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君と紡ぐ二人の時間
作者: 豆狸 チェリー  (総ページ数: 17ページ)
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10~

*15*

第 7 章
〜 孤独 〜

「 柊っ! いるか?!」

凍夜は今、柊のいる菊一家にいた。
しかし、待っていたのはつらい現実だった。

「 と・・や・さん・・・」

「 ひい・らぎ・・・」

純白とも言える白い生気がない肌。
細く、今にも折れそうな手足。
そして、輝きを失った瞳。

「 来て・・くれた。」
弱弱しい笑顔に、凍夜の心は限界を迎えようとしていた。

「 ひい・・らぎ・・柊!!」
凍夜は必死に柊の手を握っていた。
どこか遠くに、手の届かない場所へと柊がいなくなってしまう気が
して恐ろしくなった。

「 と・・やさ・・はなし・たい・・・こ・とが・・・」

「 ああ、何だ? ゆっくりでいい、 話してみろ。」

次の瞬間、凍夜は言葉を失った。

「 わた・しこの・家の・こど・もじゃない・・で・す。」

「 え・・・」

菊一柊は孤児であった。
十六年前の冬、冷たい雪の降った日、柊は、菊一家の門の前に
捨てられていた。

ちょうどその時、菊一家は後継者のことで頭を抱えていた。
子供のできなかった夫婦は、門の前にいた赤ん坊を養子にすること
に決め、その子供を、これからは災いが身に降りかからぬようにと
「 柊 」 と名付けた。

こうして、柊は菊一家の人間となった。
しかし、幸せな生活は長く続かなかった。
柊の両親が不幸な交通事故で亡くなったのである。
大事な一人息子と嫁を奪ったと、菊一家の家主である柊の祖母は
柊が災いの子であると言い、屋敷から出ることを禁じた。
それから十六年間、柊は自由が奪われ、孤独の身となった。

心も体も渇ききってしまいそうになった時、彼女の前に現れたのが・・

凍夜であった。

凍夜は、柊が生まれて初めて会った外の世界の者だった。
それからというもの、凍夜は柊の生きる希望だった。

しかし、病は柊の体をどんどんむしばんでいった。
柊の過去は過酷な物であった。


「 いま・のは・すべて・・しんじつ・な・です。」

「 そんな・・・」

「 とう・やさ・・あり・がと・・」

「 何を言っている! 感謝しなければいけないのはこちらの方だ!」

そんなに苦しい思いをしていたにもかかわらず、俺は・・・
次の瞬間、凍夜は無我夢中で柊を外へと連れ出していた。

柊の切なる願いを叶えようと思ったのである。

「 つらくないか? 柊。」

「 だいじょ・・ぶ・です。」

柊を抱きながら、凍夜は星がきらめく空を飛んで行った。

「 外の・・世界は・こんなにも・美しいのですね。」

「 そうだな。」

二人は景色の見渡せる丘へと舞い降りた。

「 柊、お前に伝えたいことがある。」

凍夜は心を決めた。

「 は・・い。」

心臓がうるさかった。体中が火照った。
それでも、凍夜は伝えたかった。



「 好きだ、柊・・・。」

柊を、愛しているということを・・・




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