ダーク・ファンタジー小説

黒いリコリスの教団【修正版】
日時: 2017/10/20 12:48
名前: シリアス

初めまして、シリアスでございます。
文章はいかにも素人ですがこんな私でもよければ・・・・・・
悪口や皮肉、いたずらコメントなどは決してしないでください。
舞台はファンタジージャンルがぴったりの11世紀の中世時代です。
天使や悪魔、魔法や錬金術などが存在し一部の人しか知られていないという設定。
主人公は秘密の教団『リコリス』の指導者として敵組織である『セラフィムの騎士団』の支配を終わらせるために戦うというストーリーです。

オリキャラを募集しておりましたがここで締め切りとさせて頂きます。
たくさんのキャラクターを提供してもらい深く感謝しています。
どうもありがとうございました!


登場人物

ルシール・アルスレン:本作の主人公。種族は人間と食人鬼のハーフ。
かつてルフレールの悲劇を終わらせた英雄のブレードガントレットを愛用している他、あらゆる武器を扱う事が可能。
14歳の少女ながらも剣技や暗殺などのスキルは抜群で仲間からの尊敬を集める。
リコリスの教団の長として仲間を率いセラフィムの騎士団と戦う。

ミシェル・ヴォーン:教団の一員でありルシールの親友である人間と魔女のハーフ。
特殊な魔族の家系を持ち魔女の魂を吸収し能力を向上させる特殊スキルを持つ。
幼い頃、ルシールと共に教団に加わって以来相棒として活動している。

ロベール:ルシールの右腕である老神父。種族は人間。教団のまとめ役で主に情報を団員に提供する。
彼もまたル・メヴェル教信者殺害事件の被害者であり娘を失った。
そのため犯人として騎士団を疑っているが命懸けの任務をルシール達に任せている事に心を痛めている。

ナザエル・ド・ラシャンス:セラフィムの騎士団の指導者。種族は人間。紳士的な態度で国民に接するが顔を覆い隠しており素顔を見た者はいない。騎士団の中でも謎が多い人物である。

クリスティア・ピサン:セラフィムの騎士団に所属するナザエルの右腕で組織のNo2。種族は『大天使』。
普段は淑女のように振る舞うが敵と失敗者には容赦しない非情な性格。
聖団の中でも右に出る者がいない程の才色兼備の持ち主。
武器はブレードガントレット『堕天使の審問』を愛用している。

キルエル:イスラフェル聖団の高位の大幹部を務める少女。種族は『大天使』。
明るく無邪気だがどんな非情な命令でも楽しそうに実行する残忍な性格で人間を見下している。
聖天弓フリューゲルを扱い敵の殺戮を楽しむ。


用語集

リコリス教団:イスラフェル聖団に不信を抱いた者達が集って結成された裏組織。ルシールが設立し教団のメンバーは聖団の実態を探ろうと活動している。組織の紋章は黒いリコリス。

セラフィムの騎士団:ルフレールの守護を宣言した組織。大半が天使で構成されており人間などの他種族はほとんどいない。治安維持のためルフレールを併合するが国民からの信頼は薄く良くない噂も流れている。組織の紋章は羽の生えた少女。

ルフレール:フランス西部に位置する架空の孤島。1192年にカトリック教会諸国の属国となりイスラム軍と戦った。文化を吸収され宗教対象がキリスト教となる。

ル・メヴェル教:ルフレールが属国となる前に崇拝されていた宗教。1192年に信仰を禁止されカトリック教会が建てられた。


……オリキャラ提供して頂いたお客様……

そーれんか様
つっきー様
Leia様
エノク・ヴォイニッチ様
リリコ様
Rose様
あいか様
ブレイン様

Page:1 2 3 4 5 6



Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.27 )
日時: 2017/10/20 13:01
名前: シリアス

お久しぶりです。シリアスでございます。
更新が大幅に遅れてしまい読者の方々やオリキャラを提供して下さった皆さまに対し大変申し訳なく思っています。
体調不良が少し良くなったのでまたストーリーを再開する予定です。
これからはこんな失態がないよう気をつけようと思います。
本当にすみませんでした。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.28 )
日時: 2017/10/26 19:49
名前: シリアス

しばらくしてそこへルシールがやって来た。
そして大きな声をかけ皆を自分へ注目させた。
剣の交わる音が止み団員達は稽古をやめ彼女に視線を浴びせる。
「皆、これからの任務の詳細を話すから一箇所に集まってくれないかな?」
互いに顔を見合わせ私語をしながらルシールの前に行く。
言われた通り全員部屋の中心に集合しばらばらの列を作った。
「任務?またいつものつまらない偵察か?だったら僕は行かないぞ。」
ルナリトナは実に嫌そうな口調で床に座り込んだ。
「まずは話を聞いてルナリトナ。」

そう言って団員達をとりあえずまとめる。
静かになったのを確認したルシールはこれから行う任務の説明を始めた。
まずは最初の標的である天使の肖像画を見せ
「さっき神父様から命令が下されたの。今から3日後、隣街へ行きこの天使を捕らえる。名は『アルベルナ・クディニー』、セラフィムの騎士団に所属する幹部の1人だよ。彼女は街で巡回を行っていて教会を訪れては必ず祈りを行う。その時をチャンスとして奇襲をかける。上階は見張りが手薄のはずだから屋根から侵入し見張りを密かに抹殺しながら不意を突くんだ。」
その事を耳にした教団の団員達は士気のある声を上げた。
待ちに待った戦いに興奮し喜んでいる様子だった。
その場にいたほとんどが腕がなるなと言わんばかりに気合いを入れ始める。

「いよいよ戦う時が来たんだね。」
「本格的な実戦か、油断は禁物だ。」
そんなやる気に満ちた話し声がざわざわと聞こえてきた。
「・・・・・・ちょっと待て、アルベルナってあのアルベルナか!?」
カティーアは少々驚いた口調で口を挟みルシールに問いかけた。
「知ってるの?」
隣にいたミシェルが聞いた。
「知っているも何もアルベルナ・クディニーと言えばエルサレム奪還戦で多才な活躍を見せた騎士ではないか!戦の際には少数の部隊を率いほぼ1人で敵の軍勢を壊滅させた大天使だ。それ以来彼女は人々から崇拝され崇められている。」

それ聞いた団員達は水を差されたように静まり返った。
想像以上の相手に恐れ戦いてしまったのだろう。
簡単に自信を失い逃げ腰になる。
「そんな化け物が相手なんて本当に大丈夫なのか?下手すればこっちが全滅しかねないぞ?」
「俺もこの作戦には同意いたしかねるな。全員で襲っても勝てるかどうか・・・・・・」
ソフィもリクも2人らしからぬ弱音を吐いた。
「他に容易に捕らえられる聖団の幹部はいないのか?そっちを狙った方が得策だと思うが?」
ディーノの意見にルシールは残念そうに首を横に振った。
絵を指差しその場にいる全員を鋭い目で睨み更に詳しく話を続ける。

「皆の気持ちは分かるけどこれしか方法がないの。神父様はアルベルナの情報を調べ上げるのに2ヶ月もの時間を費やした。他の標的を一から探すとなれば今度は1年くらい掛かっちゃうかも知れないしこうしている間にも奴らは次の陰謀を進めているかも。今行動しなきゃ手遅れになってレフレールの支配よりも、もっと酷い事が起きるよ・・・・・・多分ね。」
最悪な想定を言われても皆は簡単に表情を変えない。
あまりにもリスクが高いこの作戦に賛成の手を上げる者はいなかった。
「その幹部だけでも厄介過ぎる程なのにまわりにはそいつの配下である精鋭達がいるんだろ?」
「そうだろうね。もし逃げ場のない教会内で取り囲まれたら確実に命はないぞ?」
「間違いなく数はこっちより上だしな。」

「もし本当にやるつもりならもうロベール神父の作戦をもっと計画的に練った方がいいのでは?彼に文句がある訳ではありませんが皆さんの想像している通りこのままのやり方じゃ返り討ちは免れませんよ?」
奥にいたデオドールが前に出て来て言った。
実に冷静な態度でとりあえず作戦の改正を要求する。
まず始めにいくつかの質問を上げる。
「教会の屋根から侵入し上階の衛兵達を下にいる標的に気づかれないように暗殺していくんですよね?
ちなみにどのメンバーで行うつもりですか?」
「私とミシェルとルナリトナ。それとジャスティンとクロム。」
「なるほど、アーチャー(弓兵)ほど隠密行動に適した者はいませんからね。魔術師もいれば心強いでしょう。」
デオドール賢い組み合わせに感心しながら何度か頷いた。
しかしすぐさま悩ましい表情に変え口に指を当てた。
次の問題に関した2つ目の質問をする。

「上からの奇襲はそれで成り立つでしょう。・・・・・・ですが問題は教会の出入り口付近、つまり衛兵が多い下の階です。そちらはどうするつもりですか?」
についてルシールはそれを今話すところだと以心伝心に少し相好を崩した。
「もし中が騒ぎになったら外にいる天使達が増援として駆け込んでくる。それを阻止して包囲網を防ぐ必要があるよね?」
「その通りです。小賢しい下っ端さえ片付ければ作戦は大分容易になるでしょう。」
「まず私達が建物に侵入して上階を一掃、そしたら窓から合図を送るから。それで奇襲チーム以外のここにいる全員がアルベルナの手下達に総攻撃をかける。・・・・・・でいいかな?」
「ちょっと待って!」
何かが引っかかったのかリクが横から口を挟んできた。
デオドールの横に並んだ彼に全員が注目する。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.29 )
日時: 2017/11/05 21:41
名前: シリアス

「そのアルベルナとかいう大天使は人々から崇められているんだよな?カティーア、そう言ったな?」
「そうだが・・・・・・リク、お前は何が言いたいんだ?」
カティーアを含む全員が訳が分からないまま互いに顔を見合わせた。
リクは他者の反応を気にせずに理由を話す。
最初に"これはとても大事な事だ"と皆に言い聞かせて
「もし、その情報が正しいのならアルベルナが訪れる教会の周囲には民衆で一杯になる。神がかり的英雄でである彼女を一目見ようと大勢の人々が集まるはずだ。」
「そうか!そういう事か!」

人ごみの中心にいたソフィは彼の言いたい事に気づき真っ先に声を上げた。
他の団員達も意味を察したのか納得した様子で再びざわめき始める。
「そう、もしそこでどんちゃん騒ぎなどやらかしたら無論、関係ない人々も巻き添えになる。
俺達が罪なき者達を傷つけ最悪殺してしまったら?リコリスは終わり、正義と誇りは地に堕ちるだろうね。」
リクはその言葉に黙り込んだ同胞をしばらく睨み付けた。
そして軽く息を吐き出すと最後に"以上だ"と付け足しソフィの隣へ戻って行った。
誤りのない正論を述べられルシールは何も言い返せなさそうだった。
致命的な欠点を突かれ作戦は上階の奇襲まで遡ってしまう。
団員の中には戦略そのものを全て変えるべきだと言い出す者もいた。

「振り出しに戻ってしまいましたね・・・・・・ロベール神父に作戦に変えてもらうよう頼んだらどうですか?」
両手を広げお手上げを表現するデオドールも頭が働かない様子。
彼も最早どうでもいいと言わんばかりの態度で暇そうにあくびをした。
「僕が思うにもうこんな危ない任務は諦めてチャンスを待った方がいいと思うな。作戦に穴があるなら尚更危険だよ。」
多くの同胞達がルナリトナの意見に強く賛同している事が窺える。
やはりこの任務、皆には荷が重すぎたのだろうか?
士気が確実に下がっている。これでは当然、戦えようがない。
ルシールも素直に諦めかけた時だった。

「私は納得がいかんっ!!」

「!」 「!」 「!」
誰かが力を入れて叫び今の空しい状況を否定した。
突然の怒鳴り声に不意を突かれ団員達がびくっと身体を震わせる。
木刀を強く握りしめ怒りを抱くカティーアがいた。
「カティーアお姉ちゃん・・・・・・?」
ミシェルがおそるおそる背の高い魔女を見上げる。
闘気に恐れおののいたまわりを鋭く紅い瞳で見回し
「貴様らは何のために教団に加わったんだ!?ただ訓練だけ重ねて飯を食うためか!?私はそんな腰の抜けた組織に忠を誓った覚えはないぞっ!」
彼女は怒りに狂いルシールに駆け寄った。
流石にこれは不味いと感じたのか団員達数人が止めに入る。
鍛え上げられた身体を必死に抑え付け何とか暴力沙汰を防ぐ。

「ルシール!教団の指導者は貴様であろう!?その貴様が仲間をまとめられず戦いを放棄してどうする!?」
カティーアは我を忘れ訴え続ける。
「貴様らもただ指をくわえ敵の陰謀を見届ける事に悔しさを感じないのかっ!?今行動を起こさなければ負け犬と同じだっ!!」

「もうやめてお姉ちゃんっ!!」
ミシェルもとうとう泣き出してしまい涙を零しながら彼女の服を掴んで離さなかった。
「カティーア落ち着け!」
「仲間割れしている場合じゃありませんよ!」
団員達が食い止めるも手がつけられない。
「黙れっっ!!臆病者共は引っ込んでいろっっ!!」
彼女は暴れるのをやめなかった。
その時だった。

「いい加減にしろっっ!!!!」

リクが思いきり怒鳴りつけた。
広い空間に落雷の如く大声が響き渡った。
今の一言で我に返ったカティーアはようやく大人しく身体の力を抜いた。
冷静さを取り戻すも悔しそうに歯を噛みしめながら目の前のルシールを殺意に似た形相で見つめる。
静まり返った稽古場でミシェルの泣き声だけが聞こえていた。
「とりあえず皆さん頭を冷やしましょう。焦っているうちはいい案なんて浮かびませんよ。」
デオドールもイライラした感情を抑えながら言った。
「長い特訓で疲れているから尚更の事ですよね・・・・・・?今はゆっくり休んでください・・・・・・」
「恐がらせてしまったようですまないな、ミシェル・・・・・・」
興奮で続けて息を吐き出すカティーアはふらふらとミシェルの元へ行き座り込んだ。
震えた両腕でそっと抱きしめ頭を優しく撫で、そして同じく涙を流した。

「私は悔しいのだ・・・・・・あの忌まわしい天使共が種族の違いだけで迫害を行い、それだけに飽き足らず罪なき人々を力で支配する事が・・・・・・生を授かった者として断じて許せん・・・・・・!」
「うわああああ!!」
「虐げられた時からずっと同じ辛さを味わった誰かを守りたいと願っていた・・・・・・そんな時、お前と出会った・・・・・・嬉しかった・・・・・・だからこの世の全てが敵になってもお前だけは・・・・・・」
団員達は羽を休め疲れを癒しながらそんな2人を眺めていた。
ある者は下を向き何かを思い、ある者は表情を緩める。
ルシールも皆に合わせ一息ついた。
持っていた肖像画を床に置き手を上にあげ背伸びをする。
軽く息を吐き出すと眠るような形で寝そべった。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.30 )
日時: 2017/11/14 21:53
名前: シリアス

「カティーアさん・・・・・・その闘争心と信念、心に深く染み渡りました。」
やがてジャスティンが重くなった口を開く。
尊敬された事にカティーアは何食わぬ顔で彼女を見た。
「あなたが本当に誰かを守りたい・・・・・・その誓いを捨てないなら私もあなたと戦います。」
「姉さんが戦うなら僕も戦うよ。訓練に明け暮れる毎日に飽き飽きしてきたところだしね。早く本当の戦がしたいよ。」
クロムも顔をほころばせて戦意の素振りを見せる。
カティーアの熱意がうつったのか他の団員達も目が覚めたように戦意を抱いた。
中には武者震いで身体を震わせる者もいた。
「『カティーア嬢』の言う通り、よくよく考えれば戦いがないんじゃ武器を発明する意味もないしな。面白い、命懸けの作戦に俺も乗る。」
ディーノも覚悟を決め任務に肯定する。
持っていた魔法のカードを切り適当に1枚を抜き取り自慢げに眺める。

「俺は争い事態嫌いだけど1度でいいから天使共の翼を引き千切ってみたかったんだ。」
「君って優しい性格の割には恐ろしい事言うんだね?・・・・・・まあ、それぐらいの冷酷さがなきゃこの仕事はやっていけないかな?」
リベアの狂気の発言にレナは呆れながら苦笑した。
「なんだ、結局やるのか?だったら僕も混ぜてもらう。皆にだけかっこいい死に方はさせないからね。」
「それは違うぞルナリトナ。僕達は死にに行くんじゃない、勝つために行くんだ。」
ルナリトナは"そんなの分かってる"と無邪気に破顔する。
気がつけばここにいる団員のほとんどが勝機の薄い戦いに賛成に意見を述べていた。
弱腰な態度が消え武器を持つべきと士気が高まっているのが分かる。
「精鋭達は皆、血の雨を浴びる覚悟ができたようだな?戦いたくない者は隠れ家で泣いていればいい・・・・・・で、肝心の"ルシール"はどうするつもりだ?」
カティーアの質問にルシールは頭だけを起こし何食わぬ顔で彼女を見た。
強がりも動揺もしていない実におもむろな態度で淡々と答えた。
「私は最初から戦うつもりだったよ?ようやく皆が団結してくれて安心してたとこ。」
「ふっ、ぬかしおるわ。」


あれからいくらかの時間が経過した。
全員の団結と長い休息に団員達は好調を取り戻しつつあった。
さっきまで怒鳴り合っていた荒々しい空気は仲間同士笑い合うほど穏やかになっている。
ミシェルもとうに泣き止んだもののカティーアの傍から離れなかった。
背中を撫でられ眠そうに濡れた瞳をしょぼしょぼさせている。
気持ちよさそうに微笑んでいた。
「ごほっ・・・・・・それでは皆さん。めでたく意見が重なったところで作戦会議を再開しようではありませんか?」
デオドールが故意に咳き込み皆を注目させる。
「お?待ってました!デオドール軍師の神がかり的戦略!」
ルナリトナが調子に乗ってからかう。
今の発言を聞いた団員達が彼に注目し拍手を喝采する。
デオドールは照れ臭そうに顔を赤らめ頭をかいた。
「えっと・・・・・・じゃあ、まずは僕なりに策略を考えて直してみましたので聞いて下さい?」
そう言って彼は賑やかだった皆を静かにさせ最初に

「まず、教会の屋根から侵入するメンバーの件ですが変えた方がいいかと。クロムさんを奇襲部隊から外し代わりにカティーアさんを入れましょう。」
「えっ?どうして僕が?」
少々納得できないクロムにデオドールは理由を説明する。
「クロムさんの魔法は教会付近の戦いで必要不可欠になるからです。回復魔法を使えるのは現にあなただけですからね。」
するとソフィが思わず立ち上がり話の途中で勢いよく問いかけた。
「ちょっと待てっ!"教会付近"という事はまだその考えを諦めていないと言うのか!?そこで戦を始めればリクの言った通り関係のない市民にも被害が及ぶぞ!?」
それに対しデオドールは表情を変えずに淡々と答える。

「ですが外の衛兵を排除しなければ建物内での戦いが不利になるのは目に見えています。ルシールさんの言う通り増援を防がなければ勝機はないでしょう。」
「しかしどうすれば・・・・・・!?」
「そこである案を練ったのですが。まずこれには『ルナリトナ』さん、あなたの力が必要です。」
「・・・・・・え?ちょ、ちょっと待て!・・・・・・僕が!?」
突然のご指名にルナリトナは口を震わせる。
驚きを隠せず重要視された事に緊張とプレッシャーを抱く。
デオドールはそんな様子を気にせず言葉を続ける。

「はい、上階を制圧したらルナリトナさんだけそこに留まり窓から教会の出入り口にあなたが作った武器である爆薬を落として下さい。そうすれば下階にも不意を突けると同時に民衆は襲撃に怯え散り散りにその場から逃げていくでしょう。教会付近に残ったのが天使だけと確認したら飛び道具などでまた不意を突き斬り込めば増援を効率よく叩く事ができるはずです。」
「なるほど、なかなか悪くない策だ!」
「じゃあ逆に、教会側の部隊が危なくなったらどうするんだ?」
「その時は俺が助けに行くよ。増援は多い方がいい。天使共を早く片付けて標的の逃げ場をなくしてやろうぜ?」


「・・・・・・大分まとまってきましたね。何か他に質問がある人はいませんか?」
デオドールが念のために目の前の集団に問いかけた。
・・・・・・が、意見を唱える者は現れない。
彼の作戦に反対する者は1人もいなかった。
逆にここにいる全員の士気が大きく高まったようにも見える。
団員達は異議なしと意見をまとめ尊敬の眼差しを彼に向けた。
そして最後にもう一度だけ拍手喝采を送った。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.31 )
日時: 2017/11/21 21:47
名前: シリアス

「ところで、教会にはここにいる全員で行くんだよね?」
リベアが独り言のように聞いた。
「相手は大軍。こっちの数も多い方がいいだろうね。」
その質問には訓練用の木刀をいじりながらクロムが答えた。
「その・・・・・・『クレイス』はどうする?あいつも連れて行くのか?」
リベアがついでにもう1つ問いかける。
彼の名が耳に入った途端、ミシェルが急に起き出した。
頭だけを振り向かせ不安そうな表情を浮かべる。
ミシェルを抱いたカティーアがそれは無理だと否定的に言った。
「貴様らも知っての通りあの者は数日前の高熱を理由に医務室で休養中だ。大分良くなったようだが戦には連れて行けない。はっきり言えば病人は足手まといだ。」
「そうだな・・・・・・残念だがあの"犬っ子"に手柄を立てさせるのはまた今度にした方がいいな。あの状態で行けば正に犬死だ。」
ディーノもジョーク混じりに彼女の意見に合わせる。

「クレイスくん・・・・・・戦いにはいかないの・・・・・・?」
ミシェルが安堵し嬉しそうな口調で言った。
「ああ、だからお前が恋人の分まで戦うんだぞ?」
「こ、恋人じゃないよっ・・・・・・!」
恥ずかしがる顔を必死に隠すミシェルに4人は声を上げて笑った。
「よし、皆の意思がようやく1つにまとまったね?それじゃあ各員、今まで通り訓練を怠らず当日に備える事。武器の手入れや装備も忘れないようにね?」
ルシールが大勢の前に出てそれだけ言った。
その言葉を最後に長かった任務の説明は終わった。
彼女は床に置きっぱなしだった天使の絵画を手に取ると気が抜けたようなあくびをする。
「いよいよ本番か・・・・・・!軽い怪我で済めばいいがな・・・・・・」
「実戦なんて緊張するな・・・・・・死んでもいい覚悟で教団に入ったがやっぱ震えが止まらない。」
「教団のほとんどが実戦経験のない奴らばかりだから尚更だ。」
それでも初めての戦いに恐さを隠せない団員達も数人いた。
すると

「それなら心配は無用だ。」
話を聞いていたソフィとリクが自信に満ちた表情で
「貴様らが危うくなったら私達が助太刀してやる。相手が集団なら1人で立ち向かわずなるべく単独の者を狙え。生き残りたければそうしろ。」
「それに精鋭達は俺とソフィだけじゃないから安心して。あまり前に出過ぎないようにすれば囲まれずに済む。」
と見習い達を安心させ丁寧にアドバイスを加える。
「はあ〜・・・・・・」
ここでの役目を終えたルシールは安堵の吐息を吐きだした。
大丈夫だと確信を持ち少しの間、丸く団結した仲間達を眺める。
戦意に満ち溢れ盛り上がった稽古場を背に彼女はそっと立ち去って行った。


「少し手こずっちゃったけど何とか皆に任務の内容を伝えて来ましたよ。」
そう言ってアルベルナの肖像をロベールに返す。
「ご苦労様でした。お茶でも飲んで一息ついて下さい。」
ルシールはロベールの部屋に足を運んでいた。
かなり疲れた様子で注がれたばかりのお茶を一口啜った。
向かいに座る彼はそれを聞き嬉しそうな、または切なそうな複雑な表情を浮かべる。
そうですかの一言でそれ以上の詮索はしなかった。
「いよいよですね・・・・・・?この作戦が上手くいけば我々にとっては大きな一歩となるはずです。」
命懸けの当日を心配するロベールはぎこちない様子だった。
うずうずと落ち着けない仕草が身体に出ていた。
よく見るとカップを持つ手が微小に震えている。

「初めての大きな任務に緊張するけど必ずやり遂げてみせますから、だから神父様は・・・・・・」
ルシールは幾分、心が楽になるように平気そうな言葉をかけるがそれは途中で途切れた。
すると彼は何を思ったのかローブの首元をずらし身に着けていたネックレスを取り外したのだ。
ル・メヴェルのロザリオを目の前にいる少女に差し出す。
「神父様・・・・・・?」
ただならぬ行動にルシールは不安を募らせる。
「これをあなたに託すのは"2つの意味"を込めているからです。」
「2つの意味?」
「1つは御守りとしてです。ル・メヴェルは信じる者を救済する慈悲深い神です。きっとあなたを守ってくれるでしょう。」
「じゃあ、もう1つの意味って?」

質問にロベールはすぐには答えず祈るように両手を組んだ。
流れ落ちた涙を袖で拭い目を鋭くし頷くと何かの覚悟を決めたようだった。
そして今まで以上に真面目な表情で
「もう1つの意味は"形見"です。」
胸を締め付けられる告白にルシールは深刻そうな顔をした。
ロベールは相手の反応を気にせず後を続ける。
「娘を失い憎しみを抱いてここ数年間生きてきましたが私はもう先は長くない。おそらくもってあと数年でしょう。天使となった肉親に手を引かれ仇の最期を見る事は出来ないかも知れません。それ以前に取り残される我が子同然のあなた達が心配で仕方ないのです。もし私がこの世を去ったら・・・・・・ルシール、あなたが私の代わりとなって役目を務めて下さい。教団の柱を支えられるのはあなたしかいないのだから。」
ルシールは嫌と言わんばかりに泣き出してしまった。
ロザリオを受け取るのを拒み彼の元に返した。
「そんな事言わないで・・・・・・!私達にとっても神父様は本当のお父さんみたいなものだもん・・・・・・!いなくなってしまったら寂しいよ・・・・・・!」
しかし、ロベールは厳しかった。
椅子から立ち上がりロザリオを手にするとそっとルシールを撫でる。

Page:1 2 3 4 5 6



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


URL


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。