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*34*
「…ふっ…」
『…!?』
植物の蔓が伸びてきて、破魔の笛が下に落ちる。
―――カランッ
乾いた音とともに、破魔の笛は、元のホイッスルの大きさに戻る。
「水よ!」
その間にも、しずくが攻撃を仕掛ける。
水は、槍となり、悪魔に向かって飛んでいく。
「…チッ、めんどくせえ」
悪魔は、またもや簡単に避けてしまう。
「…くそっ」
みんな、思いつめた顔をしている。
「…おっと、それはさせねえぜ」
「きゃあっ」
紗綾が破魔の笛を拾おうとしていたが、気づかれ、弾かれる。
「…波香…」
しずくは、もう泣きそうな顔をしていて、今にも崩れ落ちそうだ。
「―――なあ、取引しねえか?」
「…取引?」
「そうだ。オレは、こいつをおまえらに渡す。…ただし…」
「…ただし、なに?」
悪魔は、くっ、っと口の端をゆがめ、笑う。
「おまえが、こっち側に付け。おまえが、悪魔になるんだ」
「なっ…」
皆、絶句した。
しかし、しずくは、迷わなかった。
「―――わかった」
「しずくちゃん、ダメ!」
紗綾が必死に呼びかける。
だが、しずくは振り向きもしない。
「…まず、波香を返して」
「ほらよっ」
波香は、紗綾たちのほうに投げ出される。
急いで、受け止めた。
「これで、いいのね?」
「―――ああ」
しずくは、悪魔のほうに歩みだす。
長い髪を揺らしながら、迷いもせずに。
「ダメ!行っちゃダメ―――!」
紗綾が叫ぶ。
―――しかし
―――しずくに、その言葉は届かなかった―――
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