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*20*
ズシャアアアアアア…
土を滑るブーツの音。
激しい戦い…。
ベリーピンクの女性と金髪の神が戦っている。
意味の無い戦いをしているのだ。
「争う必要なんて…ないはずなのに…どうして…こうなるの…?」
「意味の無い争いも意味のある争いもこの世にはないわ」
「え…?レイチェル神…?」
「…使いよ、私は。
ーーー争うことに意味は何一つないのだと、私は主に教わった。
それを貴女にも伝える事ができた。
これ程嬉しことはないわ…」
ーーーこの人は不思議なことを言う。
あまり言っている意味はわからないが。
でも良いことを言っているのはわかる。
「主…?
それは貴方の使える主なの?」
レイチェル神は…レイチェルさまはわたしを緑の輝く瞳で見つめる。何を考えているのだろうか。
そしてゆっくりと口を開くーーー。
「そう。そしてーーー貴女にもいつかわかるわ」
「…いい人なの?」
「私に感情を教えてくれた人よ。温かい人だったわ。」
…だった?
過去形なの?
今はいない、と言うこと?
わたしにはよくわからない。
「…っあああああああっ…あうつあああっ…」
ーーー!!
前には白川女令官が血を流し倒れていた。
なんでっ…!
ミズホちゃんのお母さんが…!!
「チッ…
アタシが殺れるなんてな…。ちきしょうっ…チッ…ったく…
っはっあっ…はぁ…っ…くはっ…あうあっ…」
呼吸が荒い。
どうにかしなくてはならないのに。
怖くて。
目の前で人が死んでしまうのかと考えると怖くて。
動けないのだ。
足がすくんでいる。
なんでこんなときに…!
助けなきゃって!どうにかしなくてはって!
思ってるのに!!
こんなわたし、大嫌いだ。
「落ち着いて。美嘉。
君ならできるんだ。この神々戦争を止めさせることがーーー」
「カオルくんーーー」
でもーーー。
わたしなんかがどうやれば…?
ーーー考えても、仕方ない!やるしかないんだ!
「大丈夫。君ならできるよ。
僕が何があっても助けるからーーーー僕を信じてーー」
「信じるよ!カオルくんのことずっと信じるから!
わたしはーーーできる!大丈夫ーー!!」
進め!
わたしはやるんだ。
怖くても何があったとしても…。
この戦争をとめる権利がある。
わたしが見届けなくてはならない理由がある。
バアアアアっ…シュウウウウ…
「あらあらー?なに考えてるのかなぁ?稟璃海にむかって。
ん?お話聞こうか?美嘉ちゃん」
「ーーーっ。負けない。わたしは貴女に負けないーー」
「え?そう。それでー?」
「わたしを見てきてくれた人がいる。わたしを分かってくれる人がいる。一緒に笑ってくれる人がいる。泣いてくれる人がいる。愛情をくれる人がいる。愛してくれる人がいる。
貴女には無いものをわたしは持ってる。
貴女に負けるはずがない。
だってーーー守りたい人がいるからーーー」
「はっ…何言って…」
「貴方と違う!守りたい人がいるからわたしは戦うんだ!
貴女みたく何も無いのに戦うことなんてしない!」
わたしを育ててくれたアイさん。
わたしを分かってくれたカオルくん。
一緒に笑ってくれた父さん。
大切なことを教えてくれたレイチェル。
わたしを産んでくれた、そして愛情を教えてくれた母さん。
そう。
わたしは1人じゃない。
わたしはこの人たちの笑顔を守りたいから。
だから戦うんだ。この人と。
どんなに傷ついても。
悲しくても。
さみしくても。
その人たちを守りたいから戦う。
「ひゃははははははは!!!ばっかじゃないの!?
そんなの知らないよ!それに。
それがどうなるって言うの!?」
「力になるんだよ!貴女にはわからないよ!
だってーー貴方を本気で愛してくれて怒ってくれて笑ってくれて泣いてくれて一緒にいてくれた人がいないから」
「ふっざけんなあああああ!!!」
ジュッ…
ーーー熱いいいいい!!!
燃えた!?
身体があああああ!!
助けっ…カオルーーーくんーーーっ
だめだ。
助けてもらって…ばっかりじゃ…ダメなんだ…。
今度はわたしが守る番だからーーー!
「うあああああああ!!!」
「!?ーーーっあ!!
ひゃははははははは!!!いたいいたい!!!」
ブシュゥ…!
吹き出す血ーー。
もう慣れてしまって気にする事ができないわたしを軽蔑してしまう。
〜♪
鳴り響くオルゴール。
懐かしのオルゴール。
鳴らしているのは誰だろうか?
「…美嘉…
君は強くなったんだねーーー。
人を守ることを愛すことを知ったんだねーーー。」