完結小説図書館
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*26*
ここは、ウィンドミル。
今は、6時ごろ。小学生が外に出る時間ではない。
「…あ―――っ!」
「うわぁっ」
バサバサバサ―――――ッ!
紗綾の大きな声に驚き、黎夜が本を下に落とす。
紗綾と黎夜がいるのは、休憩室。
いつもなら店の手伝いをしているが、悪魔との戦いで精神的にも疲れていたので、伊吹がやらなくていいと言ってくれたのだ。
「サーヤ…どうしたんだ?」
黎夜は、とりあえずお茶を一口飲む。
「破魔の笛、落としちゃった!」
「え―――――!?」
ブッと黎夜がお茶を吹きだす。
「ゴホッゴホッ…たぶん、あの公園だ。行こう」
「うん…」
ドタドタドタッ
急いで階段を駆け下り、伊吹に声をかける。
「伊吹さんっちょっと出かけてきますっ」
「え?ああ」
そして、急いで公園に向かう。
ゼーハーゼーハー・・・
「あっあったぁ!」
「じゃ、戻ろう」
公園に着いてから、約1分。
早くも笛を見つけ、紗綾たちは帰ろうとしたが。
「…?声がする」
紗綾たちはそっとそこに近づいていく。
そこにいたのは…
「…しずくちゃん?」
しずくが、歌って、踊っている。
踊るというよりは、舞う、という感じで。
♪悲しみに溺れて光もなにも見当たらない
闇に溺れたわたしはなにもかも失った♪
♪大切なあなたは闇にとらわれ
ここにあるのは悲しみだけで♪
♪泣いても泣いてもどうにもならない
傷が深まる それだけで♪
♪あなたを探す そのために
故郷を離れ旅に出る♪
♪それでもあなたは見つからない
あなたの笑顔が見たいのに♪
♪ああ―――思い出の中のあなたは
いつもいつも笑っていたね♪
♪いつものことがなくなって
わたしの笑顔は消えていた♪
♪ああ―――あなたの笑顔は
わたしを支えていた なのに♪
♪あなたは闇にとらわれて
ずっとずっと帰ってこない♪
♪お願い―――お願い―――
これだけでいいから♪
♪わたしの大切な人を
返して―――♪
その美しくきれいな歌は、とても悲しくて。
すぐに分かった。しずくが波香を想って作った歌だと。
「し…ずく…ちゃ…」
泣きそうになる紗綾を、黎夜がそっと抱きしめる。
「紗綾…大丈夫。君には、僕がいる。しずくのことも、もちろん支える。」
黎夜が、初めて「紗綾」と呼んだことに、紗綾は多少驚いたが。
紗綾も、黎夜やしずくのことを支えたいのは変わりない。
それに、「サーヤ」ではなく、本当の自分を認めてくれた気がした。
「うん、わたしも支えるよ。黎夜…」
しずくは、泣いていた。
その泣きながら歌っている姿は、儚くて。
しずくを支える、そう決心したけれど。
今にも、涙と一緒に消えてしまいそうで、紗綾はなんだか怖くなった。