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しりとりシリーズ
作者: 彩都  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: しりとり 
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*43*

 『レトロ』

 少し年季が入ったお店、『十六夜満月堂』、そんな、名前が古ぼけた店には、魑魅魍魎の類や、悪鬼羅刹も通うお店だった、そんなお店を経営している、店主の青年は──年齢は二十代前半だが、何年も見た目が変わらない、そして、服装も変わらない──名を百乃目(もものめ)と言った。
 ただ、そんな見た目の変わらぬ青年の秘密を探ろうとして、何時の間にか、『十六夜満月堂』の休憩所で寝転がっている、それは何故だか分からないが、とある人は言った、『あれは、完全に尻尾が生えていた……まるで九尾の様じゃった……』、或いは、『いや、俺は記憶は少し覚えている……百乃目の正体は雪女だ!』、他にも……『百乃目さんは人間だよ?それも分からないのかい?』等等、百乃目については、色々な話が展開される、その話に対し、百乃目は、『そんな訳無いじゃないですか、何でそんな怪物扱いされるんですか?私はただの店主ですよ』とだけ言って、何時も仕事にかかる……そして、彼は色々な事に手を出して、時間が無い。
 急いでいて、何をしているのか、見に行ってみると、保育園に向かっていた、そして、小さな子にお菓子を配っていた、そして、帰って行った……子にも大人にもとても優しい百乃目は、今日もせっせと働いている──
そんな記事を読んだ、百乃目は言った。
「大変だったなぁ、この取材、何でこういう──『ごしっぷ』て言うんですか?──仕事が多いんだか……」
「完全に色物屋として、見られてるからじゃろ?」
「ロリババァの癖に何でこういう話は得意なんだ……?」
「だーかーらー!猫又でもロリババァではないのじゃ!多分、1000年は生きてるだけで!」
「でも、1000年経てばババァでも良いでしょう!?何でババァに拘るんですか!?」
「完全に見てみろ!?人間界では儂は9歳の肉体じゃぞ!?世の男共に聞いてみろ!?お前みたいな年齢の人間達に聞いてみろ!」
「ロリババァの話なんて誰が聞くか!?」
「完全に『お兄ちゃん?(うるうる目の猫撫で声)』って言ったら、世の男共の心は鷲掴みじゃ!どうじゃぁ!?」
「あの、言いたかは無いけど、着物から、女の股間露出させるのも、恥ずかしいとは思わないのもババァじゃないか?」
「完全に見せながら、人間界歩いたら、男共は儂を襲うかな?」
「中々にイライラさせてくれる──良いから働いてくれません?着物着て、ちゃんと働いて下さい」
「厭じゃ、何で儂がそんな事──」
「兎に角、貴女は私の名前を使って、借金して酒飲んだ挙句ぅ?丁半で金を賭けて、全てスって酒代を私の名前でツケにしやがって……」
「ていうか、二件目の居酒屋の話も!?」
「『も』って!?知らないと思ったんですか!?二件目の店主が知らせに来てくれましたよ!」
「よいではないか、よいでは」
「はぁ!?何で良いのですか!?アンタの所為で家計は火の車、それが払い終わる迄このお店で働いて下さいね!」
「ねぇ、その金を自分の性欲の為に使わないかい?」
 いきなり、百乃目に近付いて、首を舐める、そして、男性の陰部を触った。
「ただ、そう言う事は人間相手にして下さい、私は貴女を汚したくない、っていうか、お前は仕事しろ!」
 碌に仕事しないで!そう言いながら、猫又のロリババァの首根っこを掴んで店の外へ放り投げる──彼女の名は、猫又の琥音虎(こねこ)、彼女は、猫又の中の猫又──猫神様と呼ばれる──だった、所謂猫の神様に近い存在だった、そんな彼女も、古い付き合いである百乃目には、少し頭が上がらない。
 いや、上がる事は上がるのだが、百乃目には、実力が違うので上がらなかった、だが、彼女は知っている、百乃目の正体を──言いたくても言えないのだ、言ってしまうと、百乃目が大変な目に遭うからだ──だが、どうせ言う気はあっても、それを『バラす』気は無いので良いのだが……
 頑張って、借金返すかぁ……そう思いながら、箒を持った瞬間、金を借りたヤクザが百乃目の襟首を掴む、ヤバッ、借りる時、名前を百乃目にしていた……
 ただ、そう思った瞬間、百乃目は殴られる、そして、百乃目は少しキレた。
「単純に痛いですねぇ……おっと、一番右の方、お婆さんが苦しんでますねぇ、心臓を押さえてるようですが……」
「がっ頑張れよっ母ちゃん!今行くからな!」
「なっ……!?何でコイツの母親の事が……!?」
「頑張ってお母さんを助けてあげてね……、では、貴方は、息子がいじめられてますねぇ、こんなに大きいのは、ガキ大将ですか?」
「かっ必ず助けるぞぉぉ公(いさお)ぉぉぉ!!」
「「親父ぃぃ!?」」
 いきなり、ヤクザのボスは逃げ出した、そして、ボスを追って、ヤクザは帰っていった、そして、襟首を直しながら、百乃目は言った。
「大変ですねぇ……くれぐれも借金は作らない様にして下さいねぇ?」
「えっ、あっはい」
 萎縮しながら、琥音虎は言った、そう、百乃目は、『相手の心の声、家族さえも見抜いてしまう』妖怪『百目』の一族なのだ、なので、『敵に回したら大変』という意味で、彼女はバラさないのだ、そして、その日の夜、寝室……
「疲れたのじゃ……もう寝よう……」
「うん?何で寝るんです?性欲の為に使いますよ?」
「よいではないか、儂は眠いんじゃよ!」
「よくないです、お昼にあれだけの事をして追いながら……」
 楽そうに琥音琥を見る、そして、『百目』の力を使って、心の内を見透かす。
 すると、『優しくして欲しい』と出てきた。
「単純に可愛いですね、貴女は」
 ハハハ、と笑いながら、着物を脱がす。
「少し待て!何で昼はそんな積極的では無いんじゃぁ!?」
「アハハ、簡単ですよ、『お昼にする事では無い』ですからね♪もしかして、見られる方が良いんですか?」
「か……完全に鬼畜じゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
 明らかにコイツは悪魔だな……そう思いながら、琥音虎は抵抗する事を諦めた……
 ただ、百乃目には、まだすべき事があった、だが、そのすべき事が終わるのは、まだ、誰にも分からなかった……

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