ダーク・ファンタジー小説

黒いリコリスの教団【修正版】
日時: 2018/11/08 20:08
名前: シリアス

初めまして、シリアスでございます。
文章はいかにも素人ですがこんな私でもよければ・・・・・・
悪口や皮肉、いたずらコメントなどは決してしないでください。
舞台はファンタジージャンルがぴったりの11世紀の中世時代です。
天使や悪魔、魔法や錬金術などが存在し一部の人しか知られていないという設定。
主人公は秘密の教団『リコリス』の指導者として敵組織である『セラフィムの騎士団』の支配を終わらせるために戦うというストーリーです。

オリキャラを募集しておりましたがここで締め切りとさせて頂きます。
たくさんのキャラクターを提供してもらい深く感謝しています。
どうもありがとうございました!


登場人物


【リコリス教団】

ルシール・アルスレン

本作の主人公。種族は人間と食人鬼のハーフ。
かつてルフレールの悲劇を終わらせた英雄のブレードガントレットを愛用している他、あらゆる武器を扱う事が可能。
14歳の少女ながらも剣技や暗殺などのスキルは抜群で仲間からの尊敬を集める。
リコリスの教団の長として仲間を率いセラフィムの騎士団と戦う。


ミシェル・ヴォーン

教団の一員でありルシールの親友である人間と魔女のハーフ。
特殊な魔族の家系を持ち魔女の魂を吸収し能力を向上させる特殊スキルを持つ。
幼い頃、ルシールと共に教団に加わって以来相棒として活動している。


ロベール・ド・カルツ

ルシールの右腕である老神父。種族は人間。
教団のまとめ役で主に情報を団員に提供する。
彼もまたル・メヴェル教信者殺害事件の被害者であり娘を失った。
そのため犯人として騎士団を疑っているが命懸けの任務をルシール達に任せている事に心を痛めている。


ルナリトナ

リコリス教団の一員。種族は人間。
錬金術や薬の調合に長けておりその技術を武器とする。
戦闘よりも仲間の援助が得意で剣術はとてもじゃないが苦手。
ディーノと気が合い共同で研究や発明に明け暮れている。


ソフィ・ツヴァイフェル

リコリス教団の一員。種族は人間と悪魔のハーフ。
双剣を使った剣術と黒魔術を得意とする。
悪魔と人間の混血ということで人間からも悪魔からも忌み嫌われているため身分を隠していた。
しかし、相棒のリクに対しては心を許しており行動をよく共にする。
反対に稽古の際に不覚を取らされたミシェルをライバル視している。


リク・フォーマルハウト

リコリス教団の一員。種族は人間。
好奇心が強く誰に対しても明るく接し純真無垢で真っ直ぐな性格。
誰かを守りたいという思いから最強の戦死になろうと努力している。
武器は普段、背中に背負った大剣を使用する。


ジャスティン・リーベ

リコリス教団の一員。種族はエルフ。
礼儀正しく真面目で純粋、人懐っこく誰とでも仲良くしようする性格。
教団に入る前は聖職者で魔を浄化する力で人々を救済していた。
弓を得意とするが武器がなくても戦えるようにと護身術程度だが肉弾戦もできる。


クロム・リート

リコリス教団の一員。種族はエルフ。
賢く冷静で、何事も要領よくこなす優等生。ジャスティンの異母弟。
一方でお節介ともいえるほどの世話焼きな面もあわせもつ。
魔法石の杖を扱い回復魔法や光属性の魔法が得意だが戦闘の際には闇属性や攻撃的な魔法を主に使用する。


カティーア・ヴァイン=トレート

リコリス教団の一員。種族は魔女と天使のハーフ。
19歳になるまで天使だけの小さな村に住んでいたが混血である事が原因で他の住民から迫害を受けていた。
そのため高潔で傲慢な性格と天使をいつも目の敵にする。
しかし、可愛いものやお菓子が好きで褒めると調子に乗る癖がある。
種族が同じという理由でミシェルとは親しくなり本当の姉妹のような関係を築いた。
武器はレイピアだが天聖滅拳(てんせいめっけん)という対天使用の拳法も使用できる。


ディーノ・アインス

リコリス教団の一員。種族はホムンクルス(クローン)。
好奇心が強く知らないものにはかなり興味を示す性格。"やはり俺は天才だ!"が口癖。
武器は魔法のカードで召喚獣を具現化させて戦わせる。
クローンのプロトタイプとして生み出され 人体実験の被験体として扱われてきた。
しかし、ある日生みの親である魔術師に連れられ、魔術師見習いとして修行していた。
ルナリトナと仲が良くしょっちゅう共に新たな発明に明け暮れている。


リベア・グロリアス

リコリス教団の一員。種族は人間。
数は少ないが大らかな感性を持ち基本的に優しい性格。争いや喧嘩が大嫌い。
かつて鬼神、邪神、破壊神などと呼ばれ人々を恐怖に陥れた堕天使アプスキュリテが封印されていた漆黒の魔剣を武器として扱う。
剣の中の堕天使が復活しないよう魔を祓う力を持つレナと共にいる。


レナ=ルナリア

リコリス教団の一員。種族は聖女。
男勝りで勝気、常に強気。抜け目がなく何があろうとも余裕な表情を崩さない意志の強さを持つ。
しかし、あまり他人に特別扱いや色目を使われるのを苦手としているため正体を明かさないようにしている。
女神に生み出された聖女で魔を祓う力を持ち純白の聖剣を扱う。
リベアの持つ魔剣の監視兼護衛のためリベアと共にいる。


テオドール・ヴェル・ドンゴラン

リコリス教団の一員。種族は竜人。
ほとんど全滅してしまった失われた種族、竜人の青年。
物静かで穏やかな性格だがその反面、戦略を練るのが得意な野心家。
戦闘の際は竜化し硬い鱗で覆われた鋼色の巨大なドラゴンになる。
他にも幻惑魔法も使用でき他人を操る事ができる。


【セラフィムの騎士団】


ナザエル・ド・ラシャンス

セラフィムの騎士団の指導者。種族は人間。
紳士的な態度で国民に接するが顔を覆い隠しており素顔を見た者はいない。
騎士団の中でも謎が多い人物である。


クリスティア・ピサン:セラフィムの騎士団に所属するナザエルの右腕で組織のナンバー2。種族は『エデンの熾天使』。
普段は淑女のように振る舞うが敵と失敗者には容赦しない非情な性格。
聖団の中でも右に出る者がいない程の才色兼備の持ち主。
武器はブレードガントレット『アルビテル』を愛用している。


キルエル

イスラフェル聖団の高位の大幹部を務める少女。種族は『エデンの熾天使』。
明るく無邪気だがどんな非情な命令でも楽しそうに実行する残忍な性格で人間を見下している。
聖天弓フリューゲルを扱い敵の殺戮を楽しむ。


ナデージュダ・ペトラウシュ

イスラフェル聖団に雇われている暗殺者。種族は『ダークエルフ』。
各地で差別され酷い仕打ちを受けておりダークエルフという理由で両親と妹を人間達に殺された過去がある。
1人生き残った彼女は暗殺組織に拾われ以来、暗殺の世界に生きる事になる。
イスラフェル聖団に雇われる形でルシールと対峙するが実際は聖団に団員達を人質に取られおり無理矢理従わされている状態。
多彩な武器に黒魔術や死霊魔術も扱える。


用語集


リコリス教団

セラフィムの騎士団に不信を抱いた者達が集って結成された秘密結社。
ルシールが設立し教団のメンバーは聖団の実態を探ろうと活動している。
組織の紋章は黒いリコリス。

セラフィムの騎士団

レフレールの守護を宣言した組織。
大半が天使で構成されており人間などの他種族はほとんどいない。
治安維持のためレフレールを併合するが国民からの信頼は薄く良くない噂も流れている。
組織の紋章は羽の生えた少女。

レフレール

フランス西部に位置する架空の孤島。
1192年にカトリック教会諸国の属国となりイスラム軍と戦った。
文化を吸収され宗教対象がキリスト教となる。

ル・メヴェル教

レフレールが属国となる前に崇拝されていた宗教。
1192年に信仰を禁止されカトリック教会が建てられた。


……オリキャラ提供して頂いたお客様……

そーれんか様
つっきー様
Leia様
エノク・ヴォイニッチ様
リリコ様
Rose様
あいか様
ブレイン様


【お知らせ】

2018年夏の大会では皆様の温かい評価により銅賞を受賞しました!
本当にありがとうございました!腕の悪い素人ですがこれからもこのシリアスをよろしくお願いします!

読みにくいページの修正を開始しました。文章はほとんど変わっておりません。

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Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.57 )
日時: 2018/11/08 20:03
名前: シリアス

 それでもルシールは相手を侮辱する兆しを見せず

「あなたは死ぬのが嫌だったから武器を捨てたんじゃない。大切な部下達を守りたかったから自ら進んで捕虜になったんだよ。ちっともかっこ悪くなんかない。自分の命よりも部下を助けようとしたその勇気、私も見習いたいくらい。」

 と逆に尊敬の意を示した。

「ふっ、子供に慰められるとはこのナデージュダ、堕ちたものだな・・・・・・例え部下を守るため、聞こえはいいが所詮は敗北し騎士団の言いなりに成り下がっている。そして今はこうしてお前達に捕らわれている。私はなんて無様なんだ。」

「ナデージュダお願い、私達の仲間になって。教団の一員として戦えばあなたの部下も救い出せるし騎士団にだって復讐できる。」

 ルシールは再び説得を試みるがナデージュダも返事はやはり同じだった。

「期待に水を差すようで悪いが私はお前達に協力する気などない・・・・・・いや、できないと言うべきか・・・・・・」

「まだ何か理由があるの?」

「ああ、大切な事情があってな。」

 そう短く言ってナデージュダは話を続ける。

「私は人間達に迫害され家族を無残に殺され騎士団の下僕となっても私への扱いは変わらなかった。ダークエルフ、それだけの理由で下等な存在と見なされ忌み嫌われた。だが、たった1人だけ私の味方になってくれた者がいた。誰だと思う?アルベルナだ。彼女は私の存在を認め平等に接してくれた。共に笑い合い辛い時は慰めてくれた。私の過去に涙を流し心から同情してくれたんだ。気がつけば彼女と共に戦える事が新たな誇りとなっていた。自分を必要としてくれた友のため騎士団を裏切らないと誓ったんだ。」

「アルベルナは死んだよ・・・・・・」

 ルシールは悲し気な口ぶりでアルベルナの死を告げる。

「な、何・・・・・・」

 ナデージュダは一瞬、人形のように固まりその意味を理解するのに数秒の時間を要した。やがて空虚な表情が一変、悲しみに見た顔に大粒の涙が流れる。冷静な態度と呼吸のリズムは乱れ身体を痙攣のように震え上がらせる。

「アルベルナが死んだ・・・・・・嘘だっ・・・・・・!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ・・・・・・っ!!うっ・・・・・・ああああああああ!!」

 ナデージュダは勢いよく泣き崩れ言葉にならない叫びを張り上げる。受け止めきれない絶望に平静さを失い地面に何度も拳を叩きつけ伏せるように倒れ泣き続けた。その哀れとしか言いようがない姿をルシール達は黙って見下ろしていた。

「き・・・・・・貴様らがぁ・・・・・・!」

 ふとナデージュダが顔を上げる。その表情は今までとは比べ物にならないほど恐ろしく悪魔そのものの凶暴な形相だった。

「があああああ!!」

 理性を捨てたナデージュダは目と口を大きく開き飢えた獣のような声を上げルシール目掛けて飛び掛かった。爪の尖った手と腕が檻の隙間から伸びる。ディーノとクロムは恐れおののくルシールを下がらせ前に立ち塞がる。

「アルベルナはたった1人の親友だった!!私の闇を照らした唯一の光だった!!それをっ、貴様らがあ!!」

 ナデージュダは手の届かない3人に対し罵声を浴びせ続けた。やがて自分がしている行為が無意味だと分かると力の抜けた手を下ろし感情的になった疲労に喘鳴呼吸を繰り返す。そして、足を引きずり牢の奥へ身を寄せると息苦しそうにすすり泣く。

「これじゃ説得も尋問もやりようがないな。」

 クロムが緩いため息をつく。

「どうする?ここは一旦落ち着くのを待って、続きは後回しにするってのは?」

「ディーノもそう提案を勧めると」

「そうした方がいいかもね・・・・・・でも、その前にどうしても言っておきたい事があるの。」

 ルシールは再び檻の前に出て威厳のない温和な声でナデージュダに話しかけた。

「ナデージュダ、あなたから大切な友達を奪ってしまってごめん・・・・・・確かにアルベルナを殺したのは私・・・・・・でも、本当は彼女を生かして捕らえる事が本来の目的のはずだった。」

 聞き捨てならない台詞に関心を持ったのかナデージュダは涙を拭い睨んだ顔を振り向かせた。

「じゃあ、何故殺める必要があった・・・・・・?」

「教会でアルベルナを追い詰めた時、1人のエデンの熾天使が現れ彼女を弓で貫いた。瀕死の重傷を負ったアルベルナは痛みから解放されたいために私に止めを刺すよう促した。だから私はそれに従った。」

「エデンの熾天使だと・・・・・・!?あの種族で聖天弓を使う者は少ない・・・・・・まさか、キルエルが!?」

「奴は名乗らなかったけど多分、そうなんじゃないかな?」

 ナデージュダは驚きを隠せず完全には信じ切れなかった。だが、すぐに納得し怒りが湧いたのか憎しみがこもった拳を震わせる。

「アルベルナは死ぬ間際にあなたを私達の元へ連れて行くよう頼んだ。命尽きる最後まであなたの身を案じていたんだよ。」

「アルベルナ・・・・・・!」

「泣いたり怒ったりして疲れちゃったよね?ちょっと休憩しようか?もうしばらくしたら食べ物を運んでくるよ。ナデージュダは何が食べたい?」

 ルシールの親切に対しナデージュダは"食べられる物なら何でもいい"といい加減に答え仰向けに横たわると錆びついた天井に黄昏れる。3人も捕虜との面会を一時中断し休憩を挟む事にした。

「失敗した者は仲間であろうが家族であろうが容赦なく粛清する、お前が手を貸していたのはそういう連中だ。奴らは秩序をもたらす事を名目に国々を侵略しヨーロッパ全土を支配下に置いている。この世界が奴らに征服されるのも時間の問題だろう。俺達はその陰謀を阻止するために戦っている。どちらが正義でどちらが誇り高いか、ゆっくり考えるんだな。」

 ディーノは去り際にそう言い残し牢獄から姿を消した。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.58 )
日時: 2018/11/24 16:50
名前: 3104

頑張ってますなー

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.59 )
日時: 2018/11/29 19:10
名前: シリアス

コメントありがとうございます!頑張ってますよ(*^_^*)

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.60 )
日時: 2018/11/29 19:20
名前: シリアス

 あれから数時間が経ち太陽が青い空の上に差しかかった頃、ルシールは再び牢獄を訪れた。パンや肉のスープ、果物が盛られたプレートを抱え背後にはディーノとクロムを控えさせている。落とさないよう食事を運び囚人が閉じ込められた檻の中にひょっこりと顔を出し穏やかに話しかける。

「やあ、ナデージュダ。大分落ち着いたみたいで安心した。お腹減ったでしょ?食べ物を持って来たよ。」

 そう言って昼食を狭い隙間から入れて囚人に与える。

「捕虜の食事にしては随分と豪華だな。毒入りか?」

 ナデージュダは少々訝し気になり手に取ったパンを食い千切り小さく噛んで飲み込んだ。別に美味しいと言った顔を表現するわけでもなくもう一口かじりつく。

「美味しい?」

「悪くない。」

 ただ、味の感想だけを即答する。

「あとこれ、あなたに渡しておくよ。」

 ルシールはポケットから金色の装飾品を取り出した。それは死ぬ間際にアルベルナが手渡したコインネックレスであり彼女の形見だった。はっとしたナデージュダはそれを奪い取るように受け取ると胸に抱き寄せる。そして、目をつぶり悲しげな声で何かを呟いた。

「余計なお節介かもしれないけどこれはもっていた方がいいと思って。」

 ナデージュダは静かに目を細く開けるとゆっくりと口を開き

「あれからずっと考えていた。自分はこれから何をすべきか、浄土の門の先にいるアルベルナが私に何を望んでいるのか・・・・・・と。悩んで悩んで悩み抜いたが答えを探し出せず路頭に迷っていた。だが、お前のお陰で辿るべき道を見つけた。礼を言うぞ。」

「それってつまり・・・・・・」

「まだ理解に追いつかんのか?私もお前の戦いに協力すると言っているのだ。くだらんいがみ合いには飽きた。ここは一旦仲間として手を組もうではないか。」

 返ってきた肯定の返事にルシールは歓喜に満ちた顔を何度も頷かせる。ナデージュダも相手の感情に釣られ柔らかな笑顔を作った。

「まさか、捕らえた捕虜を数日で説得してしまうとは・・・・・・流石は教団の長、嬢ちゃんには敵わんな。ようこそ、ナデージュダ。我々はお前を温かく歓迎する。共に教団の正義のを成そうじゃないか。」

 ディーノが友好的に接するがナデージュダは彼に対しては嫌悪した態度で

「勘違いするな。あくまでも一時の協力を約束しただけで教団の一員になった覚えはない。高望みも程々にするんだな。私の望みはアルベルナの仇を討つ。それだけだ。敵の首を取ったら貴様らとは縁を断ち切らせてもらう。いいな?」

「うん、こっちも無理矢理引き入れたわけじゃないからね。そこはナデージュダの自由で構わないよ。」

 ルシールに言い分はなく容易に要望を聞き入れる。

「・・・・・・で、私と手を組んだまではいいがこれから何がしたい?まさか、私の歓迎会を開くわけでもあるまい?」

「心配無用、やりたい事ははとっくに決めてあるよ。」

 ルシールは普段通りに言って今後の予定を打ち明ける。

「あなたは部下を人質に取られているから騎士団に従うしかなかったんだよね?だったら大切な部下の皆を助け出そう。たくさんの暗殺者が味方になればこれ以上心強い事はない。」

「なるほど、単純だが悪くない作戦だ。大勢の騎士団相手に抗えるほどの暗殺者がこちらに加われば大隊を得たも同然、教団にとってもかなりの戦力になる。」

 2人のやりとりを後ろから聞いていたディーノも同じ意見で教団への影響を推測する。隣にいたクロムも軽く笑みを零し否定の素振りを見せなかった。しかし、仲間を救う内容を持ち出されてもナデージュダは何故か謝意を示さず礼を言うどころか悩ましい表情で沈黙する。

「どうしたの?」

 ルシールがネガティブになった理由を問いかけると

「私の部下達を救い出そうという良識的な気持ちはありがたいが何も知らないからそんなにも簡単に言えるのだろう。弱音を吐くのはぎこちないがあそこには行きたくない。」

「行きたくないって・・・・・・そもそもあなたの配下達はどこに監禁されているの?」

 今度はクロムが質問すると内容の多い返答が返ってくる。

「レフレールの街、オイエルセフィの外れにある『アザエール砦』だ。騎士団に歯向かった捕虜や囚人の多くはそこに収容されている。脱走者が1人もいない断崖絶壁の要塞、外側も内側も守りは厳重で分厚い鎧で身を固めた重装甲兵が配置されているのだ。そして、あそこは『奴』が砦全体を指揮している・・・・・・」

 ナデージュダは怒りに声を震わせギリギリと歯ぎしりを鳴らす。息を呑み短く間を開けると実に言いたくない口ぶりでその名を口にした。

「『ラファエル・ランクス』、騎士団の幹部の1人でありアザエール砦の最高責任者だ。かつて我が暗殺集団を襲い捕らえた部下達を人質にした張本人、私の誇りを汚した最も憎き相手だ。あの無慈悲で冷酷な顔は一度たりとも忘れはしない。」

「・・・・・・ラファエル・ランクスか。知っている名だ。」

「え?ディーノ、そのラファエルって奴の事知ってるの?」

 驚愕した顔を振り返らせるルシール、ディーノはより真剣になって詳細を語る。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.61 )
日時: 2018/12/21 18:59
名前: シリアス

「うろ覚えだけどな。昔、俺の育て親である魔術師から聞かされた事がある。この情報が正しいのかはいささか怪しいがラファエルは天使の都ヴァロデンの大天使で元は悪魔を断罪する処刑人だった。人間界に降り立ってからは砦を構え捕虜の尋問・・・・・・いや、拷問の日々に明け暮れている。奴に粛清された者は各種族を含め数千はくだらないらしい。選んだ対象を飽きるまでいたぶって殺す事を美徳としその野蛮な凶行は同胞達にも恐れられ『拷問狂の堕天使』とあだ名を付けられたそうだ。」

「え、ちょっと待って・・・・・・?そいつって本当に天使なんだよね!?拷問や処刑を楽しむなんて悪魔そのものだ!その情報が本当なら正真正銘ヤバい奴だぞ!なんか急に僕も不安になってきた!聞くんじゃなかったよ!」

 クロムもすっかり恐れ戦いてしまい恐怖に身体を縮こませる。さっきまでやる気に溢れていた自信を失いルシールの考えを改めるよう否定的な意見を次々と吐き出す。

「砦にはラファエルだけじゃなく大勢の騎士団の衛兵や重装甲兵が大勢いるんだよね!?情けないのは承知の上だけどこの作戦は中止するべきだ!あまりにも危険過ぎる!いくら僕達が精鋭揃いでもまともに戦ったら確実に全員あの世行きだよ!それにもし、捕まって拷問にかけられ教団の機密を吐かされたら一巻の終わりだ!ここはもっと冷静になって他の計画を練るべきだ!」

「魔法使いの坊やはそう考えるか・・・・・・ふむ、因みにルシールはどうする気だ?」

 ディーノはその勢いを無視し質問の矛先をルシールに向ける。

「ディーノさん!僕の話を聞いてますか!?」

「坊やじゃなく嬢ちゃんに聞いているんだ。教団の長はこの子、判断するのもこの子だ。で、結局どうするんだ?」

「何を言われようと私の決心は変わらない。アザエール砦に行ってナデージュダの部下達を解放する。そして、騎士団の幹部であるラファエルを暗殺して奴の狂った美徳を終わらせるの。」

「無謀過ぎるよ!ルシール、君も教団の全てを預かる長ならリスクというものを考えて!教会での戦いとは訳が違う!砦相手に真っ向から勝負を挑んだら確実に僕達は全滅する!それでもいいの!?」

「大丈夫、きっと上手くいくよ。私はもう二度としくじらないと誓ったんだ。それに私には心強い仲間がたくさんいる。ディーノもクロムも頼りにしてるよ。勿論、ナデージュダも。」

 ルシールに決心を曲げる気など更々なかった。不安を隠せないクロムを平気な顔で見上げ彼の手をそっと握りしめる。そのほころんだ表情からは死を恐れる気配が全く感じられない。

「おいおい坊や、何か勘違いしてないか?誰も砦に総攻撃を仕掛けるなんて言ってないぞ?お前が主張した通りそんな行為に走ったら全員墓場行きになる事などろくに頭を使わなくても分かる。あまり他者を見くびるな。俺だって嬢ちゃんの考えがトンチンカンなものなら流石に止めに入るさ。成功できる可能性があるから同意しているんだ。安心しろ。ちゃんと作戦を立ててから行動に移すに決まっているだろう。」

 ディーノが力説して呆れた作り笑いを言葉の最後に付け加える。

「・・・・・・作戦?どんな?」

「それをこれから練るんじゃないか。後で竜人の軍師に相談してみよう。砦の攻略は頭脳戦、あいつの策略が必要だ。あと、この事を他の皆やロベール神父にも報告せねばならん。嬢ちゃん、その役目は任せた。」

「分かった!もう少ししたら必ず皆に伝えるよ!」

ルシールは"待ってました!"と言わんばかりに元気に張り切る。
クロムは真逆にやり切れない思いを強い吐息にして吐き出した。

「決まりだな。だがこの作戦、早めに実行した方がいいな。『手遅れ』になる前に。」

「手遅れ?どういう意味だ?」

 聞き捨てならない台詞にナデージュダが関心を寄せる。

「ナデージュダ、お前はアルベルナの護衛をしくじりこうして捕虜となった。騎士団にとって失敗者は用済みな存在だ。暗殺者の長が必要なくなれば当然、部下達を生かす理由だってなくなる。粛清されるのも時間の問題だ。既に処刑は行われた後かも知れんが・・・・・・」

「何だとっ・・・・・・!?」

 ナデージュダが鋭い声を上げ言葉を詰まらせる。ネックレスがずり落ちた震えた両手を眺めると深刻な事態に頭を抱えた。最悪な展開を聞かされかなりのショックを受けた様子だった。ディーノはいても立ってもいられないだろう彼女に対し落ち着いた口調で言った。

「お前も部下の命が尊いなら恐くて行きたくないとか弱腰になってないで俺達に協力しろ。それしか彼らを救う方法はない。気合入れろ。誇り高き暗殺者なんだろ?いつまでも狭い牢獄で落ち込んでる姿はお前には似合わん。」

「・・・・・・私の武器はどこにある・・・・・・?」

 覚悟を決めた表情を上げナデージュダが睨んで問いかける。

「お前の武器は隠れ家の武器庫に大事に保管してある。戦いたいなら取りに行け。」

「上等だ。誰かの下僕になるのはやめだ。私に屈辱をもたらした大罪を騎士団に償わせてやる。奴らの命でな・・・・・・!」

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