ダーク・ファンタジー小説
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- 幼き心のひと雫【更新再開】
- 日時: 2019/03/10 08:13
- 名前: 月兎 (ID: anGEJHLL)
簡単ではありますが、あらすじを紹介します!!
小学五年生の葉子は3年前に殺人事件で母親を亡くし、
父親と二人暮らし。それまでは幸せに暮らしていた。
が、葉子の身に怪異が襲う!!
そこに現れたのは……
こんなあらすじとなっています。
次に登場人物の紹介をします!!
・月森 葉子(つきもり ようこ)…小学五年生の女の子。3年前に母親を亡くした。
・霜田 瑠璃香(しもだ るりか)…図書館で知り合った。オカルト女子。
更新ペース
亀の歩くスピードよりも遅い
目次(完結した章のみ)
序章(第1章)〜忍び寄る怪異〜 >>01-19
第2章 〜光と影〜 >>20-35
第3章 〜明かされた真実〜 >>36-48
その他
・第三章…グロ注意!!
・この小説はいつになったら完結するのでしょうか……
お知らせ
・とくにないと思う
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.40 )
- 日時: 2018/05/22 15:32
- 名前: 月兎 (ID: xZ7jEDGP)
私と瑠璃香さんは巫女と別れた後、瑠璃香さんの家へと向かった。
……それにしても、あの巫女さん……どこか寂しげな表情をしてたな……。……どうすれば…
「おい、葉子。」
「はい。何でしょう?」
「……一ついいか?私…葉子と出会ってから私の身近な人達が相次いで死んでいってるんだけど……。あ…別に、葉子が悪いとかじゃないから……。でも、それが不思議で不思議でたまらなくて……」
「……え…それって……つまり…?」
「……お前が【不幸を呼ぶ女】になっちまったんじゃないかって……」
「…………あの、一ついいですか?」
「……ああ」
「……失礼にあたるかもしれないですけど……。…瑠璃香さんは何故そんなに女の人らしくないのでしょう……それに、瑠璃香さんは何で途中で“あたし”じゃなくて“私”って言うようになったのですか?」
「……ふふ。葉子も変わったねえ……人に向かってそんなことを単刀直入に言うなんて……」
「ご……ごめんなさい……」
「……いいんだよ、別に。大して気にしちゃいない。………グレちまったんだよ……」
「……え?」
「…話すと長くなる。……聞くか?」
「もちろん!」
つづく…
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.41 )
- 日時: 2018/05/22 16:08
- 名前: 月兎 (ID: xZ7jEDGP)
「私は幼くして母親を亡くした。私はしばらくの間父親と二人で暮らしていたが、父親はあまり育児に興味がなかった。……そう。私は孤独であった。
「私の母親は、旅行先の国での銃撃戦に巻き込まれて亡くなった。幼かった私は、父親がその事を隠していた事にも気づかず、大人になろうとしていた。………しかし、父親が酔っぱらってこう言ったのだ。『お前の母は殺された』って。……それがショックでショックでたまらなくて……。……私が気がついたら、身体全身血まみれだった。……目の前では父親が大量出血を起こしていたの。……私は恐くなって、父親の遺体を海に沈めてしまったんだ……比較的家が海に近かったからね……。
「父親を殺してから、私は人間不信と罪悪感にさいなまれながら生きていかなければならなかった……。……私は人殺し。どうせ誰も私の相手をしてくれない。……いつの間にかそう思うようになってしまったの……。
「けれど、そのような心の持ち主である私を変えてくれた人物がいた…。葉子…あなたのことだよ……。あなたは私にいろいろなことを教えてくれた……。今まで生きていくのが辛かったのに、その気持ちを一瞬で溶かしてくれた……とても嬉しかった……ふふ……私って本当に馬鹿だよね……。
「両親が天国に旅立ってから、私は孤独に生きていた。……最初は私の元気がないことを学校の友達は心配してくれていたんだけど……。…だんだん反応が薄くなってきて……。…気づいた時には私は独りぼっちになっていたの……。別にいじめられたとかじゃないんだけど……。…とにかく私はそれが悲しかった…。…最初は悲しかったけど、だんだん慣れてきて、なんとも思わなくなった。勝手にしろ、って思うようになった。そして、私の性格も次第に荒っぽくなり、……今の状態に陥ったんだ……。
「葉子、さっき『何で途中で“あたし”じゃなくて“私”って言うようになったのですか?』って言ったよね?……葉子と出会ってから、もう少し女性らしく上品に生きなければって思うようになったの…。
「今は亡き千香にも言われたんだ……。もうちょっと明るく接する方がいいって。だから、葉子に今までの恩返しをしていきたくて……。
「これから私の孤独の人生を話そうと思う…。
「19××年6月5日、私はある家に生まれた。とても明るい子だったと親からは言われている。何年かして、保育園に入る。保育園の先生にはいろいろ迷惑をかけてしまった。5歳の頃、小学校入学を目前にして母親を亡くす。11歳、小学校卒業。13歳になる頃、父親を亡くす。15歳、受験に失敗。私は−」
「あの、もう話さなくて結構です。」
「……そう?」
「はい……。でも、ちょっと銃撃戦の話は気になります…。」
「………………」
「ダメ……ですか……?」
「してもいいんだけど……。」
「いいんだけど…?」
「おなかすいた。」
「ゑ……」
「……ダメ?」
「ダメというか……。瑠璃香さんのせいで今の雰囲気が台無しに……」
「ああごめんごめん。」
「あの……食べた後でもいいんでとにかく話を……」
「……そこまで言うなら…」
(…なんか上から目線……)
−数十分後…
「話していい?」
「はい!もちろん!」
つづく…
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.42 )
- 日時: 2018/06/07 19:56
- 名前: 月兎 (ID: 1HkQUPe4)
「ある日、私達家族はある国を訪れた。その国の地に足を踏み入れる前の飛行機は、とても神秘的であった。……しかし、後に私の気持ちを一瞬で破壊してしまう事件が起こる。
「私たちは、その国に1週間滞在することになっていた。……父は結婚記念日であるからと言っていたが…。
「1日目。この日は特に変わったことはなく、街を練り歩いていた。2日目。……両親はハーン湾とフーコツク島のどちらに行くか迷い、喧嘩になってしまった。幼かった私に両親を止める力など当然あるはずもなく、結局近くの博物館に行くことになった。……その日両親は仲直りをしなかった。3日目。朝早くからとんでもない報せが来た。反政府派の人々がデモを起こしたって……。……この国に来てからまだ3日しか経っていない。しかし、予定を切り上げて帰らなければ、身が危険にさらされてしまう。そう思った両親は、明日観光を終えて、明後日日本に帰国する事にした。
「……4日目。朝から激しい音で目が覚めた。外を見ると、人々は互いを殺し合い、空飛ぶ兵器や陸をゆく兵器は人々をなぎ倒し、体をバラバラにしていっていた。幼かった私にとって見れば、それはそれは大きな衝撃を受けた。……外に出てしまっては命がない。私たちはどうすることもできなかった。
「そして……
『ねぇあなた……本当に大丈夫なの?』
『ふん……別になんてことないだろ……』
『まま…?ぱぱ…?』
『……瑠璃ちゃんは心配しなくて大丈夫だから…』
『分かったら、とっとと観光に行くぞ。』
『……危なくないかしら…』
『ああもう!好きにしろ!俺はもう行く!』
『ちょっと……!外に出たら……!』
『?』
母は父の後を追いかけるようにして外へ出た。
それと同時に銃弾が二人の元に迫ってきていた。
最初にそれに気づいたのは母の方だ。
銃弾は父の方へと向かっていた。
誰かが殺そうとしているのだ。
……銃弾と父の距離は刻々と近づいている。
しかし、弾が当たったのは母の方だ。
……母が父を庇ったのだ。
『おい……おい!しっかりしろ!』
『まま?』
『お前は家の中にいろ!ここは危ない!』
……もう一つ銃弾が飛んできていた。
私の頭めがけて。
……その後、私の意識は途絶えてしまった。
「私が気付いたとき、そこは病院だった。……なぜか私の腕に細い管のようなものが通されていた。その中では、赤いものが流れていた。当時の私にはそれが分からなかった。
「私が13歳になり、部屋を片付けていると、二つの手紙を見つけた。どちらも私宛の手紙だった。
『瑠璃香、元気かな?長年お前に隠していた事がある。まずはそれを謝らなければならない。本当にすまなかった。お前の母親は病気で死んだんじゃない。銃撃戦に巻き込まれて死んだんだ。俺のことは恨んでもいい。殺してくれたっていい。だから、あいつは絶対に恨まないでくれ。約束だ。俺は不器用な男だ。だから、お前の育児もろくに出来なかった。なんで俺がお前にあの事を隠していたか言おう。幼かったお前にとって母親が銃撃戦に巻き込まれて死んだなんて言ったらお前がどんなに悲しむことか……それが心配で教えてやることが出来なかった……許してくれ。………お前がこの手紙を読んでる頃は俺はとっくに死んでいるだろう。……本当に……本当にすまなかった。許してくれ……』
……父からの手紙だった。と言うことはもう一方はおそらく……
『私の愛する娘 瑠璃香へ
元気にしていますか?私たちはあの後病院に連れて行かれて治療を受けています。ただ、このまま行けばあなたの命は限りなく期わるでしょう。そう医師から言われたの。だから、私思い切ってこう言ったの。“私の血を全て娘にやってください”って。医師はとても驚いていたわ。……そりゃあそうよね……。お父さんとも話して、あなたには私の死の事はしばらくの間内緒にしておこうって事になったの。だって……つらすぎるでしょ?こんな事いきなり言われたら……。……今、私の血はどんどん抜かれているの。……私ね?ずっと誰かの命を私の血で救ってあげたいとおもってたの。だって私O型だし。……もう残りわずかみたいね……私の命も。……短い時間だった……もう少しあなたのそばにいてあげたかった……でも、もう私はこの世からいなくなってしまう……本 当に さみ し い けれ ど 今 ま で あ り が』
そこで手紙は終わっていた。終わってしまっていた。……もう少し一緒にいたかった。あの時助けてくれてありがとうって言いたかった……。もう……会えない……感謝の言葉を伝える事もできない……手紙はいつの間にかびしょびしょになっていた。油が溶け出していた。……その時、人の死ほど悲しくつらいものはないということを痛感した。人はいつどこで死ぬのか分からない。分かるはずがない。……いくら泣きじゃくったって両親は戻ってこない。……一瞬死ぬことも考えた。……でも、ここで死んではいけない。
父と母の分までちゃんと生きなきゃ……。そう思った。
「ふふ……やっぱり私は馬鹿だったな……父をあの時殺したのが間違いだった……父を殺して……自分に嫌悪感や喪失感を感じただけだった……それ以降、私の心は荒れに荒れて自分だけでなく他人まで傷つけるようになった。………怖かった……いつ誰に裏切られるか、いつも思っていた。
「大学生になって、新しい友達ができた。………死んじゃったけど……エレベーターの事故で……。…守れなかった……私は友達を守れなかった……。その思いだけが私の心の中にあった。最近、大親友だった千香まで失ってしまった……
「だから、今度こそ誰かを守りたい、そう思った。その思い一心でお前を苦しめているものから守り抜く、その思いを心にずっと持っていた。……いや、今もずっと持っている。
(か……かっこいい……)
「葉子、どうかしたか?」
「あ……いえ……なんでも……」
「そうか……」
「……………。」
「葉子、一ついいか?」
「……何でしょう?」
「お前の後ろにいる少年は誰だ?」
To be continued……
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.43 )
- 日時: 2018/08/30 18:39
- 名前: 月兎 (ID: WqZH6bso)
「お前の後ろにいる少年は誰だ?」
そう言われ、私は背筋が凍り付いた。
「わ……私の……後ろ……に…です……か…?」
「ああ。」
「……………。」
「……怖いか?」
「………はい…」
「……ふっ」
「……え?」
「……いいか?葉子……しっかり聞いておけ。」
「?」
「葉子……そいつに余計なことしただろ?」
「……え?」
「どけ。」
「…え?」
「……聞こえなかったか?」
「……い…いえ……聞こえました……」
「なら、どけ。」
「あ……はい……」
私がそこを退くと同時に、瑠璃香さんはポケットの中の何かを私の後ろめがけて投げつけた。
「………え?」
「それを見てみろ。」
私が振り返ってみると、そこには銀製の錆びた釘が落ちていた。……血がべっとりと付いていたが……
「ひっ……!」
「……………。」
「…瑠璃香さん……これは一体……」
「……………。」
「瑠璃香さん?」
「……………。」
「………。……瑠璃香さん!!」
「………!!あぁごめん……何か考え事してたみたい……」
「……そうなんですか……。…それで、これは一体……?」
「………とりあえず…お前の後ろにいた少年の命はすでに無い事ぐらいは分かるよな?」
「は……はい。」
「まずはその少年が何故死んでしまったのかについて話したいのだが……いいか?」
「………はい…」
「………やっぱり止めとく。」
「!?」
「うん。だってね?すごく言いづらい話になるから。」
「いやいや。人に話したいとか言っておきながら言わないって……どうかしてません?」
「……葉子。…気が強くなったな。」
「……はい?」
「……その子、掃除箱に閉じ込められて死んじゃったんだよ……」
「……いきなり話し出さないでください」
「放課後、友達とかくれんぼをしてて、掃除箱に隠れたんだけど……隠れている途中に掃除箱がいきなり倒れて……その子は頭を強く打って死んでしまったの……」
「……………」
「葉子、あの子にさっき会っちゃったの?」
「え……あ……まあ……」
「あの子……何か言ってた?」
「……あ。私に問題出してました。」
「……ふふ。良かったね。カクレンボじゃなくて……。」
「え……それは一体どういう……」
「……あの子、トモダチを作ろうとしてる。」
「……………」
「…よかった……葉子が死ななくて……」
「……………」
「あの子…本当は生きている人間と遊びたかっただけなんだろうね……それなのに……。それなのに……誰も相手をしてくれなくて……。」
「……………」
「死んでから、誰かに遊ぼうって言っても誰も聞いてくれない……。だからあの子の心はどんどん闇に染まっていって……。」
「あの……!それ以上は言わないでください……!」
「怨霊と化してしまった……」
「……………。」
「…どうした?」
「………。…その子、学校の怪談か何かになっているんですか?」
「うん。【掃除箱の怨霊】にね。」
「あの、瑠璃香さん。」
「…何だ?」
「さっき投げたものは一体……」
「錆びた釘だが?」
「錆びた…釘…?」
「ああ。」
「でも…何で投げたんですか?」
「アレには除霊効果があるんだ。」
「へぇ…」
「あの、やっぱりあの学校って霊がいるんですよね……?」
「ああ、怨霊がな。」
「だから私、塩を紙の上に盛ってみたんです。でも……全く変化がなくて……」
「………そうか。お前、紙は和紙を使ったか?」
「……いえ。使っていません。」
「じゃあ次は和紙で試せよ?」
「え……和紙じゃないと効果がないんですか?」
「……少なくとも私はそう聞いたが……。」
「……分かりました。」
「でも、あの件が終わったから大体の霊は片付くと思うんだけどな……。」
「あの件って?」
「【キリコさん】のことだよ。」
「……ああ…あのことか……」
「…悪いな。あの事を思い出させちまって……」
「いえ……もういいんです。」
「……………」
「……………」
「あ……もう一つ案件があるのを思い出した。」
「…え?」
「【ひとりかくれんぼ】。お前もよく知ってるだろ?」
私は瑠璃香さんのその言葉を聞いて背筋が凍りついた。……やった覚えがあるのだ。【ひとりかくれんぼ】を……
「……なぜやった…。……なぜ……。なぜっ……。なぜやった!!禁忌と呼ばれているあのゲームを!!……私……随分と前から知ってたんだ……お前とお前の友達が禁忌のゲームをやったのを……。……私のいとこが死んだんだよ……。その死因にお前らがやったあのゲームがあるんじゃないかって……もし…それが事実だったら……私はお前らを許さねえ……」
「……………」
私は瑠璃香さんの言葉に何と声を返せば良いか分からなかった。
「……………悪いな…いきなり怒り出しちまって……。」
「……………」
「前に知っちまったんだよ……。図書館で【キリコさん】の事を調べているときに」
「………え?」
「ああ……。」
「あの……本当にごめんな「あ!べ…、別にいいんだよ…、謝らなくても……」
「……え?」
(ツンデレ……)
「……お願いだから…謝らないでくれ……」
「……はい?」
「いいから……頼む……」
……瑠璃香さんは何を思ってそのようなことを思っているのだろうか。……私にはそれが分からなかった。
〜葉子と瑠璃香の意外な関係の発覚。しかし、それは決してよいものではない。この関係発覚後、二人の距離はどのように変わってしまうのだろうか。そして、以前葉子が行った【ひとりかくれんぼ】で何が起こったのか。その真相が明らかになることはあるのだろうか〜
To be continue……
- Re: 幼き心のひと雫【更新停止中】 ( No.44 )
- 日時: 2018/10/24 19:09
- 名前: 月兎 (ID: /TdWvv73)
ー神崎神社境内
「……お姉ちゃん?」
「なあに?私の可愛い妹。」
「……最近元気なさそうだけど……大丈夫?」
「……あはは。そんなことないわよ?」
「………あの葉子とか言う子、泣かしたんでしょ?」
「………………げっ!そんなことないわよ!!」
「ふーーーーーーん」
「うぅ……あれは仕方が無かったのよ……だって…幽霊退治は私の仕事だし………」
「へぇ…そうなんだぁ……」
「う……うっさい……」
「ねえお姉ちゃん?」
「な……何よ……」
「私、巫女辞めるから。」
「…………は!?」
「だってね?泣いている女の子の前であんな酷い言葉かけるんだよ?最低な姉と思わない?」
「……えーと…どう返答すればよいのか……」
「じゃあね、お姉ちゃん。もう二度と会うことはないから。」
「……本気で言ってるの?」
「……私は嘘なんかつかない。お姉ちゃんと一緒にしないでよ。」
「……………」
ーその頃……
霜田 皐月。私の妹の名前だ。妹はもうこの世にはいない。ひとりかくれんぼの犠牲になってしまったのだ。
あれほど言ったのに。あれほどひとりかくれんぼをやるなと言ったのに。なぜやったのか。なぜやってしまったのか。
図書館であいつの名前を聞いた時、どこか聞き覚えがあった。月森 葉子。あの件とあいつの名前が結びついたとき、あいつに恨みをも感じるようになってしまった。それが、つい最近の話だ。
しかし、なぜひとりかくれんぼをやったのか。その理由を聞き出すまで、私と皐月が姉妹関係であることを打ち明けるつもりはなかった。
でも、打ち明けることにした。葉子とこのまま良い関係を築いていたかった。
……………。
「なぁ葉子……」
「何でしょう?」
「……何でひとりかくれんぼをやろうと思ったんだ?」
「………最初はただの好奇心だったんです……。でも……まさかあの噂が本当だなんて思わなかったんです……。」
「……………」
「本当に……ごめんなさい……」
「…だからいいんだよ…謝らなくて……」
「……………」
「葉子…あの噂、ってのは何だ?」
「……ひとりかくれんぼの時に現れる霊は前に自殺をした女子生徒だっていう噂です……」
「……自殺?」
「はい……」
「なんでその生徒は自殺なんかしたんだ?」
「……分かりません。でも……」
「でも?」
「他殺だって言う人もいるんです……」
「…………ん?」
「と……とにかく……!……私はその噂を確かめたかったんです……」
「……………ふっ」
「瑠璃香さん?」
「噂を確かめたかった?ただの好奇心?………ふざけんなよ!!!その好奇心のせいで人が死んでんだぞ!?ひとりかくれんぼをして死ぬかもしれないって事をお前は思わなかったのか!?」
「……ごめんなさい…」
「……謝ったって一度消えてしまった命はもう二度と戻ってこないんだぞ?お前は一生その罪を背負って生きていかなければいけないんだぞ?……分かったか?」
「………はい…」
「……絶対にお前は最後まで……寿命が消えるまで生きていかなければならない……」
「………はい…」
「お前は今怪異の脅威にさらされている……でも、お前が怪異に負けるなんてこと私は許さない。絶対に死なせはしない」
「え?」
「……おい、顔が赤くなってるぞ…」
「あ……」
「……………」
「す……すいませ「お前はさっきから何を謝っているんだ?私にはその理由が分からないのだが……」
「……あれ?……何でしたっけ?」
「おい。」
「……………」
「……お前もつらいんだろ?……今まで何人も友達を失って……」
「……そうですね…」
「……とりあえず…」
「…とりあえず?」
「【ひとりかくれんぼ】でもやるか……」
「……え!?」
「うん!」
「いやいやいや。さっき散々あんな事言っておいてその発言ですか!?おかしくないですか!?」
「人殺しは黙れ。とりあえず私がやってみるから。」
「……………」
(やっぱり怒ってる?)
「じゃあ明後日また会おうな!」
「え…!ちょっと待ってくださいよ!」
(あ……行っちゃった……)
『ねぇ、そこの貴方……』
「……え?」
私が振り向くと、そこには巫女の装束を着ていて、こちらに微笑んでいる女性が立っていた。
「私は神崎 椛。巫女をしていたわ。」
「巫女をして『いた』?」
「ええ。そうなの。」
「なぜ過去形なんですか?」
「あ……それは……まあ……諸事情があって……巫女を辞めたのよ……」
「諸事情……?」
「ええ……」
「諸事情とは?」
「姉さんとケンカしたのよ……」
「……私…姉さんの事が許せなくなって……」
「……………」
「貴女の友達を無差別に退治なんかして……」
「ああ……あれはもう気にしてなんかいませんよ……終わったことですし……」
「で……でも……」
「あの二人も……今考えたらあれで良かったのかもって思うんです……」
「……………」
「私も……よくよく考えたら……永遠にこの世を彷徨い続けているのも辛いんじゃないかって……思ったんです……」
「………………」
「……今のうちに仲直りした方が良いのではないのですか?もしどちらかが突然死んでしまったら……取り返しのつかない事になるのではないのですか?」
「……………」
「どうするのですか?」
「……………」
「……黙ってないで早く答えてくださいよ!!」
「……私たちは捨てられた姉妹。……小さい頃そう告げられたことがあるの……」
「え?」
目の前に立つ女性の思わぬ発言に私は言葉を失っていた。
つづく……