二次創作小説(新・総合)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Re:創世の方舟
日時: 2025/04/23 22:00
名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)

こんにちは、西宮まゆです。

この小説は、版権作品同士の「クロスオーバー」を前提としています。また、オリジナルキャラクターも登場します。
苦手な方、お口に合わなかった方はブラウザバックでお願いいたします。


※作品を読む前に必ず目を通してください※
【注意事項】>>1
【取り扱いジャンル】>>2



<目次>


Ep.00【ものがたりのはじまり】
>>3-10

Ep.01【闇の闘技場を制圧せよ!】
>>11-18

Ep.00【ものがたりのはじまり】 ( No.4 )
日時: 2025/04/02 21:01
名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)

「おっはよ~メグリカちゃん!今日も元気そうな顔を見れて嬉しいわ♪」



 メグリカが仕事場である通信ルームに顔を出すと、黒髪の女性らしい男性が出迎えた。
 彼の名前は"ラルゴ"。このコネクトシティに点在する、世界調査機関の所長を務めている。



「おはようございます、メグリカさん」
「おはようメグリカ。今日も頑張りましょ」



 そして、彼の近くには赤い髪の少女、黒と青の髪の女性が立ってメグリカを待っていた。
 3人共、メグリカが所属している世界調査機関の仲間。いわば「同胞」と言って差し支えないだろう。
 そう思い、彼は近くにある椅子へと腰掛けた。




 ――『彼』の名は"メグリカ"。
 白と紫の長い髪の毛をなびかせる彼は、幼い頃に夢に見た、『創世の世界』に辿り着くことを夢見る青年である。


 世界が謎の光に覆われた次の日、見たこともない世界が突然現れる――。
 この世界は、そんな超常現象が当たり前のように発生している。
 そんな『混ざった世界』の調査を一端に担っているのが、彼の所属している『世界調査機構』である。


 世界調査機構は、『情報の街』として発足した新しい街『コネクトシティ』の真ん中に点在している。
 町長と機関の所長であるラルゴが連携を取りながら、日々世界について不明な点を洗い出し、解析を進めているのだ。
 最近、『異世界がこの世界に混ざる』現象が増えており、彼らは調査と人助けに追われていた。



「所長。今日は何か混ざったとかの連絡は来てないかしら?」
「うーん。今日はまだ特に何も来てないわよ。最近は報告が多くて大変だったじゃない?もしかしたらまたすぐに報告が来るかもしれないけれど、今のところは自由にしてていいわよ」
「はーい」



 女子同士の他愛もない会話が繰り広げられる。
 彼がこの調査機関に入った理由は、単純に世界のことを知れるからということともう1つ。『創世の世界』についての情報を見つけるためだった。



「(僕は――『創世の世界』を見つけたいという目標がある)」



 『創世の世界』。彼が辿り着くことを目標としている世界だ。
 大昔――創世の時代に産まれたと言われる、いわば『果ての楽園』。その世界に辿り着いた者には、巨万の富と永遠の幸福が訪れるであろうと噂されている世界だ。
 大昔にその世界に何が起こったかは、御伽噺や小説の中で語られているため、一般の人間でも知ることが出来る。しかし、彼が知りたい、見たいと考えているのはその『先』だった。



「最近世界が混ざる頻度が増えていますし……。いつ如何なる連絡が来てもおかしくないですよね。我々がしっかりしなければ」



 そう呟く、赤い髪の少女。名を"サクヤ"と言った。
 師であるカグヤに教えを請い、剣の道に生きる少女だ。とある目的でこの調査機関に入ったとされているが、それを知るものは所長など、少数に限られている。



「刀剣達の情報も特には来ていないわ。みんな無事だといいのだけれど」



 そう、サクヤの言葉に返す女性。名を"カグヤ"と言った。
 先に紹介したサクヤの師匠であり、現代の『青龍』を引き継いでいる、いわば神様である。
 彼女が調査機関に出入りしている理由は、世界中に散らばった『刀剣』という武具を回収するためである。



「そういえば師匠。近々師匠のお仲間がこちらに戻ってくるんですよね?」
「えぇ。朱雀と白虎との連絡がやっと取れてね。昨今の世界が混ざる現象がやっぱり気になるみたいで、しばらくはこっちを拠点にして活動してくれるらしいわ」



 この世界には、四方を守る『四神』という神が存在している。
 カグヤもその『四神』の名を受け継いでおり、カグヤが受け継いだ東を守る『青龍』の他に、南を守る『朱雀』、西を守る『白虎』、北を守る『玄武』の三柱がいる。
 そして、その中の『朱雀』と『白虎』が、近々調査機関に戻ってくるらしい。
 四神は世界を守る神だ。その世界が日々変化を続けているのであれば、その原因も探らねばなるまい。皆思いは一緒のようで、暫くは調査機関を拠点にして動くという話をカグヤは受けていた。




 そのまま他愛のない話を続けていると、ふと間延びした高い女性の声が部屋に響いてきた。



「あ、みなさ~ん!おはようございま~す!」
「あら、ハスノちゃん!今日も元気そうね♪」



 彼女の名前は"ハスノ"。
 調査機関が点在している『コネクトシティ』で、カフェを経営している女性だ。
 彼女も実は人間ではなく、その正体は『夢』を司る邪神である。



「最近世界が混ざり続けているって話を聞いて、わたしにも何かできないかと差し入れを持ってきたんです~。
 わたしに出来ることと言えば、みなさんが悪夢を見ないようにお守りするだとか、みなさんのお腹を膨れさせるくらいですから~」
「いやいや。悪夢を見ないように守ってくれてるだけでかなり助かってるわよ。そんなことが出来るのは貴方くらいのものじゃない」
「えへへぇ~。悪夢は世界を歪ませる元ともいいますからね~。夢を司る邪神として当然のことをしているまでです~」



 神同士、とんでもない規模の話をしている気がするとメグリカは話を聞きながら思っていた。
 しかし、メグリカも実は神と人間のハーフである。人のことを言える状況ではない。




 今日もまた、そんなのんびりとした1日が始まるのかと思った矢先だった。
 聞き覚えのある男性の声が、部屋の中に響いてくる。
 何かあった。そう思ったラルゴは、すぐにその男性との通信を繋げるのだった。

Ep.00【ものがたりのはじまり】 ( No.5 )
日時: 2025/04/03 22:02
名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)

「久しぶりだなMr.ラルゴ。……おや、初対面の人々もいるようだが」
「あら~アシッド社長!随分久しぶりじゃないの!」



 モニターに映ったのは金髪に緑色の目をした、人間離れした美しさを持つ灰色のスーツの男性だった。
 彼はラルゴと知り合いらしく、軽口を叩き合いながら通話での再会を喜んでいる。
 ――彼が言った『初対面』のうちの1人、サクヤは会話の流れを切らないよう、恐る恐る口を挟んだ。



「あの。アシッド……って、もしかしてかの大企業『ネクスト・コーポレーション』の社長さんですか?」
「えぇ、そうよ♪ この世界調査機構を立ち上げる時に協力もしてくれた、うちの強力な後ろ盾なの」



 そう会話が切り替わると同時に、アシッドは自らの名を告げる。



「すまない。話し込んでしまったね。私の名前はアシッド。
 君も知っての通り、『ネクスト・コーポレーション』の代表取締役を務めている。これから、どうかよろしく頼むよ」



 そう言って、彼は深々と彼らに向かってお辞儀をした。
 それに倣うように慌ててお辞儀をするサクヤの横で、退屈そうにメグリカが口を挟んできた。



「それで?その大企業の社長がウチに何の用なのかな?」



 その言葉は、楽しげだった雰囲気を元に戻すのには丁度いいスパイスだった。
 アシッドはメグリカの方を見て、「もう少し雑談をしてもいいのではないかね」と冗談交じりに口を紡ぐ。しかし、彼はアシッドがその場にいること自体があまり好ましくない状況のようで、早めに本題を進めてほしいと目が訴えていた。



「わかった、わかった。本題に移るからそんな顔をしないでくれたまえメグリカ」
「このまま僕が止めなかったら、夕方まで雑談で埋まりそうだけどね?」
「あら、そんなことないわメグリカちゃん。お仕事の邪魔になることはしないのがアタシのポリシーなのよ♪」



 こほん、とアシッドが一度咳ばらいをし場を整えた後、彼は本題を口にした。



「君達に依頼がある。また世界が混ざったとの報告を受けた。救助人がいないか至急現場に向かってほしい」
「また……!」
「あぁ、まただ。最近やけに増えているが、今回は大きな世界が混ざったとの報告を受けてね。世界への影響が出ていないかどうか、早急に調べる必要がある」



 アシッドが口にしたのは、『また』世界が混ざったとの報告だった。
 世界調査機構としてはすぐに動かねばならない事態だが、アシッドは今回の世界を『大きな世界』だと言っている。そこが引っかかっているのか、彼に質問をする人物も現れ始めた。



「――3日前に別の世界が混ざったばかりよ?その時は廃坑ばかりの場所で、人なんか見つからなかったけど……」
「世界が混ざるペースが速くなってるよね。それに、『大きな世界』ってアシッドは言ってたけど……。もしかして、アシッドが知ってる世界だったりするの?」
「あぁ。今回混ざった世界は、私の知り合いがいる世界だ。――至急、頼みたいのだよ」
「そうなの……」



 アシッドが言うには、彼が知っている世界が混ぜられたという。
 普段ならばこちらに連絡を寄越さず自分で調べるような人物が、調査機関に連絡を寄越してまで調査、救助人保護の依頼をした。
 彼はそれほど切羽詰まっている。情をかけていた世界なのだと誰もが理解した。



「それで?生命反応はあるのかしら」
「少々だが反応を察知した。……もしかしたら私の知っている人物かもしれん。私は別の仕事があるため動けない。
 ――すまない、頼む。もし要救助者がいれば助けてほしい」



 アシッドは改めて頭を下げ、緊急で依頼を入れたことを詫びた。
 ラルゴはその反応を見つつ、アシッドが本気なのだということを察知する。そして、気合いを入れるかのように『安心してちょうだい』と答え、笑顔で答えた。



「分かったわ。新たな土地が出来たということはアタシ達の出番ということでもあるし。大船に乗ったつもりで任せなさい!」
「――そうか。受けてくれるか。……感謝する。私も仕事が落ち着き次第そちらに顔を出そう。――彼ら、無事であるといいがな……」



 ラルゴが承ったと返事をすると、アシッドは安心したように眉を下げる。彼にとって、よっぽど切羽詰まっていたことだったらしい。なるだけ早く肩を付けて、様子を見に来てくれることも約束してくれた。
 そのまま、まだ仕事があるのでと彼は通信を切った。




 しん、と静まり返った通信ルームに掌を叩く音が響く。ラルゴのものだった。
 彼は「さて」と一呼吸置いた後、3人に向かって口を開く。



「さて!ということで。メグリカちゃん、サクヤちゃん。今回は2人が中心となってアシッド社長の依頼に答えてほしいわ。カグヤちゃんは2人のサポートをお願いね」
「承知しました」
「はーい」



 今回は若い者に任せようということで、メグリカとサクヤが中心となって調査、そして救助活動に当たることになった。
 3人はそれぞれの役割を今一度確認した後、互いに頷き合う。そして、すぐ出発できるよう準備を整えに戻ったのだった。




 しばらく時間が経った後、3人は再び集まる。
 武装をする者、いつも通りの者……。出発の準備は整ったようだった。



「さーて。今回はどんな世界が混ざっているのかな」
「前回のように、滅びてしまった世界でなければいいのですが」
「いや、『生きている世界』でも、その世界に住んでいる人がどうなっているかは分からないわ。とにかく行ってみましょう」



 カグヤの冷静な返しに、『そうだね』と改めて返事をするメグリカだった。
 そのまま、彼らはラルゴが指示した場所へと出発するのだった。

Ep.00【ものがたりのはじまり】 ( No.6 )
日時: 2025/04/04 22:16
名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)

 アシッドから連絡を受けた場所に足を踏み入れると、3人は唖然とする。
 生命反応があるから、と街のようなものを期待していたが、彼らの目に入ってきたものは廃墟が続いた土地だった。
 また滅びた世界が混ざってしまったのか、と一同の胸に一抹の不安がよぎる。



「おー、ここもなかなかの廃墟」
「また滅びた世界が混ざってしまったんですかね……」
「そうとも限らないわよ。以前救出した人だって、混ざった元の世界とは随分離れたところに飛ばされてしまったんですもの」



 そんな会話を続けながら、3人は誰か倒れていないか歩き続けた。
 メグリカは自らの魔力を放出し、近くに生命反応が無いかを調べる。微弱だが、反応はある。彼はそう感じていた。
 つまり、近くに誰か生きている生命体がいるということになる。



「あっ。2人共!誰か倒れています!」



 ふと、サクヤが声を上げた。
 声の方向を向いてみると、そこには4人の人影が見えた。
 1人はウサギの耳を生やしており、もう1人は猫の耳を生やしている。それを庇うように、帽子を被った茶髪の少年と、マゼンタの髪が目立つ男性が倒れていた。



「うん。生命反応は彼女達で間違いなさそうだよ」
「まさかこんな寂れたところに4人も倒れているだなんて……。ですが、服は小綺麗ですね」
「予想通り、倒れている場所とは関係のない人達かもしれないわね」



 恐らく、アシッドの言っていた『要救助者』は彼らで間違いなさそうだ。
 3人はそう結論付け、救助へ入ろうとする。その時だった。
 倒れている少年の下からにゅっと、こちらに向かってくる気配があった。



「なんだろう?」



 気配の元を辿ってみると、それは影のような姿をしていた。
 手のひらサイズの影は、不安そうにメグリカをじっと見つめている。
 そして、少年の方を指さしてこちらに助けを求めてきた。



「のいのい!」



 この影は倒れている人物の関係者なのだろうか。メグリカは頭の中で考えを巡らせつつ、影の動向を負う。
 影は変わらずも、不安そうに少年の方を見ながら必死に指さしている。



「この影は何なんでしょうか?助けを求めているようですが、彼らの関係者なのでしょうかね」
「そうだと思うよ。ってことは、アシッドの言っていた『要救助者』って彼らで間違いなさそうだよね」
「そうね。人が多いから、龍に戻った方が早いかもしれないわね。2人共、手伝ってくれる?」
「はい!」



 そう言うと、カグヤは意識を集中させ、巨大な青龍の姿へと形を変える。
 この美しい東洋竜の姿が、カグヤの本当の姿。『青龍』を引き継いだ証である。彼女はメグリカ達に念で意識を飛ばしながら、4人を背に乗せるよう頼んだ。



「よいしょっと。これで僕達も乗ればすぐに戻れるね。さすが、青龍の身体って意外なところで役に立つよね~」
「師匠を者扱いしないでください!そういえば……この子は、どうしますか?」



 ふと、掌でふよふよと浮かんでいる小さな影のことを思い出す。
 メグリカは少し考えた後、自分のパーカーの帽子のスペースを開けて言った。



「この子はしばらく僕の帽子に入っててもらおう。入れる?」
「のいのい♪」



 影に向かってパーカーの帽子を指さすと、影はくるっと一回転した後メグリカのパーカーへと姿を消した。
 そして、にゅっと顔だけを出し、満足そうに「のいのい♪」と鳴いた。



「なんだかかわいいですね」
「でも、画面の向こうの世界の設定の通りなら、この影物凄い力を持ってるんだよね。とにかく、これで準備は整ったし早速戻ろう」
「師匠。調査機関まで出発進行です!」



 サクヤの言葉を合図に、青龍は雄たけびを上げて空を舞った。
 そうして、素早く調査機関のある方向まで飛んでいったのだった。

Ep.00【ものがたりのはじまり】 ( No.7 )
日時: 2025/04/07 22:16
名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)

 本部に戻った3人は、出迎えてくれたラルゴに早速医務室を開けるよう頼んだ。
 近くには先程、通信にて話していたアシッドも立っている。あの後、本当に残っている仕事を片付けて様子を見に来たらしい。
 ラルゴはその人数の多さに驚愕しながらも、すぐに医務室を開けるよう彼らに鍵を渡した。



「おかえりなさい。あら、4人も倒れていたの?!」
「そうなんだ。結構大人数だったから連れてくるの大変だったよ」
「大変だったのはメグリカさんではなく、師匠なのでは……。とにかく。鍵はいただいたのですし、早く医務室へ運ばなければ」
「外傷がないかチェックする必要もあるわ。早く行きましょう」



 そう話しつつ、彼らは医務室へと急ぎ足で4人を運んで行った。
 そんな彼らをラルゴは心配そうに見やる。アシッドは懐かしいものを見る目で彼らを見守っていた。



「それで社長、彼らは結局知り合いだったの?」
「そうだな。――正真正銘『私の知っている』彼らだよ。世界崩壊後、どうなっていたか心配していたが……とりあえず、生きていてはくれたようで良かったよ」
「そう。不思議な縁もあるものね……」



 アシッドが『知っている彼ら』。まさかこんな形で再開するとは思うまい。
 ラルゴはそう思いながら、医務室への道を優しい眼差しで見つめたのだった。




 一方。医務室へ到着した3人は、素早く救出した4人をベッドに寝かせた。
 医務室はかなり広い造りとなっており、8人程であれば平気で寝かせることが出来るほどのスペースを誇っている。
 その後、カグヤは彼らに外傷がないかどうかチェックを始めた。



「女の子の方は大丈夫そうだけど、残りの2人に傷があるわね。倒れていた位置からしても、何かから彼女達を庇って傷がついた可能性が高そうね」
「師匠、どうするんですか?」
「でも、この程度の傷なら大典太の霊力で何とか治癒できそうね。サクヤ、大典太に魔力を込めて貰えるかしら?」
「はい、わかりました」



 傷の経過具合を見て、この程度であれば大典太の霊力で何とかなりそうだと判断したカグヤは、早速サクヤに大典太に魔力を込めるように指示をした。
 彼女に言われるまま、サクヤは刀をその手に召喚し、目の前にかざす。そして、刀に向かって精神を込め始めた。


 大典太が4人の身体を優しい光で包む。すると、彼女達についていた傷が少しずつ塞がっていった。



「いやー、凄いね。顕現出来なくてもこの霊力とは。流石『天下五剣』ってところかな?」
「それだけじゃないわ。この天下五剣は特別に打たれたものだもの。この大典太なら、ある程度の傷は一瞬で癒せるでしょうね」



 メグリカとカグヤが話しているうちに、4人を覆っていた光は徐々に薄まり、消えていった。
 どうやら傷の治癒が終わったらしい。サクヤは刀を再び一瞬で部屋に戻し、2人の元へと戻ってくる。



「師匠。これで大丈夫のはずです」
「ありがとう。後は目覚めるのを待つだけね」



 サクヤははい、と返事をしつつ、眠っている4人の顔を見やる。
 彼女にとっては、この4人は『実際に会うことの叶わない』人物だと認識していた。なぜなら、彼らを見たことがあるのは『画面の中』だけなのだから。



「まさか本当に、実際に見ることになるとは思いませんでした。彼らのことは――画面の中でしか見たことがありませんでしたから」
「僕も僕も。『現』と『夢』が混ざってきているって噂は本当だったんだね」



 『現』と『夢』。現実の世界で例えるなら、『三次元』と『二次元』で説明した方が早いだろうか。
 現実の世界を生きる『現の世界』。アニメや漫画など、創作物などが生きる『夢の世界』。この世界は、その2つの世界を隔てることなく混ぜ続けていた。
 それ故、このような現実と二次元の邂逅も実際に発生してしまっているのだ。



「私もこうして実際に会うのは初めてだけれど……。私の前の代の青龍が、彼らのような『夢』の存在と関わりを共にしたというのは聞いたことがあるわね」
「過去にそんなことが……。師匠、もしかしてアシッド社長が気にしていらしたのも、先代の青龍様絡みなのでしょうか?」
「恐らくは、ね」



 そんな話をしていた矢先だった。



「……ぅ……う……」
「あ。男の子の方が目を覚ましそうだね」



 眠っていた4人のうちの1人――。もみあげが特徴的な茶髪の少年が、静かに目を開いた。
 見たこともない天井。聞いたこともない声。彼の脳内に『焦り』という感情が支配する。思わず周りをきょろきょろと見回すと、すやすやと眠りについている知り合いの姿が見えた。



「っミミ、ニャミ!ヴィルも……ここ、は……」



 そうか。寝ているだけか。
 すー、すーと眠っている吐息が耳に入り、焦りから安堵へと表情を変えた少年。
 庇っていた傷の数からしても、彼らはこの少年にとってとても大事な存在だったのだろう。反応から見ても、一同全員が理解するのに時間はかからなかった。



「どうやらお目覚めのようね」
「お前さんは……。――いんや、違う人か」
「そうね。貴方の想像している人は――きっと違う人よ」



 改めて安否確認をするために、カグヤは少年に声をかけた。
 少年はカグヤに何か懐かしい気を感じたのだろう。一瞬だけ眼が大きくなるも、すぐに別人だと理解し表情を緩めた。――その眼に、少しの寂しさを残して。



「それで、聞きたいんだけど――。オレ達は一体どうしてここにいるのか教えてもらってもいい?」
「それは、ですね……」
「そうか、目覚めたか。久しぶりだなヒスイ」
「その声は!……アシッド」


 少年が自分の状態を確認するため、3人に問いかけたその時だった。
 少年には『懐かしい』の1つである、聞き覚えのある声と共に靴音が近付いてきていた。
 現れたその人物――アシッドの名を呼ぶと、彼は会えて嬉しいとでもいうように表情を綻ばせた。



「混乱するのも無理はない。この世界は君達の知っている『混ざった世界』とはまた別の世界なのだからね。ヒスイ」
「そういう呼び方をするのも変わっちゃいないな、アシッド」
「ふふ。その減らず口も相変わらずだな。だが――無事にまた、巡り合えて私は嬉しいよ」
「――っ……! ここは、どこだ……?」
「! 良かった、無事で……」



 アシッドと少年が話し込んでいる矢先、マゼンタの髪の男性も目を覚ます。
 そして、先程少年がやったようにきょろきょろと周りを見やった後、少年少女を見つけてはほっとしたように胸を撫でおろしたのだった。

Re: Re:創世の方舟 ( No.8 )
日時: 2025/04/09 22:07
名前: 西宮まゆ ◆DvvdZCE7CQ (ID: 2EqZqt1K)

「あぁ、そうか。私達は彼らに助けられたということなのか……」
「そういうことらしい。とりあえずは無事で本当良かったよ」
「不甲斐ないところを見せてしまったな、すまない。礼を言わせてくれ」



 そう言い、深々と頭を下げるマゼンタの男。それに倣うように少年も頭を下げた。
 そんな大したことをしたわけではないのだから、と頭を上げるようにサクヤは言った。すると、2人共申し訳なさそうに顔を上げたのだった。



「あ。自己紹介がまだだったよね?オレはMZD。ポップン界の神!神の世界では『音神』とも言われてるぜ。ポップンワールドの管理集団『pop'n Masters』の総長もやってまーす。よろしく頼むよ」
「私はヴィルヘルムだ。……今はただの幽玄紳士とでも言っておこう。一応、『pop'n Masters』にも席は置いている。どうぞよろしく頼む」
「これはご丁寧にどうも」



 茶髪の少年――"MZD"と、マゼンタの髪の男性"ヴィルヘルム"が自己紹介を終えた後、彼は未だに寝ているウサギと猫の少女を指さしてこういった。



「で、そっちですやすや寝てるウサギとネコが『ミミとニャミ』ね。今はまだ寝てるけど、そのうち起きると思うから。どうか仲良くしてやって」



 調査機関の一同も一通り自己紹介を終えたところで、MZDはふぅと息を整える。
 今まで起きたことを今一度噛みしめているのだろうか。再びかけ直したサングラスの奥の瞳は見えないが、何かを頭の中で整理しているような表情をしていた。
 ――しばらくした後、整理が終わったのか彼は再びため息を放つ。



「『また』世界が混ざることになるとはね……。流石の神でもびっくりだよ」
「気になっていたのだ。コネクトワールドが崩壊した際、君達の世界は元に戻ったと聞いたのだが」
「そ。オレ達の世界含めて、混ぜられた世界は唐突に元に戻ったよ。なんでかは知らないけどさ。その後しばらくは平和に元の世界で過ごしていたんだけど……。
 また、起きたんでしょ?『この世界』での何かが。そうでなきゃアシッドとこうして話出来ないもん」
「あぁ。そうだな。『また』起きたのだよ。世界が混ざる現象が」



 そう言って、アシッドは世界が混ざる現象――『創世の光』と呼ばれている現象について彼らに説明をした。
 『創世の光』とは、この世界で度々発生する謎の現象のことである。いつ発生するかも、どこで発生するかも改名されていない。唐突に光が世界を覆ったと思えば、次の日の朝に見知らぬ世界がこの世界に姿を現している……。そんな不可思議な現象が度々起きているのだ。
 ミミ達を助ける前、メグリカ達が『世界が混ざっている』といっていたのはこの現象のことである。



「そういえば、我々が気を失って倒れる前もそんな強い光に覆われたな。もしかしなくとも、それが原因なのだろうか?」
「恐らくは。世界が混ざる現象は、過去から度々起きてはいたのですが……。最近、頻度が増えているんです。しかも、今回はポップンワールドのような大きな世界まで巻き込んでしまって……」
「困ったもんよね。昨日まで平和に元の世界で暮らしていたと思ったら、光に覆われて変な世界に飛ばされてしまうんですもの」
「そういえば――先程『また』と仰っていたと思うのですが、MZDさんはこの現象に立ち会ったことがあるのですか?」
「あー。名前にさん付けしなくていいよ。むず痒いし」
「では――『えむぜさん』?」
「それでいいよもう。お前さん、名前だけじゃなくて呼び方もあいつと一緒なんだね」
「話を戻そう。そうだな。私達はこの現象に過去に一度立ち会ったことがある。それは事実だ」



 話のレールがずれ込んだところをヴィルヘルムが元に戻し、過去に自分達が経験したことを話した。
 一同は過去にも一度、世界が混ざる現象に巻き込まれたことがあった。しかし、その時は『世界の一部』はほとんど無傷の状態で飛ばされたため、大して問題にもしていなかったのだという。
 しかし、今回は話が違うとMZDは続ける。



「前に混ざった時はポップンワールドの一部は無事だったんだけどさー。今回はそうじゃなさそうで。みんなもどこいったか分かんないし」
「せめて我々の他に誰か無事であることを確認できればいいのだがな」
「そうか。今回は世界ごと混ざってしまった可能性があるのか……」



 どうやら、今回は場所の検討すらつかない。世界が完全に混ざってしまった可能性を示唆し、MZDは自分を落ち着かせるために胸に手を置いた。
 アシッドも残念そうに目を伏せる。しかし、そこで横やりを入れる人物がいた。
 メグリカだった。



「でも、可能性の話なんでしょ?混ざった世界がどこか無事にあるかもしれないし、まだ希望は捨てちゃ駄目だよ」
「まぁ、そうだよねー。まずはオレ達が五体満足で無事ってことを喜ばなくちゃだもんね」
「そうね。案外貴方達が探している人物も、この世界のどこかでよろしくやっているかもしれないわよ?」
「そう、であればいいのだがな……」
「ま。話すことは山ほどあるし。続きはミミニャミ起きてからにするよ。今はちょっと頭の整理に時間がかかりそうだから。ちょっとだけ休ませて」



 顔は落ち着いているが、まだ頭の整理が出来ていないらしい。
 少しだけ休ませてほしいと頼むMZDに、サクヤは気のすむまで休んでいけばいいと優しく答えた。



「今は混乱していることばかりだろうからさ。落ち着いたらこっち来てよ。また話進めよう」
「それじゃ、ここであったこと所長に報告しましょ。それじゃ私達は一旦ここ出るわね。どうぞごゆっくり」
「気遣い、痛み入る。私も少ししたらそちらに向かおう」



 少し休むと宣言したMZDと、それを見守る選択肢を取ったヴィルヘルム。
 彼らを見送りながら、一同はラルゴへ一部始終を報告するために通信サーバへと戻っていったのだった。


Page:1 2 3 4