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第 7 章
〜 孤独 〜
「 柊っ! いるか?!」
凍夜は今、柊のいる菊一家にいた。
しかし、待っていたのはつらい現実だった。
「 と・・や・さん・・・」
「 ひい・らぎ・・・」
純白とも言える白い生気がない肌。
細く、今にも折れそうな手足。
そして、輝きを失った瞳。
「 来て・・くれた。」
弱弱しい笑顔に、凍夜の心は限界を迎えようとしていた。
「 ひい・・らぎ・・柊!!」
凍夜は必死に柊の手を握っていた。
どこか遠くに、手の届かない場所へと柊がいなくなってしまう気が
して恐ろしくなった。
「 と・・やさ・・はなし・たい・・・こ・とが・・・」
「 ああ、何だ? ゆっくりでいい、 話してみろ。」
次の瞬間、凍夜は言葉を失った。
「 わた・しこの・家の・こど・もじゃない・・で・す。」
「 え・・・」
菊一柊は孤児であった。
十六年前の冬、冷たい雪の降った日、柊は、菊一家の門の前に
捨てられていた。
ちょうどその時、菊一家は後継者のことで頭を抱えていた。
子供のできなかった夫婦は、門の前にいた赤ん坊を養子にすること
に決め、その子供を、これからは災いが身に降りかからぬようにと
「 柊 」 と名付けた。
こうして、柊は菊一家の人間となった。
しかし、幸せな生活は長く続かなかった。
柊の両親が不幸な交通事故で亡くなったのである。
大事な一人息子と嫁を奪ったと、菊一家の家主である柊の祖母は
柊が災いの子であると言い、屋敷から出ることを禁じた。
それから十六年間、柊は自由が奪われ、孤独の身となった。
心も体も渇ききってしまいそうになった時、彼女の前に現れたのが・・
凍夜であった。
凍夜は、柊が生まれて初めて会った外の世界の者だった。
それからというもの、凍夜は柊の生きる希望だった。
しかし、病は柊の体をどんどんむしばんでいった。
柊の過去は過酷な物であった。
「 いま・のは・すべて・・しんじつ・な・です。」
「 そんな・・・」
「 とう・やさ・・あり・がと・・」
「 何を言っている! 感謝しなければいけないのはこちらの方だ!」
そんなに苦しい思いをしていたにもかかわらず、俺は・・・
次の瞬間、凍夜は無我夢中で柊を外へと連れ出していた。
柊の切なる願いを叶えようと思ったのである。
「 つらくないか? 柊。」
「 だいじょ・・ぶ・です。」
柊を抱きながら、凍夜は星がきらめく空を飛んで行った。
「 外の・・世界は・こんなにも・美しいのですね。」
「 そうだな。」
二人は景色の見渡せる丘へと舞い降りた。
「 柊、お前に伝えたいことがある。」
凍夜は心を決めた。
「 は・・い。」
心臓がうるさかった。体中が火照った。
それでも、凍夜は伝えたかった。
「 好きだ、柊・・・。」
柊を、愛しているということを・・・