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魔天使マテリアル 「涙のしずく」 【完結】
作者: マヤ  (総ページ数: 49ページ)
関連タグ: 魔天使マテリアル ファンタジー 
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*25*

「…水よ、悪を捕らえる網となれ」

しずくが力を放ち、その悪魔はあっさり動けなくなった。

「…波香は生きているのか?」

暗く、低い声。
怒りのこもった、恐ろしげな声だ。

「・・・」

悪魔はなにも言わない。
答える気がないようだ。

「…もういい。水よ、悪を断つ剣となれ」

そして…あっけなく、終わった。


「・・・ん」

「サーヤ!」

紗綾が目を覚ました。
しずくも、力を弱めてつかったので、特にこれと言ったダメージはないようだ。

「あ…わたし…」

紗綾の顔は、まただんだん青ざめていく。
さっきのことを思い出したのだろう。

「…紗綾」

しずくが、紗綾をぎゅっ、と優しく抱きしめる。

「紗綾、泣いてもいいんだよ。無理して泣くのをやめようとしないでいい。…我慢しないで」

「え…?で、でも、泣いたってどうにもならな…「いいの」

しずくのまっすぐな言葉に、紗綾は戸惑いを隠せない。

「ピーピー泣いたって、どうにもならない。でも、泣いて強くなれることもある。涙と一緒に、嫌な気持ち全部、流しちゃいなよ」

そのしずくの優しい言葉に、紗綾の目から、どんどん涙が流れてきて…。

「うわあああぁぁ…怖かった…怖かったよぉ」

紗綾の顔は、涙でどんどん濡れていく。
しずくはずっと、紗綾が泣き終わるまで優しく抱きしめていた…。


「…ごめん、いきなり泣いて…でも、すっきりした。ありがとう」

紗綾は、まぶたが少し赤くなっていたけど、本当にすっきりしたようだった。

「…しずく」

黎夜が、珍しく、自分からしずくに話しかける。

「その…ごめん、しずくのこと疑ったりして…」

「いいよ、あたしも、急で悪かった」

2人が、それぞれ反省していると…。

『レイヤが…謝った…!』

徹平、翔、翼がなんだか衝撃(?)を受けていた。

「…ところでさ、…鳴神さんに、その…あたしらのこと、話してあるの?」

しずくの言葉に、みんながあんぐりと口を開ける。

「あわわわわ…あの、鳴神さん、え〜っと、これはぁ…」

しどろもどろになりながら、紗綾が話そうとするが。

「簡単に言うと、あたしらは悪魔と人間のハーフ」
「しずくの言う通り、僕たちは、悪魔と人間のハーフだ」

しずくと黎夜がさくっと言ってしまった。
紗綾たちは、京一郎の反応をじっと待つ。

「…知ってた」

「そっか〜知ってたんだ〜…って、えええええええ!!!?」

と、紗綾が超驚いているにも関わらず。

「いつ知ったんだ?」

またまた黎夜がさくっと尋ねる。

「この前、レイヤが倒れたとき…一言あいさつしてから行こうと思って…そしたら…」

「…なるほど」

黎夜としずくは納得しているが、紗綾は気が気でならない。

(ちょっとーっしずくちゃん、レイヤくん、もっと緊張感持ってよ!)

「…あの…鳴神さん、これからも、その、仲間でいてくれますか…?」

紗綾がためらいがちに京一郎に問う。

「・・・」

なんて答えればいいか分からなかった。
自分は、信用されていないのか、そんな思いがこみ上げて来て…。

「俺は、信用されているのか…?」

思わず、ぽろっと言ってしまった。
紗綾たちは、きょとんとしてしまう。

「…え?もちろんです!だって、一緒に戦ってきてくれたじゃないですか!」

「・・・そうか」

いままで…分からなかった。
不安だった。
みんなを信用していたからこそ、悲しかった。

「信用して、いいのか…?」

「もちろんだ!でもさ…京一郎はどうなんだ?」

今度は、徹平が京一郎に問う。

「俺は…みんなのこと仲間だと思っていた。だから…悲しかった」

「…ごめんなさい、今まで黙ってて…。あの、これからも、仲間でいてもらえますか?」

「…ああ」

そう言った京一郎は、珍しく、少し照れたような、にこやかな笑顔だった。

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