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作者: 裕 (総ページ数: 10ページ)
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*5*
「もーいーかーい?」
「まーだだよー!」
「もーいーかーい?」
「もーいーよー!」
かくれんぼ…。昔螢とよくやった。遊びと言えば、大人数でやる鬼ごっこか、少人数でもできるかくれんぼ。定番だよな。
「螢みっけ。」
「あー、また見つかった。生ちゃん凄いね。」
「ってか、同じ場所に隠れるバカいるか!!?」
「えー?」
「えーじゃない。」
トイレの裏。かくれんぼで螢が隠れる場所は大抵決まっていた。逆に、螢が探す役のほうだと、いつまでも見つけられない。決まって俺が自分から姿を現す。すると、
「あー、生ちゃんみっけ!」
って言って、俺がバカみたいなことを言う。
「もう飽きたー。」
当然飽きるのも早い。
「じゃ、どうする?」
「生ちゃんの伯父さんの作ったプリン食べたいね。」
「…。はぁ…。行くか。伯父さんとこ。」
「うん!」
伯父さんは小さい頃、夢がパティシエだったらしい。だから、菓子をよく作る。螢は伯父さんのプリンが一番好きだ。
「伯父さん!」
「お。お帰り、生君。螢ちゃんも。」
「伯父さん、螢にプリン。」
「はーい。」
伯父さんは人間が良い。けど人に優しすぎると思う。家に帰れば必ず最初に菓子が出てくる。おかげで螢は甘党だ。俺は元々甘いのが苦手。だからそんなに食べない。伯父さんの作った菓子は、ほとんどが螢に回る。
伯父さんのしていた仕事は、陶器屋だった。菓子作れるくらいだから当然手先が器用だ。もちろん、納得のいく良い作品は売ってた。それ以外はウチで使う。
けど、作品が上手く出来なかった日の伯父さんは荒れ狂う。今まで作った作品を全部割って壊すこともあった。そんなときの俺は、自分の部屋に籠るか、螢の家に行くことが多かった。そんな日が起こる確率は、1ケ月に1〜2回程度。慣れれば「またか」で済まされる。
「そっかあ。大変だね。」
「俺はもう慣れた。」
「でも、怖いよね。」
「そうでもない。」
「そうかな〜?」
「俺そろそろ帰るな。もうおさまったと思うし。」
「そっか。気を付けて帰ってね。」
「ああ。」
「で、何で付いて来てんだ?」
「え。…何となく?」
「あ、そ。」
家に着くと、いつもはどんなに荒れていても必ず「お帰り」と言ってくれてる伯父さんは
居なかった。
とりあえず、螢を玄関に置いたまま俺は家の中に入って行った。
が、伯父さんはどこに行っても居なかった。
俺はまた螢を置いて、伯父さんの陶器屋の方に向かった。
「…伯父さんどこ行ったんだろう。もう帰って良いかな〜?…。生ちゃん遅いなあ。…どこ行ったのかな。生ちゃ〜ん?ねえ。生ちゃ…あ、いた。生ちゃん、もう帰って良い?」
「…っ。」
「どうしたの?」
「螢。」
「何?」
「そこから動くなよ。」
「何で?」
「良いから…。」
「あ。生ちゃんもしかして良いモノ見つけて私に隠してる?ずるいぞ、生ちゃん!私にも見せて!」
「来るな!!」
「良いじゃん、みーせーてーよー…っと…。で?何見つけた…の?…っ。生ちゃっ…、何あったの…?」
「だから来るなって言ったのに…。」
伯父さんは、
…――自殺した。