コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- はじまりの物語 完結
- 日時: 2022/04/02 17:22
- 名前: 詩織 (ID: .DYzCgCx)
・〜・〜・〜・〜・〜・
赤い髪の少女は、不敵に笑った。
その瞳に諦めの色はない。
浮かぶのは、『希望』。きっと・・・彼も同じ瞳をしているはず。
今は顔の見えない少年を想った。
合わせた背中に感じる熱は‘信頼’と‘安心’を与えてくれる。
ぬくもりが伝わる。
君が、そこに居てくれる。
お互いそれだけで、強くなれる気がした。
『いくよ、シルファ?』
『了解、ラヴィン。』
囁くように交わされた会話を合図に、2人は地を蹴り飛び出した。
−−− 前だけを見つめて。
・〜・〜・〜・〜・〜・
はじめまして☆
小説を書くのは初挑戦(^^)
初心者なりに、まずは一話書ききること!・・を目標に頑張ります。
よろしければ、ぜひお付き合いくださいませ。
初めてで読みにくかったりするかもですが、
もし感想など頂けましたら、とってもうれしいです。
追加・・コメントいただいている作者さんのご紹介欄☆
☆せいやさん
言葉や文章がとても綺麗です。
表現が上手で、情景が浮かぶところが私は好きです。
☆ビタミンB2さん 「翼と自転車」
コメディ・ライトに書かれてます。軽快で、テンポが良くて、とっても読みやすいです。思わず笑っちゃうシーン多数。
☆あんずさん 「白銀の小鳥 From of the love」
素敵な短編集です。
優しく、でもその中にある強さが心に残る、暖かい文章です。
楽しい話から切ない話まで、表現が豊かで、そのメッセージにはいつも心を動かされます。
☆えみりあさん 複雑・ファジー「イノチノツバサ」
すごくかっこいい!丁寧な設定と文章で、感情移入して読んでしまいます。
☆星飯緋奈さん コメ・ライ「陰陽師ー紫鶴」
まず設定がすごい。私は設定だけでもかなりワクワクでした。
歴史もので、平安時代の雰囲気がびっくりするほど上手です。
☆てるてる522さん コメディ・ライト
たくさん執筆してらして、更新も早いので、すごいなぁと思ってます。
「〜Dolce〜Tarantella」は、読みやすく、可愛いお話です。
☆湯桁のろまさん コメディ・ライト
どれも空気感とか季節感とか、描写がすごく丁寧で素敵です。
私はストーリーも気になりますが、その文章を読むだけでも味があってとても楽しいです。
☆風花 彩花さん コメディ・ライト
とっても可愛らしいお話です。たくさん仲間がでてきて楽しそう。どうなっていくのかドキドキです。
☆いろはうたさん
とにかく文章力がすごいです。和も洋も、物語が本格的で惹きつけられます。表情や景色や温度が感じられる描写はさすがだなぁと思います。
☆ゴマ猫さん
短編も長編も素敵です。『雨と野良猫』はキャラクター達の会話の面白さもストーリーが読みやすいところも読んでいて楽しいです。
《 はじまりの物語 》
登場人物
ラヴィン・ドール・・ラズベリー色の赤毛の少女。好奇心旺盛な16歳。考えるより行動派。明るく素直、割と単純。今回の主人公。
シルファ・ライドネル・・銀色の髪の少年。魔法使いの名門ライドネル家の末弟、17歳。魔法の修行中。悩めるお年頃。
ジェイド・ドール・・ラヴィンの叔父。王都に店をもつ貿易商で、昔は兄であるラヴィンの父と世界中旅した冒険家。姪っ子ラブ。
アレン・・ジェイドの相棒。灰色の髪と瞳。性格、生い立ちは正反対だがジェイドのよき親友。
ラパス・・金髪、碧眼。体育会系の青年。元・王宮騎士団。ジェイドに憧れ護衛の仕事に転身。
ジェン・・漆黒の髪の青年。お兄さんというか「お母さん」。
研究には寝食忘れるタイプだが、それ以外は割とのんびり。
マリー・・見た目は10歳?くらいの少女。綺麗な水色の髪。ジェンの妹ということになっているが、本当は・・?
《 目次 》
序章 とおく聴こえるはじまりのおと >>000
第一章 赤毛の少女、王都へ行く >>001-002
第二章 ジェイド・ドールと噂の古城 >>003-007
第三章 シルファ・ライドネル、いつもの朝 >>008 >>013
第四章 出会いは冬の空の下 >>016-019 >>021-022
第五章 友達 >>024-025 >>027-028 >>030-031
第六章 動き出す歯車 〜ジェンとマリーの研究室〜>>033-035
動き出す歯車 〜ライドネル邸〜 >>036-037
第7章 石碑の謎解き 〜読めない魔法文字〜 >>039 >>040 >>041 >>042 >>045
第8章 夢 >>046-048
夢〜冬の終わり、帰り道。〜 >>049-050
第9章 真夜中の訪問者 >>051-055
第10章 旅支度 >>059-061 >>062-064
第11章 女神の守る村 〜エイベリーの石碑〜 >>065-067 >>068-069 >>070-071
第12章 『魔女の棲む山』〜入口、発見!〜>>074 〜森の中の急襲〜 >>075 >>076
〜女神エルスの子守唄〜 >>077 >>080 >>081 〜密会〜 >>082
目次Ⅱ >>141
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
序章 とおく聴こえるはじまりのおと
優しい風に、彼女の赤い髪が踊る。
季節は冬も終わりに近づく頃。
凍てつく寒さがほんの少しだけ緩み、窓から差し込む日差しは、微かに柔らかさを増した。
まだまだ春は遠かったが、町には厳しい冬からゆっくりと、季節の移り変わりを予感させる風が吹いている。
雲ひとつないその日は、青い空がどこまでも高かった。
太陽の光が、その透けるような赤い髪の上に降り注ぐ。
肩まである美しい赤毛をひとつに括り、旅支度を終えた彼女は家の前に立っていた。
「じゃあ皆・・、いってくるね。」
見送る人々を振り返る。
家族、友人・・とりわけ心配そうな顔でこちらを見つめている親友に、彼女は言った。
「だーいじょうぶだって、フリア。向こうにいけば、ジェイドおじさんの仕事仲間のひとたちがいるし、店の支店だってたくさんあるんだしさ。おじさんを見つけて、事情を確認したらすぐに戻ってくるから。」
親友には安心して待っていてほしいから、笑顔で語りかける。
「ほんとに?ほんとにすぐ帰ってくるのよ。無茶しちゃダメよ。」
フリアと呼ばれた少女は、腰まである薄茶色の髪を揺らし、赤毛の少女の右手をぎゅっと握る。紫色の瞳が、目の前の親友を映す。
「ラヴィン・・」
そっとつぶやく。
ラヴィンと呼ばれた彼女・・赤い髪の少女、ラヴィン・ドールは、そんな親友・フリアを愛しげに見つめた。
「ほんとだって。うん、無茶なことなんてしないよ。
そんな大げさなモンじゃないってー。ちょっとしたおつかいなんだからさ。すぐ帰ってくるよ。」
空いたほうの左手をひらひらと振り、へらっと笑った。
「そしたらさ、またいつもの丘でお茶しよう。向こうの街にはめずらしいお菓子があるよ。おみやげいっぱい買ってくるからさ。・・そのころには、ユリアンの花もきっと綺麗だよ。」
にかっと歯を見せて笑う。
ユリアンは、この地方の春に咲く美しい紫色の花で、二人がよく過ごす丘には毎年春になると満開に咲くのだ。
「だから、安心して待ってて。フリアとお茶するの、楽しみにしてるから、私。」
フリアの手を両手でそっと握り返しながら、ラヴィンは優しく言った。
そして手を離すと、よっこらしょ、と荷物を肩にかける。
「じゃあね・・。いってくる!」
気をつけていけよー、連絡よこすんだよ、早く戻ってこいよ、
皆の声を後ろに
軽く手を振りながら、彼女は歩きだした。
彼女は、彼女の目的のために旅立った。
まだ少し肌寒く、春が待ち遠しい季節の、ある晴れた朝のことだった。
これから起こることも、出会う人も・・・
少女はまだ何も知らない。
でも、今は、足取り軽く踏み出した一歩。
・・それは、とおく聴こえるはじまりのおと。
微かなそれに、少年はまだ気付かない。
ため息をつき、空を見上げる。
そんな彼の髪を風が揺らす。
風に運ばれ、出会うは人と人のものがたり。
冬の最中の春のように、未だ見ぬそれは何も見えず、何も聴こえず。
・・・けれど、確かにはじまっている。
とおい町の、小さな小さな はじまりの音・・
少年に届くのはもう少し先・・
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- マシュマロココア ( No.135 )
- 日時: 2016/03/21 12:01
- 名前: 詩織 (ID: 4M4hyAMx)
お久しぶりです!
更新、だいぶ間が空いてしまいました。
また寒い日が続いていますが皆さん体調は大丈夫ですか?
私は「りんご病」にかかってしまい、しばらくダウンしていましたよ〜。
風邪みたいに熱が出たり、だるかったりするんですけどね。
赤ちゃんがかかるやつだと思ってたのになあ。
赤ちゃんじゃなくてもなるみたいですね。
みずぼうそうとかみたいに、一回やればもうかからないそうですが、
私は子供の頃やってなかったようです・・。
おっきくなってからかかると4週間くらい長引くこともあるそうで、私もそんな感じでダルダル〜っとなってました。熱出るし(;;)
もうばっちり元気ですけどね。
皆さんも、気をつけてくださいね!インフルエンザも流行ってますしね。
ということで、久々なのでリハビリがてらショートストーリーをいれてみました。
ある寒い日の短いお話です。・・って書いたけど、文字数オーバーで①と②になりました^^;
本編もまた進めていきますので、よろしくお願いします!
〜 マシュマロココア 〜①
チリンチリンと入り口の鈴を鳴らし、店の扉が開く。
入ってくる人影を見つめていたラヴィンは、それがどこかの知らない少女たちだと分かると、思わず大きくため息をついた。
(シルファ、遅いなあ。)
テーブルの向かい、待ち合わせ相手の席は約束の時刻をとうにすぎた今も空っぽである。
街にできた新しいカフェ。
可愛くて女の子に大人気だと噂のその店に、どうしても行きたい!と誘ったのはラヴィンの方だった。
「珍しいね。ラヴィンがそういうお店に行きたがるなんて。」
えらく熱心に誘ってくる赤毛の少女に、シルファは目をぱちくりさせて返した。
「だってね、ここのマシュマロココア、すっっごく美味しいんだって!飲んでみたいんだよねぇ、それ。」
「マシュマロココア?」
「そう!あのね、あったかいココアの中に、マシュマロが入ってるの!それがふわんふわんでね〜。甘くって美味しいんだ。」
楽しそうに話すラヴィンを見て、なんか姉上みたいだなぁと思いながら、シルファは「へ〜」と相槌を打つ。
その顔があまり乗り気に見えなかったのか、眉毛をへにゃっと下げてラヴィンが言った。
「・・あんまり興味ない?」
「え?あ、いや、そんなことないよ!うん、いいよ。行こう。」
シルファの返事に、ぱぁぁっと笑顔を浮かべたラヴィンは、ひらりと二枚にチケットのようなものを取り出して一枚をシルファに差し出した。
「これは?」
「ふふふ。お店の招待券!」
「招待券?」
「そ。あの店がオープンするとき、うちの店からも色々材料とか道具とか卸しててさ。叔父さんが店長さんに貰ったんだって。でも、これ明後日までなんだけど・・予定どうかな。」
「明後日?」
シルファはうーん、と考え込んだが、やがて顔を上げて言った。
「たぶん大丈夫だよ。明後日なら忙しいのは昼過ぎまでだから。急いで用事片づけて行けば、お茶の時間には行けると思う。」
「そう?良かったぁ。じゃあお店で待ち合わせね。」
今からそわそわと楽しそうなラヴィンに、シルファもつられて笑った。
・・という一昨日のやり取りを思い出しながら。
ラヴィンは目の前のテーブルに視線を落とした。
丸っこくて可愛らしいカップには、ふわりと湯気の立つ茶色の飲物。
ふんわりと白いマシュマロの浮かぶ、この店一押しのホットココアだ。
(早く、来ないかなぁ。)
しばらくは注文せずに彼を待っていたのだけれど、さすがにずっと座っているだけというわけにもいかない。
仕方なく先に注文したココアが、ラヴィンの前に置かれていた。
さらにしばらく待っていたけれど、扉が開くたびに見えるのは知らない人ばかりで・・。
小さくため息をつくと、カップを口元へ運ぶ。
「・・冷めちゃうもんね。」
そっと呟いて、楽しみにしていたココアを飲んだ。
(おいしい。甘くって、トロトロだ。)
とても美味しかった。噂以上かもしれない。
でも。
でも、ね。
(・・一緒に、飲みたかったなぁ。)
(・・つまんないの。)
——— 結局、ラヴィンがココアを飲み終わってもシルファの姿は現れず、日も暮れかけて店内の客もまばらになったころ、ラヴィンは会計の為に席を立った。
店をでると、冷たい風が吹き付ける。
きゅ、とマフラーに顔を埋め、ラヴィンは帰り道を歩き出した。
最近は少し寒さが緩んだと思っていたのに、今日はまた一段と寒い。
粉雪でも舞いそうな寒さだ。
夕闇の街には街灯が灯り、その下を寒そうに人々が通り過ぎて行った。
(昼過ぎまでは忙しいって言ってたもんね。用事、終わらなかったのかな。)
シルファが平気で約束をすっぽかすような相手ではないことは、ラヴィンはよーく分かっていた。よっぽどのことがない限り、無断で約束を破るなんて彼に限ってあり得ない。
(大丈夫かな?)
ちょっと心配になったりもする。まぁ多分それほど大事はないと思うけど。なにか急用でも頼まれて、断れなかったのかもしれない。
(仕方ないよね。シルファ、忙しいもん。)
自分に言い聞かせながら、いつもの研究室兼彼女の生活場所である部屋へと帰る。
(それに・・私が無理やり誘ったんだし。もしかしたらシルファ、あんまり行きたいわけじゃなかったのかもしれないじゃない?)
部屋の中は静かだった。
ジェンとマリーは仕事で帰りは夜になると言っていたから、今いるのはラヴィン一人だ。
木枯らしがカタカタと窓を揺らすのを聞きながら、すっかり日の暮れた窓の外を眺めていると、なんだかちょっぴり、せつない気持ちになってしまった。
(なんかちょっと・・さみしいかも。)
「・・ココアでもいれよっかな。」
さっき飲んできたところだったけど。
こういう時は、あったかくて優しいものが飲みたくなる。
ひとり呟いて、ラヴィンはキッチンへとむかった。
- マシュマロココア② ( No.136 )
- 日時: 2016/06/23 22:10
- 名前: 詩織 (ID: u5ppepCU)
②
小さな鍋にココアと砂糖と水を入れて火にかける。コトコトと温めながら、チョコレートのかけらを放り込んだ。トロリと溶けたところにミルクを足して、あとは沸騰手前でできあがり。
甘い香りが、部屋に漂う。
(マシュマロがあったらカンペキなのにな。)
そう、ラヴィンが思った時だった。
ドンドン、と勢いよくドアをノックする音。
「ラヴィン、いるっ?!」
「シルファ?!」
聞こえた声に、ラヴィンは慌てて火を消すと、玄関のドアを開けた。
「〜〜ごめんっ!!」
入って来るなり、思いっきり頭を下げるシルファ。
「昼の作業中に急なアクシデントがあって、どうしても抜けられなかったんだ。ほんとにごめん!!せっかくチケットくれたのに、間に合わなくって。」
ラヴィンがびっくりする勢いで謝りながら、シルファは申し訳なさそうに顔を上げる。
「用事は無事終わったの?」
「え?あ、うん。大丈夫。ちゃんと片づけてきた。でもこんなに遅くなっちゃって・・。」
少し息が荒い。きっとここまで走ってきたんだろう。
「そういうことなら、しょうがないよ。いいよ、私が行ってみたかっただけたから。」
ホントはすごく残念だってけど。あえて軽い感じで言ってみた。仕方ないのは、本当だし。怒ってみても仕方ないし。
(私が無理に誘ったんだもん。シルファは優しいからいいよって言ってくれた。仕事なら、しょうがないじゃない?)
なんだかちょっぴりもやもやもするけど、自分に言い聞かせるよう心の中でそう呟いた。
けれどラヴィンがそう思った時。
「ほんとにごめんね。あー悔しいな!僕もすごく行ってみたかったのにさ。なんであんなトコであんなミス・・」
思い出したようにぶつぶつと独りごちるシルファの言葉に、ラヴィンはあれ?という顔をする。
「シルファも行きたかったの?」
ラヴィンの言葉に、シルファは「え?」と首を傾げた。
「もちろんだよ。僕もラヴィンと一緒に行けるの楽しみにしてたんだからさ。今日だって、ホントはもっと早く片づけるつもりで朝も早起きして・・ってそれはいいや、結局ダメだったし・・。」
しゅんとした顔で視線を下げるシルファ。
それを見て。
(シルファも、行きたかった?)
(私と一緒に行くの、楽しみにしていてくれたの?)
ひたすら残念がっているシルファを見ていると、ラヴィンはなぜか、さっきまでの寂しい気持ちが消えていくのが分かった。
変わりに胸を占めるのは・・。
「ラヴィン?」
黙ったままのラヴィンに、シルファがおそるおそる呼びかける。
そんな彼に答えるように。
ラヴィンは、にっこりと笑った。
「もういいよ。」
「え?」
シルファの目を覗き込み、微笑んで言った。
「また行こう?今度は、ちゃんと一緒に。ね?」
(なんか、嬉しいな。)
一生懸命謝ってくれるシルファも、その後の彼の言葉も。
我ながらなんて単純なんだろうと思う。
でも、人間なんて案外そんなものだったりするのかも。
(今日はダメだったけど、また、約束すればいいよね?
「一緒に行こうよ」って。)
そう思ったら、なんだかほんわかとしたあったかい気持ちが溢れてきて、自然と顔が緩んだ。
そんな彼女の笑顔に、理由の分からないままなんだかドキドキするシルファだったが、ラヴィンは気づかずにこにこと彼を見上げていた。
「あ、そうだ。これ・・、ごめん。今日のおわび。受け取ってもらえるかな。」
我に返ったシルファが差し出したのは、可愛くラッピングされたお菓子。
透明な袋の中身は・・。
「マシュマロ?」
「そう。姉上がまた取り寄せたものなんだけど、甘くってすごく美味しいって。ラヴィン、甘いの好きでしょ?」
差し出された袋と彼を交互に見て、ラヴィンは「あ!」と思い出した。
キッチンにある、作りかけのココア。
「そうだ!ねぇ、シルファ。今から一緒に飲もうよ、マシュマロココア。」
マシュマロを受け取ると、シルファの手を引いてキッチンへ。
甘い香りのココアを再び温めると、そこにマシュマロを放った。
ハートの形の、真っ白いマシュマロ。
鍋の中で、ふわりふわりととろけてゆく。
「うわあ。面白いね。」
シルファが鍋を覗き込んで楽しそうに言った。
「ふふ。さあ出来た。はい、どうぞ。」
カップに注いで、彼に手渡す。
自分のカップにも注いだあと、マシュマロをのっける。ハート型の、可愛いマシュマロ。
「「いただきます。」」
2人して、湯気のたつあつあつのココアを口に運んだ。
「おいしい。」
シルファが驚いたように言う。
「マシュマロってこんなに溶けるんだね。僕初めて飲んだよ。」
「でしょ?」
得意げなラヴィン。
2人は顔を見合わせて笑う。
甘い香りの漂う、ほっこりとしあわせな時間。
「えへへ。」
ラヴィンは今日一番の満足気な笑みを浮かべた。
(よかった。一緒に飲めたね、マシュマロココア。)
「ただいま〜!あー寒かった。」
ドアの開く音と共に、玄関から可愛らしい声がした。
「あれ?なんかいい匂いがする。」
「お、ほんとだ。ラヴィン、なんかやってんのか?」
聞こえてくるマリーとジェンの声に、2人は笑顔をむけながら言った。
「お帰りなさい!」
「あったかいマシュマロココア、飲む?」
〜おしまい〜
- ファリスロイヤ昔語り 〜冥き闇の手を持つ者よ〜 ( No.137 )
- 日時: 2016/03/21 15:16
- 名前: 詩織 (ID: 4M4hyAMx)
それは、突然の出来事だった。
ある静かな朝、病がちだったファリスロイヤ城当主は、自室のベットの上でそっと息を引き取った。
朝の支度の為に、部屋を訪れた召使の悲鳴が城内に響く。皆が駆けつけた時すでに息絶えていた亡骸は、特に乱れた様子もなく、まるで眠っているように穏やかな表情だったという。
よく晴れた空の下、街中に掲げられたのは黒と白の葬送の旗。
鐘の音が響くファリスロイヤ城では、厳かに、葬送の儀が執り行われていた。
「——— 領主さま・・。」
悲しみに沈む小さな呟きに、トーヤは隣のリーメイルを見下ろす。
うつむきかげんで表情までは見えないが、震える声は涙が滲んでいるようだった。
神殿の代表として葬儀に参列していた彼らは、突然の訃報への嘆きと戸惑いに暮れる人々と共に、領主を見送り別れを告げた。
遠く、広間の一番奥。喪主として父に寄り添うリアンを見て、リーメイルは懐かしさに目を細める。声をかけたかったのだが儀式の間はそのような機会もなく、2人は遠くから彼の姿を眺めていた。
その葬儀の後。
城は新しい当主の着任式の為、慌ただしく動き出した。
「なぁ・・。」
「ん?なあに?」
バタバタと人々が行き交う城内の廊下を歩きながら、リーメイルは隣を歩くトーヤを見上げ首を傾げた。
「どうしたの?」
呼びかけたまま返事のない彼に、促すような視線を向ける。
そんなリーメイルの視線に、トーヤは「ん、あれ。」と顎で廊下の先を示した。
そちらに目をやると、城の役人たちが数人、前から歩いてくるのが見えた。
すれ違った時、彼らの話し声が聞こえてくる。
「いやあ、領主様はお気の毒だったが、しかしリアン様とルーファス様がお帰りになっていて本当に良かったな!」
「ああ。あのお2人ならば安心だ。」
「本当にな。リアン様とルーファス様がいて下さって良かった!」
「・・・誰だ?“ルーファス様”って。」
遠ざかっていく役人たちの声を聞きながら。
トーヤが低い声で呟く。
その言葉を聞いて、リーメイルは気がついた。
よく耳を澄ませば、城のあちこちで同じような会話が囁かれていることに。
——— リアン様とルーファス様がいて下さって良かった。
——— あの2人がいればこの城も安泰だ。
「リアンが居て良かったっつーのは分かる。跡継ぎだからな。けど・・、なんで城の連中は皆そのルーファス?って奴の名を挙げるんだ?しかもリアンと同等に。」
眉根を寄せて問いかける。
リーメイルに聞いても彼女が知るはずないのは分かっていたが、言わずにはいられなかった。
しかし。
「実はね・・、私も、ちょっと気になってることがあるの。」
リーメイルから、予想外の言葉が返る。
トーヤは「ん?」と片眉を上げた。
「なんだ?」
尋ねると、彼女は思案げな表情を浮かべて言った。
「なんかね、変じゃない?ここの空気。」
「空気?」
くんくんと匂いを嗅ぐよう仕草をすると、「違うってば!」と軽く叩かれた。
「空気っていうか、気配、かしら。魔法の気配。この濃さ、重さ・・。おかしくない?」
そう言われて、トーヤは集中して気配を探る。
「俺は特に感じないけど・・。」
魔法への感受性に関しては確実にリーメイルの方が上だ。
彼女が言うなら、本当なのだろう。
「どんな感じなんだ?」
「んー、なんていうか、澱んでる?歪んでるとか、そんな感じ。そう、不自然なんだわ。無理な負荷をかけられてるような。何にしてもなんだか良くない感じがするの。」
「澱んでる・・か。」
そこまで言って、トーヤはハッと気づいたように顔を上げた。
「まさか・・。お前の見た予見と関係するのか?」
「まだそこまではわからないわ。でも・・。」
リーメイルはそこで一度言葉を切る。
確証がないからだろう。迷うような仕草。けれど、トーヤには分かった。その後に続く言葉は・・。
「多分、そうよ。このお城で今、何か良くないことが行われようとしている。魔法の力で。」
声を潜め、リーメイルが囁いた。
トーヤの魔法力が弱いわけではない。リーメイルが飛び抜けているだけだ。
そのトーヤでさえ気づかないというのであれば、多分、魔法の使える人間の少ないこの地において、この城のおかしさに気が付けるのはリーメイルくらいのものだろう。
「でも、一体誰が?そもそもこの城に魔法使いはいないだろ。」
そう。彼らの知る限り、この城に魔法使いは居なかったはずだ。
必要があれば神殿がその役目を担ってきた。
その自分たちが知らないうちに、何かが起きている・・?
一体誰が・・。
「帰ったら、神殿長さまにご報告するわ。少し様子を見て、リアンが正式に領主様になったら内密に話をしにきましょう。今は面会も難しそうだし。」
気になることはたくさんあった。
とにかくその暗く澱んだ空気が、リーメイルを不安にさせる。
この城の冥さは、領主を失った悲しみの為ばかりではない。
あの恐ろしい予見を見た時の胸苦しさが沸き上がってくる。
数日後の着任式を待って、すぐにリアンにも報告し内密に調査をしてもらおうと、2人は城を後にした。
- ファリスロイヤ昔語り 〜冥き闇の手を持つ者よ〜 ( No.138 )
- 日時: 2016/03/22 19:55
- 名前: 詩織 (ID: 2XDHCgd7)
ラヴィンたちのいる今現在。
彼らの住むこの国では、「領主」は王都に住む貴族である場合がほとんどだ。
彼らは領地の権利者として自身は王都に屋敷を構え、実際の土地の管理は彼らに任された配下の者が現地で行う。つまり支配権は現地ではなく国の中枢にいる貴族たちにあるのだ。
現にファリスロイヤ遺跡のあるルル湖沿岸地域を領地として治めるグレン公爵も、地元に彼の任じた管理係を据え、彼自身は王都ギリアの屋敷に暮らしている。
そして時はさかのぼり、トーヤたちの生きる時代。
交通の便もまだまだ未発達であり、またこの国が『国』としての歴史も浅かった時代。
領主とは、そのままその土地を治めてきた地元の権力者たちを指していた。
国という大きな括りは形作られてきていたが、まだまだ各地域それぞれの力や個性が強く、民たちにとってはそれぞれの土地を支配する領主こそが主であり、ある意味、それぞれが小さな「国」のような政治体制であった。
つまり。
この地において領主の座に就くということは、実質この地における全ての権限が彼リアン・クロウド・ファリスにあるということである。
自室のソファに深く身を沈め目を閉じていたリアンは、小さく叩かれたノックの音に、ゆっくりと瞼を上げた。
「誰だ。この時間は誰も声をかけるなと命じてあるだろう。」
「ルーファスです。」
控えめでありながら、静かにその場を支配する、不思議な力を持つ声。
「入れ。」
短く告げると、はいという返事と共に濃紺色の瞳の魔法使いが姿を現した。
「お休み中でしたか?失礼しました。」
「かまわない。少しうとうとしただけだ。立て続けだからな、さすがに少し疲れた。」
「そうですね。お疲れ様でした。」
ルーファスは穏やかな微笑みと共に労いの言葉を口にする。
「でもこれで・・、近づきましたね、あなたの求めるこの地の在り方に。」
微笑みを絶やさぬまま、ルーファスはリアンを見つめた。
リアンはしばらくその静かな瞳を見つめ返していたが、ふっと小さく笑うとソファから立ち上がる。
そして机の上にあった数枚の紙を手に取ると、ルーファスに突き出した。
「出来たぞ。例の文書だ。」
ルーファスは受け取るとその文面に目を走らせる。
「我ながら、狂気の沙汰としか思えん内容だな。」
「いえ、十分だと思いますよ。」
皮肉な笑みを浮かべるリアンに、ルーファスは変わらず穏やかに答える。
「さて、彼らはどう反応してくれるでしょうね。」
ルーファスの問いに、リアンはふん、と鼻で笑う。
「どうもこうも。奴らが大人しく従うとは、どうせ思ってないんだろう?・・・見たか?」
何を、とも聞かず、ルーファスは頷いた。
「噂通り、大変美しい方ですね。そしてあの眩しいほどの魔力の輝き。なかなかお目にかかれるものではございません。」
「そうか。」
「願わくば、素直にこちら側へと身を委ねてくれれば申し分ない。」
「・・・」
答えのないリアンを横目で見ながら、ルーファスは続ける。
「そうなったらそうなったで使い道はいくらでもあります。あの魔力は本当に素晴らしい。」
「だが、そうならなかったら・・。」
「そこはそう、予定通りに。」
にっこりと笑った。
「———『身代わりのヤギ』。罪をかぶる役も、この計画には必要なのですよ。」
・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
ファリスロイヤ城にて当主の着任式が終わり。
リアン・クロウド・ファリスが正式にこの地の領主としての地位に就いた。
神殿ではリーメイルとトーヤの話から、何やら不穏な動きがあるファリスロイヤ城への対策について話し合いがなされていた、まさにその頃。
城から一通の書簡が届く。
それを見た神殿幹部の者たちは皆一様に驚愕に息を飲み、そして信じられないと口々に叫んだ。
その書簡に書かれていた内容。
新領主であるリアンの今後の政治方針。
この領地を強くする為の改革案とその実施計画。
そして・・。
『この地を磐石にする為に、権力を分散させてはならない。寄って領主であるファリス一族本家の当主を中心に、ファリスロイヤ城と女神の神殿の機能を一元化することとする。』
今まで独自の権限を持ち守られてきた女神の神殿は、今後ファリスロイヤ城当主の支配下に置かれ、全ての権限は当主に一任されるというのだ。
神殿のやってきた業務は城へと移行し、緩やかに縮小化。そしていずれは神殿そのものを不要とする。
それまで神殿長の地位は本家当主であるリアンが兼ねる。
つまり、分家の神殿長制の廃止である。
さらに、書き添えられた最後の一文に、神殿長ラウルは目を疑った。
——— 『城と神殿の一元化の象徴として、高位の魔法使いでもある巫女長リーメイルを、当主リアン・クロウド・ファリスの妻として、ファリスロイヤ城へと迎えること』———
(リーメイルを・・、城へ?)
震える手で握り締めた書簡が、くしゃりと歪んだ。
- ファリスロイヤ昔語り 〜冥き闇の手を持つ者よ〜 ( No.139 )
- 日時: 2016/04/24 22:01
- 名前: 詩織 (ID: IhKpDlGJ)
「ふざっけんなよ!!」
ガゴンっと激しい音を立て、トーヤの蹴り飛ばした木の椅子が勢いよく床に転がった。
椅子が当たった衝撃で、その隣にある大きなテーブルも軋んだ音を立てる。
だが、トーヤを咎める者は誰もいない。
夕闇の迫る薄暗い部屋。
もうほとんど暮れかけた夕日の最後の光が、山際の向こうに消えてゆく。
ランプの明かりの揺れる部屋の中には今、トーヤとリーメイル、神殿長であるラウルと、ジルを含めた数人の幹部たちが集まっていた。
議題はもちろん・・。
「何なんだよこれは!!」
バン!と大きな音を響かせて、トーヤはその手をまさに今、かつてない程の衝撃を自分たちに与えている書簡の広げられたテーブルへと叩きつけた。
本日届いた城主リアンからの書簡。
部屋の中央に置かれた会議用のテーブルの上に広げられたそれを、集まった彼らは皆一様に緊迫した面持ちで見つめている。
「・・・落ち着け、トーヤ。」
低い声で静かにそう制したのはラウルだった。
彼は息子を見、次にその視線をチラリと窓際へと向けた。
彼らから一歩窓の方へと下がった辺りに立つリーメイル。
その顔は青ざめ、もともと色の白い彼女がいつもよりもずっと白く見える。
唇をぎゅっと引き結び、体の前で握りしめる両手は心なしか小さく震えているようにも見えた。
いつも気丈に振る舞っている彼女だが、やはり今回は動揺が隠しきれていなかった。
視線はずっと下を向いたままだ。
「・・・・。」
そんなリーメイルから、ラウルは視線をトーヤへと戻す。
「とりあえず落ち着くんだ。冷静にならなければ、何も見えてこない。」
「ちっ。・・分かったよ。」
ラウルに合わせてリーメイルを見つめていたトーヤは、深く息を吐くと書簡へと視線を戻す。
「しかしながら・・、真意が全く読めませんな。」
全員が事態を把握した後、しんと張りつめた空気を破るように、ジルが眉根を寄せながら呟いた。
「形としては正式な領主の命令書簡の形をとっています。通常なら強制力があり従わないわけには行きません。けれど・・、内容があまりにめちゃくちゃすぎる。向こうにしても、こんな内容がすんなり認められるなどと思っているとは思えません。我らが・・いえ、この地の女神を崇める全ての民たちがこのような暴挙を許すなど、どう考えてもあり得ないのは分かり切っているはず。」
「じゃあどうしてリアンの野郎はこんな書簡を送りつけてきやがったんだよ!」
ジルの言葉に食いつくようにトーヤが怒鳴る。
「何か裏の意図があるということか?それとも・・何かそれだけの改革を成し遂げるだけの力と理由があるのか。」
ラウルが呟く。
「まずは真意を確かめて、対応はそれ次第かと。」
ジルの言葉に幹部たちが頷く。
早急に、領主リアンとの直接対話が必要だ。
「リーメイル。」
ラウルの呼びかけに、下を向いていたリーメイルはびくりと顔を上げる。
「明日の朝、私と共に城へ来てくれ。お前にも関わることだ。リアン様と直接話せるよう面会を申し込む。」
「・・はい。」
小さく返事が返る。
—— 震えた声。
「俺もいくぞ。」
いきり立つトーヤに、ラウルは首を振った。
「だめだ。お前はここで待機だ。」
「あぁ?!なんでだよ!」
「神殿の代表は私だ。どちらにしろ今のお前に冷静に話し合うことなどできん。向こうの意図が分かるまで、とりあえず明日はリーメイルと2人で城に向かう。・・ジル。」
「はっ。」
「こいつの見張りを頼んだぞ。明日は1日城からだすな。」
「はい、承知致しました。」
「勝手に決めんな!」
「神殿長命令だ。明日、お前はまだ動くな。」
いつもの軽い口調ではなく、いつになく重い声音で放たれた父の言葉に、トーヤは不満げにではあったが口を閉じた。
「ではリーメイル、明日は早い。今日はゆっくり休みなさい。」
「・・はい。」
話し合いを終え、ラウルとジル、そして幹部たちそれぞれが部屋を後にする。
パタン、と扉の閉まる音がして、部屋は再び静寂に包まれた。
オレンジ色の炎が揺れるランプの明かりが、ただ静かに、部屋に残った2人の影を落としている。
トーヤは黙ったまま、リーメイルに近づいた。
「・・トーヤ。」
憂いを帯びた声。
見上げる彼女の顔は、相変わらず白い。
「どうして・・リアンは突然こんなこと・・。あの夢は、このことだったの?あの・・葬儀の時に感じた魔力の違和感は・・、不自然さは・・何か見落としていた?!私・・」
「落ち着けよ。」
トーヤが珍しく優しい声で言った。
視線を彷徨わせていたリーメイルは、再びトーヤを見上げる。
そして震える両手で、ぎゅう、と自分を抱きしめた。
「どうしよう・・、私、私・・・!」
トーヤは思わず、彼女に手を伸ばす。
腕を掴んで引き寄せると、強く抱きしめていた。
「大丈夫だ。」
強い、声。安心しろ、と。そう言いたかった。
「・・トーヤ?」
リーメイルは驚いて視線を上げると、彼の名を呼んだ。
「神殿はなくならねーよ。そんなことさせるもんか。それに・・。」
落ち着いた、けれど、固い決意の響きのにじむ声でトーヤは言う。
「安心しろ。お前も城へは渡さない。」
「・・トーヤ・・。」
昔からいつも近くで聞いていた彼の声。
いつもいつも意地悪ばかりで、素直な時なんて滅多になくって。
でも。
ずっと傍にいてくれた、安心できる声。
(あったかい・・)
大きく息を吐いて、リーメイルはそっと、トーヤの背中に腕を回した。
「ぜってー、渡さねーから。」
「・・・・うん。」
「神殿、守んぞ。」
「もちろんよ。」
腕の中の華奢な体から、ありがとう、という小さな呟きが漏れるのが聞こえた。
リーメイルを抱きしめたまま、トーヤは窓の外、今は冥い闇に支配される夜の町のその先にあるファリスロイヤ城を睨みつけた。
(・・リアン・・お前一体何を考えてんだ?!)
夜の闇は、深まってゆくばかりだ。
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