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僕は夢の中の君に恋をした【短編】 『完結』 番外編更新
作者: 電波  (総ページ数: 15ページ)
関連タグ:  恋愛 ファンタジー 
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10~

*4*


 「へーテンパ君はそんな辛いことがあったんだ」

 植物で囲まれた道を歩きながら、彼女は気楽な感じで答えた。

 
 ユメの後ろを歩く俺は苦い表情をして頷く。俺がクラスで馴染めていないことや一部の女子から陰口を叩かれていることを相談したのだ。

 なぜ会って間もない人物にこんなことを言うのかは分からないが、不思議と彼女と話していると悩みが一気に口から出てくるのだ。

 まるで前から知り合ってたかのような親しみやすさだった。

 ユメはうーんと腕を組んで考える姿をみせると、


 「よし、決めた!」


 ユメはそう言うと、急に振り返りビシッと指を俺に指した。


 「イメチェンしよう!」

 
 「は?いやイメチェンって…」

 
 俺にそんなこと出来る訳ない。ただでさえ人と目を合わせて話すことができないのに…。

 そんな俺の心境を察したのかユメは頬を膨らませた。

 「それでもやる!聞いてる限りじゃあ、テンパ君が行動してないのも原因なんだよ!ここで動かなきゃずっとそのままだよ!」

 言ってることが正論過ぎて辛いです…ハイ。しかし、ユメの言っていることが俺に出来るのかどうか本当に心配だった。

 イメチェンと言っても基本的にどう変えるのかが本題何だし…。

 「それは分かったけど俺にどこを変えろと?」

 
 「全部」

 今までの俺全否定かよ……。
 
 おまけに彼女が俺の今の問いに対して全然時間をかけず無表情で言ったのに少しショックを受けた。

 「とにかく、テンパ君は頑張って今までのイメージを払拭しないといけないわけ!良い?」


 「お、おう」

 ユメの勢いに負け、つい返事をしてしまったが大丈夫だったのか……そんな不安に襲われたが状況はどんどん進んで行く。

 
 俺の返事を聞くとユメはニコッと微笑み俺の方へと駆け寄った。


 「よし、じゃあ実戦あるのみー!頑張って友達作ってね!」


 「が、頑張ってみる」


 レッツゴー!と言いながらユメは俺の背中をパンッ!と叩いた。イタッ!と叫びそうになるのを我慢する傍らユメが口を開閉させて何か言っていた。何を言っているのか分からなかったが彼女の表情はどこか寂しげで辛そうだった。




 気が付いた時には俺はベッドの上に転がっていた。しかも制服を着用したままの状態でだ。外はすっかりお日様が辺りを照らしており曇り空を好む俺の気持ちを萎えさせていた。


 (仕方ない…支度するか…)

 
 そう思いベッドから起き上がると、なぜだか今までと雰囲気を変えて髪型を変えたくなった。服装も少しラフな感じで行きたいし、気持ち的にもなんか爽やかな気分だった。

 不思議だな、と思いつつ朝の仕度を整え学校に出かける。



 ――――――――――――――――――



 「ただいま」

 誰もいない部屋にそう声を掛けながら昨日と同じくベッドに倒れる。今日はいつもと違い学校で色々な人に話しかけられたし話しかけた。雰囲気変わったね、とか髪型のこととか、そこからどんどん話の話題は広がっていったりとか、クラスの皆も悪いやつではないことを知った。

 しかし、なぜだか誰かにお礼が言いたかった。

 誰かとは誰だ?

 先生?

 ―――違う

 クラスメイト?

 ―――違う

 家族?

 ―――違う


 もっと特別な何か…。

 手が届きそうで届かないもの。

 俺は天井に手を伸ばし、それが何かを考える。




 ――――――――――――――――――――


 気づいた時には俺は見覚えのある場所にいた。自分の背丈程に伸びた植物の海にそれを遮るように一本の道が伸びていた。俺はその道に佇み、その光景を見ている。

 知っている。

 俺はこの光景を知っている。


 俺がクラスメイトに話しかけるきっかけをくれた場所でもあるし、あの子がいた場所じゃないか。

 その時、

 「やっほー!」

 甲高い声と共にドン!と大きな衝撃が背中から伝わってきた。

 
 (ああ、これも知ってる!)


 俺はそのまま地面に倒れこんだ。背中にのしかかる確かな感触を確かめ俺は彼女を見上げる。

 そこには満面の笑みを浮かべるユメがそこにいた。

 そんな彼女を見ている内にいてもたってもいられずユメにこう言った。

 「ありがとうユメ!お前のお蔭でクラスのみんなと仲良くなれそうだよ!クラスの皆さぁ、実際とっても良いやつら何だよ!お前の言った通りだった!疑ってごめんな!」


 俺が彼女に対して言いたかった言葉が一気に込み上げ、途中から感謝の言葉しか出なくなっていた。


 俺が一方的に話していると、




 
 「ねぇ、なんのこと?」





 ユメは呆然として俺を見つめていた。

 

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