二次創作小説(新・総合)
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- Re:創世の方舟
- 日時: 2025/04/23 22:00
- 名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)
こんにちは、西宮まゆです。
この小説は、版権作品同士の「クロスオーバー」を前提としています。また、オリジナルキャラクターも登場します。
苦手な方、お口に合わなかった方はブラウザバックでお願いいたします。
※作品を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】>>1
【取り扱いジャンル】>>2
<目次>
Ep.00【ものがたりのはじまり】
>>3-10
Ep.01【闇の闘技場を制圧せよ!】
>>11-18
- Ep.00【ものがたりのはじまり】 ( No.9 )
- 日時: 2025/04/10 22:07
- 名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)
通信サーバに戻ってきた一同は、早速ラルゴにことの一部始終を説明した。
ラルゴも彼らの説明を聞いて理解したのか、うんうんと頷いた後少し休ませましょうという判断を下した。
そのまま他愛ない話を続けていると、ふとサクヤが口を開く。なんてことのない思いだった。
「まさか、過去にもそんなことがあっただなんて」
「あったのだよ。こうして被害に遭った人物とまた相まみえることになるとは思わなかったがね」
「少しでも、混ぜられた『元』の部分が見つかってくれるといいのだけれど」
サクヤは今でも二次元の存在が目の前に現れたことへの心の整理がついていないらしく、目をぱちくりさせながら彼らと話を続けていた。
画面の中の存在、しかも神様ときた。サクヤの心の中は驚きでいっぱいだった。
「それにしても、本当に神様にお会いすることになるとは。まだびっくりしています」
「そうか?神は意外と近くで見守っているものだぞ」
「そうそう。僕だって神と人間のハーフだし、アシッドだって神だし」
メグリカの言葉に、更にサクヤは目をぱちくりと瞬かせる。
彼のことは謎の少年だと思っていたが、まさかここで自分の素性を少し明かしてくるとは。さらに、その後にさらっと『アシッドも神だ』と言ってのけるのだから、彼女は驚きが隠せなかった。
「え?!」
「私だって純粋じゃないけど、神様の一種よ?そんなに驚くことないじゃない」
「そういえばそうでした……。って、アシッド社長も神様だったのですね」
「そうだ。公には明かしていないがね」
そう言って、自分が『運命を司る神』だと改めてアシッドは話した。
自ら、そして他人の運命を簡単に捻じ曲げることのできる強い神、『アリアンロッド』。それが、アシッドの本当の名前であり、正体だった。
周りに神と呼ばれる存在が多い、とサクヤは改めて恐縮してしまう。そんな彼女を見据えてなのか、ラルゴは優しく彼女の背中をさすって『気にしなくてもいいわ』と励ました。
そうして話し込んでいると、部屋に向かってくる足音が2つ聞こえてきた。
足音の人物は、部屋に顔を出すなり軽快に『よっす』と挨拶をしてきた。
「お身体の方はもう大丈夫なのですか?」
「ま、神だから~。それに、オレ達が倒れてる間に誰か癒しの力使ったでしょ?そのお陰もあって、意外と早く動く元気取り戻すことが出来たってところだな」
そういって、MZDはくるくると軽く肩を回した。気持ちの整理も充分ついたようで、2人共元気そうに一同には見えた。
ミミとニャミはどうしたのか聞いてみると、未だにぐっすりと眠っているらしい。しばらく彼女達は休ませたい、とのことで2人だけで通信サーバにまでやってきたという。
「それで、彼と話し合った結果……。これからどうするかを貴殿らに相談しに来たのだ」
「そうなの。でも、故郷が見つかっていない以上どうしようもないわよねぇ」
「そこなんだよねー。この世界、簡単に神パワーが使えないくらい広いみたいだからさ」
「察知したの?」
「ここに来る前にさらっと、ね。前に混ぜられてた世界よりも随分と広くて最初は驚いたよ。それで、なんだけどさ」
そう言うと、改めてMZDはラルゴに向かって向き直る。
そして、世界調査の手伝いも行うから、調査機関で仲間探しをさせてほしいと頭を下げた。
地図上では丁度、世界の真ん中にコネクトシティは点在している。交通の便や交渉のやりとりなんかも踏まえ、どこか1箇所を拠点にする際に一番動きやすいのがコネクトシティだった、という結論らしい。
その言葉にはカグヤもうんうんと頷き、持論を述べる。
「確かに、帰る場所が見つかっていないなら必然的に代わりを探すことになるわよね。それで、ここか……」
「一応、過去に別世界で似たようなことをした経験はある。そのノウハウでいいのであれば、我々も調査に協力しよう。――すまないが、しばらく我々をここに匿っていただけないだろうか」
そう言って、ヴィルヘルムもMZDに続き頭を下げた。
彼らの様子を見たラルゴはあらあら、と困ったように2人に頭を上げるように言う。彼の答えは既に決まっていた。
「調査を手伝ってくれるっていうのなら、アタシは大歓迎よ!それにウチは万年人手不足なの。経験者であれば猶更受け入れない理由がないわ!」
「本当?!恩に着るよ、サンキュー!」
「場所を提供してくれるのであれば、我々に出来ることはしよう。……感謝する」
ラルゴの答えを聞いて、MZDとヴィルヘルムは嬉しそうに顔を見合わせる。そして、改めて礼を言ったのだった。
「早く見つかると良いけどね。ポップンワールドとそれに連なるお仲間がさ」
「まぁ……気長にやってくよ。伊達に4桁生きてないし~?」
そう、談笑を続けていた最中だった。
バタバタと足音がこちらに近付いて来る。思わず一同がその音に耳を傾けると、現れたのは先程まで眠っていたウサギと猫の少女達だった。
どうやら自分達を置いて行かれたのが不満だったようで、ぷくっと顔を膨らませている。
「こらっ!そういう大事なことはわたし達抜きで相談しないでよね!」
「なーにが『あいつらはぐっすり寝かせておいてやりたい』よ、バ神!あたし達のフィジカル舐めないでよね!」
「起きて来たのか。想定よりも早い起床だな」
「んもーっ!ヴィルさんまでそういうこと言う!」
MZDとヴィルヘルムに突っかかったのち、彼女達ははっとなってメグリカ達の方を向き直る。
そして、『自己紹介がまだだったよね』と改めて彼女達は名乗りを上げた。
「わたしミミ!隣にいるニャミちゃんと一緒にマルチタレントやってまーす!どうぞよろしくね!」
「はーい、あたしはニャミだよ!ミミちゃんと一緒にマルチタレントとして活躍してるんだ!どうかよろしく!」
「元気な子が増えてアタシ、嬉しいわ!こちらこそどうぞよろしくね♪」
改めて"ミミ"と"ニャミ"に自己紹介を行った一同は、早速彼女達にもしばらくはこの施設を使ってもいいことを話した。
すると、彼女達も嬉しそうに向き合う。どうやら、前に混ぜられた世界でも彼女達はMZD達と一緒に同じような仕事をしていたらしい。
「ここに匿ってくれるんだよね?だったらあたし達にも色々お手伝いさせてよ!こう見えて色々経験豊富だからさ!」
「役立つこともあるかもしれないもんね、ニャミちゃん!」
きゃっきゃっとはしゃぐ少女2人に、MZDは『遊びじゃないんだから』と横やりを入れる。
そんなやりとりを微笑ましく見守りながら、カグヤははっとした顔をして言った。
「そうだわ。近々アクラル達も帰ってくるし、本格的に世界の調査や依頼の解決に乗り出してもいい頃合いじゃないかしら?」
「依頼……ですか?」
「それはナイスアイデアね、カグヤちゃん!実はね?世界の調査を立ち上げたのも、ミミちゃん達みたいに困っている人を助けてあげたいって思いから始めたものなの。
その延長線上で、色々と困りごとにも応えていこうかなって思っていたのよ。そうね……人数も増えたことだし、他の街と連携してそういう事業を展開していくのも悪くないかも!」
「依頼と調査をこなしていくことで、僕の目的にも少し近付けるかもしれないしね。うんうん、いいと思うよ」
どうやら、これから調査機関は『世界の調査』だけではなく『困りごとの依頼』にも対応していくということを明かした。ラルゴはもともとこういう事業展開を望んでいたらしく、嬉しそうにこれからのプランをぺらぺらと一同に話している。
そして、ある程度展望を言い終えた後、改めて気合いを入れるのだった。
「それじゃみんな、これからも頑張っていきましょう!」
「おーっ!」
ラルゴの明るい声に、ミミとニャミの威勢のいい声が木霊したのだった。
- Ep.00【ものがたりのはじまり】 ( No.10 )
- 日時: 2025/04/11 22:28
- 名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)
「そういやさ。サクヤの持ってるその刀剣、顕現出来たりはしないの?」
「え?」
「ほら、そのキーホルダーみたいな奴。見たことある気がすんだよねー、オレ」
ふと、MZDはサクヤが腰にぶら下げている小さな刀剣を見やり、ぽつりと呟いた。
なお、この世界では刀剣を邪魔にならないように魔力で小さくして身に着けている者が多い。サクヤも、カグヤのそのうちの1人だ。
MZDはそのまま刀剣に目を向けながら続ける。前に混ぜられた世界では、刀剣が男性の姿に変わって色々と助けてくれたのだと。
その話を聞いて、カグヤは納得したように頷いた。サクヤもやっと話が理解できたようで、うんうんと頷いている。
「あぁ、刀剣男士のことね。申し訳ないけれど、まだ会えないわよ」
「そうなの?」
「えぇ。うちにはまだ顕現出来るだけの設備が整ってないのよ。刀剣も世界中にバラバラに散ってしまったし」
「この世界でも刀剣はバラバラになってしまっているのか……」
まだ顕現は出来ない、と申し訳なさそうにカグヤは首を振った。
カグヤとサクヤが調査機関に在籍しているもう1つの目的。それが、世界中に散ってしまった刀剣を回収し、顕現することだった。
先代の青龍が昔その刀剣を管理していたことを知っていた2人は、話を深堀してみることにした。それとなく聞いてみると、サクヤがおずおずと口を開く。
「先代の青龍様がその昔、別の世界で刀剣を管理していたのはご存じなのですよね?」
「うん。あなたと同じ名前の『サクヤ』さんが管理していたんだよね!」
「そうです。実は――先代が守っていた『世界』が壊れた際……混ぜられた世界を守るためにその力を全て使い果たし、彼女の力で顕現を果たしていた刀剣は全て本霊に還る予定だったそうなのです」
「! そっか。オレ達の世界が無事だったのも、あいつが頑張ってくれたからだったんだな」
その昔――『コネクトワールド』という世界があった。その世界もまた、異世界同士が混ざる現象が起きており、それでも異世界の住人同士が手を取り合って毎日を生きていた。
しかし、その世界にも崩壊が訪れた。先代の青龍であった人物は、全ての世界の崩壊を防ぐため、自らの全ての力を『護る』為に注いだ。結果、異世界の崩壊の一部を食い止めることに成功し、異世界同士は再び隔たりを得ることになった。
先代の青龍である『サクヤ』が力を使ったお陰で自分達は助かったのだと理解し、気持ちを噛みしめるMZDだった。しかし、刀剣に関しての話はそれで終わりではなかった。
「しかし、刀剣が本霊に還る直前の話でした。時の政府に一時的に預けられていた刀剣が、何者かによって強奪されてしまったのです。
そして、今度はこの世界が次々と異世界を混ぜ始め……刀剣も、その融合に巻き込まれて世界中に散ってしまいました」
「そうなんだ……」
「私と師匠は、世界調査の傍らその刀剣を全て回収し、顕現することも目的としているのです」
「皆、それぞれに目的や目標があるのだな」
やっと話に一区切りがつき、ふぅとサクヤは息を整えた。
前の世界の顛末、そしてこの世界も似たような現象が起きているとやっと理解した一同は、刀剣の回収も出来るだけ手伝ってあげようと思ったのだった。
しかし、そう悲観することでもないとカグヤは続ける。先程も言った通り、調査機関では顕現の準備が整ってないだけだ。整えればそう遠くないうちに刀剣男士とも話が出来るはずだと口にした。
「あいつらとも積もる話があるからなー。顕現が今から楽しみだよ」
そんな話を続けていると、再び間延びした声が通信サーバへと木霊する。ハスノのものだった。
聞き覚えのある声に嬉しそうにミミとニャミは声の方向を向いた。
「あっ!ハスノさん!ハスノさんもいたんだね!久しぶり~!」
「みなさ~ん!お久しぶりです~!いや~、皆さんお変わりなくて嬉しいですよ~!わたしも、変わらずこの街でカフェ経営を頑張っているんですよ~」
「そうなのか。……であれば、今度店に伺って料理の話も出来ればいいな」
「え?ヴィルヘルムって料理が出来るの?」
「ヴィルさんは料理の天才なんだよ!アッシュにも負けないくらい上手なんだから!」
ハスノが現れ、料理の話に花を咲かせる一同。
なお、この世界でのヴィルヘルムは、魔界にある自分の城に何百年と閉じ込められていた際、暇つぶしにと色々試していたら、ガーデニングと料理が一級品の腕前になってしまったという逸話がある。
料理をしているというのはミミとニャミも同じようで、自信満々にハスノにこう続けた。
「料理ならあたし達も負けてないよ!今のパーティのテーマが『カフェダイナー』だからさ、料理勉強中なんだ!」
「もしかしたらハスノさんのお店のメニュー勉強させてもらうかもだから、今後ともよろしくお願いします!」
「確かに昔よりは人に食える物出せるようになったよなー。昔は本当ダイニングに立たせちゃいけないくらい2人共料理ダメダメだったもん」
「こらっ!恥ずかしい過去を当たり前のようにペラペラと話すなーっ!」
「ヴィルさんばっかりに迷惑かけちゃ駄目だと思ってわたし達だってちゃんと成長してるんだからね!」
「ほんっと、食事に関しては昔ヴィル匿って大正解だとあの時は思ったからな……。オレ1人じゃ止められなかったからさ」
「昔に比べたら食べられるものを出せるようになった分、彼女達も成長しているということなのだろう」
このままいろんな方と再会出来ればいいですね~、とふとぽろっと零してしまうハスノ。
しかし、それはマイナスの意味ではなく、世界が混ざっても前を向いて生きている人達と会いたいという彼女の気持ちの表れだった。
「ち、違いますよ~!この世界に混ざってほしいというわけではなくて、ですね~」
「分かっている。言葉の綾というものだろう。だが……こうなってしまった以上、顔見知りとの再会も考えねばなるまい。それだけは覚悟しておきたまえ」
「我々にとってはどれもこれもが初めての経験で、驚きの連続です」
「ま、気長に行こうよ。世界調査機構は始まったばかりなんだからさ」
と、いうことで、とミミとニャミは早速出かける準備をした。どうやらハスノの話を聞いて、買い物をしたくなったらしい。
メグリカとサクヤを無理やりぐいぐいと連れていく光景を見て、MZDとヴィルヘルムは相変わらず元気を取り戻すのが早いなと思ったのだった。
「元気が有り余ってますこと」
「……この世界も、悪くない世界だといいな。MZD」
「そうだな。混ざっちまったモンは仕方ないし、今の状況を受け入れてオレ達が出来ることをするだけだから。――壊したりすんなよな?」
「善処はしよう。……『世界が間違った選択肢を取らない限り』はな」
「怖いこと言わないで~?そうなったらオレ、お前を敵に回してでも止めるからね」
そんな他愛もない話を続けながら、時は過ぎていく。
新たな出会いと、新たな物語の1ページが、これから少しずつ刻まれていく予感がするのだった。
~Ep.00 ものがたりのはじまり~ END.
- Re: Re:創世の方舟 ( No.11 )
- 日時: 2025/04/14 22:02
- 名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)
4人が調査機関で手伝いをするようになってから数日経過した。
調査機関の暮らしにも少しずつ慣れて来た頃合いだったが、ポッパーの捜索には難儀しているようで、MZDは机の上でうんうんと地図とにらめっこしながら唸っていた。
その周りを"ハテナ"が不思議そうに飛び回っている。ちなみにだが、"ハテナ"はMZDの影であり、世界が混ざってしまった影響を受けMZDと再び分離し、こんな小さな姿になってしまっているらしい。
「えむえむ?」
「んー?あぁ、これ?ポッパーのいそうなところをリストアップしてんの。
バラバラになったとはいえ、一応はパーティに参加してくれたヤツらばっかりじゃん?だから、目星つけられそうなところはつけとこっかなーって」
「だが、数が膨大すぎる。しらみ潰しにやっていくだけでは時間だけが過ぎてしまうぞ」
「そうなんだよねー」
こと、とヴィルヘルムがカップを置いた音が響いた。
小さく礼を言い、MZDはカップに入っているお茶を少し飲んだ。疲れた頭にほどよく染みる、少し甘めの紅茶だ。
自分の為にやってくれたのかと問うと、そうではないとぶっきらぼうに返された。
「何か大きい依頼でも舞い込んでくれれば、双方いい動きが出来そうなもんだけど。そうは問屋が卸さないか」
「依頼を集めてみる、と所長や師匠が動いてくださっていますが、私達の調査機構の知名度もまだまだです。
そう簡単に大きな依頼が来てくれるわけありませんよね」
なにせ、世界調査機構は立ち上げたばかりの新しい組織である。知名度などあったものではない。
集まっている人物が凄い者ばかりだとしても、名が知れ渡らないことには大きな依頼は舞い込んでこない。
地道に小さな依頼をこなしていくしかないか、と誰かが言った、その時だった。
「おー、誰かと思えば随分懐かしい声してんじゃねーか」
通信サーバに響く軽快な声。今いる誰の声でもないそれは、少しずつ足音と共に近付いてきた。
そして、現れたのは朱雀の化身のような男性と、白髪で水色の目をした忍者のような少年だった。
MZDは男性の方に覚えがあるようで、嬉しそうに名前を呼ぶのだった。
「アクラル!」
「やっぱり。エムゼにヴィルじゃねーか、元気してたか?」
「お前も相変わらず元気なようで安心した。久方ぶりだな、アクラル」
そう言って、メグリカとサクヤに向かって改めて男性は自己紹介した。
彼の名は"アクラル"。この世界の南方を守護する『朱雀』を継いでいるものである。先に名前が出てきた『青龍』サクヤの双子の兄であり、現在は消滅した彼女の思いも背負って世界を見守っている。
アクラルが自己紹介を終えると共に、メグリカとサクヤも双方自分の名前を告げた。
「ご丁寧にどうも。それで……そっちの忍者みたいな人は誰?」
「こいつか?こいつはだな」
「僕が自分でやるから大丈夫。僕は『ボタン』。『白虎』を継いでいるんだ。今はフリーの忍者をしながら世界を見守っていたところだったんだ」
アクラルの言葉を遮って、少年――"ボタン"は自分の名を告げた。
この世界の西方を守護する『白虎』を継いだものである。現在はフリーの忍者として、様々な場所で斥候の仕事をこなしながら世界を見守っている。
その言葉を聞いて、そういえばとヴィルヘルムが口を開く。彼の知っている『白虎』とは違う人物が名前を名乗ったからだった。
「アカギはどうしたのだ?私が知っている『白虎』は彼だったと認識しているが」
「僕は、先代白虎――話に出てる『アカギ』さんから名と役目を受け継いだんだ。彼は――先代の青龍と共に、力を使い果たして消滅したんだよ」
「そうか……。アカギは役目を全うすることを選んだのか」
「そうだぜ?妹1人に任せられねーって、アイツが消える時一緒に向こうの世界に行っちまったよ。
それで、新しく白虎の役目を引き継いだのがコイツって訳だ。仲良くしてやってくれよな!」
そう言って、アクラルはボタンの肩に腕を置く。そんな彼の行動を払いのけるかのように、ボタンは静かに肩に乗った腕を下ろした。
その様子を見ていたサクヤが何かを閃いたかのように口を開いた。
「あ。斥候のお仕事をされているということであれば、世界で何か悩み事が起きているとか聞いたことはありませんか?
私達、今そういうのを求めていて……」
「色々斥候をしているとはいっても、人と積極的に接するわけじゃないからなぁ。特に困ってる話とかは聞いたことはないね」
「そうですか……」
あくまで斥候と言っても、彼の場合は世界を見守る仕事と同意義。個人の悩み事を聞いて、解決するようなことはしてこなかったと説明をするボタン。
その反応を見て、サクヤは寂しそうにぽつりとそう答えたのだった。
そのまま、会話が滞ってしまった一同の元へ、ラルゴとカグヤ、ミミとニャミが顔を出した。
カグヤは見覚えのある顔に少しだけ口角を上げた。
「あら。久しぶりねアクラル、ボタン。元気にしてたかしら」
「ボチボチだな。カグヤもしっかり役目果たしてるみたいで良かったぜ」
そう、大人の会話を繰り広げる彼らにMZDはどこか違和感を覚えた。
彼の知っているアクラルは、もっと子供っぽく他人につっかかるような性格だったはずだ。それが、大人しくカグヤと会話を繰り広げている。
不思議に思った彼は、思わずこう口にした。
「なんつーか……アクラル、ちょっと垢抜けた?」
「垢抜けたとはなんだ!オレはアイツの気持ちも背負って真面目に生きるって決めたんだよ。いや前から真面目に生きてるけどな!」
「青龍殿が引き継がれたことによって、あの鬱陶しい溺愛を見なくなるのは良いことだな。神でも成長はするものなのだな」
「オイコラヴィル!鬱陶しいとか思ってたのかよ?!さり気に失礼だぞそれ?!」
「前言撤回。大人しくなったのは人前だけだったみたいだな」
「エムゼまでそんなこと言うなよ~!オレだって妹失って傷心なんだからなー!!」
「煩いのも相変わらずね」
再会を喜び合っていると、ふと通信が来る音が聞こえてきた。
何かの依頼だろうか、とラルゴは早速通信を繋げるように指示をする。
「誰からだろう?」
「分からない。けど、繋げてみましょうか」
通信を繋げてみると、モニターに映ったのは巨大な右手と左手の姿だった。
- Re: Re:創世の方舟 ( No.12 )
- 日時: 2025/04/15 22:02
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
モニターに映った両手を見て、一同は驚きの表情を見せた。
しばらくの沈黙が続いた後、焦ったようにアクラルは口を開いたのだった。
「マスターハンドにクレイジーハンド?!っつーことは、『この世界』も混ぜられたってことになるか」
「そうだねー。あんだけ大きい世界が混ざっちゃったってことは、他にも大層な世界が混ぜられている覚悟はした方がいいかも」
やっといつもの調子に戻った一同に、両手は身振り手振りで何かを伝えようとしていた。
ちなみに、この世界の"マスターハンド"と"クレイジーハンド"は、言葉を喋ることが出来ない。喜怒哀楽は、全て自分達の手で行っている。
自分達の両手を使って、何か意味ありげなポーズを撮り続けている彼らに、一同は首を傾げるばかりだった。
「僕達に何か伝えてそうだけど。手話かな?」
「待ってくれ。解読を試みてみよう」
「えっ。ヴィルさん手話出来るの?!」
「城から出られなかった時に身に着けたものでよければ、だが」
「呪縛って本当恐ろしい」
「それは呪縛関係ないと思うぞニャミ」
ヴィルヘルムが何かを察知したかのように、彼らを真似て自らの両手で会話を試みた。俗にいう『手話』という手法である。
推測は当たっていたようで、両手はヴィルヘルムに色々と自分達の思いを伝えるため手話を続けていた。彼らのやり取りを見守っていると、「なるほどな」と彼は静かに頷いた。
「何か分かったのかしら?」
「彼奴等、どうやら私達に助けを求めているようだぞ。
何やらスマブラスタジアムに似た闘技場が悪事を働いていて、その火の粉がスマブラスタジアムに降りかかって迷惑がかかっているらしい。その調査の手伝いの依頼だ」
「スマブラスタジアムに似た闘技場?!随分デカいことするヤツもいたもんだな」
そのままヴィルヘルムは再び手話に集中し、両手と会話を試みる。
そんな矢先、ひょこりと画面の右側に赤いMの書かれた帽子が見えた。彼はそのまま右から顔を出し、一同に声をかけた。
「やあ!会話したかったんならボクを呼べばよかったのに!」
「マリオ!」
「ヤッフー!はじめましての人も久しぶりの人も混ざってるね!」
アクラルが彼の名前――"マリオ"の名前を出すと、彼は嬉しそうに一同に挨拶をした。
彼は現在キノコ王国とスマブラスタジアムを行き来して、混ぜられた世界を冒険しながら楽しんでいるらしい。
マリオは先程のヴィルヘルムの声も聞こえていたようで、彼の言っていたことに補足するように続けた。
「依頼したいことはさっきヴィルヘルムさんが言ってくれたことで合ってるよ!
その闇闘技場、噂では近々締め出される予定ではあるんだけどね?それを嫌がった貴族たちがスマブラスタジアムのせいにしようとしているーだとか、ボク達も無視できない状況になっちゃってさ。
もしキミ達に時間があるのであれば、話だけでも聞いてほしいな」
「闇闘技場かー。なんか怖い響きだね」
「でも、今までとはスケールが違う大きな依頼だよ!わたしは受けてもいいと思うなぁ」
マリオ――もとい、マスターハンド達からの依頼を聞いた彼らは、一旦その場で話し合うことにした。
これまでにない大きな依頼。スマブラスタジアムは様々な世界の人物が集まるため、情報もそれだけ多く集まる。もしかしたら彼らの必要な情報も得られるかもしれない大きなチャンスだった。
しかし、そこには危険がつきものだ。戦闘慣れしている人物が多い調査機関の一同でも、闇闘技場の詳細が不明な以上何が起こるか分からないのも事実だった。
「それで、どうするの所長?闘技場が悪事を働いているってのが気になるけれど」
「そうねぇ……」
ラルゴは暫く考えた後、意を決したように「依頼を受けてみよう」と答えた。
彼が決めたのなら、とラルゴの意見に反対を述べる者はいなかった。
「大きな依頼だもんね!しかも、スマブラスタジアムに行くなら誰かしらポッパーがいるかもしれないよ?」
「だな。オレ達にとっても利点は大きい。受けてみる価値はあると思うぜ」
「それじゃ決まりね!」
皆の意見を一通り聞いた後、ラルゴはその依頼を承ることをマリオに伝えた。
すると、マリオは嬉しそうに返事をした。後ほど準備が出来たら向かうと彼らに伝え、一旦通信を切ったのだった。
「さて、と。それじゃ早速スマブラスタジアムに行ってもらいたいのだけれど……。流石に全員ではいけないから、立候補者を募りたいわ」
「はいはい!わたし行きたい!」
「あたしもあたしもーー!!」
スマブラスタジアムに向かう人を立候補で決めると言ったラルゴの言葉を遮るようにミミとニャミがはいはいと手を挙げた。
その目には興味と羨望の眼差しが詰まっている。「行きたい」と、全身を使って現していた。
そんな彼女達にMZDが待ったをかけた。
「オイオイ。もしかしなくても行きたいだけじゃん」
「いいじゃん別に!ここ最近小さい悩み事しか解決してないから退屈なんですー!」
「そうだそうだ!それにせっかくスマブラスタジアムに行けるって分かったんなら、行かない選択肢なんか無いよねー!」
「あのねぇ。オレ達は遊びに行くんじゃないんだよ?それは分かってる?」
「分かってるよ!闇闘技場をぼっこぼこにこらしめちゃうんだよね!」
「趣旨変わってるし……」
「――まぁ、良いのではないか?MZD。彼女達がこんなに張り切っているのだから」
「ほんっとヴィルってミミとニャミには甘いよなー。オレ特製のココアよりも甘い」
どんなに危険が待ち受けているかもわからないのに、彼女達は呑気にキラキラと目を輝かせているとMZDはため息をついた。そんな彼の肩を優しく叩き、ヴィルヘルムは彼女達の意志を汲んであげることも大事だと伝えた。
MZDは改めてミミとニャミの目を見る。どんなことがあっても折れないという意思が彼女達から感じられた。
「はぁ……。わーったわーった、だからそんなに真剣な眼差しで見るなっつーの。……まぁ、ポッパーもいるかもしれないからな。オレもついてくよ。ヴィルはどうする?」
「ジャックの気配は特にないが……。折角だからついていこう。新たな魔法のアイデアになるものがあるやもしれんからな」
「また変な魔法開発したりしないでよ?」
ミミとニャミ、MZDとヴィルヘルムがまずスマブラスタジアムへ行くことを決めたようだ。
彼らの様子を見て、メグリカもサクヤに行かないかと誘う。2人共、答えは決まっていた。
「それじゃ僕も行こうかなー。サクヤも行く?」
「はい。もしかしたら刀剣を預かっていらっしゃる方がいる可能性も無きにしも非ずですので」
「4人もついてるし、2人なら大丈夫よね。私はアクラル、ボタンとここに残って刀剣を顕現する為の準備を進めるわ」
メグリカとサクヤも4人と一緒にスマブラスタジアムへ向かうことを決めた。
カグヤ、アクラル、ボタンは刀剣を顕現する為の準備を進めるため、調査機関に残ることになった。皆が戻ってくる頃には顕現の準備を整えておくらしい。
「あ。カグヤ。一応オレとボタン、準備終わってもしばらくはここにいるからな」
「あら、そうなの?所長、それでいいの?」
「カグヤちゃんのお友達であれば大歓迎よ!住居区も好きに使ってちょうだい」
「友達……まぁ、友達ね」
「なんで一瞬今間が開いたんだよオイ」
アクラルのツッコミをカグヤは全てスルーし、一同に早速準備を整えるように勧めた。それに答えるように、部屋を出ていく6人。
そして、準備を整えた彼らは早速スマブラスタジアムへと出発するのだった。
- Re: Re:創世の方舟 ( No.13 )
- 日時: 2025/04/16 22:06
- 名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)
アクラルに転移の扉を準備してもらった一同は、早速扉を潜りスマブラスタジアムへと足を運んだ。
ちなみに、『転移の扉』とは神々が異空間の移動を簡易にするために使っている扉のことである。それを私的に改造し、所謂"どこでもドア"のような扱いにしているのがアクラルだった。
久しぶりに吸うスタジアムの空気に、ミミとニャミは張り切っている。
「はー!やっぱり転移の扉って便利ー!流石はアクラルさんだよね」
「いやニャミちゃん、アクラルさんを物扱いしちゃダメだってば。ああ見えても神様なんだからね?」
「フレンドリーな神様が多すぎて、あの場所にいる人たちの殆どが神様だってこと忘れちゃうよ。ね、MZD!」
「なんでそこでオレに振るワケ?」
「フレンドリーな神を自称しているのは事実だろう」
4人の明るいやり取りを見守りながら、ふとメグリカは思考を巡らせる。
ミミとニャミ。ただのウサギと猫の少女なのに、神と呼ばれている存在とこんなに気軽に話している。しかも、底の知れない魔法使いとも軽口を叩き合っている。
彼には、その光景が不思議だった。どうして易々と巡り合えない人々が、こんなにも仲良くしているのだろうと。
気になったメグリカは、思い切って聞いてみることにした。
「そういえば、さ。4人共みんな凄い仲良しだよね。昔からつるんでるの?」
「うん、そうだよ!ニャミちゃんとはポップンのオーデション会場で。MZDとヴィルさんとはパーティ会場で出会ったんだけど、そこで色々あってさ。
シェアハウスなんかもしたりして、今は家族同然の仲なんだよ!」
「そうそう。ヴィルさんの部下に『ジャック』っていう男の人がいるんだけど、その子と5人でシェアハウスしてたことがあったんだ!
いやー、あの時は本当楽しかったなー」
どうやら、4人と『ジャック』と呼ばれる青年は過去に一緒にシェアハウスをしていたことがあったらしい。
MZDが出発する前に口にした料理関連の話も、もしかしたらこれが関係しているのかもしれないとメグリカは納得する。
サクヤは家族というものに憧れを抱いているのか、羨ましそうな反応を見せていた。
「家族……。よい響きですね。私には家族という存在は師匠しかいなかったので、少し羨ましいです」
「はいはい。雑談もいいけどそろそろ目的地着くぞー」
そう言って、MZDは目の前のスマブラスタジアムの受付を指さした。
そこには、マリオと一緒に闘牛士のような格好の青年と、フランスの淑女のような少女が立っていた。
2人の姿を見た瞬間、ミミとニャミは嬉しそうに彼らに駆け寄った。
「ウーノさん!アンちゃん!無事だったんだ!」
「ミミにニャミ!まさかこんなところで会えるだなんて」
首を傾げているメグリカとサクヤに、ミミとニャミは改めて彼らを紹介した。
闘牛士の男性の名前は"ウーノ"、フランスの淑女のような少女の名前は"アン"。どちらもワールドワイドに活躍しているアイドルグループのリーダーだった。
ウーノもアンも、まさか見知った存在が現れるとは思っていなかったらしく、2人共喜びの表情を見せている。
「いやー、本当びっくりだよ。まさかスマブラスタジアムで会えるだなんて」
「私達もさ。ワールドツアー中に急に強い光に覆われて、気付いたらアンと一緒にこのスタジアムの近くに倒れていたんだ。
運よくシモンさんに救助されたんだけど……。他のメンバーやポッパーとはまだ出会えていないんだ」
「そうだったんだ……。でも、ウーノさんとアンちゃんが無事だっただけでもあたし、嬉しいな!」
「わたくしもですわ。――皆さん、無事でいてくださればよいのですが……」
「大丈夫だよ!きっとみんなどこかで元気に暮らしてる!そう思わなきゃ!」
「……そう、ですわね。マジカル★4のリーダーであるわたくしがしょげていてはいけませんものね!」
メンバーが心配なのだろう。不安そうな表情を浮かべるアンに、ニャミは元気づけるように言葉を紡いだ。
そんな彼女の元気が映ったのだろうか。アンは少しだけ安堵の表情を浮かべるのだった。
「さて。再会もいいけど、オレ達には別に本題があることは忘れてないよな?」
「心配ないよ!ちゃんとマリオさんに話は聞いてるもん」
「本題?」
「あぁ。実は――」
メグリカがここまで足を運んだ事情を話すと、ウーノもアンも納得したように首を縦に振った。
どうやら、闇闘技場の問題はスマブラスタジアム全体へと広がっており、誰もが問題視しているものとなっているらしい。
困ったようにマリオは続けた。
「実はね?『闇闘技場』なるものがこのスマブラスタジアムの近くで開催されているって聞いてさ。そこは貴族たちのたまり場で、命のやり取りが起きているって噂なんだよ」
「いのちの、やり取り……」
「そうなんだ。貧困街から奴隷を集めて、戦わせて金を賭ける……。本当に駄目なことなんだけど、それが裏社会で横行してるらしくて。その弊害がこっちにも来ててマスターハンドとクレイジーハンドが困り果てててさ。
ボク達としても許せないんだよね。スマブラはあくまでも『スポーツ』であって、いのちのやり取りなんかじゃないのにさ!」
憤慨するようにマリオは言い放つ。これだけ詳細が分かっているとなると、闇闘技場がスマブラスタジアムへもたらす悪評も物凄いことになっていることは想像に難くなかった。
このままでは、スマブラスタジアム自体が悪者にされてしまう。闇闘技場を何とかせねばならないのは明白だった。
「なるほどね。それで、僕達に手伝ってほしいっていうのは……」
「ボク達と一緒に、『闇闘技場をぶっ潰してほしい』んだ!」
「うわ、物騒ー」
どうやら、マスターハンドとクレイジーハンドは闇闘技場を潰そうと考えているらしい。しかし、彼らだけではどうしようもなかったため、調査機関に助力を申し立てたというわけだった。
物騒だと口に出すミミに、ニャミはこう返す。
「でも、残しとけばスマブラスタジアムにも影響が出ちゃうよ!なら潰さなきゃだめだよね」
「潰す、とはいっても……。物理的に潰す訳ではなかろう?そうであれば、私の魔法で何とかしてやるのだが」
「ヴィル、闘技場だけに影響留まらないからやめてね?」
『潰す』ということは、物理的に闘技場をなんとかするのだろうかという意見が出たが、マリオはそうではないと首を横に振る。
スマブラスタジアムの面目も保たなければならない以上、闇闘技場を物理的に潰す選択肢は最初からないに等しかった。
「物理的に潰すわけじゃないよ!あくまでも再起不能にしてもらって、奴隷になっている人たちを助けて二度と『闇闘技場』を名乗れないようにしたいんだ」
「つまり、外からではなく『中からぶっ潰す』。そういうことなのですね」
「そうそう!でもボク達が動くと色々と勘付かれるからさ。協力してくれる人が欲しかったんだ」
確かに、スマブラスタジアムのファイターは有名人が多い。そんな彼らが束になって闇闘技場に押し寄せたら、目的が暴かれてしまう可能性も無きにしも非ずだった。
有名人ではない、さらに戦うことのできる彼らに協力を仰ぐことで、今回の目的を達成しようという魂胆だった。
『有名人では向かえない』。そんな言葉に、ミミとニャミもがっくりと肩を落とす。
「わたし達でも難しいよね。タレント活動で顔が売れちゃってるし……」
「そうだなー。ミミとニャミは行かせられないな。ということで、ここはメグリカとサクヤ、オレとヴィルで行ってくるよ。異論はないよね?」
「ちょっと!異論あるに決まってるでしょ!あたし達足引っ張るためにここに来たんじゃないんだから!」
ミミニャミはウーノとアンと留守番だ、と言い切ったMZDにニャミが突っかかる。ここまで来ておいて何もしないのはあり得ない、と。
しかし、彼はそれでも首を縦には振らなかった。それは、彼女達にとっての彼なりの親心でもあった。
「わーってる!でも、命のやり取りって聞いちゃうとさ。もし弊害がお前さん達に降り注いで、取り返しのつかないことになったらって思ったら怖くてたまんねーのよ。
だから、調査とか中からぶっ壊す、とか物騒なのはオレとヴィルに任せて。な?」
「んもう!いっつもそうやって危険な場所には自分から向かうんだから!いつもはわたし達こき使うくせにー!」
「はいはい。お小言は帰ってからたんまり聞いてやるよ。ヴィルもそれでいいよね?」
「構わない。私の力が必要なのであれば、助力は惜しまないつもりだ」
「僕達もそれで構わないよ」
「私もです」
話し合いの結果、案内役にマリオ、調査にメグリカ、サクヤ、MZD、ヴィルヘルムが乗り出すこととなった。
未だぶーぶーわめいているミミとニャミをウーノとアンが宥め、なんとかその場は収まった。
「闘技場の場所にはボクが案内するよ。一応バレないように変装はしていくつもりだけど……。もし見つかってつまみ出されたらごめんね?」
「それくらい有名人は入れない場所なんだね」
「そうなんだよ。だから調査も中々はかどらなくてさ。キミ達が来てくれて本当助かったよ」
「お役に立てるのであれば幸いですね」
「それじゃ、準備が出来たら早速行こうか」
一同は早速準備を整え、マリオの案内に従いスマブラスタジアムを後にする。
果たして、彼らのいう『闇闘技場』とは一体どういうところなのだろうか。不安になる気持ちを抑えながら、一行はマリオについていったのだった。