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作者: 水沢麻莉衣 (総ページ数: 9ページ)
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*6*
カナリア? 美しきかごの鳥
彼のヴァイオリン、そしてわたしの歌声ーー。
その2人があわさった時ーー。
素晴らしい演奏と歌声が森を圧迫する。
街にもその演奏と歌声は届いた。
たちまち、人々は彼と彼女を見に来た。
そしてその素晴らしいものが終わると、人々は2人の周りに集まってきた。
「素晴らしい!」
「なんて美しき歌声なの・・・!」
「貴方のヴァイオリンとよく合っているわ!とても素敵よ!」
「将来ーー素晴らしいカナリアとして世に広まることだろう!」
「次世代のマリアと演奏者だ。」
などと、2人を褒めたたえた。
・・・やったわ!
わたし・・・こんなにも褒めたたえられてる。
私の、頑張ってきた結果だわー!
母さん!
わたし、マリアなれるわ!
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憎しみを添えたカナリア。
地に染まる。そして血に染まる。
ーーー美しきカナリア。
カナリアが、生きるは残酷な世界・・・。
哀れなカナリア。
****************
「・・・うふふ!」
こんなにも幸福を感じたのはあれ以来かしら。
わたしがカナリア修道院には入れると告げられた日。
マリアがわたしの美しき歌声を認めてくれたあの日。
「待って!」
・・・チッ!
あいつっ!!
来てしまった。あいつが・・・っ!!
・・・レイチェルうえううう!!!
「彼とチューニングするのは私だったのよ!彼女じゃないわ!」
・・・何言ってるの?
あの青髪のエメラルドグリーンのドレスを着た女は。
見苦しいじゃない。
早く消えてちょうだい!
「・・・レイチェルっ。でもすこし遅かったようだ。
もう、彼女とペアとしてチューニングをし終えたんだ。
・・・ごめんね」
レイチェルからの殺気のある目を突きつけられた。
そしてレイチェルは森の奥へと姿を消した。
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『・・・レイチェル。さぁ、よくお聞き。おばあ様はね、レイチェルにある魔法を教えてさしあげますからね。
ーーーー魔法です。
いいですか?ほんとうに大切な時だけ、使うのですよ?レイチェル。
・・・願いを叶える魔法です。
さぁーーー・・・。』
******************
ああ・・・。感じたことの無い、この怒りをどうすればよろしいの?おばあ様。
助けてください、おばあ様。
わたしは聖女です。
正しく、美しくなければなりません。
ですが、いまの私はーーー憎しみそのものです。
ああああああ・・・っ!
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!!
シーカリスが憎いわ・・・!!
感じたことの無いこの怒りをどうすればいいのよぉぉぉぉ・・・っ!
ああああああ!!!
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!
どうして!?
わたしが何をしたと言うの!?
なぜ私が・・・シーカリスに奪われなければいけないの!?
いいじゃない!
私だって幸せが、ほしいわ・・・!
貴方には・・・シーカリスには幸福があるじゃない!
家族も友人も・・・いいじゃない!
わたしにはいないのよ・・・っ?
彼はこんな私を支えてくれたの・・・。
私を見てくれたわ。
好きってまだ伝えてない・・・っ!
なのになのにっ!
気づけば彼はシーカリスの物・・・っ?になってるわ・・・!
どうしてなのよっ!?
ああ・・・そうなのね・・・。
私は幸福を掴んではいけないのね・・・?
私の方がなによりシーカリスよりも頑張ったのよ・・・?
負けないようにって・・・!
彼女にはユイティルと同じくマリアの才能があるから・・・!
修道院の庭であれほど・・・っ!
唄って唄って・・・!カナリアとしてあろうと・・・!
マリアになれるように・・・っ!
憎いのよ・・・!
憎くて仕方ないのよ・・・っ!?
どうすればいいのよぉぉぉぉ!!!
シーカリスは友人。
大切な友人・・・っ!
でも・・・!!
彼を私から奪った張本人・・・!
許せない。許せないわ・・・!
返して・・・返せ!返せ!返せ!返せ!返せ!返せ!返せ!返せ!
私の、彼を返せ!返せ!
ここで引くには惜しいのよっ!
彼は私が貰うわーーーーーー。
「ふふふふふっ・・・あははははははははは!!!!」
神様は不平等だわ・・・。