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しりとりシリーズ
作者: 彩都  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: しりとり 
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*35*

 『メモ』

 俺はメモ好きだ……まぁ、大まかに言えば、自分が忘れない様にメモをするだけだが……俺は、探偵の様な事を生業としている……そのような仕事柄、何時でも覚えられる様に何時でもメモをしてる訳だが……おっと、来客が来た様だ……今日はどんな難題が飛び出してくるやら……それは俺は分からない……

「いっ!居ますか!?」
「完璧に居ますよ……お客さん……どうされたんですか……?」
 完全に焦っている……これは急ぎだな……そう思いながら、お客さんを見た……
「たっ!助けて下さい!妻が……っ!妻が死んだんです!」
 ……凄い面倒そうな事を持ち込みやがって……少し溜息を吐きながら、俺は言った。
「大変ですねぇ……で、何が言いたいんですか?」
「かっ!必ず解いて下さい……この部屋の密室に……!」
 ニコニコしていた俺の顔が、変更される……これは……絶対面倒だな……だが、ここで、冷や汗を出す迄なら、大丈夫……うん、大丈夫だ……
「大丈夫ですよ……貴方が殺した訳では無いんでしょう?」
「うっ!……そうですけど……少し落ち着いてきました……依頼内容を言って良いですか?」
 完全に混乱していたのか……まぁ、妻を殺されているからな……大きな溜息をして、俺は聞いた。
「単純な話なんですよね……『妻が密室で殺されていた』……そして、私が犯人と言われています……だから!この密室を解いて、自分が犯人ではないと証明して頂きたい!値段は弾みます!」
「素晴らしい!そんなトリック……初めて聞いた!そんな謎……私が解くのですか!?うやぁ……嬉しいなぁ……」
 アホ、誰が嬉しいか……何で、俺の事務所には、こんな『面倒事』が来るんだ……?この前なんか、妖怪娘の指輪探しだったり……マジで、俺を何に勘違いしてんだ、妖怪共は……
「はい、では、この密室……私が何でも、解きましょう……この『俺』が……☆」

「頑張って解いて下さいね……」
 ねぇ……それは無いんでしょう……?何故なら、この屋敷が広いからだった……トイレは地平線の奥にあるんですか?そんな位、遠い家だった……そして、妻が死んだのは、客間……鍵は掛かっており、内側しか掛けられない……さて、これをメモしておかなければ……部屋の構造も考えておかなければ……窓は開いた様子も無く、外に出たって訳では無いようだな……ふむ……部屋の入口のすぐ右の端には、箒等を入れるロッカー……成程なぁ……綺麗だな……まぁ、俺はそんな事しないけどな。
 悩んでるなぁ……と、俺でも感じる密室に少し謎があった……隣の部屋はどうなっているんだ……?そんな謎が、俺の全身を駆け巡って、何時の間にか、俺は部屋を出て、右隣の部屋に入っていた……此処は……客間では無い……メイドの更衣室だった……そして、入口のすぐ左隣には、ロッカーがあった……入り口に何時でも掃除出来る様にか……ふむ……良い部屋ではないだろうか……?すると、ガチャリと、後ろから、音が鳴る、俺は急いで、バレない様に、左のロッカーに入った……バレたら、変態扱いされて、屋敷から、密室を解かなくても良い!って言われそうだからだ……
 大丈夫だった……相手は気付いてない様で、助かった……そして、俺は、ロッカーの奥に凭れて、考える……誰が犯人かを……その時、メイドが脱ぎ始めた……そういや、此処は更衣室だった……って生着替え!?そう思うと、顔が赤くなって、両手で周りを隠す……そして、ロッカーの中で暴れた……すると、突然、俺の体が宙に浮いた……まるで、後ろから、何かが開いた様な感じが俺の背中に走る……そして、俺は、何故か、隣の客間に居た……えっ……?これはどういう……すると、俺の脳に大きな稲妻が走った……まさか……そう言う事か……謎は解けた、後は犯人探しか……

「完全に分かったのかね!?妻殺しが!?」
「頑張りましたね……まずは、トリック確認から……」
 楽に移動して、殺害の再演をする……まず、トリックはこうだ、妻は誰か──Aにするか──Aが妻を殺した……そして、鍵を施錠、次に、窓の鍵を閉めて……まぁ、締めなくても良いんだけど……その次……『ロッカーの隠し扉で隣の部屋に移動』した……という事だ……
「だから……犯人は、このロッカーの隠し扉を知ってる人なんですよね……誰か知っていますか?」
 ……必ずと言って良い程、誰も手を上げないよね……そして、俺は、最後の切札を使った……
「ただ単に言いますね……犯人はメイドの何れか、そして、指紋さえ、分かれば良いんですよ?分かってます?今は指紋が大体なんです……だから……さっさと、犯人は出ろ……警察はもう呼んでいるからな……時間の問題だぜ?」
 絶対に誰も挙手しないかと、思ったが、一人のメイドだけ、挙手をした……俺の前生着替えをした女性──巨乳の女性だった──が言った……
「大変でした……私が、『私の夫を胸で誘惑してるんでしょ?』って妻様に言われ続けていまして……私はしてない、と何時も言ってました……ですが、妻様を殺した日、鋸を用意して、私の胸を斬ろうとして……正当防衛したのですが……それで死んでしまって……申し訳ありません!旦那様ぁ!」
 あんあん、と泣きながら、メイドは旦那様に抱き締められて、この事件は終わった……そして、この事件は、『自殺扱い』で、事が済んだ……金持ちすげぇなって思った……まぁ、自殺に見えるし……まぁ、良いかと思って、俺は金をたんまり貰って、事務所に向かった……

 単純な依頼も謎解きトリックの様な事件も受け付けてるひっそりとした事務所……それが、『蘭(あららぎ)万屋』……そこには、自分の力で、謎を、依頼を解く『異常人』が居た……そんな事務所に一人の幼女の様な背丈の少女が居た……少女は、『蘭万屋』の地図の紙を持って、事務所の前に立っていた……そして、少女は言う……
「うぅ……恥ずかしいけど……すいませーん!蘭さん、居ませんかー!?」
 カツカツと、靴の音を鳴らしながら、少女の後ろの男は言った……
「……たぁー……遂に幼女に頼られる迄俺の事務所も落ちたか……んで、お嬢ちゃん……依頼は難題?」

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