二次創作小説(新・総合)

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ダンガンロンパ The A:re ーもうひとつの絶望学園ー
日時: 2025/10/12 09:12
名前: kuzan (ID: RZ8p8W3p)
参照: https://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=26917&p=10

初めましての方は初めまして。
そうでない方は、お久しぶりです。
kuzanと申します。
今回こちらで『ダンガンロンパ The Another:re 〜もうひとつの絶望学園〜』というリメイク作品を投稿する運びとなりました。
以前旧二次創作(映像)の方で『ダンガンロンパ The Another』という駄作を書いていたのをふと思い出し、見返してみたらまあ酷いこと。
設定ガバガバ、トリックも単純。
そんな作品何が面白い?
そうだ、なら全く新しいThe Anotherを創りあげようと思い立ち、こちらに10年振りに帰ってまいりました。
リメイク前のリンクを貼っておきますので是非リメイク前との違いを楽しんでいただければ幸いです。
改めて注意事項をお伝え致します。

・オリキャラの超高校級達が出てきます。
原作と才能が被るものもいます。ご了承ください。
・原作設定の大幅自己解釈、ご都合設定、設定の改変等が含まれる可能性がございます。ご了承ください。
・更新はクソほど遅くなるかと思います。応援してください。その分頑張ります。
・コメント・感想等頂ければ非常に喜びます。批判コメント等は控えていただくと幸いです。

それでは、生まれ変わったThe Anotherの世界へ参りましょう。

chapter ⬛︎ もうひとつの____ >>01
chapter 0:re プロローグ >>02-08
chapter 1:re デス・オア・バース(非)日常編 >>09-15

chapter 1:re (非)日常編 デス オア バース ( No.14 )
日時: 2025/10/03 02:25
名前: kuzan (ID: akyskkyw)

キーン、コーン…カーン、コーン

『オマエラ、おはようございます!
朝です、7時になりました!起床時間ですよ〜!
さぁて、今日も張り切って行きましょう〜! 』

……賑やかな声が見慣れない自分の部屋響き渡る。
それは、昨日の出来事が嘘では無い、実感するのに十分すぎた。

「……ねむ。」

私は目を擦りながらゆっくりとベッドから身体を起こす。
__まだ体が重い。気持ちの整理がまだ出来ていないのだから、精神的疲労が溜まっているのだろう。

そんな中___

ピンポーン……

「…えっ?」

玄関からチャイムが鳴り響く。
来客を知らせるものだろう。
私は最低限の準備を整えた後、扉を開けた。

「おはようございます、前田さん。
……お邪魔でしたかね?」

扉を開けると昨日と変わらない笑顔を浮かべた我津クンがそこに立っていた。

「おはよう。
…ううん、大丈夫。どうしたの?」

制服の皺を整えながら私は彼に問いかける。
……邪魔か聞かれたってことは…これ寝起きってこと我津クンにバレてるな?
………女子として情けない…。

「実はオリヴクンが朝食を作ってくれているので、そのご報告に、と。」

言われてみれば、食堂の方から美味しそうな匂いが漂ってくる。
…それはまるで高級フレンチの店から漂ってくるような匂い。
……入ったことは無いけど。

「え、行く行く!
こういうの食べたことないからめっちゃ楽しみ!
早く行こ!」

私は眠気なんてすっ飛ばして我津クンの腕を引っ張り、食堂に駆けて行く。

「あ、ちょっと前田さん…!
…意外とお転婆なところあるんですね…。」

後ろから呆れたような乾いた笑いが聞こえた気がするが、私達は食堂に入る。

-食堂-

「…キミ達か。
朝からマヌケ面を拝む事になるとは、私もツキがない。」

…食堂の中央に席を構え、チーズとサラミが挟まったクロワッサンを手に持った成城クンが忌々しそうに私達を見つめる。

「おや、珍しいですね。
貴方が人の集まる場所に現れるとは。
明日はシュウマイでも降るのでしょうか。」

我津クンの笑みが一瞬緩む。
……てかシュウマイが降るって何?

「フッ、私も朝からキミ達無能の顔など、見たくない。
だが私は『 超高校級の社長』成城 朋嗣。
キミ達とは生活水準が違う。
……今更貧乏臭い朝食など口に出来るわけが無いだろう。
……そこで彼の出番だよ。」

成城クンはクロワッサンを平らげ、口元を赤いストライプが入ったハンカチで口元を拭くと、目線だけ厨房の方に向ける。

「……………」

そちらへと目を向けると、目を閉じたオリヴクンがそこに立っていた。
彼は昨日の燕尾服は羽織っておらず、黒シャツに腰エプロンをつけていた。
…よく見ればシャツにシワが目立つ。
……まさか……。

「…フン、だから私のシェフとして仕える名誉を与え、朝食を作らせたのだ。
残念ながらキミ達の分はないさ。」

成城クンはどこか誇らしげにそういえば、カップに入ったコーヒーを飲み干し、立ち上がる。

「では私はこれで。
キミ達と長くいれば貧乏が移ってしまうからな。」

嫌味ったらしくそう言いながら成城クンは食堂から出ていった。

「………。」

我津クンはそんな彼の背中を呆然と眺めたまま、動かなくなっていた。

「……Bonjour、ムッシュ・ケンヤ、マダム・コトナ。」

オリヴクンは懐からメガネを取り出し、装着した後、私達の方へと近寄ってくる。

「……全く大変な目にあった。
アナウンスが流れると同時にムッシュ・トモツグに部屋のインターホンを連打され、彼専用の朝食を作れと命令されたんだ。
……なるべく手短で済ませられるかつ、最上位のものでなければ許さないという条件付きでね。」

ふう、と彼はため息を着く。

「…横暴すぎますね、あの社長……。
オリヴクンはお疲れでしょう。1度部屋に戻って休__」

「いや、他の皆の分も作る。
彼だけ特別扱いはできない。」

メガネをクイ、と押し上げながら彼は表情を変えることなく呟く。

「座って待っていてくれ。
すぐに用意する。」

そう言うとオリヴクンは踵を帰し、厨房の方へと戻って行った。
それと同時に、食堂にいくつかの足音が響く。

「おはようございますッ!」

「おはよう。」

「おはよ!」

「おはよーっ♪」

蛍雪さん、神切さん、氷海さん、藍川さんだ。
彼女たちは身支度をしっかりと整えており、この場に立っている。
恐らくアナウンスよりも前に起きていたのだろう。
普段から生活習慣がしっかりと整っている分類の学生だ。

そして次に…

「うーっす。」

「おはよ。」

「おはようなんだな!」

「おはようございます。」

「……おう。」

雷桐クン、飛鳥さん、田川クン、周防さん、呉霧クンが入ってくる。
ある程度の生活習慣、もしくは少しルーズな分類だろう。私も本来であればここに入る。大体の生徒はここに入るだろう。
…そして眠そうにしていたオリヴクンも。

最後に…。

「おっ、なんでぃみんな揃ってぇ!」

『 オタククンチャン達、おはよー☆』

「…………。」

龍崎クン、きらりちゃん、佐原さんが入ってくる。
周りの目を気にせず、自分のペースで行動する人達だろう。
さっさと居なくなった成城クンも本来であればこの分類だ。

特に約束していた訳では無いが、それぞれが食堂の席に座り、オリヴクンが作ってくれた朝食を口に運ぶ。
……監禁されている、という異常事態から目を背けたら、これはまるで……。

「この感じ、合宿って感じがして、なんかいいね!」

氷海さんが目をキラキラさせながら口を開く。

「…まぁ一人いませんけどね。
それでも合宿、ですか。確かにそう考えたら多少は気が楽になりそうだ。」

私の目の前に座った我津クンは足を組みながらコーヒーを口に運ぶ。

「ん、美味しい。こんなコクのあるコーヒーは初めてだ。
オリヴクン、ワインだけでなく豆も行けるのですね。」

我津クンは目を少し開くと、オリヴクンの方を見る。
彼はまた眼鏡を押し上げながら続ける。

「…多少齧っただけだよ。
本職に比べればどうってことは無い。
確か希望ヶ峰の近くに喫茶店があったはずだ。
……そこのコーヒーはまさに天と地がひっくり返るかと思った。
ボクもまだまださ。」

『 あーっ!それアタシ聞いた事あるよっ!
確か【元・超高校級の】____』

きらりちゃんが画面の中で手足をバタバタさせている時、それは再び現れた。

「もーっ!
ボクを仲間外れにしてモーニングパーティーなんて酷いなぁ!
……あでもあの陰湿メガネが居ないか。」

そう。モノクマだ。
楽しげな雰囲気が一瞬で静まり返る。

「ででで、出たんだよなぁっ!」

田川クンが一気に壁際まで下がる。
…なんというか、情けない足取りで。

「アンタねぇ、たかがヌイグルミにビビりすぎよ…。」

呆れたようにその様子を飛鳥さんが溜息をつきながら眺める。

「それで、学園長殿が何の用なんです?」

我津クンが腕を組み、モノクマをしっかりと見やる。

「いやさ、ボクとしてはさっさとコロシアイを始めて欲しいところなんだけど、オマエラに非日常を楽しんでもらいたいんだよね!だからそれをサポートするものを持ってきました!」

そう言いながらモノクマは机の上に人数分の布袋を置いていく。
その度に中からジャラジャラという音が聞こえる。

「うっひょぉ!
金でぃ金でぃ!やっぱりドッキリだったんでぃ!」

……龍崎クンは目をお金に変えてその袋を誰よりも早く手に取る。

「…なんてガメツイのかしら。」

神切さんはゴミを見るような目で龍崎クンを眺める。

「ァん…?
なんでぃ、これ。」

しかし彼は袋の中から1枚のコインを取り出すと、それを眺める。

「ジャジャーン!
素晴らしいデザインでしょ!
こいつはモノクマメダル!ボクの愛くるしい顔がデザインされた、どんな金よりも貴重なモノだよ!」

それを聞いた龍崎クンは口を大きく開けたまま膠着する。

「………カバみたい。」

佐原さんがフードを被り直すと、そう小さくつぶやく。

「…逆から呼んだらバカ、だな。」

苦笑いを浮かべた雷桐クンがそう呟く。

「こらッ!クラスメイトになんてこと言うのッ!
せめてアホにして起きなさいッ!」

「アホはよろしいのですね…っ!?」

蛍雪さんが拳を強く握り、雷桐クンに叱りつける。
その姿を周防さんが驚いた様子で見やる。

「まぁ、勘違いしたバカでブスは置いといて、そのモノクマメダルは購買部のモノモノマシーンで使えるよ!何が出るかはお楽しみ…!
もしかしたらオマエラの望むものが出るかもね……!
うぷぷぷぷ…!」

意味深なことを呟きながらモノクマは地面へと消えていく。

「……分析した結果、冷やかししに来ただけのようだな。」

呉霧クンは紅茶を啜りながら呟く。

「でもさ、脱出の手掛かりかもしれないよねっ♪
ヴィヴァーチェで探索しに行こっ!」

藍川さんは手を広げ、楽しげにそう漏らす。

「…どうします?前田さん。
この人数で購買部にカチコめばまるで待遇の悪い留置所のようにすし詰めになってしまいます。
ボク達は最後の方に行きませんか?」

「すごい表現の仕方だけど……
その通りだね。
じゃあ後で一緒に行ってみようか。」

私達は足早に購買部に向かっていくみんなをオリヴクンの作ってくれた朝食を食べながら見送る。

「……merde……!
デザートのフレンチトーストを全員分用意したというのに………!」

……厨房の入口から肩を震わせたオリヴクンが強い力でメガネを押し上げながら何か呟いていた。
……私達はオリヴクンの用意してくれたフレンチトーストを食べてから購買部に向かうことにした。

《Now loading…。》

-購買部-

「……これか。その、モノモノマシーンってのは。」

人が引いた頃、我津クンと私は購買部の中にある電飾が着いた白黒のガチャガチャを眺める。

「そのようですね。
ほらココ、メダルを入れる場所がありますよ。」

我津クンがそう言いながら投入口を指差す。

「ここにさっき貰ったメダルを入れるんだね。
さて枚数は…っと。」

私は袋の中に手を突っ込むと入っているコインの枚数を数える。

「ひ、ふ、み、や、い、む、や、な、こ、と。
…ちょうど10枚ですね。
…やってみますか?」

我津クンは手のひらにコインを乗せると微笑む。

「そうだね。
気になるし、ちょっと回してみようかな。」

彼の言葉に同意すると、私は自分のコインを1枚1枚入れ、その度にハンドルを回す。

-結果-

ココノシガレット
多機能コルク抜き
青春の体操着
コラコーラ
ルアックコーヒー
ビーストエナジー
校章入りファイルとペン
アゴドリル
アゴドリル
VRセット

「……なんか、いっぱい出てきたね。」

両手に出てきたものを抱えながら私は我津クンに話しかける。

「…そうですね。
………ん?前田さん、少しそのコルク抜き、お借りしても?」

我津クンも同じく両手いっぱいに出てきた景品を抱えていると、私の当てたコルク抜きを指差す。

「……え?
う、うん。私が持ってても、役に立たないだろうし。」

そう言いながら私はコルク抜きを我津クンに渡す。

「ありがとうございます。
……やっぱり。」

彼は1度机に手に入れた景品を置けば、コルク抜きをまじまじと眺める。

「……何がやっぱりなの?」

私が彼にそう問いかけると、我津クンは口元に指を持っていき、人差し指を立てる。

「これはボクと前田さんとの秘密、です。
誰にも言ってはなりません。」

彼は笑みを浮かべたままどこかいたずらっぽく私の顔をじっ、と見る。

「う、うんッ!絶対言わない!
約束するから…っ!」

どこかその笑顔に恐怖を感じた私は少し狼狽えながら答える。

「ふふっ、いい子ですね。
いいですか、前田さん。このコルク抜きなんですけどね、先端を少し押し込むと…」

我津クンはコルクの先端をそう言いながら奥に押し込む。
すると___

「えっ…!?
ナイフが飛び出してきた…!?」

なんと持ち手の底から仕込みナイフが飛び出してきた。

「裏世界に生きてきた者としての勘がまさか当たるとは…。
少しは役に立ちますね、こんな才能も。」

我津クンの表情が少し暗くなる。

「…我津クン……。」

私は心配そうに彼の顔を覗き込む。

「……ふふっ、なんてね。
ボクは泣く子も黙る曇飛樹のボスですよ。心配されるようなことは何も無いですよ。」

彼はいつもの掴みどころのない笑みを浮かべ、何かを差し出してくる。
その手には黄色の花の装飾が施されたヘアピンが乗せられていた。

「……ボクには不要なものです。
コルク抜きの代わりにこれを差し上げます。
友情の証、ですよ。」

優しげな表情を我津クンは浮かべると、私の手を掴み、それを手渡してくれた。

「……ありがとう。大切にするね。」

私はどこか照れくさくなり、頬を掻く。
…最初はマフィア、という肩書きから怖い人だと思っていたけど、誰よりも他人のことを考えていて、常に私のことを気にかけてくれる我津クン。
人は周りの評価や肩書きで判断しちゃいけない。
そう、彼を見ながら実感した。

我津クンとだいぶ仲良くなれたかな。

(ワレツ ケンヤの好感度が上がった。)

(The A:reではお相手様からプレゼントのお返しが貰えることがございます。
…お相手様がマエダ コトナ様に心を許した証拠でございます。
是非どんな会話が生まれるか、お楽しみくださいませ。)

…私と我津クンは山盛りの景品を抱えながら自室へと戻った。

chapter 1:re (非)日常編 デス オア バース ( No.15 )
日時: 2025/10/12 09:12
名前: kuzan (ID: RZ8p8W3p)

寄宿舎の自室に戻った私は、部屋に備え付けられている時計をチラリと見やる。

「まだお昼時か…。
このままじっとしててもヒマだし、どこか行こうかな。」

そう呟いて部屋から出ようとした瞬間…。

「やあやあ!
親切でプリティな学園長だよーっ!」

「うわぁっ!?」

…地面からモノクマが生えてきた。

「そう!学園長とは神出鬼没の生き物なのです!
いつ出てくるか分からないドキドキに震えて眠るんだね!」

「意味わかんないし!
何しに来たのさ!?」

私はモノクマにビシッと指を指す。

「まあまあそうコーフンしないの!
ボクはオマエにコロシアイ学園生活をもっとエンジョイして欲しくてお助けアイテムを持ってきてやったのさ!」

そう言うとモノクマは希望ヶ峰学園の校章が描かれた茶色のショルダーバックを取り出す。

「ジャーン!
特性バック!見た目に反して大容量!
これで手に入れすぎた景品も入れ放題!
是非これを持ち歩いて生徒との交流を深めてね!」

モノクマは唖然としている私に強引にバックを押し付ければ、再び地面に消えていった。
…とりあえずこれに景品を入れておけ、と言うことか。

「…急に出てくるのは心臓に悪いからやめて欲しいんだけどなぁ。」

文句を言いながら机の上に置いていた景品を先程手に入れたバックに詰め込むと、私は次こそ部屋から出ていく。

「とはいえ、何処に行こうか…。」

私は行く宛てもなく、食堂へと足を踏み入れる。
中に入ると、厨房の方から物音が聞こえ、そちらへ向かってみた。

「おっ、前田っちィ!
何しに来たんでぃ?」

そこには、出刃包丁を手に、巨大な魚の前に佇む龍崎クンの姿があった。

「いや、暇つぶし…。
龍崎クンは何してるの?」

「俺っちもヒマでよぉ、ふらっと食品倉庫を覗いて見たら新鮮なマグロが1匹まるまる置いてあってサァ、身体も訛っちまうから久々に捌いてみようと思ってよぉ!
周防っちに頼んで出刃持ってきてもらって捌いてるんでぃ!」

そう話しながら龍崎クンは魚__
マグロに刃を入れる。
その手先は思ったより___

「…繊細で、綺麗だ…。」

そう、龍崎クンの大きな体格と普段の言動からは想像もつかないほどスムーズで高度な技術が使われていた。

「おいおいィ!?
俺っちも一応、超高校級の才能を持つ高校生なんだぜぃ!
バカにしてもらっちゃあ困るぜぃ!」

「バカにはしてないけど!
なんというか、すごいなぁって思っただけで!」

私は顔の前で手を振り、必死に弁明をする。
…そうだ、頑張って欲しいし、アレをプレゼントしよう。
私は鞄の中に手を突っ込み、ビーストエナジーを龍崎クンに手渡した。

「オ、オメエ!どこでこれを…!?
ありがとよぉ…!」

良かった!すごく喜んでくれたみたいだ…!

「お礼にこれをやるぜぃ!
俺っちには上品すぎて似合わねェからよぉ…。」

龍崎クンは頭を掻きながらカゴのような入れ物に入った花の装飾が描かれたティーカップと皿を手渡してくれた。

(【アフタヌーンティーセット】を入手しました。)

「……あれ?ていうか龍崎クン、料理できるの?」

ふと、私は頭に疑問が浮かび、彼にそう問いかける。

「いや、出来ないぜぃ。
魚捌くのは漁師としての嗜みよォ。」

彼はそういいながら目の前のマグロを捌き続ける。

「魚の鮮度を新鮮に保って陸まで持って行くのが俺っち達の仕事だからサァ、こういうのは慣れてるって訳でぃ!
…つーわけでこれしか出来ねェのよ!」

ガッハハ、と笑いながら彼は切り離した半身を私に見せてくる。
…その半身は一切無駄がなく、綺麗に切り離されている。素人目から見てもわかる、凄技だ。

「船の上でこれをよォ、捌いて刺身にした後すぐに白飯の上に乗せて醤油ぶっかけて掻き込むのが最高なんだぜぃ!
前田っちにもいつか味わって欲しいぜぃ…!」

彼は嬉しそうにそう言うと身を切り分けていく。
…恐らく赤身、中トロ、大トロなどの部位に分けているのだろう。
……めちゃくちゃ美味しそうだ。

「…前田っち、食べてェって顔してるぜ?
せっかくでぃ、1つづつつまみなァ。これもほぼ船の上の鮮度と変わらねェからよォ。」

ニッ、と龍崎クンが笑うと、刺身の乗った皿をこちらに差し出してくる。

「えっ、いいの!?
じゃあ遠慮なく…。」

私は近くにあった割り箸を割り、1つ口に運ぶ。
…舌に乗せたと同時、脂がじゅわぁっと口の中で広がる。
旨みの暴力。まさにそう表現するのにふさわしいだろう。

「めちゃうま…!
漁師さんってこんなのいつも食べてるの…!?」

「ンまァ、魚が傷んでたり余ってたりしたらだけどなぁ…。
長期だと海で食料調達とかしねぇといけねぇときもあるけどねぃ。」

彼はそう言いながら首に巻いたタオルで汗を拭き取る。

「なんというか…
漁師さんって想像の100倍くらい大変そうだね。
私みたいな一般人は尊敬しちゃう…。」

「分かってくれるかぃ…。
マジで大変なんだぜぃ…。
ボウズだった時なんてよォ、腹が減って死にそうになる時だってあるんだぜぃ…。」

…ボウズ?
ボウズって確か…。

▽お坊さん
▽ハゲ
▼収穫ゼロ

「ボウズって、何も釣れなかった時だっけ?」

私は浅い知識を脳の底から引っ張ってきて彼に問いかける。

「そうそう!
詳しいねィ…!ホント辛いんだぜぃ…!
だからこその前田っちよォ!
『 超高校級の幸運』を持つオマエさんを船に乗せた時はきっと大漁なんでぃ…!それに見た事ねェような魚が釣れてきっと……
ぐへ、ぐへへへへ…。」

…龍崎クンの目が金マークになった。
なんというか、ちょっとかっこいいなぁと思ったけど、一瞬で冷めちゃったかも。

…私達はしばらくマグロの刺身をつまみながら言葉を交わした後、別れた。
お金に目がなく、ちょっとがめついけど、確かにプロ意識を持っていて龍崎クン。
彼のことを詳しく知れた、かな。

【スキル:一本釣り】を入手しました。

スキル:一本釣り
精神集中、集中力ゲージの減少が遅くなり、持続時間が長くなる。
また、雑音発生時に惑わされることなく対象に向かってコトダマを発射できる。

厨房から出た私は時計を見やる。

「うーん、まだ時間あるなぁ。」

暇を持て余した私は体育館へと向かう。
するとそこにはバスケを楽しむ田川クンがそこにいた。

「おっ!
前田ちゃんなんだよな!オイラと一緒に激しく身体を動かすんだよな…!」

……言い方はアレだけど、田川クンと軽くバスケを楽しんだ。

「いやぁ有意義な時間だったんだよな!
…濃厚で……かけがえのない…」

「うん!ただの運動だからね!
その言い方やめて!?」

なんだか恥ずかしくなった私はビシッと指を指す。
とりあえずこれ以上話をややこしくならないために青春の体操着をプレゼントした。

「うおっ!これは伝説の…!?
ありがとうなんだよな!」

彼は嬉しそうな満面の笑みを浮かべ、懐をゴソゴソと漁り始めた。

「お礼にこれをプレゼント!なんだよな!」

そう言って田川クンは【キラキラした時計】をプレゼントしてくれた。

「…そういえばさ、田川クンと飛鳥さんは以前から面識あったの?」

私はふと疑問に思っていたことを田川クンに問いかける。

「なんでそう思ったんだよ?」

田川クンは首を傾げる。

「ええと、なんというかずっと一緒にいて仲が良さそうな雰囲気だったから…?」

「あぁ、なるほどなんだよ!」

彼はポン、と手のひらに拳をうちつける。

「昔ウチの学校のバレー部の全国大会に応援と助言の為に同行したことがあったんだけど、決勝戦で当たったのが、飛鳥ちゃんをエースとする学校なんだよ〜!」

「え、つまり実質未来の超高校級vs超高校級が巻き起こってたってこと!? 」

「そうなんだよな〜!
いやぁ、あの試合の飛鳥ちゃんの圧と言ったらもう!
観客席から見てるだけでも分かったんだよ!
まるで獲物を狙うハンターの如く眼光!
いやぁ怖かったんだよなぁ!」

田川クンはそう語りながらも、その口調はどこか楽しげだった。

「そんな相手にこんな機会に再会できるなんて、なんだか運命的だね…。」

「そう!これは運命なんだよ〜!
この機会にお近づき、そしてあわよくば……!
うへへへへへへ…」

…田川クンはヨダレを垂らしながら情けない表情を浮かべる。
……飛鳥さんと田川クンの関係。
本当にそれだけだろうか。まだなにかありそうだね…。
今日は田川クンがこんな感じになっちゃったから、一旦離れようかな…。

疑問を抱えながらも私は体育館を後にし、自室へと戻る。
と、同時に。

キーン、コーン…カーン、コーン

『えー、校内放送でーす。午後10時になりました。
ただいまより"夜時間"になります。
間もなく食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となりま〜す。
ではでは、いい夢を。おやすみなさい…』

モニターからアナウンスが流れる。
…日常になりつつある非日常。
その現実を噛み締めながらシャワーを浴びた後、私は布団に入った。

chapter 1:re (非)日常編 デス オア バース ( No.16 )
日時: 2025/10/22 09:10
名前: kuzan (ID: VypfhjO3)

-モノクマ劇場-

偶然って便利な言葉だよね!

どんな失敗も“たまたま”で片づくし、どんな成功も“運がよかった”で済ませられる。

天才が失敗しても、バカが成功しても、ぜ〜んぶ偶然ってことにできちゃうんだ!

もし天才が失敗したら、
“まあそんな日もあるか〜”
とか、
“人間だから仕方ないよね〜”
で終わっちゃう!

逆にバカが“たまたま”成功したところで

”なんであいつが…!”
とか、
”あいつができるなら俺もできる!”
って相手に思わせてしまって最終的には損するだけなんだけどね。

つまり人間って、努力も責任も放り出して、“偶然”のせいにして生きてる生き物なんだよ。

うぷぷっ……人生って、辛くて、ラクだよね〜!

chapter 1:re (非)日常編 デス オア バース ( No.17 )
日時: 2025/10/23 00:31
名前: kuzan (ID: U8MSN2gK)

キーン、コーン…カーン、コーン

『オマエラ、おはようございます!
朝です、7時になりました!起床時間ですよ〜!
さぁて、今日も張り切って行きましょう〜! 』

耳障りなアナウンスが聞こえ、私はベッドから抜け出し、身支度をすませる。

「…朝か。
今日は何をしようかな。」

ー自由行動 開始ー

私は視聴覚室へと向かった。
そこには大きなモニター……
きらりちゃんがそこに居た。

『あっれ、オタクちゃんじゃ〜ん!
どうしたの〜?』

「あ、ちょ、ちょっと何か手掛かりがあるかなぁって思って。
…きらりちゃんは?」

突然の推しに少したどたどしい反応を見せながら彼女にそう伝える。

『アタシも似たような感じ!
でもなーんもないよっ!机に置かれてるダンボールも見てみたけど、空っぽ!
悲しいよね〜っ!』

モニターにダンボールが表示され、逆さになり、上下に振られる。
その中からは何も出てこない。
実際に私もダンボールを覗き込んだところ、何も入っていなかった。

『せっかくだしちょっと雑談配信でもしていくっ?』

……配信ではない、とは突っ込めなかったけど、私はきらりちゃんと楽しくお喋りを楽しんだ。

…少しはきらりちゃんと仲良くなれたかな。
そうだ、配信者だし、これとか喜んで貰えるかな。

私は【VRセット】をきらりちゃんに差し出した。
……あれ、これきらりちゃんどうやって受け取るんだろ。

『オタクちゃんからの貢物!
ありがたく受け取るね〜っ!ありがとっ!』

モニターの中のきらりちゃんが目をキラキラさせると、モニターの中腹部がパカッと開き、画面に『ココに入れてね☆』という文字が表示される。

……改めて見ると、すっごい技術……。

『パンパカパ〜ン!
アタシったら、最高の考察をしちゃったわけぇ☆』

突然動画でよく聞くような効果音が聞こえたと思えば、いつものようにきらりちゃんは楽しげに語り始める。

……わかる。これは大人気シリーズ『都市伝説を大解剖☆オバケなんて怖くない☆』という雑談配信の導入の喋り文句だ。

「な、何がわかったの…!?」

いつも配信で見ていたこの光景に目を輝かせながら彼女の話を聞く。
もしかしたらきらりちゃんは探索を頑張ってとんでもない情報を手に入れたのかもしれない…!

『ズバリ!【消し去られた超高校級】!
選考に選ばれた超高校級の高校生の中でこいつはヤバすぎるという人物が何人かいて、ソイツらがこのコロシアイをけしかけたっていう説なのでっす☆』

きらりちゃんはメガネをかけ、ニヤリと笑う。

「け、消し去られた超高校級!?
で、でもスレッドにはそんな話題は……!」

私はこの学園に来る前の情報スレッドを思い出す。
だがやはりそのような情報は書き込まれていなかったように思われる。

『いやぁこれはアタシが学園に来る前に学園関係者だと名乗るオタククンちゃんから仕入れた情報だからね〜っ!
超☆極秘情報ってワケ!
まぁ才能までは教えてくれなかったんだけど、ソイツが逆恨みでアタシ達を閉じ込めてコロシアイをさせている説ッ!
うーん、こんな学園でもコンプラしっかりしてないところあるんだね。』

「いやそこはちゃんとしてて欲しかったなぁ希望ヶ峰学園……。」

私ほガックリと肩を落とす。

……消しされた超高校級。
学園関係者と名乗るファンから仕入れた情報。
ガセ情報かもしれないけど、今はそれでも縋りたい。
そう考えながら私はきらりちゃんと数回言葉を交わし、その場から立ち去った。

【スキル:エレクトロン・オーバードーズ】を入手しました。

精神集中時、照準が自動的に相手の発言のウィークポイントに合わさるようになるが、使用後は集中力ゲージの回復が遅くなる。

「……まだ時間がありそうだなぁ。
何をしようかな。」

視聴覚室を出た私は続いて玄関ホールへと向かう。
そこには鉄の塊をコンコンと拳で叩く我津クンがそこにいた。

「おや、前田さんじゃないですか。
ボクと話していきますか?」

ニッコリと彼は私に微笑む。

私は我津クンと玄関ホールの鉄塊を一緒に調べた。

「……うーん、やはりここから出ることは難しそう、ですか。
いやはや困りましたね。」

彼は顎に手を当て、考え込む。
…我津クンはいつもみんなのために頑張ってるな。少しでもお礼の気持ちを伝えたい。
私は我津クンに【ココノシガレット】をプレゼントした。

「…ほう、これは1級品のブツだ。
前田さん、ありがとうございます。」

…よかった、すごい喜んでくれたみたいだ…!

「………」

我津クンが笑みを絶やし、真顔になると、私の顔をじっと見つめる。

「えっ…?
どうしたの、我津クン…?」

しまった、何か癇に障るようなことをしたかな…?
そう思っていると、ふと、彼が口を開く。

「…貴女とは、別の形で会いたかった。」

数秒、重い空気を切り裂くように我津クンが口を開くと静かに、どこか寂しげに呟いた。

「こんな血腥い場所、そして才能出なければ、どれほど良い関係を築けたことか。」

そう言いながら彼は細い目を開き、自分の手を眺める。

「……ボクはね、物心が着いた時から暗い路地裏でひとりぼっちでした。
親に捨てられてたんです。」

ポツポツと彼は自らの出自を語り始める。
懐かしむように、哀しげに。

「我津、クン…。」

急に語られた衝撃のエピソードに私は言葉が出なかった。
そんな間にも彼は独り言を呟くように言葉を続ける。

「そんなだから、ボクの世界は奪うか、奪われるかだったんです。
そうしないと、生きていけなかった。
そんな僕を拾ってくれた恩人がね、いるんです。
それが当時紅嵐町を取り仕切っていた中華マフィア『雲飛樹』の初代ボスでした。」

『雲飛樹』。
我津クンが率いている愚連隊集団の名称だ。
まさか我津クンが二代目でしかも国外の組織だったとは…。

「そこでボクは組織の英才教育を受け、どんどん殺人マシンに育っていきました。組織は従順に従う少年兵が欲しかっただけなんです。ご飯を与え、その対価として邪魔者を消していくというギブアンドテイクだけで回る日々。
そんな中どんどん血に濡れていく自分の手と凍っていく感情に嫌気がさしていた頃、ボスから打診があったのです。
『雲飛樹』のボスにならないか、と。
ボクは組織の中で結果を上げ、誰よりも強くなっていた。
…16という若さで、大犯罪集団を束ねるボスになったのです。
だけどボクは先代のような奪う人間になりたくなかった。だから組織を任侠の組織にしたんです。
……まぁそれでも、この手が血に濡れていることには変わりは無いので、美談ではありませんが、ね。」

話の締めくくりに彼はニコ、と微笑む。

「我津クン…
それでも君は、かっこいいよ。
奪う側だったから今度は守る側に、なんて中々できないことだと思う。
…心が凍る前に心を取り戻せて、本当に良かった。」

私は心の底からそう思う。
だってそうじゃなかったら、今ここにみんなのことを誰よりも考えている我津クンは存在していないのだから。
…この言葉を聞いた彼は呆気にとられたような表情を浮かべる。
が、直ぐにいつもの笑みを浮かべる。

「…フフ、そう言ってもらえて嬉しいです。
……ボクはこれからどんなことが起きても皆さんを守ります。
それがきっと、血に染ったボクの贖罪ですから。」

彼は被っているハットを深く被り直すと、嬉しそうに微笑む。
それは今まで見せてきた、どこか作り笑いのような笑みではなく、心からの笑顔だと思う。

【スキル:必中の弾丸】を入手しました。

コトダマが雑音を貫通するようになる。
ノンストップ議論、パニック議論で有効。

私は我津クンと別れた後、自室へと戻った。
それと同時に。

キーン、コーン…カーン、コーン

『えー、校内放送でーす。午後10時になりました。
ただいまより"夜時間"になります。
間もなく食堂はドアをロックされますので、立ち入り禁止となりま〜す。
ではでは、いい夢を。おやすみなさい…』

……人には色んな人生がある。
だからこそ、こんな所で終わる訳には行かない。
私はそう、決意をし、布団に潜った。

chapter 1:re (非)日常編 デス オア バース ( No.18 )
日時: 2025/10/23 08:35
名前: kuzan (ID: 70oEIa82)

ーモノクマ劇場ー

『死んでも生きる』ある有名なクマの言葉です。
でも死んじゃったら何も出来ないよね。

美味しいご飯も食べれないし、楽しいと思ったことを共有する相手もいない。

魂が残るって話もあるけど、根拠は無いしね。
ああでもこの環境で死んだ人間が一つだけ残すことはあるか。

絶望の誕生。デスとバースは紙一重、だよね。


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