もまたモンドにおける錬金術師の1人で、スクロースの兄弟子にあたる人物だ。普段はモンド城内で雑貨屋の隣に居を構えており、日夜錬金術の研究に明け暮れている。
テイワットにおける錬金術には合成台と呼ばれる装置が欠かせない。本格的な錬金だけでなく、アイテムの合成、質を変更させる変転、不要な聖遺物を新たなものへとリサイクルさせる廻聖も行える。テイワットでの旅を続けるにあたり、空もこの装置には何度も世話になった。しかし、初めの頃は合成台の使用許可を求めるのに、ティマイオスに声をかけるのを躊躇っていたようだ。旅人である読者であれば、この設定に心当たりがあるかもしれない。


……さて、話を戻そう。確かにアルベドの拠点であれば、実験を断続的に実施する事も出来たろうし、料理を作れと指示されても別に不可解な事ではなかった。
だがスクロースからしてみればただ事ではない。この高難易度の秘境に皆が泊まった!? しかも神の目を持ってないので非戦闘員のティマイオスもいたのに!? こんな場所でよく皆生きて帰ってこれたね!? というか料理しようものなら秘境内にいる魔物達にも流石に気づかれるよね!? よくやらせようとしたね!?


空「寒さがしのげるってだけでも有難かったもんだよ」
スクロース「そ、そうだったんだね…… 凄いなぁ……;」



なんだか嫌な予感……? 感想はまだ

とある雪山でのすれ違い ( No.12 )
日時: 2024/01/02 17:00
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

スクロースがやや引いていることは気にせず、次の写真に移る。お次はというと……



空が見ている写真:2枚目の激おこプンプン丸状態の巨大イノシシ
スクロースが見ている写真:5枚目の両手剣を振るう水色の髪の長身の女性の写真




スクロース(あれ、この人ってエウルアさん……? ドラゴンスパインでも見かけることがあるとは聞いてたけど……)


映っているのは西風騎士団の中でも『波花騎士』にあたるエウルアという女性。実はかつてモンドを悪政で支配していた旧貴族の家系にある。故に、城内の大半の人達は彼女をよく思っていない。しかし実態はというと、一族復興の為に過度な英才教育を施されたエウルアにとって、かの野望を果たす気は全くない。旧貴族としての怨恨はよく理解してるので、下手に反論や逆上するでもなくただ一言「この恨み、覚えておくわ。」とだけ言葉を返し、未だに誰一人として一度も恨みを返された形跡がない。その為、彼女との親交が長い者達からは、割と信頼を勝ち取れている様子。勿論、スクロースもその1人だ。

普通なら気難しくも誠実な姿勢を見せてくれるエウルアであれば、空も本質を十分に理解し仲良くしていけただろう。だが、現在空が見ているのは人ですらない。イノシシだ。


空「あぁ、これは……; 俺達コイツのせいで大変なことになったんだよな……;」
スクロース「えっ……? な、なにかあったの?」







空「俺達がドラスパで採集をしてる時に、突然奥の洞穴から出てきてな」
スクロース「洞穴……? そんな所で何をしてたんだろう……」
空「いきなりカンカンに怒った状態で俺達に向かって突進してきたんだ!」
スクロース「え、怒ってたの!? あと突進!? 剣を振るったりじゃなくて!?」
空「幸い、その時はアルベド以外にもフィッシュル、ベネットとも行動しててな。なんとか倒し切ることは出来たんだけど……出来れば二度と戦いたくはないかな;」
スクロース「倒しちゃったの!?!? ねぇ、本当に大丈夫!? 本気で恨み買ってないよね……!?」


ドラゴンスパインの麓には冒険者教会が設営した拠点がある。アルベドの元へ向かう際に空達もここを訪れ、雪山の危険性を教わったり、極寒に対抗する為の料理を教わったりもした。ところが、この料理こそが今回のトラブルの引き金でもあった。
ドラスパの極寒環境に対抗すべく編み出された料理、その名も『お肉と野菜のシチュー』。実はこの料理を作るには【冷製鮮肉】という特殊な肉が求められた。厳しい寒さによってたとえその身が氷漬けになっても、生命活動を続けられるように独自の発達を遂げた肉質だからこそ、防寒料理というオリジナリティ溢れる料理を生み出せたのだろう。
この冷製鮮肉はドラゴンスパイン地方でのみ見られる雪イノシシから採集できる肉なのだが、イノシシであろうがボス格は存在する。それが写真の【雪のイノシシ王】である。通常個体よりも遥かに大きすぎる巨躯(下手したらモンハンの大猪ドスファンゴよりもデカい)から繰り出される突進は目を見張るものがあり、他にも跳ね回りで落雪を引き起こすなど、雪山の脅威の体現者とも言えよう。冷製鮮肉を欲した空達もコイツとの戦闘は避けられず、極寒とのWパンチの中で辛くも勝利を果たしたのであった。

が、スクロースにとってはとんでもないことである。あれ程凛々しく優しさも兼ね備えている波花騎士が人の話も聞かずに攻撃を仕掛けた!? なんなら空や冒険者の2人はまだしも、アルベドは流石にご存じだろ!? それでも攻撃の手を止めなかったの!?
しかし悲しい事に、日頃から恨みという単語を多用するエウルアが怒りや怨みを込めた行動をしていたとしても違和感が然程仕事をしない点が、彼女の口を噤ませた。流石に何かの間違いではあってほしいのだが……


スクロース「(私達が知らないだけで、エウルアさんも裏で色々抱えているのかも……)……大変だったんだね;」
空「あぁ; あの時はマジで一瞬死を悟ったよ; で、次なんだけど……」





空が見ている写真:3枚目の温かなシチューの写真
スクロースが見ている写真:4枚目のギラついたシスターの写真





空が見ているのは先程の戦いの果てに作ったお肉と野菜のシチューだ。先述のように雪のイノシシ王との激しい戦いを乗り越えてようやく完成にこぎ着けた珠玉の一品。古代レシピを参考に現代に蘇らせる事に成功したお礼として、空もまたこの料理を作れるようになった。作りたてアツアツな本料理は雪山でいただくと格別であり、特にじっくりと煮込まれた冷製鮮肉は絶品という他なかった。
一方スクロースが見ているのはギラついた視線を送るシスター。彼女の名はロサリアと言い、バーバラと同じく西風教会に所属している。しかし同属のシスター達とはまるで異なり、風神信仰、ないし布教活動に対してかなり消極的な人物だ。それ故、スクロースも彼女についてあまり詳しい話はご存知でない。
折角なのでロサリアに関するエピソードを聞こうとしたのだが……





空「温かくてとっても美味そうだろ?」
スクロース「温かい……かな……? ……えっ、今なんて!?」





スクロースが見ているのは美しさとカッコ良さが際立つ黒の修道服に身を包んだ女性だ。大人の女性らしさなら確かに分かるが、失礼ながら温かいという印象は殆ど見受けられず、むしろ冷たいように思われる。事実、冷たい性格である。しかも美味しそうとは一体どういうこと!?パニックになるスクロースをよそに、空はさらなる爆弾を落とす。





空「俺もそうなんだけど、ベネットやフィッシュルも大喜びでな。『大好物が出たぜ!』とか『幽夜浄土の晩餐に相応しき至高の料理……!』って盛り上がってたんだよ」
スクロース「ベネットもフィッシュルも何を言ってるの!? え、男女見境なくなの!?」
空「みんなで囲んで頂いたんだ。いやぁ、美味しかったな……」
スクロース「そ、そんなのハレンチすぎるよ!? 他の子達に刺されたりしてないよね!?」
空「? ……あっ、そうだ! 後でガイアやディルックの旦那にも振る舞うつもりだったんだ。特にもも(肉)が最高で、酒の肴に持ってこいだろうから……」
スクロース「うわああああああああああやめてええええええええええー!!!!!それ以上はアウトだよおおおおおおおおおおおー!!!!!」


ベネットとフィッシュルが喜んだのは寒さを凌げる料理が出たからであり、特に冷製鮮肉には舌鼓を打っていた(フィッシュルのオリジナル料理も肉の盛り合わせであり、両者ともかなりの肉好きだから)。またメンバーには大食いや食べ盛りの人もいたため、おかわりの声が絶えず響いた。

これだけなら普通の光景なのだが、スクロースが驚いたのは全員揃って年頃のシスターに手を出した(と勘違いしたから)からだ。超セクシーなシスターがタイプの皆々様にさすがのスクロースも思わずドン引く。あなたたちのタイプは同年代かと思ってたんだけどなぁ!? しかもこの冷徹な修道女を皆が奪い合った!? あと空は太ももフェチなの!? 知りたいけど知りたくなかったよそんな性癖orz おまけに懲りずに他の人にも勧めようとしてるし!? ガイアはまだしもディルックの旦那はマズいですよ!? ジン団長とリサさんが何しでかすかいよいよ分からなくなるって!! 普段はコミュ障で自分の意見を強く発言する機会もそうそうないのだが、今回ばかりは話が違う。こんな展開はノーサンキューです!!! まさかの展開にスクロースも吐き気を覚える……





皆への風評被害。マジですみませんOTL

とある雪山でのすれ違い ( No.13 )
日時: 2024/01/02 17:04
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

スクロース「うっぷ……; は、早く次に行こっか!」
空「え、ええ……?」



空が見ている写真:4枚目のロサリアの写真
スクロースが見ている写真:3枚目のシチューの写真



写真はここで折り返し地点であり、半分を超す。空はロサリアの写真、スクロースは美味しそうなシチューの写真が目に入る。このシチューの写真からも衝撃発言が繰り出されてしまうのか? 多少なりとも警戒していると……

空「地元でも有名みたいでね。無理を言って記念写真を撮らせてもらったんだ」
スクロース「へぇ……(ドラゴンスパインは寒いし、こういった料理は特別なのかもしれないなぁ)」
空「それと……」





空「パイモンがあまりにも震えた様子で泣き出してな……」
スクロース「ぷっ…………!?」
空「色々と忠告を受けることになってな。一瞬背筋がヒヤッとしたよ……」
スクロース「背筋がヒヤッとしたの!? そんな事あるの!?」


ロサリアはその見た目に違わず冷たくリアリストな性格である。群れることを嫌い、単独行動を続けるロサリアは己の信念を強く持つ気概もある。此度、旅人とアルベドに目をつけたのも、両者ともモンドの外からやってきた者同士で、改めて信頼に足る人物なのかを彼女自身が見極めたかったからに他ならない。途中、何度か会話に交ざって探りをいれる場面もあったのだが、冷酷な視線と現実的な忠告に思わずパイモンは耐えきれなくなってしまった。空自身も過度な緊張感を持ってしまったという自覚はあるが、裏に隠された温情と親切心は決して見落としてはいないだろう。

が、スクロースが見ているのは美味しそうなシチューである。大自然の恵みから採れた野菜やお肉から作られる温かさの権化のような料理。そんなシチューを見てどうして身体を震わせて泣き出したの!? しかも忠告をもらった!? 深刻そうに話す空をよそに、あまりに不可解な光景を想像したスクロースは疑念とある種の恐怖がこみあげてくる。


スクロース「えっ……?? こういうのって温まるものじゃないの? パイモン、本当に震えてたの?」
空「大マジなんだよ、スクロース。パイモンが起きてたら絶対癇癪起こすだろうなぁって位には。それこそ温まる事が出来るのはよっぽどなMじゃなきゃ……」
スクロース「えっ…… 空ってもしかして…………」
空「いやいやそこは勘違いされたくないなぁ!?」


写真が入れ違ったことにより可愛い引っ込み思案な女の子に言われのない勘違いをされてしまう。流石に取り乱した空にビビりつつも、何かご機嫌取りに新しい薬品でもあげてみようかと考える。だが、次の写真は……;





空が見ている写真:5枚目のエウルアのチェキ
スクロースが見ている写真:2枚目の雪のイノシシ王





スクロース「!?」
空「へへっ、よく撮れてるだろ? 頼み込んだ甲斐があったよ」
スクロース「頼み込んで撮れる写真かな、これ……!?」


銀雪を背景に優雅に舞うエウルアの写真はベストショットの1つであり、空にとっても思い入れがあるものだ。彼女は旧貴族の苦悩、一族からの重圧により、己の本懐を見失ってばかりだったらしい。しかし、とある老いぼれの偵察騎士に師事し、己を強調させる生き方を見出した事で、今の独特な距離感、雰囲気を掴み取ったのだ。アンバーとはその頃から仲が良く、空が初対面の時もアンバーを介して色々な話を聞いていたと教えてくれた。空もエウルアの独自の感性に直ぐに慣れ、軽口を叩き合うほどの仲にまでなった。その後は直ぐにでも塵歌壺に招待し、暇があれば足を運んでもらえるようになった。新たな友人との出会いは嬉しく、そして素敵なものだ。

だがスクロースが見ているのは超巨大なイノシシが今にもこちらに向かって飛び込んできそうな写真。この写真って頼み込んで撮れるものか!? そもそもそんなお願い聞いてすらくれない気がするが!?
しかもその後、さらに衝撃的な発言が……;


スクロース「待って待って待って!? 幾らなんでも危険すぎない!?」
空「この後マナーを叩き込んでくれてね。普段から所作にも気を付けなきゃいけないってのがどれ程のものか思い知らされたよ」
スクロース「マナーを叩き込まれたの!? 如何にもマナー通じなさそうなのに!?」
空「な、失礼な事言ってやるなよ、スクロース! この後アンバーとも一緒に漬け野菜肉炒めも食べたんだぞ!」
スクロース「よく一緒に食卓囲めたね!? 私じゃ怖すぎてとても無理だよ!?」
空「この料理がまぁ厄介でね。伝統ある料理だってのは分かるけど、あまりにも酸っぱくて俺もパイモンもアンバーも完食には一苦労したんだよ……」
スクロース「あ、料理を食べたの!? 多少律儀なところもあったの!? この巨躯で!?」


エウルアがドラゴンスパインで見かける事があるのは、日頃から旧貴族としての所作や鍛錬を続けているからだ。曰く、寒空と冷水は罪人の血をも凍らせるとの事で、氷元素の神の目を持っている点にも納得がいく。空はこの機会に、エウルアから旧貴族の所作やマナーについて一部を教わり、彼女の強さの一端に触れる機会を得た。モンド城に戻ってからはアンバーと一緒に旧貴族に伝わる伝統料理を頂いたのだが、これがまぁ酸っぱいのなんの。皆揃って口をすぼませたのを横目に、1つ恨みを晴らせたかしら?とエウルアは少しばかり笑みを浮かべていた。

一方スクロースはというと、The・アウトローと言わんばかりの巨大イノシシからマナーを教わったのだという。アルベドか誰かの差し金によって、修行の一環として巨大イノシシとの戦闘と並行してマナー講座でも催したのではないかと疑いたくなる。おまけにマナー講座の後にアンバーとも一緒に飯を食べたの!? アンバーがいくら気さくな性格だからってイノシシ王とも仲良くなれるか!? それ以前にイノシシ王は行儀よく料理を頂けたのかよ!?





風評被害がひどいな…;

とある雪山でのすれ違い ( No.14 )
日時: 2024/01/02 17:07
名前: HAL (ID: J0KoWDkF)

空「……とそんなこんなもあって、今回のドラスパ遠征はとっても楽しめたんだ!」
スクロース「そ、そうだったんだね……;」


さっさと話を終わらせたいと思うスクロースは最後の写真へ。すべての元凶である最後の写真はというと……




空が見ている写真:6枚目の秘境の写真
スクロースが見ている写真:1枚目の拠点の写真




全ての元凶である最初と最後の写真。スクロースが見ているのは実験器具が居並ぶ拠点で、空が見ているのは暫くの間雪に閉ざされていた秘境である。


空「実はアルベドからの依頼以外にも、ドラゴンスパインに纏わる任務を幾つか受けていてね。その1つとして見つけたのがこの場所だったんだ。新しい場所を見つけたとタルタリヤが喜んで駆け出していったんだけど……」
スクロース「……あれ?」
空「? どうかしたのか?」
スクロース「私、ここに来たことあるよ!」
空「えっ、本当に!?」


なんとスクロースはかつてこの拠点を訪れた事があるという。まぁ先生のドラスパ研究拠点なので、長らく師事しているならば知らない筈がないのだが; 空はこの未踏の秘境に行ったのかと驚くが、スクロースが見ているのは拠点の写真だ。なので……





スクロース「先生がどうしても急ぎで調べたいことがあるって言って、支度を済ませたと思ったら私も一緒に連れていってくれたんだ……!」
空「ここに来れたのか!? 道中すごい吹雪いて大変だった筈なんだが!?」
スクロース「まさかティマイオスさんも一緒だとは思ってなかったよ」
空「ティマイオスまでここに来れてた……!? アイツ戦えないのに!?」
スクロース「道中も先生の研究を手伝ってね、本当に充実した時間だったよ!」
空「アルベド、こんな場所でも実験やらせたのかよ!?」
スクロース「挙句の果てには料理を作ってくれなんて言われてさ。そりゃあまぁ大変だったよ」
空「料理作る暇あったのか!? それ大丈夫か!? 魔物に襲われなかったのか!?」





はい、完全に立場が入れ替わりました(笑)

この後ギャアギャア騒いでいたからか起きてしまったパイモンに状況を指摘され、確認した空が写真の見間違いに気づきOTL状態になったのと、誤解が解けるまでの数日、スクロースが該当メンバー(特にエウルアとロサリア)の顔をまともに見れなかったこと以外に被害はなかったが、互いに凹んでいたのは言うまでもない。





終わってくれ









ー 後書き ー

今回はスクロースを交えてアンジャッシュのパロディに仕立てました。リスペクト元はユリカさん(現・夢見草さん)のパロディで、あちらではツッコミとボケの役割が普段とは逆という点も面白かった記憶。本来のアンジャッシュの入れ違いネタも面白いので、興味がありましたら是非調べてみてください。うごメモなんかでも流行ったことはあった筈。

原神Ver1.2ではドラゴンスパイン実装と写真機の実装による写真撮影が当時話題となってました。原神で短編を制作するにあたり写真機を使ったネタをやりたく、そこに真っ先に合致したのが今回のネタでした。本当ならもっと早くアップする筈でしたが、やる気云々、DQM3発売などが色々合わさり、気づけば年が明けておりました……orz
今回書いていて面白かったのはブチ切れエウルアと、ロサリアをいただいた()と勘違いするシーンですね。勘違いネタを構築するにあたり真っ先に改変に成功したのがこの2パターンでした。2人とも大人の魅力が非常に強く人気もありますから、両者を推している人から罪喰いの懺悔で背後から刺突され、氷浪の光剣でアルティメット物理攻撃を喰らうやもしれません。大変申し訳ございませんでしたorz

次回更新は再びクロスオーバーに戻り、本筋を進める気でいます。こちらは今の所は不明ですが、海灯祭の記事はやりたいよなぁと思うばかりでございます。
という事で、2024年も宜しくお願い致します。


それでは感想をどうぞ!


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