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もし明日地球が滅びるとすれば、俺は一体何をするだろう?
作者: 裕  (総ページ数: 10ページ)
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*6*

当時、小さかった俺には良く理解しがたい光景だった。ただ、伯父さんがもう帰ってこないことだけは理解できた。

「まだ若いのに…。」
「ねぇ。30代でしょぅ?お子さん一人残してぇ…。」

ここらでは俺は伯父さんの息子と思われている。別に否定する気はない。その方が良いから。
伯父さんの通夜は、近所の人だけの集まりで小規模なものだった。当然、父さんと母さんは来ない。自分の身内にも関わらず…。

「生ちゃんーん!」
「…螢。…何でそんなにテンション高いんだよ。」
「え?んー…何となく。」

「何、あのこ。不謹慎。やぁねぇ…。」
「あのこ、あの高木さんちの子よ。高木さんも嫌な人だったからねぇ。似ちゃったんじゃないの?」

「…。お前、もう少し大人しくしてろよ。」
「え〜?」
「良いから!」
「…分かった。」

伯父さんの死は、俺にとって「家族を失った」に等しい。母さんたちの元に帰らない俺を素直に受け入れ、俺のわがままも沢山…
沢山…

俺、伯父さんに迷惑ばっか掛けてたじゃんか…
何か、他に出来なかったのかよ…

伯父さんの通夜は物静かに終わり、人は皆帰って行った。俺は、伯父さんに立入を禁じられていた陶器屋の中に入った。
陶器屋の中は薄暗く、床には割れた伯父さんの作品が散らばっている。

「ここで…死んだのか…。俺、結局何も出来なかったな…。」

陶器屋の中を俺は徘徊するかのように何度も、何度も歩き回った。何度も…。
ふと、一つ割れていない作品が目に入った。俺が伯父さんと初めて共同で作った陶器。形は歪んでいて、売り物には当然ならないような物。割っても当然のもの。俺はその陶器を手に取った。

〔カサッ…〕
「ん…。…紙?」

遺言書。世間で言われる物。伯父さんが割らなかった理由は知らない。でも、思いは一緒だった。…んだろうな。

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