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三話「茨」
「ナツー、グレイー!」
ルーシィの声が聞こえる。
ナツは後ろを振りむいた。
「ルーシィ、エルザ!」
「ナツ、グレイ、聞け!――」
エルザは作戦内容を話す。
その作戦を聞き、ナツとグレイは承諾した。
その時、幼い声が聞こえた。
「みなさん!」
「ウェンディ!!」
ウェンディはニコリと笑い、真剣な顔になる。
そして、手をかざした。
「私も、手伝います。えっと、『俊足』をナツさんとグレイさんに!」
「大丈夫なの、ウェンディ。」
「私だけ危険だからって、置いてかれたって嬉しくありません!」
小さい子を連れて行くのは危険と、マスターは判断した様だ。
「そうか…、あまり無理はするなよ。」
「はい!私、頑張ります!」
エルザは美しく微笑み、氷塊に向き合う。
鎧を『悠遠の衣』にし、薙刀を構えた。
「行くぞぉ!!!」
「「「「おお!!」」」」
ルーシィが素早く鍵を取り出す。
「開け!獅子宮の扉、レオ!」
「星霊界から見てたよ、任せて。」
「お願いね!」
ウェンディが核のある道を塞ぐ茨に向かい、息を大きく吸う。
「天竜の、咆哮!!!!」
茨は吹き飛び、道が開いた。
遠くに、赤黒い光が見える。
きっとあれが核なのだろうと、エルザは確信した。
「ナツ、グレイ。私達が攻撃可能なのは、この入り口だけだ。」
「ああ、分かってる。」
ナツは頷く。
エルザは、まっすぐな瞳でナツを見た。
「お前は、グレイを守れ。絶対、絶対だぞ。」
「おう!」
ナツはグレイに「行くぞ」と呼びかける。
グレイは頷き、ナツの後ろについていった。
「邪魔することは許さんぞ!!」
エルザは薙刀を構え、茨に向かって走り出した。
―氷塊内・核の道―
「茨で構築されてんのか…。」
グレイが辺りを興味深く見わたす。
少し壁を触ってみるが、冷たい様だ。
「にしても、長いな…。」
「ああ…。」
ナツの言葉に、グレイは軽く相槌を打つ。
その時、声が聞こえた。
『許せない。』
「!?この声、エーガって奴か?」
『また不幸を呼ぶつもりか。』
「…っ。」
『許すものか。ギルが許しても、私が許さない。』
瞬間、茨がグレイの体に巻きつく。
絞め殺そうとしているのか、ギリギリと音がなった。
「うあ”っ!?あ、うぁああ”…!!」
「グレイ!」
ナツは炎で茨を千切る。
だが、何本も何本もまたグレイに巻きついてきた。
「あ”…!」
突然、グレイに起きたフラッシュバック。
それは、レイガに首を絞められたあの瞬間。
「………っ!………っ!!」
茨の棘が、グレイの体に刺さり、辺りから血が生まれる。
その瞬間を、氷塊にいるエーガのみが嘲笑っていた。