ダーク・ファンタジー小説

黒いリコリスの教団【修正版】
日時: 2017/10/20 12:48
名前: シリアス

初めまして、シリアスでございます。
文章はいかにも素人ですがこんな私でもよければ・・・・・・
悪口や皮肉、いたずらコメントなどは決してしないでください。
舞台はファンタジージャンルがぴったりの11世紀の中世時代です。
天使や悪魔、魔法や錬金術などが存在し一部の人しか知られていないという設定。
主人公は秘密の教団『リコリス』の指導者として敵組織である『セラフィムの騎士団』の支配を終わらせるために戦うというストーリーです。

オリキャラを募集しておりましたがここで締め切りとさせて頂きます。
たくさんのキャラクターを提供してもらい深く感謝しています。
どうもありがとうございました!


登場人物

ルシール・アルスレン:本作の主人公。種族は人間と食人鬼のハーフ。
かつてルフレールの悲劇を終わらせた英雄のブレードガントレットを愛用している他、あらゆる武器を扱う事が可能。
14歳の少女ながらも剣技や暗殺などのスキルは抜群で仲間からの尊敬を集める。
リコリスの教団の長として仲間を率いセラフィムの騎士団と戦う。

ミシェル・ヴォーン:教団の一員でありルシールの親友である人間と魔女のハーフ。
特殊な魔族の家系を持ち魔女の魂を吸収し能力を向上させる特殊スキルを持つ。
幼い頃、ルシールと共に教団に加わって以来相棒として活動している。

ロベール:ルシールの右腕である老神父。種族は人間。教団のまとめ役で主に情報を団員に提供する。
彼もまたル・メヴェル教信者殺害事件の被害者であり娘を失った。
そのため犯人として騎士団を疑っているが命懸けの任務をルシール達に任せている事に心を痛めている。

ナザエル・ド・ラシャンス:セラフィムの騎士団の指導者。種族は人間。紳士的な態度で国民に接するが顔を覆い隠しており素顔を見た者はいない。騎士団の中でも謎が多い人物である。

クリスティア・ピサン:セラフィムの騎士団に所属するナザエルの右腕で組織のNo2。種族は『大天使』。
普段は淑女のように振る舞うが敵と失敗者には容赦しない非情な性格。
聖団の中でも右に出る者がいない程の才色兼備の持ち主。
武器はブレードガントレット『堕天使の審問』を愛用している。

キルエル:イスラフェル聖団の高位の大幹部を務める少女。種族は『大天使』。
明るく無邪気だがどんな非情な命令でも楽しそうに実行する残忍な性格で人間を見下している。
聖天弓フリューゲルを扱い敵の殺戮を楽しむ。


用語集

リコリス教団:イスラフェル聖団に不信を抱いた者達が集って結成された裏組織。ルシールが設立し教団のメンバーは聖団の実態を探ろうと活動している。組織の紋章は黒いリコリス。

セラフィムの騎士団:ルフレールの守護を宣言した組織。大半が天使で構成されており人間などの他種族はほとんどいない。治安維持のためルフレールを併合するが国民からの信頼は薄く良くない噂も流れている。組織の紋章は羽の生えた少女。

ルフレール:フランス西部に位置する架空の孤島。1192年にカトリック教会諸国の属国となりイスラム軍と戦った。文化を吸収され宗教対象がキリスト教となる。

ル・メヴェル教:ルフレールが属国となる前に崇拝されていた宗教。1192年に信仰を禁止されカトリック教会が建てられた。


……オリキャラ提供して頂いたお客様……

そーれんか様
つっきー様
Leia様
エノク・ヴォイニッチ様
リリコ様
Rose様
あいか様
ブレイン様

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Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.38 )
日時: 2017/12/30 21:51
名前: シリアス

「本当にここでお留守番してるつもりなのかい?」
ぽつんと立ち尽くすミシェルにルナリトナは言った。
異様な色の薬品が入った瓶の詰め合わせに金属線を繋げる。
「・・・・・・だって、恐いから・・・・・・私はルシール達みたいに強くないしさっきだって足手まといになった・・・・・・」
不安を隠せないミシェルは仲間に聞き返した。
「ルナリトナは恐くないの・・・・・・!?あんな強そうな相手が・・・・・・!?」
「・・・・・・」
ルナリトナはすぐには答えなかった。
何も言わず爆薬の準備を済ませ最後の点検を終えた。
立ち上がり彼女に振り替えると
「勿論、恐いよ。君と同じく号泣したいくらいにね。」
ルナリトナは泣く直前のミシェルに寄り添いそっと頭上に手を置いた。
「でもね、命懸けで戦う仲間を捨てて自分だけ助かるのはもっと嫌だ。そんな情けない生き方をするくらいならあっさりと殺された方がいい。」
「・・・・・・」
「ミシェル、君は何のために教団に加わったんだい?」
ミシェルは鼻を啜り涙を拭った。
言いにくそうに重い口をに開く。
「仲間のため・・・・・・正義のため・・・・・・」
その精一杯の一言にルナリトナは"ちゃんと分かってるじゃないか"と微笑む。
更に言葉を付け加えた。
「君は小さくても教団のNo2だ。僕達の大切な仲間でこれからもずっと必要になる。だから勇気を持って一緒に戦おう。皆が君を頼りにしているはずだ。」
「ぐすっ・・・・・・分かった・・・・・・!」
少女は剣を強く握りしめ頷いた。
ルナリトナはミシェルを短く抱きしめ
「役目を果たしたらすぐに助けに行くから。誰も死なせはしない!」
と背中を押し階段から姿が見えなくなるまで小さな仲間を見送った。
煙は晴れ上階はさっきっよりも静寂に包まれた。
床に広がるまだ生温い血の臭いが漂う。
「僕の方こそしっかりしなくちゃ・・・・・・じゃあ、始めるとするか・・・・・・」
大量に転がる死体の傍でルナリトナは緊張気味に呟いた。


一方、止まない歓声で賑やかな外では民衆に紛れる団員達が今か今かと待機していた。
落ち着きを失い武者震いする者、じっと開戦の瞬間を待つ者、奇襲部隊の安否を心配する者。
それぞれが違う思いを抱きながら戦いの幕開けを待ちわびていた。
「奇襲はまだか?あまり時間が経つとやる気が消え失せてしまうぞ。」
「大丈夫、ルシール達はきっと成し遂げてくれるさ。気楽にいこう。」
ソフィは戦いたい一心で腰に収めた双剣のグリップを握りしめる。
リクは冷静に腕を組みながら教会の上を見上げていた。
「ルナリトナ、現れないね?返り討ちにされて死んじゃったのかな?」
他の位置でリベアが退屈そうに愚痴を零す。
「いや、嬢ちゃん達は絶対に生きてる。賭けてもいい。」
「そうだよ。ルシールは強いしカティーアだっているから簡単にはやられないはず。」
ディーノもレナも同じ気持ちだった。
「あ!」
その時、リベアが何かに気づき教会の上を指差した。
2人もそれに反応し彼の指の先を見上げる。
すると教会の窓が開き中からルナリトナの姿が見えた。
彼女は大きな爆弾を抱えながら地上をこっそり覗いている。
今から持っている物を落とすつもりのようだ。
「間違いない!あれはルナリトナだ!」
「やり遂げてくれたか!」
ルシール達の成功を確信しリクとソフィが嬉しそうに叫んだ。
「リベア、レナ!武器の準備をして配置につけ!ちびっ子があれを落としたらすぐに奇襲を仕掛けるぞ!」
ディーノも隣にいた2人を促し自身も役目を果たすため人ごみを掻き分けて言った。
「とうとう始まるんだな・・・・・・!やばい、武者震いが止まらない・・・・・・!」
「リベア、死なないでね?」
団員達全員が民衆の中から抜け出し隠れて戦いに備える。
影からルナリトナのタイミングを見計らい戦いの火蓋が切って落とされる瞬間を待つ。

「さあ、パーティーの始まりだ!」
ルナリトナが高い位置から建物の入り口に向けて爆薬を投げ捨てた。
それは垂直に落下し見張りに立っていた2人の天使の間にドスンと打ち付けられる。
次の瞬間、中身の薬品に衝撃が伝わり大きな爆発を引き起こした。
眩い光を一瞬だけ放ち爆音、炎、黒煙を広範囲に広げた。
衝撃波の輪が教会の扉を粉砕、反対にいた民衆達が後ろに飛ぶように一気に倒れ込む。
その場にいた天使達は粉々になり消し飛んだ。
空に舞い上がった手足や肉、血が雨のように降り注ぐ。
爆発の近くにいた者は原形を留めずただの肉片と化した。
失った部位の傷口を押さえ悲痛に唸る天使も数人いた。
民衆達は前に広がる光景を見て何が起きたのか理解できず爆発の跡から視線を離さなかった。
だがすぐに状況を飲み込むと
「爆発だっ!教会が爆発したぞっ!!」
誰かが叫んだ。それが伝言ゲームのように全域に伝わる。
歓声に満ちていた建物付近は恐怖と混乱の地獄と化し人々はその場から逃げ出そうと前の列の人間を押し倒し踏みつける。
皆、自分の命を落としたくないと必死に人を掻き分け我先にと遠ざかる。
「敵襲だ!守りを固めろ!誰1人教会に侵入させるなっ!!」
敵の衛兵隊長が左右を交互に向き号令を呼びかける。
爆風の被害を免れた天使達がすぐさま建物の入り口に集まり彼を取り囲んだ。
全員が武器を構え守護の陣形を組むと前方を警戒する。
数分も経たないうちに人の群れは消え去っていく。
あれだけ多かった街はやがてすっかりと静かになった。
誰もいない無人の一帯で天使達が点々と立ち尽くしていた。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.39 )
日時: 2018/01/04 22:01
名前: シリアス

「くそっ!敵はどこから来る・・・・・・!?」
衛兵隊長が誰の姿もないあちこちを鋭い視線で睨む。
不意を突かれた天使達は突然の襲撃に怯えていた。
次はどんな攻撃を受けるか分からない戦況に震えを隠せなかった。
「オーバーフレアッ!!」
「ダークレインッ!!」
突如、誰かがどこからともなく攻撃魔法の呪文を大声で唱える。
天使達がその叫びのした方へ一斉に視線を向けたが既に手遅れだった。
灼熱の炎の竜と黒い無数の矢が天使達を襲い飲み込む。
「ぎゃああああ!!」
「ぐああっ!」
「ぎゃえっ!!」
生きた黒こげの塊が炎の中から這い出してきた。
全身を深く焼かれ美しかった容姿は最早どこにも見当たらない。
踊り狂うように動き回り最後は倒れて動かなくなった。
背中に生えた翼の羽がちりちりと灰と化す。
闇色の矢の雨は心臓や腹部、目や脳天に突き刺さり貫通した。
たちまち蜂の巣にされ傷穴から噴き出した血が地面に広がり深紅のアートを作り出した。
標的が死んでも尚、容赦なく死体に撃ち込まれる。
天使達はまたしても不意を突かれ抵抗する間もなく大半が死に絶える。
衛兵隊長も無残に殺され醜く変わり果てた肉体を晒した。
生き残った者は僅か、そのほとんどが致命傷で戦えなくなった負傷者達だった。

「今だ!一気に斬りかかれっ!」
ソフィとリクを先頭に隠れていた団員達がぞろぞろと飛び出した。
彼らは殺意の眼差しを向け劣勢の軍団に突撃する。
「教団に勝利をっ!!」
「ルフレールの自由のためにっ!」
教会の前は瞬く間に戦場となった。
互いの勢力による交戦が幕を開け殺し合いが始まった。
剣や槍が打ち合う甲高い金属音が鳴り響く。
「負傷兵や逃げる敵には構うな!歯向かう者とのみ戦え!」
勢いのいい斬撃をソフィが双剣で受け止める。
短い唾競り合いの後、相手の剣を弾き落として右手の剣を腹部に突き刺した。
刃は背中を貫通し白い戦服に血がじわじわと広がる。
うずくまったところをもう片方の剣で首を刺し止めを刺す。
「見事だソフィ!」
近くで見ていたリクが楽しそうに言った。
彼もまた自分の身長近くある大剣を振り回して天使達を蹴散らした。
「リベア!先頭に2人!」
「はいはい、言われなくても分かっているよ。」
リベアはおもむろに返事をして鞘に納めていた剣を抜いた。

「堕天使アプスキュリテが封印されし漆黒の魔剣の刃を目にした時がお前達の最期だ。」
天使達は捨て身の覚悟で同時に斬りかかる。
リベアは最初の攻撃を避け次も簡単にかわす。
敵が3度目を振り下ろそうした時、先手を打たれ剣は横にずらされた。
大きな隙を曝け出してしまい左の肩に刃がめり込む。
魔剣はそのまま肉を裂き心臓を真っ二つに切り裂く。
返した刃は片方の天使の顔を切り裂き惨い傷を作った。
顔面を押さえ悲痛の声を上げながら敵が背を向けても容赦せず取り押さえそのまま喉を切り裂く。
「こんな小規模な戦、私には物足りないな!」
楽しそうにレナも相棒に負けずと敵の剣を受け止める。
容易に打ち負かし一瞬の隙に聖剣を大振り、翼を見事に斬り落とす。
止めに剣を腹部に貫通させ思いきり投げ飛ばした。
「奇襲作戦は成功だ!これでルシール達も戦いやすくなるだろう!・・・・・・おっと!」
ディーノとクロムは大勢に囲まれていた。
八方から剣先を身体の手前に向けられ逃げ道はない。
それでも彼らは互いに背をつけ合い余裕の笑みをこぼしていた。
「ここが片付いたら急ぎ姉さん達のもとへ急ぎましょう!」
「そうするべきだろうな。だが、まずはここにいる鳩共を全員地獄に送ってからだ!」
2人は武器に魔力を込め呪文を叫び再び魔法を解き放つ。
光と闇が混ざり合い異質で強力な衝撃波が生み出された。
それは瞬く間に広がり包囲網を吹き飛ばす。


教会の中も騒然としていた。
優秀な兵士達でも予想すらしていなかった出来事に冷静さを失う。
そんな不況にも関わらずアルベルナは動こうともせずじっと跪いていた。
その場から離れず聖母の石像の前で祈りの姿勢を保ち続ける。
すぐ傍でダークエルフの護衛が仁王立ちしていた。
恐ろしいくらい動揺の素振りを見せず冷静だった。
「一体、誰が攻めてきたんだ!?この国の兵士達か!?」
落ち着きを失った天使達の話声が聞こえる。
「いや、レフレール政府は我ら騎士団の併合に同意したはずだ!そんなのはあり得ない!」
別の天使達が
「おい!外の状況はどうなってるんだ!?」
「分からん!戦火が激しくどちらが優勢なのか判断できん!」
「我々の命に代えてでもアルベルナ様をお守りするんだ!」
するとダークエルフが目を大きく開き自分より背の低い衛兵達を見下ろしながら
「お前達全員は外で戦っている味方の救援へ向かえ。」
と堂々とした声で命令した。
「し、しかし・・・・・・!」
「心配するな。私1人でアルベルナを十分に護衛できる。お前達の助けなど不要だ。」
「・・・・・・分かりました。」
言われた通り衛兵達は急ぎ外の救援へ出向き走り去っていく。
教会の広間はアルベルナとダークエルフだけが取り残された。
ルシール達はその様子を螺旋階段の影から窺っていた。
「どうやらメシアンの衛兵は全員いなくなったな。」
カティーアが広間を確認する。
「絶好調だね?勝利の女神のご加護がついてるんだよきっと。」
ルシールも後ろに着く仲間達の方を振り返り嬉しそうに言った。
「ここまであっさり上手くいくと逆に恐ろしいな。裏をかかれてるなんて事、なければいいが・・・・・・」
「このまま行きましょう。標的は目の前、またとないチャンスです。」
ジャスティンが弓に矢を乗せ皆を促す。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.40 )
日時: 2018/01/16 22:22
名前: シリアス

そこへミシェルが降りてやって来た。
短い剣をしっかりと握り締め必死に涙を抑えている。
ルシール達の視線が少しだけ彼女に向けられる。
そして全員が優しい笑みを浮かべた。
「ミシェルもやっとご到着だね。」
「結局逃げなかったのか?・・・・・・ふっ、お前なら来ると思っていた。」
カティーアは尊敬の目で妹同然の仲間を見下ろす。
頬に残った涙を拭い髪を撫で下ろした。
「ところでミシェルさん?ルナリトナさんは?」
ジャスティンが問いかける。
「爆弾を落としたからもうすぐ来ると思うよ?」
「そっか、じゃあ行こうか?」
ルシールは鞘から剣のグリップに手を伸ばし銀の刃を抜いた。
それに合わせるように皆が戦う準備を整える。
「いよいよ本番だね。皆、準備は出来た?」
「私はいつでも行けます。外で戦う皆さんのためにも負けられません。」
「ミシェル、私の前から出るな。分かったな?」

4人は螺旋階段の入り口から出て広間へ足を踏み入れ敵に姿をさらした。
油断を捨て武器を構えながらゆっくりと標的に近づていく。
教団の戦士達は横一列に並ぶと追い込む形で立ち塞がる。
「・・・・・・」
ダークエルフは沈黙したまま相手の動きをただ窺っていた。
まるで最初からルシール達の存在を認識していたかのような余裕に満ちている。
姿勢はそのままで攻撃態勢に移る気配はまだない。
だが、見つめられるだけで精神に圧力がかかる。
「アルベルナ・クディニー、ルフレール解放のため、お前の身柄を拘束する。」
ルシールが声を鋭くし刃先を彼女の背に向ける。
「・・・・・・やっと、来ましたね。待ちわびていましたよ。あなた達が来ることは最初から分かっていました。」
アルベルナは礼儀正しい口調で静かに言葉を発した。
目蓋を開けそびえ立つ石像をゆっくりと見上げる。
そして、組んでいた両手をほどき立ち上がった。
「私を拘束するだなんて野蛮、慈悲の欠片もありませんね?」
身体の向きを変えこれから剣を交える者達を睨みつけた。
宝石のように美しい緑の瞳に目の前の敵が映る。
だが、彼女は怒らず泣いていた。目から出た涙がそっと頬を伝っていく。
「あなた達は罪のない同胞達の命を奪った。彼らの苦しみの声が聞こえないのですか?」
「たわけた言い草だな。散々、他者を迫害しておきながら自分達だけは許されると思っているのか?」
カティーアは強気な態度で二歩、前を行き
「貴様ら天使共は罪なき多くの種族を虐殺した。魔女、エルフ、ドワーフ、獣人、無残に粛清された者達は数えきれん。それに飽き足らず今度は人間の欺き利用し支配を目論んでいる。その行為に加担している貴様は最早、大天使とは呼べん。ただの堕天使、れっきとした悪魔だ。」
と形相を鋭くし怒りの台詞を吐いた。
しかし、虐殺者呼ばわりされてもアルベルナは特にこれといった反応を示さなかった。

「・・・・・・言いたい事はそれだけですか?」
彼女は侮辱を差し置いて剣の鍔を指で押し上げた。
悲し気な顔色と視線を変えぬままグリップを握り鞘からゆっくりと抜いた。
幾度もの戦果を上げた聖剣の長い銀刃が姿を現す。
磨かれた鏡のように光を反射しそれは美しく輝いた。
ルシール達も相手の動きに合わせ全員が武器を構えた。
両者共、すぐには斬りかかろうとはせず睨み合いながら互いの様子を窺う。
隙を見せれば終わり、広く静かな空間に緊張感が漂う。
「待て、アルベルナ。」
ふとダークエルフが天使の名を呼び前に立ち塞がった。
護衛は背後を振り返える事なく
「最初に私に戦わせろ。お前を守る義務があるからな。」
「これは私の戦いです。同胞を殺した仇を討つのは大天使である私の役目。」
アルベルナは護衛の意見に納得しなかった。
おもむろに返事を返し前へ出ようとしたがダークエルフは手を差し向け止めさせる。
「先頭が主君、最後に護衛が戦に出向くと言うのは可笑しな話だろう?そのような情けない行為、暗殺者の長としての私の誇りが泣くと言うものだ。心配はいらん、こ奴らは少しは戦えるようだが所詮は自警団気取りの見習いに過ぎん。ほとんどが子供、私の敵ではない。」
ダークエルフは話の後半を嫌み口調に変えルシール達を見下す。

「ほう、見習いか・・・・・・このカティーア・ヴァイン=トレート、随分となめられたものだな?面白い、腕と脚を斬り離され両目を奪われてもその挑発を再び吐き捨てられるかどうか試してみるとしよう。」
カティーアは今すぐにでも戦いたい一心だった。
抑えきれない好戦の眼差し、斬り合いを楽しみとした笑った口、歯ぎしりを見せる。
血に濡れたレイピアを器用に振り回し巧みな剣の腕を知らしめた。
「私を殺したいなら殺せばいい。だが、私に挑んだ者達は大勢いたが全て返り討ちにされた。
大の男が女々しく命乞いをした時は笑いを堪えるのに必死だったぞ?」
嘲笑った笑みでダークエルフは丸腰に手を広げ余裕さをアピールする。
「あなたは天使じゃないよね?ダークエルフなんでしょ?」
今度はルシールが聞いた。
「よく分かったな?ちびっ子にしてはなかなか賢い。感心した・・・・・・がそれがどうかしたのか?」
からかわれたルシールは質問を続ける。
「あなたはエルフなのにどうして自分達を迫害した天使達に従っているの?」
ダークエルフは鼻で笑い真面目に問いかけた少女を見下ろし
「そんな事、聞いてどうする?冥土の土産にするつもりか?・・・・・・だがお前には中々の嬉しさを感じたぞ?褒美に少しだけ私の事を教えてやろう。」
ダークエルフは騎士団につく理由を語り始めた。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.41 )
日時: 2018/01/29 21:53
名前: シリアス

「至って単純だ。騎士団の理想に心酔したから彼らに加わった。ただそれだけだ。」
「本当にそれだけ?」
ルシールが訝しげに聞く。
するとダークエルフは意地悪そうに鼻で笑い
「まあ、もう1つ理由を付け加えるとしたら私は人間が嫌いなのだ。奴らの姿を目にしただけで腸が煮えくり返る。私の家族は種族の違いだけで無残にも奴らに殺された。その復讐のため暗殺者に身を落とし殺しの腕を騎士団に認められ今に至る訳だ。納得したか?」
「愛する者を殺された憎しみには同情するが、今の自分の立場を冷静になって考えてみろ。
その騎士団に協力する事によって家族を奪った悪と同じに成り下がっている事に気づかないのか?」
カティーアが皮肉を愚弄する形にして相手を責め立てる。
「何を言われようと構わないがあんな下等な連中と同じにされては困る。人間は無駄に争っては土地や文化を奪い暴力で支配する。だが、天使は違う。種族の頂点に立ち全ての生命に秩序や道徳をもたらすのだ。」
「罪のない人達を殺してもそんな事が言えるんですか?」
ジャスティンが厳しい目つきで怒りを台詞を口にする。
矢をつがえた弓の弦を更に引き絞った。
「あなた達の行為は殺戮や暴力とほとんど変わりません。どこにでもいるただの侵略者です。」
「ふん、正しい事を言っているつもりなのだろうがそんなのは我々に対するただの誹謗中傷に過ぎん。実にくだらん。」
ダークエルフは呆れ果てこれ以上議論する気がないのか力のないため息をつき突如、顔つきを一変させた。
睨まれただけで飢えた獣のような殺意が伝わってくる。
ルシール達は気迫に負け思わず後退りした。

「お前達とは剣を交える事でしか分かり合えないらしい。前もって言っておく。私は相手が子供だろうが決して容赦はしない。余計な情けを捨てるように訓練されたからな。例えばそこのガキ、まずはお前からあの世へ送ってやろう。」
ダークエルフはミシェルを見て口をにやけさせる。
腰に収めてあった2つのリング状の刃、チャクラムに手を伸ばすのが同時だった。
そして、その1つを瞬時に投げつけた。
「・・・・・・ひっ!」
風を斬る音を鳴らし、回るギロチンは宙を舞う。
ダークエルフの狙い通りはミシェル目掛けて飛んできた。
チャクラムは彼女の剣に当たり金属が交わる甲高い音が教会に響き木霊する。
計り知れない反動を受けミシェルは扉の方へ弾き飛ばされた。
仰向けに地面に倒され腰と背中を強く打ち付ける。
チャクラムは勢いを緩めずまるで生きているかのようにミシェルを追う。
「避けろミシェルッ!!」
カティーアが叫び駆け付けようとしたが間に合わない。
チャクラムは全身の痛みで起き上がれない彼女の上で止まり回転しながら落下した。
「・・・・・・くっ!」
ジャスティンが弓の狙いを変え矢を放つ。
一筋の光線がカティーアの横を飛んでいき先端がチャクラムに命中した。
刃は狙いが狂いミシェルのすぐ真横に刺さり地面を深く抉った。
「ルシールさん後ろ!」
そして振り向いて叫んだ。

ルシールが振り返るともう片方のチャクラムがかなりのスピードで飛んでくるのが見えた。
とっさの反応で剣で受け止め身体への直撃を防いだ。
それはやがて唾競り合いとなり大量の火花が飛び散る。
「・・・・・・ううっ!」
重苦しい痛みに両手の力が思うように入らずルシールは圧倒されていく。
剣を落としてしまえばチャクラムに肉を切り裂かれ真っ二つにされてしまう。
だが、永遠にはこの状態を保てない。打ち負かされるのも時間の問題だ。
「ルシール伏せろっ!」
その時、誰かが叫んだ。
声がした方向から宙を舞う何かが見えた。
それが何なのか理解したルシールは剣をチャクラムから離し飛び込むように地面に倒れ込んだ。
その瞬間、轟音と共に爆発が引き起こった。
黒煙と火、衝撃波が押し寄せ火薬の臭いが撒き散らされる。
ルシールを仕留めるはずだったチャクラムは破損し両方がダークエルフの手元に戻る。
彼女は何が怒ったのか分からず目を丸くした。
煙が晴れある人物が姿を現すまでは。
「やあ、お待たせ。ヒーローの登場だ。」
階段の出口で爆薬を振りかざすルナリトナがいた。
彼女は横たわるミシェルの方へ歩み寄る。
「立てるか?」
「ルナリトナ・・・・・・!」
「言っただろ?必ず助けに行くって。」
優しい笑みを作って嬉し泣きしそうなミシェルを見下ろした。
手を差し伸べ起き上がらせると2人は仲間の列に加わった。
「もう遅いよルナリトナ!」
「私も他の皆さんもあなたの到着を待ちわびていたんですよ?」
ルシール達は文句を言いながらも温かく歓迎する。
「あはは、ごめんごめん。爆弾を落としたのはよかったんだけど外で戦う皆が心配だったからちょっとだけ見物してたんだ。」
ルナリトナが呑気に笑って頭をかく。
腰のバッグから爆薬をもう1つ取り出し好戦的な目つきでダークエルフを睨む。
「僕のお手製の爆弾よく効くで。死にたいならかかってきな?命乞いだけなら聞いてやる。」
「・・・・・・」
ダークエルフは何も答えず左手に持つチャクラムを見つめた。
美しい鋼のリングにひびが入り滑らかだった刃もボロボロに砕けていた。
「私の・・・・・・」
するとぼそっと何かを言い出した。
「私の『相棒』に傷をつけたのはお前が初めてだ。・・・・・・鶏冠に来たぞ・・・・・・」

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.42 )
日時: 2018/02/13 21:13
名前: シリアス

ダークエルフはチャクラムを腰に腰に戻しルシール達に視線を向けた。
大切な武器を破壊されとうとう本気の怒りを露にしたらしい。
それはまるで殺すためだけに生きる魔物のような殺戮心の塊、今までとは全くの別人のようだ。
「どうやら相手は理性を捨てたみたいですね。」
敵の感情を察したジャスティンは弓を背負い武器を2つの拳に切り替え身構える。
「気をつけろ。奴は多彩な武器に扱い慣れている。次はどんな手段は使ってくるか分からん。」
カティーアも気を緩めずルシールを下がらせ前線に立つ。
戦服の袖でレイピアの血を拭い改めて銀色の刀身を向ける。
「生温い手加減はここまでだ。心底後悔しながら死んでいくんだな・・・・・・」
ダークエルフは気迫のある鋭い声で両腕を広げ
「我が名はナデージュダ・ペトラウシュ。無様に朽ち果てろ・・・・・・哀れな弱者共っ!!」
ナデージュダの手首の甲からいくつかのナイフが現れ手に滑り落ちるのが見えた。
それを指の間で掴み全てを一気に投げつける。
避けられようがない無数の鋭い先端がルシール達を襲う。
「・・・・・・ちっ!」
カティーアはレイピアを大振りしそれをいくつか弾いた。
獲物を仕留め損なった刃が甲高い音と共に散らばる。
ジャスティンは瞬時にルシールを庇い地面に伏せていた。
その上をナイフが通過する。

「危ないミシェ・・・・・・うぐっ!」
ルナリトナはミシェルを自身の身体で覆い盾となった。
1本のナイフが彼女に深々と突き刺さる。
「ルナリトナっ!!」
ミシェル真っ青な表情で叫んだ。
「よかった・・・・・・君に当たらなくて・・・・・・」
肩の肉を裂いたナイフを抜き余裕の笑みを浮かべた。
傷口からは黒い血が流れ服に染み込み広がった。
「うおお!!」 「やああ!!」
カティーアとジャスティンは反撃の隙を与えずナデージュダに飛び掛かる。
レイピアの斬撃と拳の打撃を同時に喰らわすが堅い何かに当たり火花が弾けた。
ナデージュダはにやりと不気味に笑っていた。
彼女の手前にクロスされた刀身が伸びている。
2人の攻撃は二刀のマチェーテで防がれていたのだ。
「なっ・・・・・・!?」
カティーアは驚愕し同時に唖然とした。
「言ったはずだ。お前達程度の輩など敵ではない事を。」
苦戦を感じさせない台詞を零しマチェーテを前に押しかける。
細い腕にも関わらず獣のような怪力だった。
「こいつ、化け物か・・・・・・!?」
どんなに本気を出して挑んでもびくともせず容易に追い込まれていく。

「いつまで馴れ馴れしく私にくっついているつもりだ?」
レイピアは弾かれ刀身をずらされる。
ナデージュダに打ち負かされたカティーアは頭突きをお見舞いされた。
岩に岩を打ちつけた惨い音、額に激痛と衝撃が加わり意識が遠のく。
そのまま後ろへ倒れるように怯んだ。
直後にジャスティンが蹴りを入れたがそれも難なくかわされてしまう。
止まない拳の雨を浴びせるものの全てマチェーテで受け止められる。
生身の皮膚と骨を金属に打ちつけたため彼女の手は痛々しく皮がめくれていた。
「なかなか素早い武術だが私には止まって見えるぞ?」
ナデージュダはジャスティンの拳を伏せてかわし同時に膝蹴りを当てた。
うずくまった彼女の首を鷲掴みし尖った爪を柔らかい皮膚に食い込ませる。
そして片手で軽々と持ち上げ容赦なく地面に叩きつけた。
「があっ・・・・・・!!」
全身を強く打ちつけられジャスティンは痛感の悲痛を上げた。
涙が溢れ途切れ途切れの唸りを吐きながら痙攣した。
「ジャ、ジャスティン・・・・・・!」
血が滲む痣を押さえカティーアはその惨劇を無力に眺めていた。
震えた手でレイピアを握りふらふらと立ち上がる。
「ほう、まさか起き上がるとは・・・・・・手心を加えず頭蓋骨に損傷を負わせたつもりだったが。
この弓使いのエルフよりもお前の方が楽しめそうだ。」

ナデージュダは見下した口ぶりで楽しそうに言った。
マチェーテを手の中で回し両方を構える。
頭部の傷に視界を遮られても尚、カティーアは抗いをやめる気はなかった。
「戦いの序章でくたばる戦士がどこにいる・・・・・・山積みになった天使の屍の上で教団の旗を掲げるまで私は死なん・・・・・・!」
「随分と威勢がいいな。だが、もうすぐここはお前達の死体置き場となろう。教会で死ねるとは運のいい奴らよ。それが済んだら外にいる反逆者共も皆殺しにしてやろう。」
「ふっ・・・・・・!彼らを侮ってもらっては困る。強大な敵に立ち向かう強さを持つ連中だ・・・・・・!甘く見てると醜い骸、晒す事になりぞ?」
「そうなるのは奴らの方かも知れんがな。」
ナデージュダはにやけていたが目は笑っていなかった。
マチェーテを向けたまま弱った相手に突っ込む。
風を斬り2本の刃はカティーアを挟み撃ちにする形で両側から振り下ろされる。

「ルナリトナ、大丈夫!?」
ルシールは前線を離れミシェル達の傍にいた。
慌てた深刻な目で負傷し横たわる仲間を見下ろす。
「心配してくれてありがとう・・・・・・大丈夫・・・・・・だよ・・・・・・?」
無理に平気に振る舞いに起き上がろうとするが
「・・・・・・あっ・・・・・・!」
全身の感覚を失いルナリトナは脚のバランスを崩した。
倒れる身体を2人がとっさに支える。
「やっぱり大丈夫じゃないよ!」
仲間を腕に抱えルシールは彼女の異変に気づいた。
顔色が青ざめ呼吸も激しく乱れ始めていた。
汗が止まらず手足も震えている。

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