完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

しりとりシリーズ
作者: 彩都  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: しりとり 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~

*44*

 『露和』

 俺は日本人だ、だが、妻は露西亜人なのである、なので、日本語を話せない──まぁ、少しは話せるんだけど、カタコト──なので、俺は何時も露和辞書を持ち歩いている、俺は重い辞書を運びながら、妻の買い物について行った。

「大量にあるスーパーですねぇ……ワァ!何でавокадо(アヴァカード)がこんなに!?」
 ……日本語で少しは聞き取れそうだな、そして、俺はもう一度、頭の中でアヴァカードと言う発音を繰り替えす、アヴァカード、アヴァカード……そして、妻の見ている物を見て、分かる、あぁ、アボカドか……成程、そう言う発音になるのか、そう思いながら、調味料コーナーへ向かった、そして、妻は驚愕する。
「 ルンルン気分ですね……ってДа ты что(ダーティシトー)!何でこれがー!красный перец(クラースヌイ・ペーリツ)が!?」
 ガーン、今日は二つかぁー、そう思いながら、その発音を聞いて、辞書で調べる、『Да ты что(ダーティシトー)』は驚愕等で使われる言葉らしい、『красный перец(クラースヌイ・ペーリツ)』は唐辛子と言う意味、ボルシチ等に入れたりする、妻のボルシチは世界一だと思えるのは、自分だけだろうか?
「完全に日本のスーパーは品揃えが良いですねぇ……」
「えっ?そうかな?」
 中々、妻の意見には賛同しがたい、矢張り、何時もあるから、感覚が麻痺しているのかな?そう思いながら、買い物終了、そして、車に乗って、自宅に向かった。

「ただいまですー」
 すぐに帰ってくるや否や、ベッドに寝転がる妻、昔から、疲れが溜まりやすい体質らしい、それに対して、俺にはあまり知らないけど、多分、俺も溜まりやすい体質だから、気持ちは分かる、そして、今日は俺が料理番だった、俺が作るのは、おにぎりに、カレーだ。
 大丈夫、案外美味いんだって、これが、おにぎりを焼きながら、カレーの具材を切って、鍋の中に入れる、そしてお湯を入れて、ルーを入れる、水から作る物だが、面倒くさがり屋なので、お湯でいい、完成なんて興味無い、美味く出来たら良いのだから、そう思いながら、完成を急ぐ──そして完成する、焼きおにぎりは電子レンジで温めて、、食卓に置く、すると、妻が起きた。
「大量ですねぇー!」
「えっ?カレー皿とおにぎり二つの何処が大量なんだい?」
「いや、大量ですよ、私が食べる量よりぃ……」
「いや、小食過ぎるわ!」
 訳が分からない──まぁ、まだ新婚だから仕方無いけど──早く相手の事を分かって、気遣えたら良いなと思う、それが夫や妻の、相方の為になれば幸いだ。
 だが、今日は、疲れたかもしれない、明日は簡単にボルシチでも良いか、そう思いながら、ご飯を食べた──辛口を買ってしまい、自分は絶叫した……妻は美味しく頂いた、露西亜人すげぇ!と思った瞬間だった──

 ただ、妻は特殊かもしれない──日本の夏に弱い、と言う事、外国人は日本の夏に弱いと言うのは良く聞くが、露西亜人は分からない──まぁ、日本の夏と外国人の夏は違うからなぁ……まぁ、大まかに言えば、日本の夏はジメジメとした湿気のある夏、それに対して外国はサラッとした湿気のあまり無い夏らしい、一回俺も外国に行って見たい者だ、逆に妻の国の方から、父親や母親に会った、日本好きの夫婦だったので、結婚が許された感じだった。
 ただまぁ、これからもゆっくり時を過ごす身としては、少し夏が不安なのであるのだが──
 頑張って、夏の対策をしないとな……

 何とか時は進んで、一週間、何と、妻が妊娠したのだ、露西亜の方の父母に連絡をしないとな……そう思いながら、妻に国際電話を貸した、そして、ロシア語で会話する、自分にはさっぱり分からない言葉も飛び交う。
 うーん、俺も早くロシア語を覚えないと……そう思いながら、妻は電話を切った。
「大変です!すっごく喜んでました!嬉しいですぅ!」
「うーん、そうだけど、俺は分からないな、早くロシア語を覚えたいよ……」
「余計なお世話かもしれませんが、何で母国語を覚えたいんです?」
「凄く羨ましいからだよ、何時迄も君に通訳を頼む訳には行かないからね、俺の言葉で、俺の声で話したいんだよ、君のお父さん、お母さんに……」
「にゃー!何て優しい夫なんですか!これは冬将軍も吃驚ねー!」
「ねぇ、時々中国人が日本語を喋る様に聞こえるのはどうしてだろう?」
「うーん、日本語を習った先生が中国人だったからかなぁ?」
「あぁ……そう言う事かぁ……」
 あぁ、中国人の先生なら仕方無い、そう思いながら、電話を受け取る、そして、俺は座った。
 ただまぁ、俺達の子かぁ……どんなんだろうね? 金髪か、黒髪か、目は日本人か、露西亜人か……想像が膨らんでしまう。
「うーん、男の子なら、どんな名前にしましょうか?」
「完全にロシアネームはダメだろ?『ユーキ』とか?」
「完全にロシアネームで考えていました……日本ネームは『タロウ』とか?『イチロウ』?」
「うーん、生まれてから考えよう、流産したら、元も子もないからねぇ」
「えぇ、分かりましたぁ……」
 あぁ、妻がウキウキしている、何て可愛いんだろう?そう思いながら、我が子が生まれるのを待った……俺等の子はどんな子だろう?そう思いながら、俺は、寝る事にした……そして、どんな名前になるか……それはまだまだ分からない……

 NEXT 『輪を』

43 < 44 > 45