桜の木の下で / 作 唄

第一章【6年前の夢】
私達はあの日桜ヶ丘公園のずっと奥にある桜の木の下で遊んでいた。
私達にとってあの桜の木は秘密基地のような存在だった。
優里『捕まえられるものなら捕まえてみろぉ!』
私は桜の木の一番低い所にある枝に立ちながら言った。
陽『も・・もう駄目・・・! (バタンッ)』
ついに私を追いかけていた二人は倒れてしまった。
そして、私の後ろには怪しい影があった。
優『また私の勝ちかぁ。あれ?真也どこだろ・・?』
真『捕まえた!』
優『きゃあ!!』
と、その瞬間私は木の枝から足を滑らせ、宙に浮いた。
優『あ・・!』
『『『優里!!!』』』
景色が逆さまになり、私は地面に落ちた。
だけど、そんなに痛くなかった。
優『ん・・・?』
私は起き上がると目を丸くした。
真也が私の下敷きになっていた。
優『真也!!』
真『いてて・・』
陽介・俊介『優里大丈夫かっ!?』
陽介と俊ちゃんが猛スピードで私達の元に駆けつけた。
優『私は大丈夫だけど真也が・・・!!』
私は泣きながら言った。
真『大丈夫! たいしたことない』
俊『そか。』
優『でも本当に大丈夫??』
真『大丈夫!! それより優里が怪我しなくて本当に良かった!』
優『// 助けてくれてありがとう・・!』
私は笑顔で言った。
真『///・・あっ・・ぼっ僕出かけるから今日はもう帰るね!』
真也は少し赤面しながら立ち上がって服に付いた土を払った。
優『分かった! 本当にごめんねっ』
真『驚かした僕が悪いんだよ。じゃあっ!』
真也は少し走りだすと、急に立ち止まった。
『『『?』』』
『優里!』
真也は振り返って少し離れた所から優里に向かって言った。
優『なぁに?』
真『明日優里に手紙渡すから!』
真也は笑いながらも少し真剣な表情をしながら言った。
優『わ・・分かった!』
真『じゃっ!』
真也はそう言うと走り去った。
だけど、その手紙は真也の手によって永遠に渡されることはなかった――――。
私はその後帰ると、ソファーの上でテレビを見ながら手紙のことを考えていた。
≪真也が私に手紙渡すなんてどうしたんだろ・・? そういえば、真也が私に手紙くれるのって初めてだよなぁ・・・≫
私は少し手紙を渡されるのが楽しみに思った。
『たっだいま―!!』
後ろを見ると真っ黒なスーツ姿のお父さんがいた。
優『あっお父さんお帰り―。』
父『おう、只今! 元気にしてたか―!?』
お父さんはそう言いながら私の髪をくしゃくしゃにした。
優『あ―! 髪くしゃくしゃになっちゃったじゃん!ていうか、朝会ったじゃん!』
私は少し怒り気味に言った。
父『お―、そっかそっか!』
お父さんは笑いながら言った。
母『あなた、お帰りなさい。ご飯出来てるけど先にお風呂に入る?』
お母さんは優しく微笑みながら言った。
父『今日は先に風呂入ってそれからまいうなご飯食う!』
お父さんはそう言うとトイレへ行った。
母『分かりました。』
お母さんは少し頬を赤らめながら言った。
優『そういえばお母さん。お姉ちゃんとお兄ちゃんは?』
母『今日は二人共頭を鍛えに塾よ。』
お母さんは笑いながら言ってキッチンに戻って行った。
少しすると
(プルルルルル・・・!)
突然家の電話が鳴った。
母『優里―! 悪いんだけど電話に出てくれる―?』
優『は~い。』
私はソファーから降りて電話を取った。
優『もしもし~?』
<優里ちゃん!?>
電話の向こうから突然大きな声が聞こえて私は思わず耳から電話を離した。
優『えっとぉ・・?』
陽介の母 <陽介のお母さんよ! 悪いんだけどお母さんに替ってくれる!?>
陽介のお母さんは少し震えた声で言った。
優『あっ・・分かりました。』
私は受話器から耳を離すと、
『お母さ―ん、陽介のお母さんからだよ―。急いでるみたいだよ』
と、言った。
母『あとで掛けなおすって言って―。』
私はまた受話器に耳を近づけると
優『あとで掛けなおすそうです。』
と言った。
陽介の母 <いいから早く電話に出ろっ!! って言って!>
私は栄介のお母さんの言い方と大声に酷くびっくりした。
優『お・・お母さ~ん、いいから早く電話に出ろっ!! だってぇ~』
母『え~・・・しょうがないなぁ~』
お母さんはそう言うと、キッチンから出て来て私は電話を渡した。
母『もしもし―?』
私はまたソファ―に座ってテレビを見た。
すると、突然
母『嘘でしょ!?』
と言うお母さんの大きな声が聞こえた。
私はその声でお母さんを見た。
気づくと、お母さんの顔色がみるみる真っ青になっていった。
母『優里達も連れてく・・? ・・・分かったっ、すぐ行く!!』
(ガシャンッ)
お母さんは電話を置くと下を向いてさっきよりも真っ青になって小さく震えていた。
私は恐る恐る、
優『どうしたの・・お母さん?』
と言った。
お母さんは我に返ったように私を見て言った。
母『いっ・・今からお出かけするから・・出る準備をして・・・』
お母さんは喉の奥からやっとしぼりだしたような声で言った。
優『分かった・・・。』
私は理由を聞こうとしたが止めた。聞くのがなんとなく怖かったからだ。
そして、その重苦しい空気をかき消すかのようにお父さんがトイレから出て来た。
父『あぁ~すっきりした―! ・・・ってあれ??』
お父さんはどうしたんだ?と言わんばかりの表情をした。
母『あなたっ!』
お母さんは突然お父さんにしがみついて何かをぼそぼそと言った。
お父さんの表情もまた青ざめていった。
父『分かった、すぐ行こう!』
私達はその後すぐにお父さんの車に乗り込んで目的地に行った。
着いた先は・・・
優『・・病・・院・・・?』
私達が着いた先は第三桜ヶ丘病院と言う結構有名な病院だった。
≪この病院になんのようだろう・・・≫
病院に入るとお父さんは受付にいたナ―スさんにこう言った。
『中村真莉奈とその家族が入院してる病室はどこですか!?』
≪え・・・・・・?≫
私は自分の耳を疑った。
≪今なんて言ったの? 中村真莉奈さんて確か・・真也の・・・・お母さん・・それにその家族って・・・・・・≫
優『どういうこと?』
私はおもわず口に出した。
お母さん達はナ―スさんに病室を聞き終わると暗い表情で
『もうすぐ分かるわ。』
と言った。
私に分かるのはただ一つ。
真也に何かあったということだけだった。
私達はエレベ―タ―に乗って病室に近づくと誰かの泣き叫ぶ声が聞こえた。
その声は真莉奈さんがいるらしい病室(個室)の中から聞こえた。
プレ―トには
―207号室―
中村○○○
中村真莉奈
中村真也
と書かれていた。
お父さんがドアを開けると更に大きく泣き叫ぶ声が聞こえた。
泣き叫んでいたのは
陽介のお母さんだった。
陽介のお母さんは真莉奈さんが寝ているベットに顔を伏せて泣き叫んでいた。
陽介のお父さんは真也のお父さんが寝ているベットの近くで息を殺して泣いていた。
私から見て真莉奈さんの右隣には
真也が静かに寝ていた。
陽介は真也が寝てるベットの隣で下を向いていた。
お母さんとお父さんはそれぞれ真莉奈さんがいるベットと真也のお父さんがいるベットに行った。
私はなにが起きているのかよく分からないまま、真也が寝ているベットに行った。
陽介は私に気づくと
『・・優・・・里・・・っ・・』
と言った。
私は驚いた。滅多に泣かない陽介が
泣いていた
優『陽介・・真也のお母さん達になにがあったの・・・・?』
私は静かに聞いた。
陽介の話によると真也達が乗っていた車に大型の自動車が突っ込んできて真也達が乗っていた車を押し潰した。事故を起こした運転手は亡くなって真也達も・・・・・・
そこで陽介の話が途切れた。
優『で・・真也達は・・・?』
私は恐る恐る聞いた。
陽介は泣きながら言った。
優里達が来る・・少し前に・・・・っ・・
死んじゃったよ・・・・・・!!
≪え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?≫
私の頭の中は真っ白になった。
真也が
死んだ?
優『嘘・・・・でしょ・・・・・?』
私はかすかに震えながら言った。
陽『嘘で・・こんな事・・っ・・言う訳ないだろ・・・・・!』
優『・・そんな・・・・!』
私はゆっくり真也の隣に行った。
真也はまるで今にも起きそうな表情で寝ていた。
私の目にはだんだんと涙が溜まってきていた。
優『真也・・・死んじゃったなんて・・・嘘・・だよね・・・?』
私は涙声で言った。
お母さんとお父さんは私の近くで泣いていた。
優『ねぇ・・・嘘だよって言ってよ・・冗談だよって言ってよ!! 真也ぁ!!!』
私は泣き崩れた。
≪ついさっきまで一緒にいたのに・・ついさっきまで笑顔で話してたのに・・・!!≫
優『真也ぁ!! 真也ぁ!!! 起きてよ真也ぁ!!!』
私は立ち上がって真也の体を揺さぶりながら言った。
陽『止めろ優里!!』
陽介は私の後ろから両腕を強く掴んで言った。
優『離して陽介!! 真也が死ぬはずないっ!!』
私は陽介の手を振り払おうと暴れた。
陽『優里っ!!』
陽介は正面から私を抱きしめた。
優『ようす・・』
陽『俺だって・・嘘だって信じたいけど・・・真也は死んだんだよ・・・!!』
陽介は泣きながらも力強く言った。
≪そうだ・・・悲しんでるのは私だけじゃないんだ・・みんなが悲しんでるんだ・・・≫
優『・・っ・・・ごめん・・・っ』
少しすると俊ちゃんとお姉ちゃんとお兄ちゃん達が駆けつけた―――――――。
第一章END

小説大会受賞作品
スポンサード リンク