二次創作小説(新・総合)

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イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【板移行】【完結】
日時: 2024/05/29 13:45
名前: 風龍神奈 (ID: dRBRhykh)

 
◆2024年5月14日追記
 長らくおまたせ致しましたが完結致しました。
 お付き合いありがとうございました。
 目次に残りのページを設置しましたので、宜しければそちらからどうぞ。
 詳細はあとがき >>209 をご確認ください。
 


◆2023年8月11日追記
 2018年頃に下記の通りスレロック致しておりましたが、書き直し以前に完結まで持っていきたいと思い少しずつ続きを書いておりました。
 漸くですが完結する事が出来ましたので、最後まで投稿します。
 過去ログに落ちていてサルベージして頂いた際に板が変わりましたが、以前「二次創作(紙ほか)板」で投稿していたものとなります。
 投稿していた当時と今とでかなり設定や文体など食い違っている部分が多々ありますが、生暖かい目で見ていただければ幸いです。
 


 (↓スルーして頂いて問題ありません)
 ※完結していませんが、設定が大幅に変わってしまったので新たに書き直したいと思います。
 リメイク後はおそらく映像版ですると思います。
 このスレはロック致します、今まで有難うございました。
 (↑まで)

 
 初めましての方も久しぶりの方もこんにちは。
 風龍神奈です。


 この物語はイナズマイレブンGOクロノストーン及びGO2ネップウ/ライメイを元にした、二次創作となっています。
 オリジナルのストーリーで展開していきます。
 主人公はオリキャラとイナクロのキャラ、フェイ・ルーンの二人です。
 

 注意事項†

・先述した通り、オリキャラが登場します。また、一部のキャラは出てこない事が多いのでご了承ください。
・オリジナルストーリーで、世界観もおそらく少し違うと思います。
・投稿初期と今とではかなり設定が食い違っている所が多々あります。修正できる所はしていきたいですが、できない所もありますので生暖かい目で見て下さい。
・荒らし、中傷コメントはお止めください。

 
 物語を読み進めていくとわかりますが、途中の章からサッカーの描写がなくなっていきます。イナクロの中心なので、消してしまうと成り立たなくなってしまうのですが、構想上サッカーを入れることは出来ませんでした(また、その際に敵チームをそれぞれで考えなければならないこともありました)。
 途中であとがきにもなくなることは書いていますので、どうかご了承下さると幸いです。
 

 以上の事で、駄目そうなものがありましたら、ブラウザバックを推奨します。
 大丈夫な方は、先にお進み下さい。


 


 〜キャラ紹介〜

 月城 癒月(つきしろ ゆづき)絵 >>105(ただ過去ログに落ちてる為見れないです…)
年齢 12
容姿 肩甲骨くらいまでの長さの綺麗な金髪に、碧眼(青色の目)。 容姿端麗。誰もが認める美人
性格 マイペース 優しい 快活。いざっていう時はやる。一人で抱え込む癖がある。
設定 太陽の双子の妹で、未来人。産まれてすぐに月城家に養子に出され、未来で育てられた。成績優秀、文武両道。魔法は得意。他にも色々使える。氷の継承者。元SSC。
 
 フェイ・ルーン
 炎の継承者。魔法も使える。癒月と同じく抱え込む癖がある。元SSC。

 
 〜〜設定〜〜
・氷炎使いはいつの世にも2人存在する。
・氷炎使いの役目は、破壊死書の守護。
・破壊死書はある組織に追われているため、守らればならない。

 

 †目次† 
第01話 序章〜プロローグ〜 >>2

【第1章 ナイトメア編】
第02話 雷門vsテンマーズ >>3-8
第03話 氷炎使いの存在と攫われた氷と炎の継承者  >>18-19 >>26 >>33-35 >>40
第04話 クロノストームvsEDSC連合 (メンバー)>>53 >>47 >>54 >>56 >>60-61
第05話 合宿 >>62 >>64-65 >>68-69
第06話 魔物との戦い >>70-72
第07話 クロノストームVSナイトメア【前編】 >>74-77 (メンバー)>>73 
第08話 クロノストームVSナイトメア【後編】 >>78-86

【第2章 模造人間(クローン)編】
第09話 新たな勢力の登場 >>88-91
第10話 洸、焔との関係 >>92-95
第11話 攫われた癒月と霧野 >>96-99
第12話 偽癒月の正体 >>100-103
第13話 禁忌の蘇生術 >>106-110
第14話 クロノストームVSクロノストーム >>111-118

【第3章 サクリファイス編】
第15話 意味 >>121-123
第16話 対峙 >>124-126
第17話 師トノ再会 >>127-128
第18話 生ト死ノ狭間 >>129-134
第19話 サクリファイスと呼ばれるモノ >>141-145
あとがき >>146

【第4章 二つの組織編】
第20話 彼ノ目的ト消エタ仲間 >>151-156
第21話 マルサグーロとマルペメーソ >>159-164

【第5章 封印編】
 ?  >>147
第22話 氷炎使いガ生マレタワケ>>165-167
第23話 破壊死書トハ >>169-170
第24話 封印 >>171 >>173-174 >>176-180
第25話 神楽ト氷炎使いを殺す者(トラディメント) >>181-186
第26話 【破滅と破壊の装置(アポストロス)】 >>187-191
第27話 楔贄の存在(サクリファイス)>>192-197 >>199-203

第28話 終章〜エピローグ〜 >>204-208

あとがき >>209

 *     *     *




 ◆お客様◇
・モンブラン博士さん
・Dr.クロさん
・時橋翔也さん
・シエルさん
・紅月琉緋さん


 オリキャラを応募して下さった方々
・モンブラン博士さん >>10 追記>>16 >>42 追記>>49
・Dr.クロさん >>15 >>27 >>50
・(我が友)時橋翔也さん >>31 海音の絵>>38 >>44 レインの原型>>43


初投稿2013年5月

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.180 )
日時: 2023/08/21 23:48
名前: 風龍神奈 (ID: Wz7AUOMy)

「始めていいぞ」
「…ああ。――全ての始まり、この地にて――」
 高らかに謳い上げる雨宮の前で、癒月の体が浮き上がる。
 キィンと耳鳴りのような音がしたかと思うと、彼女の体から破壊死書が抜け出た。
 解放されふわりと落ちてくる癒月を、フェイが抱きとめる。
「――我は破壊死書が思う限りの眠りをつかせ給うことを希う――願わくは破壊死書の安寧――浄化の力を奉りて封印することを誓う」
 封印の言葉を終え、破壊死書がゆっくりと降りてくる。
『これで、良いのだな?』
「多分。もう、君が苦しむ事はないと思うよ」
『そうか。…おい、炎の継承者』
 ふと、何かを思い出したかのように、フェイを呼ぶ。
「何だい? 破壊死書」
『…悪かったな、色々と』
「ッ!」
 突然の謝罪に、癒月を抱いたまま驚く。
『貴様らのおかげで…我はまた眠りにつく事が出来る…。どの意味でも良いが…まあ礼だ。貴様らが今まで使っていた氷炎使いの力、そのままにしておいてやる。ただ、我からの供給はないからな。気をつけろよ』
「分かった。ありがとう、破壊死書」
 心からの笑顔に、一瞬たじろいだらしき破壊死書は
『…ふん、まあ良い。我はこれで眠る。…たまには、思い出してくれても良いぞ…』
 そう言うと、炎のような氷に包まれていく。
 こうして、破壊死書は封印されたのだった。
「…ごめん太陽、これ、破壊死書の許に置いてくれないかな」
「いいよ」
 先程水無月から渡された種を、受け取って破壊死書の許へ埋める。
 すると、それを守るようにして囲みながら成長した。
「…成程。守るための樹…」
 これならば、大丈夫だろう。
「フェイ、癒月の様子は…」
 来てからの光景が驚きのあまり、暫く固まっていた神童が訊いた。
「意識はないけど…弱いけど呼吸があるから、生きてはいるよ。大丈夫」
「そうか…なら、早く戻らないとな」
「うん。戻ろう――天空移動」
 神秘的な雰囲気を放つ奥深い森の中から、五人の気配が消えた。
 後には、封印され、眠りについた破壊死書と。それを守るかのように、生えている守りの樹だけが残されていた―――。








Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.181 )
日時: 2023/08/23 23:13
名前: 風龍神奈 (ID: Wz7AUOMy)

 第25話 神楽ト氷炎使いを殺す者

 破壊死書が眠る場所から、戦った所まで戻ると、そこには神楽と闇焉がいた。
「母さん…!?」
「あら。その様子だと破壊死書を封印できたみたいね」
 ありがとう。そう続けられた言葉に違和感を感じた皆は、訝しげな視線を送る。
「そうね、皆知らないわね。――私の目的を」
 教えてあげてもいいけど…その前に。
 言いながら、彼女は癒月の方向へ片手を突き出した。
「癒月に目覚めて貰わないとね――」
 刹那。
 ビクン、と癒月の体が跳ねたと思うと瞼が上がり、青玉のような瞳が現れる。
「癒月っ!」
「…フェ…イ…?」
 ぼやけた瞳がフェイで焦点を結び、気付いたのかそう言った。
「私…何を…」
「――貴女は破壊死書に乗っ取られていたのよ。覚えていないのかしら?」
 彼女の台詞に重ねるように神楽が話し、癒月が神楽を見て一瞬怪訝そうな顔をするも、言われた事を思い出したのか、顔が青くなってくる。
 震えそうになる体を叱咤して、何とかフェイから降りると、皆から少し離れる。
「癒月…?」
「ごめんなさい……私は…また……」
 皆を巻き込んだ。
 腕を体の前で交差して震えないようにする癒月に、霧野から違うという声が飛ぶ。
「今回は、癒月の所為じゃない。だから、気にしなくていい」
「…ううん…私だよ……本当はこの世に存在しない筈の私の…所為だから…」
「「「「は…?」」」」
 彼女の後半の台詞に、皆に疑問が浮かんだ。
「――なぁんだ、知ってたのね」
 そんな事を気にせずに、つまらないわと言いたげな声が飛んできた。
 声の主である神楽を、一斉に見やる。
「教えたのはサクリファイスあたりかしらね。あれは、そういったもの見れるって言うし…。まぁ、詳しくは知らないようだし、教えてあげましょうか」
「…貴方は…」
 記憶に覚えがない人物である神楽に、癒月がそう問うも。
「――今からの事を見ると思い出すわよ。何もかも」
 答えると、指を鳴らした。
 瞬間。
 全員の脳内に映像が流れ始めたと同時に、意識がそれに吸い込まれていった。

   ◇    ◇    ◇

 神楽が初代氷炎使いであり氷の継承者であった話はしただろう。その時に、とある出来事にて殺されたが、炎の継承者であるトレイターによって破壊死書を使って生き返った事も。
――彼女は、それによって自身が人間ではなくなった事を恨んでいたのだ。だが、彼女はそれに気付く事はなかった。心の奥にあるそれに。
 知らぬまま、氷炎使いをやめた後に組織をつくり、氷炎使いと破壊死書について調べ続けていた。その間にも、少しずつ恨み憎しみが溜まっていった。
 やがて、同じ組織の者と心を通わせ、子が宿り、臨月までふた月程という時。
 長年溜まり続けた恨み憎しみ(それ)についに耐え切れなくなって、彼女の精神は崩壊しかけた。しかし、すんでの所で別人格を作り上げ、それに全部背負わせる事が出来た。

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.182 )
日時: 2023/08/23 23:13
名前: 風龍神奈 (ID: Wz7AUOMy)

 だが――逆にその人格に全て負わせた事で、それが主導権を握る事になってしまったのだ。更に、恨みを全て受け止めた故に、負に染まった人格が。
 その人格が願った事は、氷炎使いを消す事と、破壊死書の封印。
 自身がこうなった原因である破壊死書を封印し、また一因でもある氷炎使いは皆、存在ごと消す。
 本当は破壊死書も消したかったのだが、関係を調べる内にこの世界にとって重要なものであるという事が判明したので、消す事は諦めたが封印をする事で関わりを消そうとしたのだ。彼女は単に、世界を恨んでいるのではなく、破壊死書と氷炎使いというシステムを恨んでいるだけだから。
 その為、後に生まれた子――闇焉を氷の継承者になれるようにしつつも、氷炎使いを殺す者としても育てた。
 だが、ある出来事によって組織は散り散りになった。神楽自身も皆とはぐれ、未来から現代へと来て彷徨う内に一人の男性と出会った。
 彼との束の間の幸せを得た時に、彼女はふと気付いた。

――全てを終わらせる者を生み出せばいいのでは

 と。
 自身の力と氷炎使いや破壊死書に関する事を与え、何れ氷炎使いとなり、最終的には破壊死書の封印をし、残った氷炎使いを消す為の、言わば道具。
 これが、癒月が生まれる理由となったものであった。
 計画が進み、やがて癒月を産むも、偶然で双子となり、兄である太陽に破壊死書の封印に関する事が渡ってしまっていた。仕方ないと彼に記憶の封印を施そうとした時に、人格が入れ替わってしまい、封印の事を伝えられた。その後すぐに奪い返したが、封印が施されてしまったので諦めて男性に託し、癒月を氷炎使いで関わりのあった月牙に預け、自身は姿を消した。
 一方で、太陽を託された男性は、その後消えた神楽と癒月を気にしながらも、彼を育てた。何も聞かずに神楽の事を受け入れた彼は、何となく予感がしていたのだ。いつか、いなくなるのではと。それが当たり、自身の前から消えた事に悲しみは覚えたものの、二人の子の片方である太陽がいたおかげで、彼は寂しくはならなかった。
 そして消えた神楽はと言うと、組織を復活させ、計画の為の準備を進めていた。しかし、その為にはまず癒月が成長し、氷炎使いのどちらかにか選ばれないといけない。事を進めるのはその後と決めると、その時が来るまではひそかに活動を続けていたのだ。
 癒月が成長し、氷炎使い氷の継承者となった事で、マルサグーロも動き出した為、マルペメーソも計画を発動させ、活動を始めた。
 そこから先は、作中の通りだ。

 ◇     ◇     ◇

「……ッ…」
 自身が産まれた真意を知った癒月の表情は、かなり青褪めていた。
 サクリファイスから道具として産まれたのは聞かされた。だが、目の前にいる人物が実の母親で、その斜め後ろに立っている闇焉が、異父兄だとは思わず、動揺を隠せない。
 それに加えて、破壊死書から解放されたばかりで、意識がなかった所を無理矢理覚醒させられたのも相まって、癒月は倒れてしまう。
「癒月っ!?」
 彼女が倒れた音で現実に戻ってきた皆は、驚くが神楽が密かに仕掛けた魔法で体が動かず、近寄る事ができない。
「あらあら。意識を失っちゃって。まぁ、色々負荷をかけたからでしょうけど。…でも、まだ氷炎使いを消すっていう目標は達成できてないから…使わせてもらうわよ」
 計画の為に、癒月を連れ去ろうと近寄って手を伸ばす。
 その、瞬間。
 花吹雪が舞い上がったと思うと、彼女の姿がなかった。
「なっ…!?」
「――流石に、それをさせる訳にはいかないわね」
 不意にいないはずの人物の声が届き、ざっと皆が見る。
 そこには、癒月を抱えた、月牙がいた。

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.183 )
日時: 2023/08/27 23:33
名前: 風龍神奈 (ID: Wz7AUOMy)

「師匠…!?」
「月牙…っ!!」
 驚きで呼ぶフェイに対し、怒りを滲ませながら呼ぶ神楽。
「何故邪魔をするの」
義母ははとして義娘むすめを助けるのは当然でしょう? 貴女も分かるはずだけど」
「さぁ? 私は娘何て産んだ覚えはないわよ」 
 その言葉に一瞬月牙の表情が変わったが、すぐに打ち消す。
 と、別の事を訊いた。
「貴女の願いに何故、癒月(この子)が必要なの? そこにいる氷炎使いを殺す者がいればいいのではないの?」
「何故って? 月牙、貴女も分かるでしょう? 貴方達月城家がいないからよ」
 十一代目現氷炎使いから遡って八代目以前はそれぞれ聖域にいるからそれごと消せばいい。だが、九代目から十一代目までは聖域にいない。しかし、九代目からは月城家が養子とはいえ続いている。だからその為に癒月を使って、月城家を探す必要があるのだ。
「そんな事の為に…」
 この子を使おうとするのか。
 恨みに呑まれて心まで変わってしまった神楽に悲しみを覚えつつも、彼女を止めるためにフェイに癒月を預け、神楽の方へ振り返る。
 実母であり初代氷炎使いでもある神楽と、義母であり十代目氷炎使い炎の継承者である月牙との戦いが始まる。

――かに思えた。

 その瞬間を、月牙とフェイ達は、捉えていた。

――それまで微動だにしなかった闇焉が短刀を構えたと思うと、動いて神楽を突き刺した事を。

「「ッ!?」」
 驚きに染まる皆の前で、神楽の体が崩れ落ちる。
「何で…何でだ!?」
 糾弾する雨宮に、闇焉は違う、と否定し
「殺ったのは、氷炎使いの力だ。神楽を殺した訳じゃない」
 そう答えた。すると。
 彼女の髪から徐々に黒が消えていき、元の色が――癒月と同じ金色が現れてくる。
 雨宮が駆け付けたと同時に瞼が上がり、彼を視界に捉える。
「…太…陽…?」
 その声音が、あの時――封印の術を思い出した時と同じ事に気付いて、母さんと呼んだ。
「良かった…無事だったのね…」
 弱った笑顔を見せながらも、自分の無事を喜んだ彼女に、先程までの状態とは正反対な事に戸惑いを覚えるが、記憶を見せられた通りその時の神楽は恨みに染まった人格が支配していたので、別何だと思う事でそれを消す。
「…ッ」
 一方、フェイに抱かれていた癒月は、意識が戻ったのかぴくりと体が動き、目が開けられた。
「癒月っ」
「…フェイ…」
 彼に気付いて名を呼ぶと、何かに気付いたのか神楽の方を見る。
 意識を失う前に見た時と髪色が違い、自身と同じ色になってるのに困惑しつつも、雨宮がいる事に気付いて降ろしてもらうとゆっくりとだが彼女の元へ向かう。
 暫く無言だった月牙も、癒月が心配であったのか一緒に向かった。
「……お母さん…?」
 神楽の元へ来た癒月に気付いて此方を見た彼女に、声を震わせながらも訊いた。
「……もしかして……癒月…?」

Re: イナクロ 〜炎と氷を受け継ぎし者〜 【更新再開】 ( No.184 )
日時: 2023/08/27 23:36
名前: 風龍神奈 (ID: Wz7AUOMy)

 記憶を辿るのに時間がかかったのか、返事が来るのが遅かったものの、自分の名を呼んでくれた神楽に、涙が溢れてくる。
「はい…っ!」
 望みは薄かったのだ。人格が入れ替わったとはいえ、その時はほぼ兄である雨宮に向けられていたから。自身は、覚えられていないんじゃないかと。元の人格ではない、負に染まった人格が計画して、道具として産まれた自分だから。
 でも、実際は覚えててくれた。名を、呼んでくれた。
 それだけで、癒月は救われたような気持ちになる。
「…情けないわね、神楽」
 こんなに子供達を心配させて。
「ほんとね…母親失格だわ…」
 微笑みながら答えた神楽だったが、彼女は一度死んだ身だ。それを、氷炎使いの力によって息を吹き返し今まで生きてきた。そして、その力は闇焉によって消された。

――つまり、彼女は力を失った事で、死ぬことになる

「母さん…?」
 体の端から粒子になって消えていく神楽に、雨宮が驚く。
「ごめんね、太陽…私は本当はこの世にいない身。氷炎使いの力で命を繋いでいただけ。それを失ったから、消えるしかないの。…あの時、封印の術の事しか出来なくてごめんね…でも、愛してるわ…」
 優しく雨宮の頬に触れると、涙がつぅと落ちた。
「母…さん…!!」
 泣き始めた雨宮を名残惜しそうに見つめると、癒月の方を振り返り
「癒月…貴女がもう一人の人格わたしによって産まれた道具なのは分かっていた…あの人格ひとは最後まで貴女を娘として見なかったけど…私にとって、貴女は最愛の娘よ…ごめんね、何もしてあげられなくて…でも、貴女は道具ではない…一人の人間よ…だから、自由に生きなさい…愛してるわ…」
 そう告げる。
「お母…さん…っ!!」
 言葉を伝えられるとは思っていなくて、しかも、自分を分かっていて…もう一人の人格が産んだのに、娘と…最愛の娘だと言ってくれた母に、涙が止まらない。
「月牙…後は頼んだわ…」
「ええ。大丈夫よ、任せて。――さようなら、一番の友神楽」
 毅然とした態度で受け取った月牙に安心して、瞼を閉じる。
 同時に、神楽の体が最後の粒子となって消えた。
 母に再会できたと思っていたのに、それが最後となるなんて、誰が予想しただろうか。
 揃って静かに泣く双子に、周りはどう声をかければいいのか迷って動く事が出来ない。
 だが、そんな中で動く者が一人。
「…人として、還せたか」
 二人の許に、闇焉が来た。
「闇焉、貴方は何故あのような事を?」
 涙を拭っている二人の為に、月牙が訊く。
「…神楽を、救う為と……」
 後半を濁した彼に、じっと目線を向ける。
 ややあって、観念したのか吐いた。
「……異父妹いもうとを、助けたかったからだ…」
「ッ!」
 異父妹、という単語に癒月の肩が跳ねた。
 いや、そんな。まさか。
「貴方…知ってたわね? 癒月と雨宮くんが、異父弟妹いふきょうだいな事」
「見せられたんだ、神楽に。組織が散り散りになってから、また集結して再開した後、彼女に会ってから暫くして。驚いたよ…まさか、同じように道具として使われる予定だったとは思わなかったからな」
「…闇焉、お前も癒月と同じ…だったのか?」
 暫く口を開いてなかった神童が、問うた。


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