ダーク・ファンタジー小説

黒いリコリスの教団【修正版】
日時: 2017/10/20 12:48
名前: シリアス

初めまして、シリアスでございます。
文章はいかにも素人ですがこんな私でもよければ・・・・・・
悪口や皮肉、いたずらコメントなどは決してしないでください。
舞台はファンタジージャンルがぴったりの11世紀の中世時代です。
天使や悪魔、魔法や錬金術などが存在し一部の人しか知られていないという設定。
主人公は秘密の教団『リコリス』の指導者として敵組織である『セラフィムの騎士団』の支配を終わらせるために戦うというストーリーです。

オリキャラを募集しておりましたがここで締め切りとさせて頂きます。
たくさんのキャラクターを提供してもらい深く感謝しています。
どうもありがとうございました!


登場人物

ルシール・アルスレン:本作の主人公。種族は人間と食人鬼のハーフ。
かつてルフレールの悲劇を終わらせた英雄のブレードガントレットを愛用している他、あらゆる武器を扱う事が可能。
14歳の少女ながらも剣技や暗殺などのスキルは抜群で仲間からの尊敬を集める。
リコリスの教団の長として仲間を率いセラフィムの騎士団と戦う。

ミシェル・ヴォーン:教団の一員でありルシールの親友である人間と魔女のハーフ。
特殊な魔族の家系を持ち魔女の魂を吸収し能力を向上させる特殊スキルを持つ。
幼い頃、ルシールと共に教団に加わって以来相棒として活動している。

ロベール:ルシールの右腕である老神父。種族は人間。教団のまとめ役で主に情報を団員に提供する。
彼もまたル・メヴェル教信者殺害事件の被害者であり娘を失った。
そのため犯人として騎士団を疑っているが命懸けの任務をルシール達に任せている事に心を痛めている。

ナザエル・ド・ラシャンス:セラフィムの騎士団の指導者。種族は人間。紳士的な態度で国民に接するが顔を覆い隠しており素顔を見た者はいない。騎士団の中でも謎が多い人物である。

クリスティア・ピサン:セラフィムの騎士団に所属するナザエルの右腕で組織のNo2。種族は『大天使』。
普段は淑女のように振る舞うが敵と失敗者には容赦しない非情な性格。
聖団の中でも右に出る者がいない程の才色兼備の持ち主。
武器はブレードガントレット『堕天使の審問』を愛用している。

キルエル:イスラフェル聖団の高位の大幹部を務める少女。種族は『大天使』。
明るく無邪気だがどんな非情な命令でも楽しそうに実行する残忍な性格で人間を見下している。
聖天弓フリューゲルを扱い敵の殺戮を楽しむ。


用語集

リコリス教団:イスラフェル聖団に不信を抱いた者達が集って結成された裏組織。ルシールが設立し教団のメンバーは聖団の実態を探ろうと活動している。組織の紋章は黒いリコリス。

セラフィムの騎士団:ルフレールの守護を宣言した組織。大半が天使で構成されており人間などの他種族はほとんどいない。治安維持のためルフレールを併合するが国民からの信頼は薄く良くない噂も流れている。組織の紋章は羽の生えた少女。

ルフレール:フランス西部に位置する架空の孤島。1192年にカトリック教会諸国の属国となりイスラム軍と戦った。文化を吸収され宗教対象がキリスト教となる。

ル・メヴェル教:ルフレールが属国となる前に崇拝されていた宗教。1192年に信仰を禁止されカトリック教会が建てられた。


……オリキャラ提供して頂いたお客様……

そーれんか様
つっきー様
Leia様
エノク・ヴォイニッチ様
リリコ様
Rose様
あいか様
ブレイン様

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Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.44 )
日時: 2018/04/02 07:03
名前: シリアス

「あああああああっ!!」
カティーアは両肩と上の胸部を斬られ絶叫した。
気迫を持ち堂々としていた面影は消え女々しく跪き胸を押さえうずくまる。
止まらず流れ出る深紅の体液が滴り血の池が広がる。
「やはり口先だけの見掛け倒しか・・・・・・少しは私を手こずらせてくれると期待していたんだが。」
「はあはあ・・・・・・ぐぁっ・・・・・・!」
カティーアは悔しそうに顔をしかめながら相手を見上げる。
はっきりとはしなかったがやられた自分を勝ち誇った笑みで見下ろしている・・・・・・それだけは分かった。
「暇つぶしに付き合ってくれた褒美だ。まずはお前から楽にしてやろう。」
ナデージュダが右手のマチェーテを振り上げる。
「ミシェル・・・・・・!」
カティーアは親しい仲間の名を口にする。
目をぎゅっとつぶりあっけない死を覚悟した。

「さらばだ。」
力強く勢いを入れたが刃は振り下ろされなかった。
何故ならダークエルフ目掛けて何かが飛んできたからだ。
酒瓶のような無色透明の容器、火がついていない火炎瓶だった。
ナデージュダはおもむろな素振りで投擲武器を容易く切り裂いた。
瓶は横に真っ二つに割れ中身が切り口から零れ出る。
同時に火花が液体に触れ引火、彼女の背後で一瞬で燃え広がり火の海と化した。
「ほう・・・・・・」
ちらっと燃え盛る火を真顔で眺めすぐに正面を向く。
剣を構え立ち塞がるルシールとミシェルの姿があった。
ナデージュダは幼い子供を見て呆れた苦笑をした。
「まだいたのか?とっくに逃げたのかと思ったぞ?」
皮肉を気にせずルシールはナデージュダをキッと睨む。
「仲間を置いて逃げる訳がない!ナデージュダ、私はお前を倒す!」
威勢のいいナデージュダは静かに面白おかしく笑った。
「たかがガキであるお前達が私を倒すだと?子供は夢があって可愛いものだ。しかしだな、お前はともかくそこのミシェルというガキは怯え切っているぞ?私が前に出たら一直線に逃げるだろう。」
「わ、私は逃げない!お前なんかカティーアお姉ちゃんと比べたら全然恐くない!すぐにやっつけてやる!」
ミシェルも恐怖を押し殺し強気に言い張る。
「ミシェル・・・・・・!」
「そうか・・・・・・お前らの脆い勇気は伝わった。」
やる気がない生返事をしてナデージュダは二刀のマチェーテを鞘に収める。
顔に浴びた返り血を拭い今度は腰に吊るした鉤爪を取り両手にはめ金属の爪をギラつかせる。
そして動けないカティーアの頭部を思いきり蹴とばし隅へと追いやった。

「お姉ちゃんっ・・・・・・!!」
「フィールドを掃除した。これで戦いやすくなっただろう?」
ナデージュダは首を傾げ猟奇的な笑みを浮かべる。
「うわあああああっ!!」
ミシェルは怒りに狂い突っ込んだ。
振りかざした剣を力の限り斜めに振り下ろす。
幼子の腕とは思えない素早い一撃だが前に出された左手で容易に防がれた。
刀身は爪ではなく間である隙間の手甲で受け止められていた。
銀の光を放つ鋼でできており大剣を通さない程硬い。
分厚く作られているため衝撃すら与えられない特性を持つ。
「お前だけはっ・・・・・・!」
ミシェルは理性の切れた気迫をぶつける。
無力と知りながらも圧倒的な力に抗う。
「くくっ、ただの足手まといだと思っていたが・・・・・・見直したぞ?・・・・・・しかし・・・・・・」
ナデージュダ悪巧みな笑みを浮かべいきなり手をぐるりと回転させた。
手首が捻られ強制的に曲げられる。
ミシェルの剣はかぎ爪に絡め取られ武装を解かれた。
「まずは子供1人。」
そして右手のかぎ爪が振り下ろされ・・・・・・ミシェルに当たらなかった。
無数の細長いの刃は彼女の頬の数センチ前で止まっていた。
間に剣が差し込まれている。
「ルシール!」
ルシールが危機一髪、直撃を免れさせていたのだ。
「1人で突っ込むなんて危ないよ。どんな時も冷静に仲間と一緒に行動しなきゃ。」
重い圧力を支えながらにっこりと微笑んだ。

「ふん、ガキの友情ごっこなど虫唾が走るだけだ。」
ナデージュダは鼻で笑い見下した態度を取った。
更に力を加えルシールとミシェルを数メートル先に弾き飛ばす。
「うわあっ!」 「きゃあっ!」
2人は広間に投げ出され地面を転がり回った。
「子供は弱過ぎて相手にならん。まともにやり合っていたらこっちの腕が鈍ってしまう。」
そして嫌味を吐き捨てた。
「うう・・・・・・」
ルシールは全身の痛みに耐え何とか立ち上がった。
隣に倒れていたミシェルの肩を抱く。
「ミシェル、大丈夫・・・・・・?」
「もう嫌だ・・・・・・私達はここで死んじゃうのかな・・・・・・?」
「絶望するのだけはよそう?外では皆が今も諦めずに戦ってる。教団の勝利を信じているんだ。」
同じ信条を歩む仲間の事を口にし必死に励ます。
余裕に振る舞っているがルシール自身も本当は不安で仕方なかった。
まわりに広がる悲惨な光景を見なくても勝ち目がない事は十分に承知していた。

「でも、カティーアお姉ちゃんもジャスティンもあいつを傷つける事すら出来なかった・・・・・・私達になんてもっと無理だよ・・・・・・」
「そうだね。多分ではなく間違いなくあいつに正攻法は通用しない。だからこそ奥の手を使う。」
「奥の手・・・・・・!?」
「そう、これは一か八かの賭けだから今から話す事をよく聞いて。」
ルシールは顔に顔を寄せ耳元で囁いた。
「私があいつに一騎打ちを仕掛けて時間を稼ぐからミシェルは『アレ』を使って。上手く命中させたらあとはこっちの思う壺だよ。」
「アレってまさか・・・・・・無茶だよ!アレは強力な秘法で一度しか使えないし時間が掛かる!」
ミシェルは強く反対したが
「このままだと私達は本当に殺されてしまう。外にいる皆だっていつ援軍に来れるかなんて分からない。お願いミシェル、君が最後の切り札なんだ。」
「・・・・・・」
彼女は自信がなかった。
未熟な自分そのものがプレッシャーになっていたのだ。
しかし、このまま行けばこちらは確実に全滅する。それも時間の問題だ。
悩み抜いて選んだ決断をミシェルは重い口を開いて伝える。
「・・・・・・分かった。でも約束して?絶対に死なないでね?」
「何当たり前の事言ってるの?君がいるから私は死なない。友達を絶対に1人にさせないよ。」

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.45 )
日時: 2018/04/05 20:24
名前: シリアス

「血迷ったか?不利な状況にも関わらず丸腰で挑むとは・・・・・・」
「丸腰じゃないよ。こっちには切り札があるんだから。」
ルシールは堂々と言い張った。
恐れた素振りを見せず再びナデージュダの前に立ちはだかる。
「2人係で来なくて大丈夫なのか?もっとも後ろにいるお前の友人は足手まといになるだけだろうが。」
「その大口、二度と叩けないようにしてやる。」
ルシールは怒りがこもった口調で両腕を構える。
「ナデージュダ、私はこの戦いでお前との決着をつけるつもりだよ。だからお前も本気でかかって来い。」
それを聞いてナデージュダはせせら笑った。
少し経って笑い疲れて息を吐き出した。
「お前にはやる気が溢れているな。その活気は買ってやろう。・・・・・・だがな、剣もろくに握れぬガキが生意気な事ほざくんじゃないっ!」
愉快だった態度は一変しナデージュダは怒鳴り声を上げた。
殺意に満ちた表情に戻し容赦なく突っ込む。
かぎ爪を持つ両腕を広げ両側から切り刻もうとした。

ルシールはバックステップで挟み撃ちをかわす。
標的を仕留め損なったかぎ爪は双方共重なり甲高い音と火花を散らした。
後ろに滑る足を地面に手を当て止める。そして反撃に向かう。
こちらが攻撃する前にナデージュダはすぐに次の一手をかます。
重く振り下ろされた手形の刃をルシールはまたも器用に回避した。
その直後、片方のかぎ爪が顔に押し寄せて来るのが見えた。
今の回避で大きな隙を作ったため次を避ける事は不可能だった。
鋼の爪は風を斬る音を鳴らし素早く迫り命中した・・・・・・が飛び散ったのは血ではなかった。
「何・・・・・・?」
ナデージュダは意外そうな顔をした。
自身の大きな武器を小さなナイフが受け止めている。
ルシールは腕をクロスしブレードガントレットを使い間一髪防いでいたのだ。
彼女は驚く敵を見上げ微笑んだ。
「まさかそんな物を隠し持っていたとは・・・・・・それがお前の切り札か?」
「まあ、そんなところ。」
ルシールはいい加減な返事を返した。
「命拾いをしたものよ。しかし、その細い刃はじきに折れる。その時がお前の最期だ。」
「そんなに心配しないで?切り札はまだあるから。」


一方、ミシェルは膝をつき少し間を開け両手を重ねていた。
汗が滴る真剣な表情、目をつぶり何かを囁いていた。
「予言を告げる聖なる魔女、濡れ衣を着せられ迫害の地へ堕ちる・・・・・・」
すると手の間に紫の禍々しい球体が生まれた。
光に包まれそれは次第に膨らみ輝きを増す。
「されど、魔女は地の底から這い上がり慈悲を求め彷徨い嘆いた・・・・・・」
ミシェルの手に聖痕が浮かび上がりやがて全身に広がった。
「魔女を造りしは聖なる神の慈悲・・・・・・そして・・・・・・ぐっ!?」
その時、全身に激痛が走る。
強力な魔法の作用が幼い身体を蝕んでいるのだ。
刻まれた紋章からは焼けるような感覚が伝わってくる。
(痛いけど倒れるわけにはいかない・・・・・・!私が失敗すればルシールが・・・・・・どうか持ちこたえて・・・・・・!)
「迫害に明け暮れし人々の黒い罪・・・・・・されど因果は巡る・・・・・・」


「降参したらどうだ?私は非情だが慈悲深い。素直に負けを認めれば楽に殺してやってもいいぞ?」
ナデージュダは重いかぎ爪に更に力を加える。
力の差は誰が判断しても歴然、幼いルシールは徐々に押されていく。
このまま打ち負かされるのも時間の問題だった。
「そろそろ限界か?刃が折れるかお前の手が折れるか、どちらが先か楽しみだ。」
「残念だけどそのどちらでもないよ。」
圧し掛かる痛みに耐えルシールは言った。
防御をガントレットが付いた右手に任せ左手をポーチに入れた。
ルナリトナから渡されたスモークを取り出し相手に一瞬見せつけた。
指をリングにかけ安全ピンを外す。
脅威を感じたナデージュダは攻撃を中断し後ろへ下がった。
その直後、噴射口から白い煙が音を立て絶えず噴出された。
煙幕は瞬く間に広がりルシールを包み込む。
彼女の姿は影さえも見えなくなった。
「小癪な!」
ナデージュダも恐れをなさず煙の中へ消えた。
「姑息な手など使いおって!どこにいる!?出て来い!」
どこを向いても白い世界があるだけだった。
ルシールの居場所が分からないまま闇雲に武器を振るう。
すると気配を感じた背後を振り向いた時

「・・・・・・ぐっ!?」
その時、鋭い激痛を感じた。
右肩を寄せると皮膚が細長く裂かれ血が出ていた。
「これはジャスティンの分・・・・・・」
煙のどこからかルシールの声がした。やはり姿は見えない。
不意を突かれたナデージュダは舌打ちし声がする方を向いた。
すぐさま後を追いかけようしたが
「・・・・・・があっ!」
ナデージュダがまたも痛感に声を上げてしまう。
身体のバランスを崩し情けなく跪いた。
今度は脚を傷つけられ動きを止められる。
「これはカティーアの分・・・・・・」
「おのれ・・・・・・!」
煙で為す術のないナデージュダはかぎ爪を杖代わりによろよろと立ち上がる。
顔を上げた瞬間、
「!」
目の前にルシールが立っていた。
睨んだ赤い瞳でこちらを見上げ手甲のブレードを構えている。
彼女は容赦なく迫った。
「これはルナリトナの分だっ!」
ルシールは叫びブレードの出した手を相手の腹部目掛けて押し寄せる。
だが、ナデージュダも同じく手の平を向けていた。
黒く浮かび上がった得体の知れない刻印が目に飛び込む。
それは真っ赤に染まり始め火が放たれる。
炎は渦巻く形で舞い上がり2人を飲み込んだ。
盛大に燃え上がり目障りな煙幕は一瞬にしてかき消された。
焼けた跡からは熱が残りその場だけが暑さで朦朧としていた。
立ち上る黒煙、焦げ臭い臭いが漂う。煙が晴れ2人の姿が見えた。
ナデージュダはそのままの姿勢、ルシールは瞬時に顔を腕で覆っていた。
彼女の身体は数ヶ所が燃え服がボロボロに焼け落ちている。
肌が露出していた手や脚も酷い火傷を負っていた。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.46 )
日時: 2018/05/05 09:28
名前: シリアス

「はあはあ・・・・・・」 「はあはあ・・・・・・」
互いを手こずらせた両者は早い呼吸を繰り返した。
弱みも隙も見せず睨み合っていた。
「はあ、まさか・・・・・・たかがガキに黒魔術を使う羽目に・・・・・・はあ・・・・・・なるとはな・・・・・・」
ナデージュダは好敵手と出会えたような言い方で感心の面持ちを顔に出した。
刻印のある手を地面に降ろし軽く愉快に笑った。
「私、こう見えても強いんだよ・・・・・・?子供だってやれば出来るんだ・・・・・・」
ルシールも壮絶な殺し合いを楽しんでいる口調だった。
優しく微笑み返し苦しく咳を吐き出した。
「ちょっとは見直した・・・・・・しかし、その幼い身体、最早体力は限界だろう?この一騎打ち、私の勝ちだ・・・・・・惜しかったな?」
ナデージュダはそう言ったがルシールは素直に頷く事はなかった。
逆にその発言を自信ありげに否定する。
「残念だけどあなたの負けだよ・・・・・・もう勝負は着いてる・・・・・・」
「・・・・・・何!?」
ナデージュダは表情を少し歪ませた。
何を言っているのか?理解するのに数秒の時間を費やした。
言葉の意味を察しとっさに後ろを振り返った・・・・・・が手遅れだった。
ミシェルは呪文を唱え終えていた。
禍々しく輝く妖星と化した魔の球体を放った。
球体は弾け棘の波がナデージュダに押し寄せる。
それは彼女を取り囲み瞬く間に全身を縛り上げた。
鋭くて硬く太い棘が皮膚に食い込み身体を圧迫する。
「ぎゃあああああああああ!!」
ナデージュダが悲鳴を上げる。
もがけばもがくほど棘は強く閉まり苦痛が増す。

「L'execution de la sorciere(魔女の処刑台)・・・・・・一族に伝わる古の魔法・・・・・・断罪の鎖に巻きつかれた者は決して逃げられない・・・・・・」
弱った力を振り絞りミシェルは声を鋭くして言った。
彼女は魔力を使い果たし僅かな気力を失った。
役目を成し遂げうつ伏せに倒れる。
「・・・・・・このガキは・・・・・・私に魔法を喰らわすための時間稼ぎだったというのか・・・・・・!」
自由を奪われた身体で抗ってもびくともしない。
子供相手にまんまと踊らされ罠にはまったナデージュダは最早、手も足も出なかった。
不覚を取ってしまい敗北した事実に悔しさと屈辱を抱かずにはいられなかった。
「そういう事、戦いは剣で斬り合うだけじゃない。いかに頭を使い相手を陥れるか・・・・・・だよ?」
ルシールがそう言って歩み寄って来た。
拘束されたナデージュダの前で立ち止まりガントレットからブレードを剥き出しにする。
「この私をここまで追い詰めるとは・・・・・・お前は一体・・・・・・!?」
「私?・・・・・・私はこの国を守護する教団の長、ルシール・アルスレン・・・・・・あの世へ行っても忘れないでね?」
ルシールは容赦ない止めの一撃を相手の腹部へお見舞いした。
ブレードは止まる事なく体内の奥深くまで肉を裂いて突き進む。
「がああああああっ・・・・・・あっ・・・・・・あ・・・・・・」
ナデージュダはこの世のものとは思えない悲痛の声を上げた。
地獄で悶えるような唸り、一種の雑音のように聞こえる。
意識が遠のき視界が黒く染まっていく。
瞳孔をぐるりと上にやりやがて険しい顔が垂れて動かなくなった。
「あれ?死なずに気絶しちゃったか・・・・・・これでも生きてるなんて。」
ルシールは少し驚きながらもブレードを引き抜く。
同時に魔法が解け失神したナデージュダは地面に叩きつけられた。
「護衛の始末は終わった・・・・・・後は・・・・・・」

ルシールは落ちていた聖剣を拾い睨んだ顔を振り向かせる。
高くそびえるマリアの像の前に今までの戦いの一部始終を見届けた標的がいた。
「今度こそお前の番だアルベルナ。覚悟しろ。」
遠い位置から剣先を向けられアルベルナはくすっと笑った。
「まさかナデージュダを倒すとは・・・・・・私は少しあなた達を見くびっていたのかも知れませんね。しかし、ボロボロのあなた1人で私を倒せますか?天使は慈悲深い種族ですが戦いに手加減はしませんよ?まあ、あなた達はどの道ここで天に召される運命ですが。」
アルベルナも大人の身長程長い刀身を軽々と中段に構えた。
瞳に浮かんだ優しさを非情に変えルシールを睨む。
大天使の翼を大きく羽ばたかせ威圧を与える。
(ナデージュダよりも遥かに凄まじい闘気だ・・・・・・どこにも攻め入る隙がない・・・・・・それに私も長く持ちそうにない・・・・・・せめて・・・・・・)
ルシールが死を覚悟した時

「ルシール!」

彼女の後ろで誰かが叫んだ。
振り向くとディーノが駆けつけて来た。
彼だけじゃない。ソフィやリク、リベアやレナ、クロムも一緒だった。
教団のメンバー全員が無事に外の敵を片付けルシール達奇襲部隊に合流したのだ。
「ディーノ・・・・・・!ソフィ、リベアも無事だったんだね・・・・・・!?」
「ああ、こっちの戦いは退屈過ぎてつまらなかった。奇襲部隊として君達と一緒に行った方が楽しめただろうね。」
リベアが余裕の笑みを零しながら言った。
「ルシール、生き残ったのはお前だけか?一緒にいた者達はどうした?それにそのダークエルフは誰なんだ?」
ソフィは気を失っているミシェルを抱き上げいくつも質問を浴びせる。
「そいつはアルベルナの護衛をしていたナデージュダという暗殺者、そいつに苦戦して皆、怪我をしてしまったの。でも、全員生きてるよ。」
「最悪な事態だけど奇跡と解釈した方がよさそうだね。流石ルシール、仲間を1人も死なせずに済んだ。」
リクが優秀なリーダーシップに感心しルシールの頭を撫でる。
「姉さん達をこんな目に遭わせて・・・・・・殺さない代わりに存分にいたぶってやる!」
「俺のこの魔剣で切り刻んでこの教会を血で染め上げてやるよ。」
「私達もいささか腹が立った。暴力は嫌いだけど少し理性を捨てちゃおうか。」

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.47 )
日時: 2018/05/06 21:44
名前: シリアス

ディーノ、クロム、リベア、レナが怒りを露にし先鋒に立って武器を構える。
「奇襲部隊の働き、大義だった。今までの戦いでかなり疲れた事だろう。嬢ちゃん、後は俺達に任せて後ろに下がっているんだ。」
剣を収めずルシールは頷かなかった。
頭を横に振り彼らの間に並んだ。
「私も最後まで皆と一緒に戦いたい!どうしてもあいつに勝ちたい!」
「そうか、嬢ちゃんの熱意はどこまでも篤いな。じゃあ、1つだけ約束してくれ。絶対に無理はしないと。」
「うん。分かった。」
教団のメンバー全員がずらりと横に並んだ。
包囲網の形式で標的の前を塞ぎ逃げ場をなくす。
そして、相手の出方を窺いながらじりじりと距離を縮め標的に迫る。
徐々に追い詰められていくにも関わらずアルベルナは一歩も下がらなかった。
逆に不利な状況を楽しんでいるのか
「どんなに束になってこようが私の前では脆い羊皮紙と同じ、無様な返り討ちを演じさせてあげましょう。」
彼女の持つ聖剣に白い羽のオーラが渦巻くように立ち込め魔力がこもる。
短かった鍔は十字架の形状へと変異を遂げる。
ただせさえ長かった刀身は更に長く伸び輝きを増す。
それを一度大きく振り回し再び正面に構えた。
「天使とは思えない戦意の気迫がここまで伝わって来る・・・・・・無傷での捕縛は多分無理だな・・・・・・」
ディーノは苦い顔でカードから雷獣を手前に召喚する。
ソフィもリクも武器を強く握りしめ決して標的から視線を逸らさなかった。
余計な考えは捨てこれから起こるであろう死闘に集中する。
アルベルナは瞬時に武器構えを切り替え槍のような剣先の狙いを襲撃者に定める。
教団の戦士達を威嚇し一歩、足を後ろへ下がらせる。
怯んだその瞬間を好機に一気に駆け出した。
「来るぞ!」
クロムが杖に炎を纏わせ叫んだ時だった。


「・・・・・・ぐぉっ!」


アルベルナが何かを吐き出したような聞き心地の悪い低い声を漏らし身体を硬直させた。
それを合図に猛牛の如く素早い突進は途中で中断される。
聖剣を落としふらふらと彷徨いやがて膝を下ろした。
祈りに似た姿勢で身体を縮こませ苦しそうに鎧で覆われた胸を押さえている。
突然の異変に教団側は何が起こったのか理解できなかった。
彼らは互いに丸くした目を合わせ再びうずくまるアルベルナに視線を戻した。
彼女の異様な行動をじっと眺める。
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
直後、アルベルナがこの世のものとは思えない絶叫を上げる。
泣き叫ぶ口から大量の血が噴水のように吐き出された。
「!」 「!」 「!」 「!」 「!」
惨劇を見てルシール達は訳が分からないまま凍りついた。
よく見ると彼女の胸元からスピアとも言える巨大なが槍先が突き出ていた。
それは無慈悲にも心臓に大穴を空け強固な鎧、傷口を押さえる手を貫通している。
誰かが背後から不意を突いたのだ。
「あ・・・・・・ああ・・・・・・あ・・・・・・あ・・・・・・」
アルベルナは白く美しかった顔半分を赤く染め短く唸った。
生温かい体液を垂れ流し耐え難い痛感に涙を溢れさせる。
そして、再び吐血しながら咳き込み無様に倒れ動かなくなった。
「あはははははははは!」
天井の方に狂気じみた無邪気な笑い声を響かせる大天使がいた。
大きな翼を羽ばたかせてこちらを見下ろしている。
左手には聖天弓を構え矢を放った直後の姿勢が僅かに残っていた。
「も〜う、アルベルナちゃんったらこんなザコ共に苦戦しちゃって〜。白銀の聖女が聞いて呆れちゃうな。」
教会にアルベルナが訪れた際、行動を共にしていたキルエルだった。
援軍に訪れた訳じゃないらしく配下の衛兵はいない。いるのは彼女1人だ。
最初からこうするつもりでやって来たのだろう。

「こ、こいつ、自分の仲間を!」
悪魔とも呼べる凶行にソフィが天使には見えないキルエルを見上げた。
リベアも同じ怒りの形相で魔剣を震わせる。
「信じられない・・・・・・これが天使のやる事か・・・・・・」
「アルベルナちゃんはね、騎士団に相応しいとはお世辞に言えない子だった。もっと一緒にいたかったけど役立たずはいらないんだよね〜。だ〜か〜ら〜、苦しまない死刑に処してあげちゃいました〜。私ってホント慈悲深いよね〜。」
「インフェルノトルネード!!」 「エレクトロボルト!!」
クロムとディーノが怒鳴り強力な属性魔法をキルエルに浴びせた。
攻撃は見事に命中した・・・・・・だが
「何それ?もしかして私を殺すつもりだった?」
キルエルは2つの強力な魔術を容易く防いでいた。
まるで何事もなかったように傷すらついていない聖天弓から見下した笑顔を覗かせる。
「言っとくけど、エデンの熾天使にはそんな攻撃通用しませ〜ん。仮にあなた達が100人いたとしても惨敗するだけだよ?」
「くっ・・・・・・!」
ルシールは無力に彼女を睨み悔しそうに唇を噛む。
他の精鋭達も為す術がなかった。
「あなた達の人生をここで終わらせてもよかったんだけれど私、基本弱い者いじめは嫌いだから今日は特別に見逃してあげる。今日ここで起こった戦いを勝利と捉えてるのも負けと捉えるのも自由、それじゃあまたいつか。」
「・・・・・・待て!」
教会を飛び去ろうとするキルエルをルシールが呼び止める。
「どうしたのお嬢ちゃん?何か言いたい事でもあるの?」
「どうして・・・・・・かけがえのない友達にこんな酷い事が出来る・・・・・・!?」
するとキルエルは"う〜ん・・・・・・"と実にくだらなそうに唸った。
「あなた、たちの悪い勘違いしてるよ。この子は友達でも何でもないしただの下等な捨て駒。そんな奴に情けをかける必要なんてないでしょ?」
非情極まりない台詞を吐き捨てキルエルは去って行った。

Re: 黒いリコリスの教団【修正版】 ( No.48 )
日時: 2018/05/15 20:30
名前: シリアス

戦いは終わった。
戦場の舞台となった教会は静寂に包まれる。
大量の天使の死体、負傷した教団の精鋭、両陣営の戦士が横たわっていた。
「作戦は失敗だな・・・・・・」
ソフィが平静を保ち双剣を鞘に収め下を向いた。
しかし、無念の表情からは強い悔しさが感じ取れる。
リクが慰めるように彼女の肩に手を乗せる。
「皆、よく頑張ったよ・・・・・・誰も死なずにここまでやれた事、誇りに思う。」
「くそっ!これじゃ姉さんやカティーアさんの努力は無駄じゃないかっ!」
クロムが望んでなかった結末に納得しきれず怒りを吐き捨てた。
持っていた杖を地面に叩きつけ広い空間にさえない音を響かせる。
「クロム落ち着きなよ!」
リベアも必死になって彼を宥める。
「だってこんなの・・・・・・!」
「悔しいのは君だけじゃない!ここにいる皆が同じ気持ちなんだ!」
「もう一歩のところだったのに・・・・・・!ふざけるな・・・・・・!」
クロムは怒りをぶつける矛先が分からないまま座り込んでしまう。
髪をかきむしり拳を地面に叩きつけた。
その様子を教団の戦士達は何とも言えず眺めていた。
「しかし、自分の味方を捨て駒として殺すなんて・・・・・・私達はとんでもない相手を敵に回しているのかも知れないな・・・・・・」
レナも一度だけ虚しい吐息を吐き顔をしかめる。

「任務は失敗、この事実は決して塗り替えられない・・・・・・が、これが俺達の最初で最後の戦いではない。次の機会を待とう。とにかく今はここを離れる事が得策だ。これだけの騒ぎを起こしたんだ。もうすぐ敵の援軍も駆けつけてくるだろう。体力に余裕がある奴は怪我人を運んでくれ。隠れ家に撤退するぞ。」
ディーノが冷静に適切な判断を下す。
命令に従い戦士数人が負傷したジャスティンやルナリトナに駆け寄り介護する。
彼女達を重そうに背負うと教会の出入り口へと向かう。
「俺達も行こう?ディーノの言う通りまだ教団は負けた訳じゃない。次の戦いに備えるんだ。」
「まずは帰って汗を流そうよ?私は早く隠れ家に戻って冷えた果実酒が飲みたいな。」
そう言ってリベアはさっき投げ捨てた杖を差し出す。
隣にいるレナも優しい眼差しで見下ろしていた。
クロムは後ろを振り向きそんな仲間を睨んだ。
杖を奪い取るように受け取り立ち上がると不機嫌な声を上げ2人の横を通り過ぎる。
「ルシール?」
1人立ち尽くすルシールの姿に気づきリクが足を止める。
「・・・・・・」
彼女は倒れて動かないアルベルナをじっと見つめていた。
まるで残忍な最期を迎えた殉教者のようだった。標的は既に他界したように動かない。
広がった血の波が足元へ迫って来る。
「こいつはもう死んでる。仕方なかったんだ。さっきの展開は誰にも予測できない。誰の落ち度でもない。」
リクは同じようにアルベルナを少しの間、眺めてやがて目を逸らした。
「さあ、俺達も行こう。時期にここも安全じゃなくなる。」
「うん・・・・・・」
ルシールはリクと手を繋ぎ倒れた標的に背を向けた時だった。

「うう・・・・・・ごほ・・・・・・」

どこから苦しそうな唸り声がした。女の声だった。
2人は互いに顔を合わせすぐにはっとし振り返った。
微かではあったがアルベルナの指先が動いていた。
起き上がりたいのか残った力で頭を上げようとしている。
「嘘だろ・・・・・・こいつ生きてるぞ・・・・・・」
「アルベルナ・・・・・・!」
「おい、ディーノ!標的は死んでない!まだ息をしているぞ!」
リクが遠くにいる皆に叫ぶ。
それを聞いた戦士達は当然、驚愕の反応を示した。
そして我先にと急いで駆けつけて来た。
「アルベルナ、しっかりして!!」
ルシールが彼女の体を揺する。
「無暗に触るな!身体に負担をかけてはいけない!」
ルシールを下がらせ慎重にアルベルナを抱き抱え上半身を起こす。
彼女は虫の息だったが間違いなく生きていた。
震えた目蓋を細く開け自身を支えるディーノを見上げた。
「クロム!治療魔法で傷口の応急処置をしてくれ!急げ!」
「わ、分かった!」
クロムは焦りながらも杖に魔力を込め癒しの光を生み出す。
それをオーラと化させ負傷した胸部の体内へと流し込んだ。
「げほっ!おぇ・・・・・・!・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・」
激しく吐血したアルベルナだが魔法が効き痛みの和らぎを感じた。
激痛から解放され心地良さそうな面持ちを浮かべた。
「心臓を貫かれても生きているとは・・・・・・大天使の生命力とは凄いものだ。」
ソフィが感心しているのか呆れているのか分からない口調で言った。

「アルベルナ、大丈夫・・・・・・?」
ルシールは心配を隠せない口調で問いかける。
だんだんと冷たくなっていく手を両手で包み離さなかった。
「クロム、治りそうか?」
後ろにいるリベアが聞いた。
「ありったけの魔力を傷に当てているけど刺さっているこの矢は特殊な魔法がかかっている。力づくで抜こうとしても抜けない。・・・・・・だから、この大天使はもうすぐ・・・・・・」
クロムは辛そうに返答を返し最後の事は言わなかった。
「何故・・・・・・敵である私を・・・・・・助けたのですか・・・・・・?」
残った痛みに耐えアルベルナは途切れ途切れの声でディーノに聞いた。
「勘違いするな。義や情のために助けた訳じゃない。我々の目的を果たすため、お前に死んでもらっては困るからだ。」
ディーノは余命僅かの相手に睨んだ視線を緩めず非情に言い放った。
そして、そのまま尋問に持ちかけ必要な情報を吐かせる。
「この国で起きているル・メヴェル教信者虐殺事件はお前らの仕業か?なら動機は何だ?」
「・・・・・・」
「お前ら騎士団の目的は何だ?この国を支配してどうするつもりだ?」
「ちょっと、ディーノ!いくら敵とはいえもうこんなに弱っているんだよ!?可哀想だよ!?」
乱暴な仕打ちにレナが思わず止めに入る。
彼は一旦、顔を上げるもそれに頷く事はなかった。
「さっきの大天使がこいつにした事を目の当たりにしただろう?失態を犯した仲間を見捨て殺す。白い翼を生やしていても俺達が戦っているのは悪魔そのものだ。気を抜けばこちらがやられる。生きて勝ちたいなら死にかけた相手でも慈悲を捨てなきゃならん。」
「でも・・・・・・!」
「お前も教団の精鋭なら精鋭らしく振る舞え!」
レナは晴れない気持ちでため息をついた
これ以上は何も言わず落ち込んだように下を向くとリベアの隣へ戻った。

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