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しりとりシリーズ
作者: 彩都  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: しりとり 
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*45*

 『輪を』

 輪になりましょう、それを聞いたのは、何時だったかな──

 中々に面白い戯言だ、そう思いながら、相手の出方を伺う、必死に命を乞いているが、そんなのは俺は知ったこっちゃ無い、俺は冒頭に出た言葉を思い出す──その言葉を聞いたのは、幼少期の事だった、俺は孤児で、シスターマリアに引き取られた孤児院の人間だった。
 ただ、その孤児院は騒がしくて、賑やかで楽しかった、だが、事件は起きた、その孤児院が火事になった、火事の原因は、シスターマリアを憎む街の住人の暴挙だった、そして、数時間もしない内に、孤児院は燃え尽きた、必死にシスターマリアは神に謝っていた、俺はただ、それを見ている事しか出来なかった──

「単純な作業だったな、ナンバー」
「バーカ、コレはこれで大変なんだぞ……」
「存外笑いながら、拷問していたじゃねぇか?」
「完全に作り笑いだけどな」
 中々、拷問も大変である、因みに今の俺の仕事は殺し屋である、完全にシスターマリアの反対の事をしているが……そう思うと、失笑してしまう、その失笑している事を相方に見付かり、不思議がられたが……だが、不思議がられても良い、俺は人を殺して、金を稼いでいるから──もう人間の屑だから……

「ラッキーだ、次に殺す相手が分かったぜ、次はコイツだ、ナンバー」
「ばーさん一人殺すだけか──」
 完全に驚いた、今度の殺す相手は、『シスターマリア』だった、それも依頼書のタイトルが、『新興宗教 マリアの会 教祖 マリア・ルーラス』と──

「とーにーかーくー!アンタは死んで欲しいんだよ、俺らのボスが直々に受けた依頼を俺等二人でやる事になったんだ、つまりボスは俺等二人を信頼している、だからボスに俺等は応えるんだよ、とにかく死んでもらうぜ?」
 全然面識の無い俺の相方が説明する、シスターマリアを誘拐して、拷問部屋に連れて行ったのだ、こんなババァの体を誘拐する事なんて簡単だ、そう思いながら、俺は仮面を着用したまま、シスターマリアを睨む、何で仮面を着けているかと言うと、シスターマリアには、俺の顔が分かっている、何年経っても、俺の顔は変わらないらしい……
 今更まぁ、声を変える事は出来ないので、相方が喋る事にしてもらっている、生憎俺が殺し屋をしている事はシスターマリアにも秘密だ、それを相方に話すと、『何だ、このババァと知り合いなのか、仕方ねぇ──俺がお前の代わりに言ってやるよ、色々と』と言って、一応は信頼出来る相方なので、頼る事にした。

「大変ですね、貴方も……」
「もう、俺も年だからな、早く拷問を終わらせて、ご隠居したい、だから、早くアンタを殺して、殺し屋、拷問を止めたいぜ」
 絶対に嘘を言っている、俺の相方は丸坊主の26歳だ、声も渋めの声なので、相当お年寄りに見られやすいのだ、まぁ、ガキが好きな相方だが、ガキにも怖がられる見た目なので、少し悲しいと言っていたが、俺は逆に好かれやすい、何でかは知らないがな……

「中々にしぶといババァだな……」
「中々飽きない拷問者ですね……」
 ねぇ、何バトル漫画みたいな事してんの?鞭での攻撃に耐えるシスターマリア──それに対して、何度も相方が叩いては、耐えるシスターマリア──完全にシスターマリアの圧勝じゃねぇか、そう思いながら、俺は立ち上がって、相方から、鞭を譲り受ける。
「縷々とした道を歩いてきた俺には分かる、シスターマリア、アンタは凄い人だよ──」
「良かった……アンタは生きていたんだね……私は嬉しいよ──まさか、殺し屋になっていたとは……うわさは本当だったのね──」
「……ねぇ、シスターマリア、何で、新興宗教なんか……」
「完全に私の負けさ、最後に孤児院の子全員の未来の姿を見れて最高だよ──私はアンタを探していたからね──」
「ねぇ、それってどういう事!?シスターマリア!?孤児院の子全員って──」
 ていうか、どういう事なんだ?孤児院全員の未来って?
「ていうか、何を言っているんだ、シスターマリアは?俺以外にも生きてるだろ、マッシュやミュラインとか──」
「完全に死んだよ、今の私の様に──拷問、自殺、他殺、事故、病気──アンタ以外は全て死んだよ、マッシュやミュラインは事故で死んだよ……」
「良かったな……じゃねぇよ、ババァ!?ナンバーの知り合いは俺らのボスの家族みたいなもんだ、何で……何で殺されたんだよ!?教えてくれ!」
 冷酷な相方が久し振りにキレていた、こうなると、誰にも止められない、俺でもだ──
「大丈夫です、相手は分かっています、だから、新興宗教の名を借りて、武装集団を作っていたんです……そして、孤児院の仲間達を殺した組織を潰そうとしていたんです──」
「素晴らしい計画だったのに……まさか、アンタを殺そうとしたのは、その組織かも知れねぇな……」
「中々手強い相手ですので、手伝ってはくれませんか?」
「完全に手厚くサポートしてやる、だから、このババァを助けようぜ、ナンバー?」
「バーカ……何で俺が……」
 頑張ろうとする相方に俺は少し心の中で笑う、どうやって、シスターマリアの倒そうとしていた組織に拷問をするか……俺は顔に出してしまい、驚かれる、そこ迄驚く顔をしていたのか?俺はそもそも知らないが、人の顔とは、奇妙な物だ、そう思いながら、自分のボスにも仇なす事を考えた、自分のボスが、相手と繋がってるかもしれないからだった、こうして、小さな俺達の戦いが始まるのだった……

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