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しりとりシリーズ
作者: 彩都  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: しりとり 
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*36*

 『もやもや』

 ──えーと聞こえますかね──?聞こえてますかー?おーい!聞こえてるー?ねぇー?──

 ……えっ……?此処は何処?何で、こんな煙い場所に僕は居るんだ?──そう思いながら、周りを見遣る──何も無いんですけどー?そう言いながら僕は、もやもやとした空間を彷徨っていた──何なんだ、この空間は──そう思っていると、目の前に可愛らしい格好のうさ耳少女が周りを見回していた──そして、僕を見つけて、大声を上げた──

「只今発見です!お兄さん!早くこの世界から、出して下さい!」
 いっ!?僕が原因なの!?僕だって抜け出したいけど──すると、少女は、笑いながら、言った。
「単純ですよ、私は貴方の声が聞こえます──正確には、『心の声』もだけど──ただ単に『此処から出たい』!と願うだけです!」
「凄く簡単だね、もしも、次から起きたら、そうしないといけないのかな?」
「中々難しいですね……毎回バラバラという人も居るので……では、私は、出れる迄待ちます」
「……凄く話が噛み合わない様な感じがするけど……まぁ、思うだけで良いなら……」
 楽に考える……『此処から出たい』と──すると、僕は布団の上に寝転がっていた……隣には、うさ耳少女……えっ?
「次から、こんな事が起きるなら、貴方を監視対象にさせて頂きます──良いですか?」
「……かなり、記憶が曖昧だけど、君はあのもやもやの少女かい?」
「イエス、私は、もやもやの病気を駆除する物です……私は、自立駆動型アンドロイド『USAMI』です」
「……凄い名前だ……ちょっと待って、もやもやの病気?つまり僕は病気なの?」
「ノー、貴方はそのもやもやの病気の一歩手前ですね、大きく説明すると……この病気は、貴方の精神世界なのです……そして、その中で悦楽に嵌って、そのまま眠り続けて、栄養失調で死にます──そして、そのもやもやというのは、貴方の精神状態の事です──健康な人は、煙草を吸わない人の肺の様に綺麗なんですよ──つまり、貴方は不健康の精神なのです──なので、貴方は、この不健康な精神から、普通の健康に戻らないといけないんです──相当大変ですがね──」
「……ねぇ、その病気に対抗策は有るのかい?」
 今更ながら、僕は言った。
「ただ単純に言えば──僕は長生き出来るの──?」
「……ノーです……この病気には、対抗策が、私みたいなアンドロイドが看病しなければならない──そういう、病気なのです──」
「凄く厭だなー、そのまま死ぬってか……」
 完全に諦めたまま、僕は思った──死ぬ、ねぇ……こんな惨めな人生なら、すぐ死んでも構わなさそうだけど──そう思った瞬間、僕はUSAMIに平手打ちされる──僕が何かした?
「単純です──私は言いましたよね……?貴方の心の声が聞こえる、と……人間、そんなに諦めんな!私は開発されただけのアンドロイド!でも、貴方は人間から生まれた人間なんです!そう簡単に命は捨てる物ではありません!貴方は10年、20年生きれますが、私達アンドロイドは何年生きれるか、分からないんです!だから、私達の分迄、その先迄生きて下さいよ!私達が見れない景色を貴方達は見れるんです!だから、生きて下さい!」
 いきなりの力説に、僕はたじろんだ……生きれば良いんだろう……そこから、僕は介護者の様にUSAMIに介護を受けた──美味しいご飯に美味い物を食べて、僕は暮らした──そして、ある日……
「ヒッ!?何だよこれ!?こえぇよ!」
 よもや、もう見る事は無いと思っていた──恐怖──それが目の前に居た……今はもやもやが少ない事から、此処は精神世界なのか、と判断出来た──すると、USAMIが現れて、その恐怖と戦う……
「うぅっ……!強い……何なんですか、これは……!?良いから、貴方は逃げて、元の世界に戻って下さい!早く!」
 苦しくなるながらも、僕は逃げる事にした……女の子一人置いてくなんて……僕は何て弱い人間なんだ……そう思いながら、僕は、何とか元の世界に戻ってこれた……

「……高い天井……?ここは僕の部屋ではないな……?」
「なっ!?起きた!?すげぇ!」
 えっ?どういう事?小学校の知り合いが、僕を見て泣いていた……意味が分からない……すると、知り合いが、僕に鏡を見せてきた……なっ……何て顔だ!?やつれにやつれて、顔が痩せていて、髪が白髪になっているではないか!そして、僕は老けていた……皆は、まだ、三十代程度だろう──何が起きたんだ?
「大丈夫?『もやもや』の病気で寝込んでいるって話だったけど……」
 どういう事?あの病気は、USAMIが倒して……
「ていうか、USAMIって誰?」
 ……歴史を感じさせる様な一言だった……僕は、USAMIと一緒に暮らして……?『暮らして』?何で……暮らしているのに、皆が分からないんだ……?倒れたのなら、救急車で連絡するだろうし……っていう事は……USAMIは、もやもやの病気の中の存在だった……?そんな筈は無い……だって、料理もしてもらったし……夜の相手だって……それも全て、病気の中の存在なら……?そう思うと、少し怖くなる……『僕は妄想の人と会話していた』……?そして、僕はもう、病気に罹っていた……?
「たっ!正しいのは……どっちなんだ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「暴れたか……全く……病人は面倒だぜ……」
 絶対気だるそうに言った青年は、僕を黙らせた……そして、僕は隔離された……USAMI……もしも聞こえているのなら、返事をしてくれ……僕は、君と一緒に居たよね……?ねぇ?返事をしろよ……おい!居たよなぁ!なぁ!おいってば!……青年の声は虚しくも掻き消される……USAMIを知るのは、叫んだ青年ただ一人だった……

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