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この世界を護るコト【完結】
作者: 実上しわす ◆P8WiDJ.XsE  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: 二次創作 
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・ 雪狼の王者 ? ・

「“ロングスラスト”ッ!!」
 バシュッ!!
 返り血がついた。槍を放った俺にも、もちろん、スノードリフトにも。
 雪の毛に赤がついて、まるで紅白の合戦だ――合戦には、ちがいないのだが。
 ――まだいける、かも。
 跳ぶ。スノードリフトが俺をターゲットに選んだようだ。ぎらついている瞳で、じっと俺を見つめている。
「下にも注目しろよ!」
 少年の声に、狼が気づく。だが、もう遅い。
 少年が、最近覚えた技を使おうとする!
「リン……酸素……! 炎の術式を進化させたもの――」
 カチャッ
 篭手を向けると同時に、魔方陣が展開されていく。炎の属性だから赤色だった。
「“大爆炎の術式”ィッ!!」
 炎が渦巻く。サーカスが始まっていく。スノードリフトが、まるで炎の輪を通り抜けるライオンみたいになっていく――。
 でも、アーサーの思惑はこれで終わりじゃない! 輪を通り抜けさせる訳には――行かない!
「“火の術式”! 術式! 術式ッ!!」
 “火の術式”を三回発動させた。それは壁のようにライオンの行く手をさえぎった。だから、勿論ライオンは出られずにまっくろ焦げになる。
 つまり。
 スノードリフトは、炎の中に閉じ込められたのだ。
 ――よし! 弱点をおさえたぞ!
 そうだ。‘スノー’がついているからして、きっと弱点は火属性――だから、アーサーの術式があれば楽勝だ。
 だからって、安心はできない。
 槍を振るう。ラクーナも槍を。サイモンは剣で、フレドリカは銃で攻撃した。
 奴の尻尾が暴れる。尻尾だけでも痛いのに、なんて奴だよ、たくっ。
「暴れるな――」
 気を高める。あの技を使うんだ。あの、幼馴染から教えられた技を――。
「“シングルスラスト”ッ!!」
 この技は、自分の体力と引き換えに、攻撃力を高めて槍を振るう技――。
 ――だから。
 ブシュッ!
「な――」
 サイモンが驚く。当然だ。
 ――だって、俺の腕に傷ができて、出血したんだから。
「これが、“シングルスラスト”の副作用なのか?」
「ああ、そうだよ。仲間の体力を犠牲にするものもあるけど」
「……命の息吹よ、“キュア”」
 メディカエキス入りの絆創膏を貼ってもらった。
 出血は治まったけれど、まだ、怪我が治っていない。
 じりじり痛い。まるで日焼けをしたかのようだ。
 「ありがとう」とサイモン。いやあ、照れるなあ〜。
「……あと一息で倒れそうだが、どうする?」
 ――それは、もちろん。
 と、みんながいった。
 もしかして、と思うでもなく――。
「「「ツバサ」」」
 ――俺が決めるのだと悟った。
 そして――。
 また、跳んだ。
 “シングルスラスト”を放つのではない。
 初級のあの技でも決められるだろう。
 だから――放つ!
「先に――進むんだああぁっ!!」
 ザシュッ!!
 “ロングスラスト”。
 技が雪狼の王者に命中し、王者は野面へと倒れていった。
 ――スノードリフト、討伐完了――。
 その出来事が起きたあと、すぐに街に知らせが舞い降りた。
 ――それは、皇帝ノ月、五日のことだった。

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