ダーク・ファンタジー小説

黒いリコリスの教団【修正版】
日時: 2017/10/20 12:48
名前: シリアス

初めまして、シリアスでございます。
文章はいかにも素人ですがこんな私でもよければ・・・・・・
悪口や皮肉、いたずらコメントなどは決してしないでください。
舞台はファンタジージャンルがぴったりの11世紀の中世時代です。
天使や悪魔、魔法や錬金術などが存在し一部の人しか知られていないという設定。
主人公は秘密の教団『リコリス』の指導者として敵組織である『セラフィムの騎士団』の支配を終わらせるために戦うというストーリーです。

オリキャラを募集しておりましたがここで締め切りとさせて頂きます。
たくさんのキャラクターを提供してもらい深く感謝しています。
どうもありがとうございました!


登場人物

ルシール・アルスレン:本作の主人公。種族は人間と食人鬼のハーフ。
かつてルフレールの悲劇を終わらせた英雄のブレードガントレットを愛用している他、あらゆる武器を扱う事が可能。
14歳の少女ながらも剣技や暗殺などのスキルは抜群で仲間からの尊敬を集める。
リコリスの教団の長として仲間を率いセラフィムの騎士団と戦う。

ミシェル・ヴォーン:教団の一員でありルシールの親友である人間と魔女のハーフ。
特殊な魔族の家系を持ち魔女の魂を吸収し能力を向上させる特殊スキルを持つ。
幼い頃、ルシールと共に教団に加わって以来相棒として活動している。

ロベール:ルシールの右腕である老神父。種族は人間。教団のまとめ役で主に情報を団員に提供する。
彼もまたル・メヴェル教信者殺害事件の被害者であり娘を失った。
そのため犯人として騎士団を疑っているが命懸けの任務をルシール達に任せている事に心を痛めている。

ナザエル・ド・ラシャンス:セラフィムの騎士団の指導者。種族は人間。紳士的な態度で国民に接するが顔を覆い隠しており素顔を見た者はいない。騎士団の中でも謎が多い人物である。

クリスティア・ピサン:セラフィムの騎士団に所属するナザエルの右腕で組織のNo2。種族は『大天使』。
普段は淑女のように振る舞うが敵と失敗者には容赦しない非情な性格。
聖団の中でも右に出る者がいない程の才色兼備の持ち主。
武器はブレードガントレット『堕天使の審問』を愛用している。

キルエル:イスラフェル聖団の高位の大幹部を務める少女。種族は『大天使』。
明るく無邪気だがどんな非情な命令でも楽しそうに実行する残忍な性格で人間を見下している。
聖天弓フリューゲルを扱い敵の殺戮を楽しむ。


用語集

リコリス教団:イスラフェル聖団に不信を抱いた者達が集って結成された裏組織。ルシールが設立し教団のメンバーは聖団の実態を探ろうと活動している。組織の紋章は黒いリコリス。

セラフィムの騎士団:ルフレールの守護を宣言した組織。大半が天使で構成されており人間などの他種族はほとんどいない。治安維持のためルフレールを併合するが国民からの信頼は薄く良くない噂も流れている。組織の紋章は羽の生えた少女。

ルフレール:フランス西部に位置する架空の孤島。1192年にカトリック教会諸国の属国となりイスラム軍と戦った。文化を吸収され宗教対象がキリスト教となる。

ル・メヴェル教:ルフレールが属国となる前に崇拝されていた宗教。1192年に信仰を禁止されカトリック教会が建てられた。


……オリキャラ提供して頂いたお客様……

そーれんか様
つっきー様
Leia様
エノク・ヴォイニッチ様
リリコ様
Rose様
あいか様
ブレイン様

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Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.48 )
日時: 2018/05/15 20:30
名前: シリアス

戦いは終わった。
戦場の舞台となった教会は静寂に包まれる。
大量の天使の死体、負傷した教団の精鋭、両陣営の戦士が横たわっていた。
「作戦は失敗だな・・・・・・」
ソフィが平静を保ち双剣を鞘に収め下を向いた。
しかし、無念の表情からは強い悔しさが感じ取れる。
リクが慰めるように彼女の肩に手を乗せる。
「皆、よく頑張ったよ・・・・・・誰も死なずにここまでやれた事、誇りに思う。」
「くそっ!これじゃ姉さんやカティーアさんの努力は無駄じゃないかっ!」
クロムが望んでなかった結末に納得しきれず怒りを吐き捨てた。
持っていた杖を地面に叩きつけ広い空間にさえない音を響かせる。
「クロム落ち着きなよ!」
リベアも必死になって彼を宥める。
「だってこんなの・・・・・・!」
「悔しいのは君だけじゃない!ここにいる皆が同じ気持ちなんだ!」
「もう一歩のところだったのに・・・・・・!ふざけるな・・・・・・!」
クロムは怒りをぶつける矛先が分からないまま座り込んでしまう。
髪をかきむしり拳を地面に叩きつけた。
その様子を教団の戦士達は何とも言えず眺めていた。
「しかし、自分の味方を捨て駒として殺すなんて・・・・・・私達はとんでもない相手を敵に回しているのかも知れないな・・・・・・」
レナも一度だけ虚しい吐息を吐き顔をしかめる。

「任務は失敗、この事実は決して塗り替えられない・・・・・・が、これが俺達の最初で最後の戦いではない。次の機会を待とう。とにかく今はここを離れる事が得策だ。これだけの騒ぎを起こしたんだ。もうすぐ敵の援軍も駆けつけてくるだろう。体力に余裕がある奴は怪我人を運んでくれ。隠れ家に撤退するぞ。」
ディーノが冷静に適切な判断を下す。
命令に従い戦士数人が負傷したジャスティンやルナリトナに駆け寄り介護する。
彼女達を重そうに背負うと教会の出入り口へと向かう。
「俺達も行こう?ディーノの言う通りまだ教団は負けた訳じゃない。次の戦いに備えるんだ。」
「まずは帰って汗を流そうよ?私は早く隠れ家に戻って冷えた果実酒が飲みたいな。」
そう言ってリベアはさっき投げ捨てた杖を差し出す。
隣にいるレナも優しい眼差しで見下ろしていた。
クロムは後ろを振り向きそんな仲間を睨んだ。
杖を奪い取るように受け取り立ち上がると不機嫌な声を上げ2人の横を通り過ぎる。
「ルシール?」
1人立ち尽くすルシールの姿に気づきリクが足を止める。
「・・・・・・」
彼女は倒れて動かないアルベルナをじっと見つめていた。
まるで残忍な最期を迎えた殉教者のようだった。標的は既に他界したように動かない。
広がった血の波が足元へ迫って来る。
「こいつはもう死んでる。仕方なかったんだ。さっきの展開は誰にも予測できない。誰の落ち度でもない。」
リクは同じようにアルベルナを少しの間、眺めてやがて目を逸らした。
「さあ、俺達も行こう。時期にここも安全じゃなくなる。」
「うん・・・・・・」
ルシールはリクと手を繋ぎ倒れた標的に背を向けた時だった。

「うう・・・・・・ごほ・・・・・・」

どこから苦しそうな唸り声がした。女の声だった。
2人は互いに顔を合わせすぐにはっとし振り返った。
微かではあったがアルベルナの指先が動いていた。
起き上がりたいのか残った力で頭を上げようとしている。
「嘘だろ・・・・・・こいつ生きてるぞ・・・・・・」
「アルベルナ・・・・・・!」
「おい、ディーノ!標的は死んでない!まだ息をしているぞ!」
リクが遠くにいる皆に叫ぶ。
それを聞いた戦士達は当然、驚愕の反応を示した。
そして我先にと急いで駆けつけて来た。
「アルベルナ、しっかりして!!」
ルシールが彼女の体を揺する。
「無暗に触るな!身体に負担をかけてはいけない!」
ルシールを下がらせ慎重にアルベルナを抱き抱え上半身を起こす。
彼女は虫の息だったが間違いなく生きていた。
震えた目蓋を細く開け自身を支えるディーノを見上げた。
「クロム!治療魔法で傷口の応急処置をしてくれ!急げ!」
「わ、分かった!」
クロムは焦りながらも杖に魔力を込め癒しの光を生み出す。
それをオーラと化させ負傷した胸部の体内へと流し込んだ。
「げほっ!おぇ・・・・・・!・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・」
激しく吐血したアルベルナだが魔法が効き痛みの和らぎを感じた。
激痛から解放され心地良さそうな面持ちを浮かべた。
「心臓を貫かれても生きているとは・・・・・・大天使の生命力とは凄いものだ。」
ソフィが感心しているのか呆れているのか分からない口調で言った。

「アルベルナ、大丈夫・・・・・・?」
ルシールは心配を隠せない口調で問いかける。
だんだんと冷たくなっていく手を両手で包み離さなかった。
「クロム、治りそうか?」
後ろにいるリベアが聞いた。
「ありったけの魔力を傷に当てているけど刺さっているこの矢は特殊な魔法がかかっている。力づくで抜こうとしても抜けない。・・・・・・だから、この大天使はもうすぐ・・・・・・」
クロムは辛そうに返答を返し最後の事は言わなかった。
「何故・・・・・・敵である私を・・・・・・助けたのですか・・・・・・?」
残った痛みに耐えアルベルナは途切れ途切れの声でディーノに聞いた。
「勘違いするな。義や情のために助けた訳じゃない。我々の目的を果たすため、お前に死んでもらっては困るからだ。」
ディーノは余命僅かの相手に睨んだ視線を緩めず非情に言い放った。
そして、そのまま尋問に持ちかけ必要な情報を吐かせる。
「この国で起きているル・メヴェル教信者虐殺事件はお前らの仕業か?なら動機は何だ?」
「・・・・・・」
「お前ら騎士団の目的は何だ?この国を支配してどうするつもりだ?」
「ちょっと、ディーノ!いくら敵とはいえもうこんなに弱っているんだよ!?可哀想だよ!?」
乱暴な仕打ちにレナが思わず止めに入る。
彼は一旦、顔を上げるもそれに頷く事はなかった。
「さっきの大天使がこいつにした事を目の当たりにしただろう?失態を犯した仲間を見捨て殺す。白い翼を生やしていても俺達が戦っているのは悪魔そのものだ。気を抜けばこちらがやられる。生きて勝ちたいなら死にかけた相手でも慈悲を捨てなきゃならん。」
「でも・・・・・・!」
「お前も教団の精鋭なら精鋭らしく振る舞え!」
レナは晴れない気持ちでため息をついた
これ以上は何も言わず落ち込んだように下を向くとリベアの隣へ戻った。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.49 )
日時: 2018/05/27 21:29
名前: シリアス

「私は・・・・・・」
するとアルベルナは再び震えた唇を開いた。
「私は・・・・・・終わらせたかった・・・・・・」
「終わらせたかった・・・・・・って何を?」
ルシールが彼女に顔を寄せ問いかける。
「人間は・・・・・・弱くて・・・・・・慈悲がなくて争い・・・・・・をやめない・・・・・・憎しみや悲しみしか・・・・・・生まない行為を・・・・・・分か・・・・・・ていても繰り返す・・・・・・」
意外な台詞に戦士達の表情が変わる。
敵である事は十分に理解していたがその正論には共感を覚えてしまう。
そして、目の前に倒れる1人の天使がだんだんと哀れに感じてきた。
「お母様は・・・・・・人間の悲しみにい・・・・・・つも涙を流していた・・・・・・いつか自分がこの悲劇を・・・・・・終わらせる・・・・・・と・・・・・・お母様の理・・・・・・想はいつし・・・・・・か・・・・・・私の理想・・・・・・となっていた・・・・・・」
ルシールやディーノ達は話を聞き続ける。
「だけど・・・・・・エデンで起きた・・・・・・戦でお母様は・・・・・・帰らぬ人となった・・・・・・理想は私が受け・・・・・・継ぐ事になって・・・・・・そのために故郷を離れ・・・・・・地上へと降り立った・・・・・・」
「アルベルナ・・・・・・」
「そこで私は・・・・・・『クリスティア』や・・・・・・『キルエル』と出会った・・・・・・共に生き・・・・・・共に戦い・・・・・・そして騎士団の一員となっ・・・・・・おぇ・・・・・・げほぉっ!」
アルベルナが体内から漏れた黒い血を吐き出した。
何度も咳込んだ直後、激しい痙攣を引き起こした。
美しかった白い肌も青ざめ安定していた呼吸が複雑なリズムに乱れ始める。

「もういい、これ以上喋るな。クロム、治癒魔法を解け。こいつはもうすぐ死ぬ。これ以上の尋問は無理そうだ。」
ディーノは抱いていたアルベルナを地面に降ろし立ち上がると付着した血液を服に拭った。
クロムも辛い決断を受け入れたように頷くと杖を遠ざけ大して意味のない応急処置を打ち切る。
「騎士団は決して人々に崇められるような存在ではない。現にこいつらは人間の戦争に加担し災いを拡大させているからな。恐らく、この女は支配欲のためだけに騙され長い間、利用されてきたんだろう。ある意味被害者と言える。同情はできないがせめて哀れな天使だと解釈しておこう。隠れ家に帰るぞ。負傷した仲間の手当てを優先しなければいかん。」

ディーノは標的を倒した証拠としてアルベルナが身に着けていた金貨のネックレスを引き千切った。
それを近くにいたクロムに渡し彼を前に歩かせる。
他の戦士達も諦めきれない感情を抱きながら潔く誰もいない外へと向かう。
「ルシール、もうここには用はないよ。私達も行こう?」
レナが共に来るように促すが
「はあ・・・・・・ル、ルシール・・・・・・はあ・・・・・・あなたは・・・・・・まだそこに・・・・・・いるの・・・・・・?」
仰向けに横たわるアルベルナが聞いた。
彼女の目に映る世界は色を失い遠くに見える天井が黒く染まっていく。
切り裂かれ欠けた心臓の鼓動ももうすぐ終えようとしていた。
「うん、私はまだここにいるよ。」
ルシールはまだアルベルナの手を握ったままだった。
「ごめんなさい・・・・・・はあ・・・・・・もう目が・・・・・・見えなくて・・・・・・あなたの顔すら・・・・・・映らない・・・・・・」
彼女は"大丈夫"と一言を呟き優しい言葉をかける。
「あなたはお母さんの理想を叶えたかったから騎士団に命を捧げたんだね・・・・・・あなたこそ、英雄に値する誇り高き大天使だよ。」
「ありがとう・・・・・・敵同士・・・・・・なの・・・・・・に・・・・・・あなたに言われると・・・・・・友達に褒められた・・・・・・みたいで・・・・・・嬉しい・・・・・・」
アルベルナは幸せそうに言って完全に失明した緑色の目を閉ざした。
近くにあった聖剣を手探りで触れるとグリップを握った。
それをルシールの元へ寄せ彼女に差し出す。

「これを・・・・・・勝利の証と・・・・・・して持って行って・・・・・・それと・・・・・・頼みを聞いてほしいの・・・・・・ナデー・・・・・・ジュダをお願・・・・・・い・・・・・・騎士団は・・・・・・失態を犯した者に・・・・・・は容赦しない・・・・・・戻れば・・・・・・私と同じ目に・・・・・・遭わされて・・・・・・!」
ルシールは何とも言えず悩ましい表情でレナの方を見上げる。
傍で話を聞いていた彼女は腕を組み何食わぬ顔で
「どうしようが私は別に構わないよ?ルシール、教団の長は君だ。引き受けるか断るかは君次第だ。」
するとルシールは、はっきりと決意し再びアルベルナを見た。
「いいよ、ナデージュダは連れて行く。決してあなたと同じ目に合わせないから。」
「ありが・・・・・・とう・・・・・・もう1つ・・・・・・私に・・・・・・止めを刺して・・・・・・」
「え?」
「・・・・・・痛くて・・・・・・寒いの・・・・・・もう・・・・・・耐えら・・・・・・れない・・・・・・せめてあなた・・・・・・の手で楽にして・・・・・・」
「・・・・・・アルベルナ・・・・・・」
「お願い・・・・・・孤独に悶え・・・・・・なが・・・・・・ら・・・・・・ゆっくり死ん・・・・・・でいくなんて嫌・・・・・・早く・・・・・・お母様・・・・・・の元へ・・・・・・」
「・・・・・・分かった・・・・・・楽にしてあげる・・・・・・」

下を向き言いにくそうに解釈を肯定した。
さっきまでの穏やかな表情を変え強く歯を噛みしめる。
ためらいに震える自身の右手を眺め手首に隠れたブレードを伸ばす。
「レナ、悪いんだけど目をつぶっててくれないかな?」
「それが望みなら嫌とは言わない。終わったら教えて。」
ルシールが頷きレナは2人に背を向けた。
「天国へ行・・・・・・く前に・・・・・・教えて・・・・・・あなた・・・・・・達は・・・・・・何のために・・・・・・戦うの・・・・・・?」
アルベルナの問いに少女は
「故郷であるこの国を守るため、自分や仲間が信じる正義のため・・・・・・」
その台詞を最後にブレードが喉に突き立てられる。
アルベルナは穏やかな面持ちのまま息絶えた。
「さようなら・・・・・・アルベルナ・・・・・・」
ルシールは別れを告げ深く刺さったブレードを抜く。
殺したばかりの標的の額に手を乗せ聖書の言葉を呟いた。
「終わった?」
レナが感情入りしない普段通りの口調で言った。
「うん、帰ろう。レナはナデージュダを運んで。私は剣を・・・・・・」
「ナデージュダってこいつ?はあ・・・・・・私って女の子だから誰かを背負うって苦手なんだよね・・・・・・リベアがいてくれたら・・・・・・」
レナは愚痴を零し気絶したナデージュダを背負うと淡々と立ち去るルシールの後に続いた。

戦士達は去り無人となった教会は更に静かになった。
大きくそびえるマリアの像が眠りについたアルベルナを見下ろしていた
人々が集う神聖な場所は外も中も血を流す無数の天使達の死体でいっぱいだった。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.50 )
日時: 2018/06/14 22:41
名前: シリアス

リコリス教団の隠れ家 ロベール神父の個室


任務の報告はルシールとミシェルが伝えに向かった。
ロベールは部屋で戦士達の帰りを待っていた。
彼は先の戦いでボロボロになった2人の少女を見て哀れんだ顔を浮かべる。
「非情に残念な知らせです。捕らえるはずだったアルベルナは死亡しルナリトナ、カティーア、ジャスティンの3人が負傷しました。今、クレイスが医務室で手当てをしている頃です。あと、ナデージュダというダークエルフの暗殺者を捕虜として捕らえました。地下牢に監禁しており近々尋問を行おうと思います。」
ルシールは教会での出来事やこれからの予定を詳しく説明する。
最後にディーノがアルベルナから奪った金貨のネックレスをテーブルに置いた。
標的の血の着いた純金が窓から差し込んだ日の光を反射する。
「教団の長である私が仲間を守れず危険な目に遭わせてしまった・・・・・・ミシェルの魔法や皆が援軍に駆けつけて来なかったら間違いなく私も死んでた・・・・・・事態を想定できず最悪な結果をもたらしてしまった・・・・・・全部私のせい・・・・・・全部・・・・・・」
ルシールは深く落ち込んだ暗い顔を垂らした。
失態の責任に自分を責めながら"ごめんなさい・・・・・・"と震えた声で呟いた。
「・・・・・・」
ロベールは回収したネックレスを手の平に乗せ無言で眺める。
これといった反応はせずそれを再び置くと表情を変えず赤いインクに浸した羽ペンを取った。
アルベルナの肖像画に罰印を付け足しキルリストに飾る。そして問いかけた。
「アルベルナはいかにして死んだのですか?」
質問にはルシールが答えた。
「彼女を追い詰めた直後、エデンの熾天使が現れ仲間である彼女に致命傷を負わせたんです。クロムの施した応急処置も空しくアルベルナは私に苦しみから解放してほしいと頼んだ・・・・・・それで・・・・・・止めを・・・・・・」
「なんて事だ・・・・・・自分の仲間を迷う事なく・・・・・・天使というのはそこまで残酷だったのか・・・・・・!」
「恐ろしかった・・・・・・地獄の悪魔を見ているようだった・・・・・・」
震えた声はやがて涙声に変わる。
それにつられミシェルもとうとう声を上げ泣き出した。
流れ出る涙で頬を濡らし恐かったと泣き叫んだ。
ロベールは少女達の傍に行き両腕で優しく抱いて包んだ。
「恐い思いをしましたね。もう私がいるからもう大丈夫です。最後までよく頑張って・・・・・・2人共、本当に大義でした。あなた達全員が生きて帰って来てくれた事が何よりも嬉しい・・・・・・本当に無事でよかった。」
「でも私が無力だったせいで・・・・・・」
「あなたのせいでもない。こうなる運命は誰だって予測出来なかった。だから自身を咎める必要などありません。」
ロベールは安堵と慰めの言葉を送り目をつぶると幼い2人の髪を撫で下ろした。
そして部屋に響く泣き声が治まるまでしばらく離さなかった。


いくつもの扉が並ぶ兵舎の廊下を進む3人の精鋭の姿があった。
ディーノが先頭を行きすぐ後ろでリベアとレナが二列に続く。
武器を持たずともこれから戦に出向くような緊張感のある面持ちを浮かべていた。
「あいつ、いるかな?」
レナが隣を歩くリベアに聞いた。
彼はちらっと視線をやりほとんど確信を持った返事を返した。
「武器庫や訓練場、食堂にもいなかったからね。探していない所はあとここしかない。」
やがて3人は1番奥にあった正面の扉の前で足を止める。
中には誰もいないのか内側はしーんとしていて妙に静かだ。
本当にいるのか疑いたくなる程に気配は漂ってこない。
「いいか?開けるぞ?」
ディーノが振り返りこれから行う事の準備を一応確認する。
後ろにいたリベアとレナはすぐに頷き肯定の合図を送った。
取っ手を回し扉を幅広く開けると彼らは室内へ流れ込んだ。
「おや?ディーノさん?何か御用ですか?リベアさんとレナさんもお揃いのようで。」
数人では狭い個室にデオドールがいた。
彼は羽ペンを手に書類の仕事に明け暮れている最中だった。
普段通りの落ち着いた態度、何食わぬ顔でこちらを睨むディーノ達に視線を合わせる。
その表情は同様の欠片もなかった。
「竜人、お前に話がある。」
最初にディーノがはきはきと口を開いた。
閉ざした扉の前に立ち塞がり逃げ場を遮る。
「一体どうしたんですか皆さん?そんなに恐い顔をして?」
「どうしたんですかじゃないでしょ?」
レナが敬遠の目つきで声を尖らせる。
「竜人、何故今日の戦いに参加しなかった?お前の到着を俺達全員が待ちわびていたんだ・・・・・・なのに来なかった。その理由を教えてくれないか?」
ディーノも次第に湧いてくる怒りを抑えながら問い詰める。
「え?ああ、それにはちょっとした訳が。」
デオドールは相変わらず無神経とも言える平静さを保ち椅子から立ち上がった。
目の前にいる彼らに対し情けなく作り笑いをすると
「僕も皆さんと共に同行したかったのですが、朝から具合が悪く熱を出してしまって。だから足手まといにならないために休養する事にしたんです。クレイスさんの風邪がうつってしまったのかも知れませんね。」
「自分に不都合なものは病気のせい、人のせいかよ・・・・・・!」
子供染みた言い訳にリベアはとうとう握っていた拳を振り上げ

「ふざけるなっ!!」
怒気に身を任せた怒鳴り声と同時にデオドールに飛び掛かった。
胸ぐらを掴み強引に顔を引き寄せ頬を殴りつけようとした。
ディーノのレナが止めに入り2人の間に割り込む。
「ルナリトナさんもカティーアさんもジャスティンさんもなあ、重傷を負ってまで戦ったんだ!!ルシールとミシェルだって死にかけた!!それなのに自分は呑気に過ごして病気をうつされただと!?ふざけるのもいい加減にしろっ!!!」
暴れ狂うリベアをどうにか力任せに引き離す。
粗暴に押し倒されたデオドールは反対側に飛ぶよう背中を打ちつけ倒れた。
ひっくり返ったインクが頭上に被り積まれていた書類が宙を舞い散乱する。
「げほっ、げほっ・・・・・・!」
顔中が真っ黒に塗りつぶされたデオドールは絞められた胸元に手を当て咳を吐き出した。
「おい、冷静になれ!殴ったってどうにもならないだろう!?」
必死に取り押さえるディーノの叫びを無視しリベアは尚も掴みかかろうとする。
「こいつは傷つくのが恐いから仲間を身代わりに自分だけ逃げたんだぞ!?仲間が受けた苦しみをこいつも味わうべきだ!!」
「もうやめてっ!」
吠えたてる彼をレナは扉に押し付け強く訴えた。
「こんなの、リベアらしくない!君はいつも優しくて暴力を嫌う人だった!確かにデオドールは間違っている!だけど、彼を殴ってどうなるの!?仲間を傷つけてもお互いが不幸になるだけだって君が1番よく知ってるはずだよ!」
「はあ・・・・・・はあ・・・・・・!何でだよ・・・・・・!?自分だけ助かろうとした卑怯者なのに・・・・・・どう考えたって許せないだろっ・・・・・・!!」
リベラは納得できないまま泣きそうな顔になり大人しくなった。
興奮が冷め緩めた拳を下ろしふっと床に崩れ落ちる。
「その気持ち分かるよ・・・・・・許せないよね・・・・・・」
無我夢中で過ちを防いだレナも共感を抱きながら彼女も涙を流した。
そして涙声で"君は間違ってない・・・・・・"を何度も繰り返した。

「・・・・・・」 「・・・・・・」

もう片方の2人はその様子をずっと眺めていた。
やがてディーノがデオドールの方を振り返り普段よりも真剣な態度で
「竜人、リベアもレナも命懸けで戦ったんだ。お前も教団の一員なら彼らの気持ちを分かってやってくれ。体調不良は仕方ない、他の皆も大目に見てくれるはずだ。だが、それをクレイスのせいにするのはいささか感心しないな。軽蔑するつもりはないが同じ教団の精鋭として少し失望したぞ?」
それだけ言い放つと気力を出し尽くしたリベアの肩を持ち起き上がらせる。
3人はこれ以上は咎めようとはせず部屋から去って行った。
デオドールだけが1人、孤独に残され扉が閉ざされる。
「・・・・・・」
彼は何も言い返さず最後まで沈黙していた。
感情のない顔に塗れたインクを拭い椅子を手すり代わりに何とか立ち上がる。
散らかった机を僅かな間眺め意欲のないため息をつくと辺りに落ちた書類を片付け始める。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.51 )
日時: 2018/06/28 21:43
名前: シリアス

時間は川の流れのように過ぎていった。
太陽は夕日となり沈み夜が訪れようとしていた
もうすぐ今日という1日が終わり明日へと繋がる。

食堂は料理の香りが漂い時も時刻で賑やかだった。
任務から帰った戦士達が共に飲食を楽しみ盛大に盛り上がっていた。
例えるならまるで祝いの行事、今日の失敗など偽りに塗り替えられたかのように広い一室は明るい雰囲気に満ちている。
羽を休める憩いの場とも言えるその中にソフィとリク、クロムの姿もあった。
「任務お疲れ様、クロムさん。今日は大活躍だったらしいですね?」
見習いの料理人がにこっと笑顔を見せた。
彼は"そんな事は・・・・・・"と軽く照れながらワインボトルを1つ注文する。
冷水に浸けられていた冷たい葡萄酒を受け取り数人分の木製グラスと一緒にテーブルへ運ぶ。
「賑やかな場はどうも好きになれん。騒々しさが耳に障る。」
ソフィが慣れない環境に文句を零していた。
「俺はこういうの嫌いじゃないよ?お祭りみたいで気分が高揚する。」
「リクがそう言うなら私は別に構わないが・・・・・・」
そこへクロムがやって来た。
「お待たせ!冷えたワイン持って来たよ。」
リクは待ちわびていたと言わんばかりの嬉しそうな顔で我先にとボトルを取った。
3人は酒を注いだグラスを手に取りそれを高く掲げた。
「俺達の武勇と無事に生還できた事に・・・・・・」
声を揃えて乾杯しワインで喉を潤す。
「ぷはあ!ワインがここまで上手く感じるとはね・・・・・・!」
「死にかけた後に飲む酒は格別だって昔、酔っぱらった父さんが言ってたよ。」
クロムのジョークにリクは愉快に笑った。
「任務は失敗に終わったけどルシール達はよくやっってくれた。あれだけの奇襲部隊で作戦を成功させちゃうんだから。」
「ああ、教団の強さを奴らに知らしめた忘れられない日となったね。誇り高い気持ちだよ。」
「私達も大いに活躍したな。リクにクロム、貴様らの戦いぶりも鬼神のようだった。正に精鋭と呼べるだろう。」
ソフィもふっと爽やかに微笑み空になったグラスをテーブルに置いた。

「しかし、これはまだ始まりに過ぎない。本番の戦はこれからだ。」
リクは急に口を平らにし、しゅんとした顔をした。
共にいた2人も彼に表情を合わせる。
「ディーノが言っていたエデンの熾天使、あいつらをどうにかしない限り騎士団を倒したとは言えない。だが、果たして俺達が敵う相手なのか・・・・・・」
「そうだね・・・・・・僕達にとってあいつらは恐らく最大に敵になる。彼女達と戦う日は必ず訪れるだろうね・・・・・・」
クロムも自信のない弱気な口調で言った。
「・・・・・・何を怯えているのだ?大の男達がみっともない。」
ソフィだけは弱音を吐かなかった
何かを憎むような凶暴な人相で男2人に鋭い歯を見せ演説のように語る。
「我が種族は天使と対を成すもの・・・・・・あんな奴らに恐れを抱いていたら悪魔の面汚しもいい所よ。例えエデンの熾天使だろうが何だろうが私は戦うぞ。教団の妨げになる者はすべて排除すべきだ。」
「・・・・・・ソフィ、君の言う通りだ。俺達精鋭がビビってしまったらそれまでだよね。」
リクが静かに台詞を述べる。
そしてこちらを睨む彼女を見て無理に明るい笑顔を作ってみせた。
しかし、クロムは暗い面持ちを緩めなかった。
「だけど問題は山ほどある。今回の戦いで騎士団を敵に回しあの熾天使に顔を見られた。報復を喰らうのは時間の問題だと思う。その上、情報を聞き出すはずだったアルベルナは死んで僕達はまた振り出しを辿る羽目になった。次の出陣はいつになるか次今度はどこを攻めればいいかという事も・・・・・・後先が心配で仕方がない。」
「しかし、前向きに捉えればこうも考えられる。我々による教会襲撃は騎士団に大打撃を与えたはずだ。幹部である大天使が死んだのだ。いくら口封じのために排除したとはいえアルベルナの死は奴らにとっても大きな痛手となるだろう。彼女の死はこの国だけではなくカトリック教会諸国にも影響を及ぼす事も十分にあり得る・・・・・・だが、現実を見ればこちらの被害も甚大だ。今回の戦いで3人が重傷を負い戦場に復帰できるまでには長い時間が掛かる。認めたくはないが次の戦は大分先の話の話になるかも知れん。」
「また訓練ばかりの日々が続きそうだね。」
リクは呑気に2杯目のワインを嗜む。

「そしてルシールが捕らえたダークエルフの暗殺者。確か、ナデージュダと言ったか?彼奴を捕虜に出来た事は不幸中の幸いだった。これからたっぷり尋問して知っている事を吐かせるとしよう。因みに彼奴は今どんな状態だ?」
「ディーノから聞いた話じゃナデージュダは武器を全て没収され地下牢に収容されてるみたいだよ?鎖で縛ったり手荒な扱いはしてないみたい。捕虜は罪人ではないからね。」
「私達の仲間をあんな目に遭わせた奴だぞ?拘束もせずにただ監禁しているだけなど手緩過ぎる。私なら3日間、食事と水を一切与えないが。」
「恐いなあソフィは・・・・・・まあでも共感はできる。もしあいつも教団の妨げになったり不穏な動きでもしたら、その時は容赦なく斬り捨てるけどね。」
「・・・・・・」
「どうしたのクロム?」
黙っているクロムにリクが問いかける。
「・・・・・・ジャスティン姉さんの事が心配だ。ごめん、ちょっと医務室に行ってくる!」
クロムはいても立ってもいられなくなりワインを一気に飲み干し席を立った。
2人に短く別れを告げ姉のいる医務室へ走り去っていった。
「おいちょっと・・・・・・!行っちゃった・・・・・・」
「放っておけ。姉の事が心配で仕方ないのだろう。無理もない、彼奴は故郷を離れて以来、唯一の家族はジャスティンだけなのだからな。」
「気持ちは分かるよ。俺もソフィに何かあったらこんなにも落ち着いてはいられなかったよ。・・・・・・とにかく、君が無事でよかった。」
「わ、私に気遣いなど無用だ・・・・・・!悪魔の騎士をなめてもらっては困る・・・・・・!」
ソフィは恥ずかしそうな顔を背ける。
素直になれず酔いではない赤らめた頬を隠した。

「ははっ、だね。ソフィは誰よりも強いから心配する必要なんてないかな・・・・・・でも、俺もクロムの言った通りこれから先、どうなるかが心配だな。態勢が崩れかけている今、攻められたら一巻の終わりだ。最悪な事態を迎える前に早く奴らを叩かなければ・・・・・・」
「弱音を吐くなと言ったはずだ。天使がいくら束になって来ようが私の敵ではない。仮に大隊を率いてやって来ても無傷で返り討ちにしてやる。それに私には及ばないが頼れる仲間達がたくさんいる。少なくても情けない最期を遂げる事はないから安心していいぞ?言いたい台詞はまだ色々あるが今日は疲れを癒そう。葡萄酒、私にももう1杯くれないか?」
「ああ、勿論。今夜は飲もう。悩むのは後回しにした方がいいね。」
リクは彼女のグラスに2杯目のワインを注ぐ。そしてまた改めて乾杯した。
強いアルコールの心地よい感覚が染み渡り不安を和らげる。
だが、その快感が永遠に続かない事をリクは分かっていた。
(大事に至らなければいいが・・・・・・レフレールの守護神ル・メヴェルよ、どうか我らに加護を・・・・・・)
リクは本心を言葉に出さず心の祈りを囁いた。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.52 )
日時: 2018/07/12 21:34
名前: シリアス

柔らかい何かに感触に包まれながらカティーアは意識を取り戻した。
長い間、閉ざしていた目蓋を静かに開け彼女は自分が横たわっている事に気づく。
次第に晴れていく霞んだ視界、そこはベッドの上だった。
窓から差し込む夕暮れの日差しを浴びている。
「・・・・・・っ!」
ふいにカティーアははっと我に返った。
跳ね上がるように上半身を起こし興奮した吐息で辺りを見回す。
だが、そこは戦いの部隊となった教会ではなく隠れ家の医務室の中。
ベッドが並ぶ広々とした空間、向かいを見るとルナリトナやジャスティンが安静にしていた。
彼女達は戦服を脱がされ露出した肌に包帯や傷薬の湿布が張られている。
カティーア自身も冷静になって下を向くと同じ身なりをしていた事に気づく。
ここが安全の場所だと知り安堵したもののどこかやり切れない気持ちが余ってしまう。
「おっ、カティーアもやっと起きたのか!いい夢見れたか?」
ルナリトナが目を覚ましたばかりのカティーアをからかい友好的に手を振った。
「あれからずっとピクリとも動かなかったから死んじゃったんじゃないかって心配してたんだぞ・・・・・・いてっ!いてて・・・・・・」
そして痛そうに血が滲む包帯の下の肩を押さえてうずくまる。
「カティーアさんも大事に至ってないみたいですね・・・・・・よかった・・・・・・」
ジャスティンも笑顔で話しかけてくる。
「僕達はあのナデージュダとかいうダークエルフに大怪我を負わされて・・・・・・それで気絶していたところを他の皆がここへ運んでくれたんだ。」
「ルシールさん達から話を聞きました。私達は皆、危ない状態だったと・・・・・・今、こうして健全に話ができるのも奇跡かも知れません。」
2人は交互にこれまでの経緯を具体的に話す。

「そうか・・・・・・私は戦いに敗れ意識を失い・・・・・・お前達!教会での戦いはどうなった!?我々は勝ったのか!?」
するとルナリトナは落ち込んだ表情を背け頭を軽く横に振った。
「残念だけど・・・・・・アルベルナは死んだらしい。任務は失敗に終わったって・・・・・・」
「外の部隊と合流し追い詰めた際、エデンの熾天使の1人が現れ彼女を殺したそうです。恐らく騎士団の情報を知られないよう口封じのために・・・・・・」
「ミシェル・・・・・・ミシェルは!?あいつは無事なのか!?」
カティーアは任務の失敗など意に介さず真っ先に親しいミシェルの事を問い詰める。
ルナリトナは"言うと思った"と呆れた薄笑いをして
「あの子なら怪我はないし心配する必要はないよ。それに今回は凄く大活躍だったとか・・・・・・」
「私もルシールさんから聞きましたがミシェルちゃんの魔法があったからあのナデージュダを倒せたとか・・・・・・今、あの暗殺者は捕虜として地下牢に監禁しています。」
「そうか・・・・・・よく分からんが逃げずに最後まで戦っていたのか・・・・・・強くなったな、ミシェル・・・・・・」
ここにはいない彼女の誉め尊敬したが
「だが私は・・・・・・戦士として失格だ・・・・・・」
自身にはその裏腹に非難を浴びせた。
「はあ?どうしたんだよ急に?自分を責めたりなんかして?」
彼女らしくない弱音に驚くルナリトナ。ジャスティンも目を丸くする。
「私は同じ境遇の中を生きてきたミシェルを何があっても守り抜くと誓った・・・・・・それなのに天使でもない者に後れを取りあの子を危険な目に遭わせてしまった・・・・・・終いには助けられ・・・・・・これほどの屈辱は他にあろうか・・・・・・自分はこんなにも無力なんだと思い知らされた・・・・・・」
「そんな事はありません。5人係で戦ってもナデージュダには勝てなかった。あなたが決して弱いからじゃない。だからそんなに落ち込む必要はありませんよ。」
「ジャスティンの言う通り、僕達がやられてもカティーアだけはたった1人で勇敢に立ち向かっていたじゃないか。僕達にはとても真似できない教団の鑑だよ。」
「しかし・・・・・・!」
カティーアは納得いかず歯を強く噛みしめる。
悔しそうに毛布を掴んだ拳は小刻みに震えていた。

「戦い慣れた教団の精鋭達がこんなにもいとも容易く・・・・・・私達が相手にしている騎士団は余程の手練れ達が揃っているのでしょう。これから先の戦いも油断は出来ませんね。」
「こっちに死人が出なかったのが奇跡と言ってもよかったんじゃない?正直、今回の戦いで人生が終わるのかと思っていた。任務は失敗に終わったけど清々しい気分だよ。」
その台詞を最後に3人は会話を途切れさせる。
何とも言えない空虚な気持ちに苛まれ誰1人、言いたい言葉が浮かばなかった。
疲れていたわけじゃない・・・・・・なのに何故か身体に妙なだるさがあった。
静寂な時間だけが1秒また1秒と流れ過ぎ去って行く。
「・・・・・・いつまでもずっと、皆と一緒にいられるかな・・・・・・?」
しばらく間を開けてルナリトナが口を開いた。
彼女はぼんやりと沈もうとしている太陽を一望できる窓の外を眺めていた。
空へと羽ばたく白い鳥の群れの行く先を目で追う。
「・・・・・・何か言いました?」
風が吹いたような囁きに気づきジャスティンは何食わぬ顔で隣を向いた。
「ううん・・・・・・何でもない・・・・・・」
ルナリトナは生返事を返すと倒れるように横たわり毛布に包まった。
「とにかく、今は余計な事を考えずゆっくり休みましょう。怪我を治さない限り行動は起こしようがありませんから。」
「はっ、そうするべきだな。まずは損失した戦力を回復させて次の機会に備えるとしよう。」
闘争心を燃やすカティーアは軽く運動し凝り固まった肉体をほぐす。
腕や首、胴体を捻じる度、聞き心地の悪い骨の音が鳴る。

「あっ、カティーアさんもようやく意識を取り戻されたんですね。安心しました。」

横から弱気な声がしカティーアは鋭い眼差しを送った。
白い髪に犬の耳を生やした獣人の青年、クレイスが歩み寄って来る。
彼は薬瓶と少なめの夕食が乗ったプレートを運んでやって来たのだ。
それをベッドの横にあるテーブルに置くと一歩足を下がらせ一礼した。
「かたじけないなクレイス、随分顔色がよさそうだが体調は改善したのか?」
「は、はい!お陰様で!皆さんにご迷惑をかけてしまった事を大変申し訳なく思っています!」
クレイスは緊張を見え隠れさせながら返事を返した。
カティーアは僅かに顔をほころばせ
「相変わらず硬い性格だな。私達は仲間なんだ。もっと気軽に接してもいいんだぞ?」
「ぼ、僕はいつもそのつもりですけど・・・・・・」
クレイスも無意識に苦笑しボサボサの髪をかいて撫で下ろす。
「じゃあ、僕はこの辺で・・・・・・山積みになった仕事を片付けなければいけませんから。」
「・・・・・・ちょっと待て・・・・・・その、お前に言っておきたい大事な話がある。」
医務室から立ち去ろうした後ろ姿の彼をカティーアが呼び止める。
「・・・・・・?はい、何でしょう?」
ビクビクとした顔を振り向かせクレイスは再び彼女の傍へ戻った。
カティーアは彼の右手を優しく包み、真剣な表情で訴える。
「クレイス、私はまだ若いし存分に戦えるが戦に出ればいつ死してもおかしくない立場だ。もし、私の身に何かあったらその時はお前が代わりにあの子を・・・・・・ミシェルを守ってくれないか?」
突然の頼みにクレイスは"えっ?"と発した口を開けたまま何を言い返せばいいか戸惑う。
無意識に合わせた視線を後ろへ逸らすと2人の様子を心配そうに窺うジャスティンが視界に映る。

「頼む。あの子にちゃんとした世話をできるのはお前しかいないんだ。親友のルシールもいるがあの者はあまりにも幼過ぎる。」
「だけど、僕はカティーアさんほど強くないし・・・・・・戦闘だって得意じゃない・・・・・・守れる自信なんて・・・・・・」
「きっと大丈夫だ。賢さがあり自制心もあり皆から慕われている。気づいてないと思うがお前は自分が思っているより遥かに実力がある男だ。もっと己を力を信用しろ。」
「・・・・・・」
クレイスは照れているのか悩んでいるのかはっきりとしない面持ちで少しの間悩んだ。
やがて顔を上げると手を離さないカティーアを見下ろし
「すぐには"分かりました"なんて言えません・・・・・・ですが、カティーアさんの真剣な思い、深く胸に伝わりました・・・・・・確かにミシェルは僕にとっても大切な仲間です。あなたの言う通りあの子を守るべき者が必要なんだと思います。それに僕が相応しいのかは疑問ですが少し時間を与えてくれませんか?・・・・・・ゆっくり考えたいんです。」
それを聞きカティーアは厳しかった表情を緩め微笑み返した。
「ああ、無理に決断を下さなくても構わん。そして、1人だけで抱え込むな。他の者達を頼ってもいい。」
「ど、どうも・・・・・・じゃあ、さっきも言いましたけど多くの仕事が残ってますからそろそろ失礼させてもらいますね。」
クレイスは頼まれた役目を胸に抱え今度こそ医務室を後にする。
扉が閉まりその後ろ姿が見えなくなるまでカティーアは彼の背中を見送った。

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