完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*1*
storyI*1君をたどりし記憶
コツコツ・・・。
ハイヒールの音がする。
ん・・・だれ・・・。白衣の女性。
・・・金髪に白衣にハイヒール。
この女性に見覚えがあるのは確かだろう。憶測でしかないが、アイさんだ。
アイさんとはわたし、赤城美嘉を引き取ってくれた義理の母親である。
カラ・・・と小さくドアが開く音がした。
あ、もしかして寝坊したかな、わたし・・・。起こしに来てくれたのかも?早く起きないと・・・。
とも思いつつ、身体は一向に起き上がる気配がない。
眠すぎる。
夜遅くまで勉強してたのが悪かった。
睡眠はここまでも大事だったらしい。
ほほう、実感したぞ。
「みぃかぁー?美嘉!遅刻するわよ」
「・・・」
ダメだ。ダメダメじゃん。
起きれないんだもん。
もう遅刻しか残ってない。堂々と遅刻するしかないだろう。そんな気がする。
カオルくん・・・心配してくれたりするかな・・・。
しないか。
だって水無月さんがいる。わたしなんて眼中にないか。
「ちょっと!美嘉!!?ほんとに起きなさいってば!美嘉!起きて!」
「・・・はっ、ふぁい!」
いきなり怒鳴られ焦り、声が裏返り、挙句に噛んでしまったではないか。
朝からわたしは最悪だ。
アイさんは呆れた様子で「朝食できてるから早くね美嘉!」とだけ残し、部屋を後にした。
とりあえず制服に、着替えないと。
じゃなきゃ学校入れてもらえない。
タンスからブレザーとスカート、ワイシャツを取り出したのはいいが、緑のネクタイがない。
ーーーーまじかよ!
とっさにでた言葉はそれだった。
タンスのどこをあさろうが、ネクタイはかくれんぼを続け、出てきませんでしたとさ。
って!そんなこと言ってられない!
ほんとに学校に入れてもらえない。
校舎に入れないのだ。制服がないと。再登校指導を喰らい、結局は遅刻なのだから。
リネクタイネクタイ~っ!!
「美嘉?まだ寝てるの!?はやくー!遅刻!」
何と言うアイさんの声にも反応する暇はなく、わたしの手と頭はいつもより早くフル回転・・・。
さもないと遅刻。遅刻なんてまだした事無いのに。ヤバイ。どうしよう。
ネクタイどこやったの!?美嘉!!
落ち着け、美嘉。
昨日帰ってそれからーーーはっ。まさかーー
学校の・・・ロッカー・・・。
「・・・・・・嘘でしょ・・・まじかよ・・・!」
こんなoutな時間だ。もう先生は校門に立っているに違いない。
だとするとロッカーにネクタイがある限り、わたしは校舎には入れないのだ。
オワタ・・・。
ルルル・・・
え?電話?ケータイ?
机にあったケータイを手に取る。また充電してない・・・。
ーーー神無月葵
ケータイにはそう記してあった。
つまりは。カオルくん?
あの黒髪のピアノの上手なカオルくんからだ。
「な、なに?カオルくん・・・?」
「・・・え?だって美嘉遅いから・・・どうかしたのかなって・・・ごめん邪魔だった?」
「いえ!べつに!いまから行くよ。寝坊したの」
「なんだ。そんなのか。早くした方がいいよ単位無くなるから」
「うん、ありがとう、じゃあ」
心配して電話をかけてくれたらしい。
優しいなぁ。
この感情は決して好きの感情ではない。
心の奥にあるーー大切な居場所。空間。
そこに住むのがーーーカオルくんだったのだ。
わたしはこのときまだ知らなかった。
恐ろしいことがまっているなんてーー。
思いもしなかったのだろう。