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*25*
「…水よ、悪を捕らえる網となれ」
しずくが力を放ち、その悪魔はあっさり動けなくなった。
「…波香は生きているのか?」
暗く、低い声。
怒りのこもった、恐ろしげな声だ。
「・・・」
悪魔はなにも言わない。
答える気がないようだ。
「…もういい。水よ、悪を断つ剣となれ」
そして…あっけなく、終わった。
「・・・ん」
「サーヤ!」
紗綾が目を覚ました。
しずくも、力を弱めてつかったので、特にこれと言ったダメージはないようだ。
「あ…わたし…」
紗綾の顔は、まただんだん青ざめていく。
さっきのことを思い出したのだろう。
「…紗綾」
しずくが、紗綾をぎゅっ、と優しく抱きしめる。
「紗綾、泣いてもいいんだよ。無理して泣くのをやめようとしないでいい。…我慢しないで」
「え…?で、でも、泣いたってどうにもならな…「いいの」
しずくのまっすぐな言葉に、紗綾は戸惑いを隠せない。
「ピーピー泣いたって、どうにもならない。でも、泣いて強くなれることもある。涙と一緒に、嫌な気持ち全部、流しちゃいなよ」
そのしずくの優しい言葉に、紗綾の目から、どんどん涙が流れてきて…。
「うわあああぁぁ…怖かった…怖かったよぉ」
紗綾の顔は、涙でどんどん濡れていく。
しずくはずっと、紗綾が泣き終わるまで優しく抱きしめていた…。
「…ごめん、いきなり泣いて…でも、すっきりした。ありがとう」
紗綾は、まぶたが少し赤くなっていたけど、本当にすっきりしたようだった。
「…しずく」
黎夜が、珍しく、自分からしずくに話しかける。
「その…ごめん、しずくのこと疑ったりして…」
「いいよ、あたしも、急で悪かった」
2人が、それぞれ反省していると…。
『レイヤが…謝った…!』
徹平、翔、翼がなんだか衝撃(?)を受けていた。
「…ところでさ、…鳴神さんに、その…あたしらのこと、話してあるの?」
しずくの言葉に、みんながあんぐりと口を開ける。
「あわわわわ…あの、鳴神さん、え〜っと、これはぁ…」
しどろもどろになりながら、紗綾が話そうとするが。
「簡単に言うと、あたしらは悪魔と人間のハーフ」
「しずくの言う通り、僕たちは、悪魔と人間のハーフだ」
しずくと黎夜がさくっと言ってしまった。
紗綾たちは、京一郎の反応をじっと待つ。
「…知ってた」
「そっか〜知ってたんだ〜…って、えええええええ!!!?」
と、紗綾が超驚いているにも関わらず。
「いつ知ったんだ?」
またまた黎夜がさくっと尋ねる。
「この前、レイヤが倒れたとき…一言あいさつしてから行こうと思って…そしたら…」
「…なるほど」
黎夜としずくは納得しているが、紗綾は気が気でならない。
(ちょっとーっしずくちゃん、レイヤくん、もっと緊張感持ってよ!)
「…あの…鳴神さん、これからも、その、仲間でいてくれますか…?」
紗綾がためらいがちに京一郎に問う。
「・・・」
なんて答えればいいか分からなかった。
自分は、信用されていないのか、そんな思いがこみ上げて来て…。
「俺は、信用されているのか…?」
思わず、ぽろっと言ってしまった。
紗綾たちは、きょとんとしてしまう。
「…え?もちろんです!だって、一緒に戦ってきてくれたじゃないですか!」
「・・・そうか」
いままで…分からなかった。
不安だった。
みんなを信用していたからこそ、悲しかった。
「信用して、いいのか…?」
「もちろんだ!でもさ…京一郎はどうなんだ?」
今度は、徹平が京一郎に問う。
「俺は…みんなのこと仲間だと思っていた。だから…悲しかった」
「…ごめんなさい、今まで黙ってて…。あの、これからも、仲間でいてもらえますか?」
「…ああ」
そう言った京一郎は、珍しく、少し照れたような、にこやかな笑顔だった。