【第16回 SS小説大会 参加ルール】■目的基本的には平日限定の企画です(投稿は休日に行ってもOKです)夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください■投稿場所毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません■投票方法スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します■投稿文字数400文字以上〜1万5千字前後(1記事約5000文字上限×3レス記事以内)⇒ざっくり基準目安ですので大体でOKです■投稿ジャンルSS小説、詩、散文、いずれでもOKです。⇒禁止ジャンルR18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を不当に題材にしたもの、二次小説■投稿ニックネーム、作品数1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがありますニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です■大会期間、結果発表等第16回SS小説大会 2023年9月12日から2024年1月8日まで(期間延長するかもしれません) 優秀作品発表…2024年1月9日(トップページ予定) お題(基本)…旅 お題(思いつかない人用)…自由 、■その他ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせくださいhttp://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001******************************平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。どうぞよろしくお願い申し上げます。******************************
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秋になりましたねちょっと文字化けしてしまっているので後ほど直します(文字数表示)(短編小説テスト投稿です)
……はぁ、はぁッ………弱い身体でどれだけ逃げたんだろ…体中怪我ばっかで…痛い……まだ、走れるかな………いや無理か……私は生まれた時から周りの人とは全く違う容姿をしていた。頭から生えた大きな角、背中から伸びた禍々しい腕、最低限として1つになった瞳。体力もさほどないし、野宿ばかりじゃ身体も壊すわけで、もう走れなくなってしまった。悪い村の風習として、容姿がおかしく産まれた者は「奇怪」として狩られる事になってしまう。最低限母と父は私の事を想っていたようで、物心がつくと森の中腹に私を捨てた。狩られるよりかはマシだと思ったのだろうが、道具もクソもなかったので、結果的にこうなったわけだ。なんだかよくわからない……頭がふらふらする……回らなく……ぅ……ガサッ……物音……!もう追いついてきた……?無理……今じゃ逃げられない!あぁ、私、死ぬんだ……目が覚めたら、テントの中だった。薄目の布団が敷かれていて、なんだか少し安心した。もしや天国かと疑ったが、神様が私を天国に連れていくとは思えない。「……目が覚めたの?」黒い髪の少年がこちらを向く。あまりにも器用な手つきで林檎を剥いている。背中にはタンクのようなものがついており、首や腰、背中からチューブが出ていて、それが無数の手のように動いている。私の頭には布で包んだ氷袋が乗っている。身体中に包帯が巻かれていて、応急処置はしてくれたようだ。「うん……」そう言いながら起き上がろうとすると、少年の背中のチューブが毛布を掛け直した。「まだ寝てていいよ。僕も準備ができてない」「え、っと……」「もう少し待ってて、何も食べてないでしょ?随分やつれてる」言うほどだとは思っていなかったけれど、傍から見たらそんな感じらしい。今、背中の腕は殆ど脱力状態だ。一応左右に伸ばしてはいるが、それ以外力を入れていない。「……できたよ、形が歪になっちゃったかもしれないけど。僕包丁あんまり使ったことなくて……」広いテントの中には小さいキッチンがあり、そこで切った林檎を皿に乗せて持ってきてくれた。「…動くの辛いよね、僕が食べさせてあげる」「ありがとう……んあ」体調があまりにも悪い為、殆ど食べる事が出来なかった。「……マシにはなったけど、中々食べられないせいで困るね」「…」頷いた。黙って。「あっ……自己紹介してなかった。僕はデビッド。君は?」「……ラオス」「ラオスね、あ、呼び捨てで大丈夫だった?」「うん。」「それにしても……もう氷溶けてるや、今変えるね」「……ねえ」「?」「どうして私を助けたの?」彼はこちらに視線を向けずに答えた。「可哀想だったから。ダメ?」「……ダメじゃないよ、別に」「じゃいいや。」「ねぇ、これからどうするつもり?」「生きるつもり。」彼の冗談に一瞬ぽかんとしてしまった。「冗談だよ。でもまぁやることも無いし、このままここで隠れて過ごすかなー。」隠れて?「何かに追われてるの?」「まぁ、うん。」「私と同じだね。」「だから可哀想に見えたんだろうね。」「…じゃあ、僕らはここで暮らしてればいいか。」「…………そうだね」
僕は皆に虐められてる。親にも、学校の先生にも、だ。クラスメイトには靴箱に画鋲を入れられてわざわざ虫を捕まえて机に置いてくるし、親には残飯処理させられる。ろくな飯を渡してくれない。良くて消費期限ギリギリのパンだ。先生はテストを渡す前から0点を書いてある 物を渡してくる。遅刻しなくても校庭一周。こんなふざけてる世の中なんて、、、、僕は死のうとして学校の屋上へ来た。その瞬間に世界が変わった。空には飛竜が飛び回り、地上にはゴブリンが大量にいるのだそんな事になった時に後ろの扉から誰かが入ってきた。いつも仲良くしてくれる佐藤君がきた。「うわっすげえな!」「そうだね」「?なんか不機嫌だな」「僕はもう死ぬから意味がないからね」「何言ってんだ?一緒に冒険しようぜ?」「楽しそうだけど僕には無理だ。」「何決めつけてんだよ?お前の何が悪い?」僕の何が悪い?何が?「僕が生きているのが悪いんだ。」「お前は何も悪くないんだよ!」「じゃあ誰の何が悪いんだよ!!!!!!!!」「いじめる奴が悪いんだよ。」「でも、、、、うっ「でもじゃないんだ。」」「今からでもいい。 あいつらを見返させないか?」「、、、、、うん。」「そうと決まれば早くゴブリンとか 倒しに行こうぜ!」「そうだね、行こう。」僕の物語は『これからだ』
最近、友人の美咲が死んでしまった。過労で倒れてそのまま逝ってしまった。葬式は開かれなかった。美咲も私も、孤児だったのでそんなお金はなかった。(過労死…そうとう働いてたんだろうな。)だが美咲が死んだことを何とも思わなかった。美咲が亡くなる少し前、大喧嘩をしたからだ。そのせいで、毎年送り合っている誕生日プレゼントも贈られてこなかった。そのおかげでダメージも少なかった。それでもなぜだか美咲の死から1週間が経つというのにまだその事が頭から離れない。頭の中で繰り返すのは美咲と過ごした日々。(何のためのお金だったんだろ…。)この前会いに行った時はギリギリだが生活費くらいは稼げていた。そこまで働いているようにも見えなかった。そんな事を考えても、わかるはずもない。「宅配でーす。」玄関の方から声がする。「はーい。」何も頼んでいないのだが…。それに仕送りをくれるような人もいない。不思議に思いながらも荷物を受け取り中身を確かめてみる。「!!」私は送り主を見て驚いた。そこには今は亡き美咲の名が書かれてあった。何で美咲から…そう思いながらも箱の中身を開けてみる。そこには少し高めのバッグと1枚の紙が入っていた。少し高めといえど、私達では買うのがかなり厳しいくらいの値段のものだった。手紙を読んでみるそこにはこんなことが書かれてあった。雪へお誕生日おめでとう!この前はごめんね。謝罪の意を込めてちょっと高めのやつにしといたよ。頑張って買ったんだから大事にしてね!大好きだよ。美咲より私はその手紙を読見終わった直後泣き崩れてしまった。「ごめん…本当にごめん…。」私はそう言い続け送られてきたプレゼントを抱き抱えながら泣き続けた。床に落としてしまった手紙が涙で文字が歪んでしまっていた。だが、そんなことも気づかないほど私は泣き続けた。
『あなたが私たちの神様でス あなたの言う通りにしマス なので何かお恵みを私たちに振り注いでくださレ どうかどうかお願いしまス 』そう書かれた筆者不明の古代エジプトから見つかった本。その時代にはまだ、キリスト教はなかった。そしてその者本人はイエスキリストに関係がない。これから私はエジプトに行く。不思議を解きに、進み続ける。たとえ、何かに行く手を阻むものがいても後ずさりもしない。それが三億年も経ってしまっても。この旅は決して終わらない。三億年の時を超えた旅であるから
今魔王上にて魔王を討伐しようとしている最終ラウンドみたいな感じ「そんなんで勝てるとでも思ったか!」そういい魔王はとてつもなく強い風を吹かせた「グッ…」(耐えるのも時間の問題だな…)そう思った時パートナーの魔法使い、レナが吹っ飛ばされてしまった「キャッ!」壁に当たって意識を失っている!「レナ!レナ!」実は、俺とレナ以外みんな魔王に殺されてしまった。「レナ!?」何度呼びかけても声がしないあぁ、もう終わったんだと確信した。「さぁ、お前1人でどうする?ニヤ」「…ニヤニヤ顔してイラつくんだよお前」俺は、最後の力を振り絞って怒りに任せなんとしてでも魔王を倒すことを決めた。2つ能力が俺にああるけどもう一つは確かじゃない。だからもう一つの方の、怒りに任せる怒りに任せれば何もかも殺せるけど、それは味方であろうが殺してしまう。だからみんなには…使うなって言われたけど、もう使うしかねぇよな?笑「何笑っている」「お前こそ、油断してんじゃねぇーよ!」そう言い走る(止まるな!止まるな!絶対に!)「そんなんで殺せないぞ?」そういい剣をこちらに投げてくる「クッ」当たるが関係ない、倒すんだ、止まるのは許されない!(今だ!)そう思い飛び、大きく剣を振り落とそうとした時あっさり俺は捕まった「ちっこいなぁ、手で潰せそうだw」「は、なせ!」「息もできないか?」「大口叩いてたくせにどうした??」そう言い煽ってくる(俺って…無力なんだな)最初から無力だった、みんなの方が俺より強いしそれにみんな俺のためにチームに残り助けてくれた「あぁ、なさけねぇな俺」そんな言葉をこぼした「そうだなそうだな!情けないなぁ!」「…」「俺の…負けだな」そう言葉を発した時横から魔法が飛んできた「グアッ!お前ぇぇぇ!」「!?」俺は手から落とされ後ろを見ると…「大丈夫!?」後ろからレナの声がした、紛れもなく気絶したはずのレナの魔法「レナ…お前ッ!」「魔王討伐、できたねッ泣」「…おうッ泣」嬉しさのあまりの泣いてしまうそしてレナが死んでなくて本当に良かった。「レナが生きてて本当に俺…よかった!泣」「私も!」「…けどなもう俺死ぬんだ」「…え?」レナの顔から笑みがなくなった「実はさ…毒刺されちまって…」「今直すから!」「情けないな…俺」「そんなこと言ってないで!」「俺、迎え来たみたい」そう上を見ると死んだ仲間俺はあの時、俺の命と引き換えにレナを起こしたんだみんなが知らない能力「じゃあな、レナ、情けなくてごめん」「え!?ユウ!?ユウ!?」こうして俺の長い人生と共に旅も終わった。
私は秋吉(あきよし) 美津香(みつか)。私は日本を旅している。というか、旅していた。旅を辞めたのは…十五年前。十五年前のある日。私はその時小四だった。十二回目の転校。転校など、慣れていた。隣になったのは、土塚(とつか) 恵斗(けいと)くん。イケメンで、背が高くて、頭も良くて、性格も良くて……完璧な、男の子だった。私はその時、初めて恋をした。「よろしくね。」「あ、うん、よろしくっ、!」「あんたなんか、いなくなればいいのよっ!」…私は、坂田(さかた) 麗奈(れな)ちゃんにいじめられた。散々悪口も言われて、蹴られて、殴られて…転校しようと思えばすぐ転校出来るし、いじめから逃れることも出来た。でも、転校しなかった。恵斗くんが、いるから…十五年経った今。私は恵斗くんの隣にいる。名前も、土塚 美津香になったのだ…。
もしあの時告白していたら、僕はどうなっていたんだろう。もしあの時、僕が少しでも勇気を出していたらどんなふうな今を送れただろう。真っ白に包まれた会場に立った僕はぽち袋を持ちながらそう思った。今なんで僕はここにいるんだろう。なんでだ。どうしてだ。僕はそんなことを考えながらも一直線でそこへ向かう。小さな小さな足音をならしながら。人をかき分け、そこへ向かう。そして僕は降り立った。とある人の前へと。ああ、懐かしいな、この感じ。この実家のような安心感とは少し違うが似てるような、あの微妙な感覚。そうか、もう届かないんだな。もう、僕はそこにいないんだな。「結婚おめでとう」どこか清々しく、どこか悲しげな僕の陰は消えていくのだった。
薄暗い夕暮れの中に、僕はいた。 閑散とした郊外の街。住宅から少し離れた歩道に、自分は立っている。 「お前なんか大嫌いなんだよ」 と、目の前に立つ男の子が告げる。彼の姿は僕とうり二つだった。 違うのは服装と身長だけ。お洒落なスポーツブランドのパーカーを着ており、背丈は向こうが三センチほど高い。 男の子はもう一度、噛んで含めるように言った。「お前なんか、大嫌いだよ。誰もお前のことなんか好きにならないよ」 セリフが後半へ向かうにつれ、言葉には笑いが混じる。 そっくりさんは心底不快だというように、眉を寄せた。くるりと僕に背を向け、前の道を行く。 「待ってよ。ねえ! 待って!」 僕は咄嗟に叫んだ。彼に会うために、わざわざ遠いところから来たのに。 出会い頭に暴言を吐かれ、こちらは内心穏やかではなかった。「ねえ、なんでそんなこと言うの。ねえ!」「へえ、そこで泣いちゃうんだ」とそっくりさんはポカンと口を開けた。 若干語尾が上がる癖も、話し始めるときに一呼吸置くところも、何もかも自分と一緒だ。「――お前が願ったんだよ。『お前なんかいなくなればいいんだ』って」 彼の両手が僕の頬へと伸びる。細い指が、そっと自分の頬をなぞった。「自分で願っておいて、やめてくださいなんて。図々しいったらありゃしない。蔑まれたいがためにわざわざ、俺という存在を作るとか。笑っちゃうね」 ■□■ 学校に行かないことを選んだのは、中学一年の秋だった。 理由はいたって単純だった。いじめと、中1ギャップと、勉強の差。 小学から中学にあがり、がらりと環境が変わった。それまでうまく行っていたことが、教室というハコの中では全くうまくいかない。周りと自分を比べて落ち込み、むしゃくしゃする日々が続いた。 そして、ある時思ったんだ。『もう全部どうでもいい』と。 自室に引きこもり、趣味のゲームに打ち込んだ。高校生の姉ちゃんの影響で、絵も描き始めた。やりたいことをやりたいようになって、結果それが楽しくて。自由であることが嬉しくて。 でも――その状態は一か月も持たなかった。【おーい愁ー。明日来るー? いい加減来ねえと習熟テストの成績落ちるよ】【アンタ学校どうするの!? 来年は受験よ!? ああもう、内申が】【あー、テストだっる。愁、今日も家にいたの? 少しは外でなよ〜、ニートじゃんマジうけるんだけど】 LINEの通知音。母親の怒鳴り声。姉のからかい。 早起きだった僕は、朝に起きれなくなった。走るのが好きだった僕は、散歩にすら行けなくなった。結構人気者だった僕は、いつの間にか社会の底辺になった。不登校のことを少し馬鹿にしていた僕は、もう当事者を馬鹿にできなくなった。 今では、プライドも体力も根性もない、弱虫になっていた。 ひどく惨めだった。布団にくるまることしかできない自分が、大嫌いだった。【おーい愁。来週さ、隣市の遠征研修があるんだけど。 先生に頼んで、俺と一緒の班にしてもらったよ】 先週の土曜日、小学校からの友達兼幼なじみのトオルから連絡があった。人当たりが良く、優しい性格。担任の先生から配られたプリントを、家まで届けてくれるのもコイツ。給食当番を代わりにやってくれるのもコイツ。学校にいけない自分を、唯一肯定してくれるのがコイツ。〈そうなんだ〉【そうなんだって、塩対応すぎじゃね。適当に面白いスタンプでも送っとけよ。悲し】 何を送れば相手が満足するのか、もう分からなくなっていた。 だから当たり障りない返答をするようにしてるんだけど、また間違えてしまったようだ。【まー、いいけど。そんで、自由行動があるんだわ。行く行かないは置いといて、行きたい場所だけでも教えてくれないかな。無理だったら休んでいいからさ】 行きたいところ……。 考えるより先に、指が動いていた。キーボードの上を、右手の人差し指が滑る。 矢印ボタンをタップ。シュルンッという音とともに、メッセージが送信される。〈遠くに行きたい〉 出来るだけ、人目につかないところへ行きたい。寂しくない場所へ行きたい。 それが最近の願いだった。なんて馬鹿な思考。【もっと具体的に言えよw】というトオルのコメントで、その日の連絡は終わった。 ボフンとベッドに顔をうずめ、僕は大きく息を吐く。目の端から、じんわりと涙が涙が滲んだ。「遠出したい……」 切実な願いだった。 目をつぶり、夢に逃げ込む。 逃げてるんじゃない、立ち向かってるんだと自分に言い聞かせながら。 自分にとって、ひどく都合のいい夢を妄想する。その妄想を、誰かが否定する。 自分が最もなりたい人物を妄想する。その人物が、僕を否定する。 ■□■ 薄暗い夕暮れの中に、俺はいた。 閑散とした郊外の街。住宅から少し離れた歩道に、お前は立っている。 「お前なんか大嫌いなんだよ」 と、目の前に立つ男の子に告げる。彼の姿は俺とうり二つだった。 違うのは服装と身長だけ。中学指定のジャージを着ており、背丈は向こうが三センチほど低い。 俺はもう一度、噛んで含めるように言った。「お前なんか、大嫌いだよ。誰もお前のことなんか好きにならないよ」 本当は、こんな汚い言葉、お前に言いたくなかった。 俺はお前が作り出した偽りの姿だ。俺の声はお前にしか聞こえないし、この世界にはお前以外、誰も入れない。 俺はお前にとって都合のいい言葉しか吐かないし 俺は自分にとって都合の悪い言葉しか吐けない。 セリフが後半へ向かうにつれ、言葉には笑いが混じる。(お前には此処よりも、行くところがあるだろう) 強い人間になりたい、とあんたは願っているけど。君は本当に完璧になりたいのかい? 自分のことが大嫌いなくせに、俺のことはしょっちゅう夢に見るよね。脚色しすぎだよほんと。おかげでこっちは毎日情緒不安定だよ。 心底不快だというように、眉を寄せる。くるりとお前に背を向け、前の道を歩く。 自分は、ゲームでいうところの村人の立ち位置だ。迷い込んだ弱い人間を手助けし、試練に打ち勝てるよう協力する役目。 けれども、俺はここ数週間、暴言しか言ってない。 彼に会うために、わざわざここで待っていたのに。 出会い頭に泣かれ、こちらは内心穏やかではなかった。「ねえ、なんでそんなこと言うの。ねえ!」 背後から、オリジナルの声が聞こえた。右手をこちらに伸ばしている。 若干語尾が上がる癖も、話し始めるときに一呼吸置くところも、何もかも自分と一緒だ。「――お前が願ったんだよ。『お前なんかいなくなればいいんだ』って」 彼の両手が僕の頬へと伸びる。細い指が、そっと自分の頬をなぞった。「自分で願っておいて、やめてくださいなんて。図々しいったらありゃしない。蔑まれたいがためにわざわざ、俺という存在を作るとか。笑っちゃうね」 拝啓、何処にも行けない君へ。世界の広さを知らない君へ。 俺はいつもこの世界で、お前を待っている。お前が望む情報を与えてやるさ。 罵倒しろって言われたらするよ。慰めてって言われたらするよ。 でもこれだけは、どうしても伝えたいんだ。 お前の旅の終点は、ここじゃない。頼むから、そんな目で自分を見つめないでくれ。 辛いよな、苦しいよな、寂しいよな。消えたいよな。 わかるよ。俺はお前だから。 この世界は、お前にとって『遠い場所』。お前にとっての『天国』で『地獄』。 俺……いや、僕はこの世界で、毎日「僕」を待っている。 君の唯一の、光として。唯一の、闇として。ずっと君を待っている。 ■□■ 「遠出したい……」 切実な願いだった。 目をつぶり、夢に逃げ込む。 逃げてるんじゃない、立ち向かってるんだと自分に言い聞かせながら。 自分にとって、ひどく都合のいい夢を妄想する。その妄想を、誰かが否定する。 自分が最もなりたい人物を妄想する。その人物が、僕を否定する。 僕は僕以外の人間になりたい。 その人物が、僕の意見を否定する。 『俺はお前が大好きだよ』と。
名前も年齢も分からない。 でも確かに私たちは十年前、あの場所で出会った。 誰かも知らないあの人に、私は初めて恋をした─────。 ■■■「私と仕事、どっちが大事なの!?」「そりゃあ君の方が大事に決まってるよ。でも仕事が重なって中々会えないのは仕方がないじゃないか!」「そうやっていっつも誤魔化して、本当は浮気してるんでしょ?私この前見たんだから!」 両親の声が家中に響いた。そのおかげで、ベッドに入った私は全く眠れない。 親の罵りあい、喧嘩、暴力、離婚。私にとってそんなことは日常茶飯事だった。 母はこれで三回目の再婚。今度こそ、今度こそって毎回思うけど、やっぱり今回もだめみたいだ。全く、三度目の正直とは一体なんなんだ。 朝の五時。ようやく両親の喧嘩は収まったみたいで、私はベッドから出た。パジャマを着替えてリュックに着替えやお菓子を詰める。バレないようにこっそりと母の部屋に入り、財布の中にあった札を何枚か奪った。 もう、こんな家嫌だ。そう思った私はまとめた荷物を背負い、家を後にした。 ■■■ 「………わぁ」 適当に目の前に来た電車とバスを乗り継ぎ、気付いたら全く知らない町に来ていた。 そこはびっくりするくらい空気が綺麗で、私は肺いっぱいにその浄化された空気を吸った。冷たいはずの北風が、今はなぜか心地よく感じる。 私は近くにあった海へ足を運んだ。波が打つ音をしばらくぼーっとしながら聞いていると、誰かに声を掛けられた。「………あの、ここら辺で見ない顔ですけどどちら様ですか?」「あ、えっと、東京から来た中学生です」 振り返ると、そこには見たこともないくらい綺麗な男の子がいた。見た目的に、恐らく私と同い年くらいだろうか。「……もし良かったら、案内しましょうか?」「えっ、いいんですか?」 彼は頷いた。私はこの町を彼に案内してもらうことにした。 ■■■ それから彼に色んな場所へ案内してもらい、気付けば私は家出という名の旅を満喫していた。 泊まる場所がないと言うと、彼は心良く家に泊まらないかと提案してくれた。 私は数日間、彼との時間を一緒に楽しんだ。 私たちはお互いのことについては話さなかった。自分の名前、年齢、家族、生い立ち。だけれど彼と話している日々は、恐縮しながら家にいた時とは想像もできないくらい、心地よかった。 でも、そんな幸せな時間は長くは続かなかった。 ここに来てから一週間がたったある日、母が私を迎えに来たのだ。「あんた何やってるの!?さっさと帰るわよ」 母は私の腕を強引に引っ張り、私は家へ連れて帰らされた。 ■■■ あの時ずっと一緒にいてくれた彼にお礼も言えないまま、十年がたった。 多分だけれど、私はあの時彼に惹かれていた。その気持ちは今もずっと、私の心の隅で生き続けている。 私は一人暮らしをしている家を出て、あの日彼に出会ったあの町へ向かった。 海の浜辺に行き、どうせ彼には会えないのだろうと思いながら私は海のそばに座った。「………あの」 声を掛けられ、まさかと思い私は振り返った。「もしかして………十年前の」 そこには───あの日見た彼の優しい眼差しがあった。
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